Treasure Data×TOPPAN
2つの協働事例から紐解く、
日本企業のデータ利活用の課題と
解決策とは?[前編]
TOPPANと協働パートナー各社の対談で、日本企業のデジタルマーケティングの課題解決と未来を探るシリーズ。記念すべき第1回は、トレジャーデータ株式会社 Business Development Div.でSenior Manager of Partner Allianceを務める門脇亮介氏をお迎えしました。
前編では両社が協働する2つの事例から、お客様へ提供する価値についてご紹介します。
※所属企業名・部署名は2022年6月時点
スピーカー紹介
トレジャーデータ株式会社 Business Development Div. Senior Manager of Partner Alliance 門脇亮介氏 |
凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部 デジタルマーケティングセンター コミュニケーションデザイン本部 カスタマーマーケティング部 4T 主任 溝口貴大 |
―両社の事業および、ご自身の役割についてご紹介ください
門脇氏:トレジャーデータは2011年に、米国シリコンバレーで日本人3名が起業した企業で、世界約20か国に、従業員500名ほどが在籍しています。
SaaS型のCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を提供しており、エンタープライズを中心に国内外で450社を超える導入実績があります。
Forbes Global 2000 (The world Largest public company) 選出の国内企業 218社 (2020年度) のうち、60 以上のお客様にご利用いただいています。
私は、事業開発およびパートナー企業とのアライアンスを担当していまして、個人情報保護や3rd Party Cookie規制などの市場環境変化に伴う対応を各国のパートナー企業と協働で調整しながら、
お客様に最適なサービス提供を行うことが役割です。
溝口:凸版印刷は長い歴史の中で業種、業態を問わず幅広い取引先があります。
中でも流通、出版・音楽などのコンテンツプロバイダー、金融、メーカー、電力・ガスなどのインフラ関連の5つの業種でのデータ利活用ニーズが特に高いと感じています。
私はこれらデジタルマーケティングの実行とDX推進を目指すお客様企業に対して、デジタルマーケティングの戦略策定・施策策定および、その実現に必要なプラットフォームの構築から運用、
プロジェクト管理までをトータルでご支援する立場です。
*凸版印刷は、Treasure Dataの認定パートナーです。
協働事例① 100施策/日のパフォーマンスを実現するDWHからのリプレイス案件
溝口:今回は事例を2つ、ご紹介します。1社目は、EC通販で幅広く商品を展開されているメーカーのお客様です。
このお客様企業ではすでにデータを利活用するための基盤として、DWHを持たれていました。ところが1日あたり100件ものキャンペーン施策があり、データ量に対しシステムのパフォーマンスが不足。
古いシステムで操作性が悪いため限られた人しか業務が行えず、新たな施策展開のスケールに課題を感じておられました。
加えて、ECにおいて定期購入やクロスセルを促すには、購買データにWebの行動データを掛け合わせて顧客ごとに最適なアプローチを図る必要がありますが、従来のシステムではそれも難しい状態でした。
これらの課題を解決するための新たなプラットフォームとしてTreasure Data CDPを採用いただき、トッパンは効率的な施策管理のためのインプリメント、データの設計から構築、運用までをご支援しています。データ活用は継続性が重要ですので、最適な中間テーブルを用いて効率的にデータを活用できる仕組みを用意しておくことが大切です。
―2社が協働する価値について、どうお感じになりますか?
門脇氏:まずはお客様の個別の環境、利用ツール、データ量などを把握した上で、客観的かつ中立、透明性の高い視点での事前のプランニング。
加えて、お客様が目的を達成するために必要な各種作業のフォロー。
これらはベンダーであるトレジャーデータではなかなかサポートすることができない部分ですので、トッパンが担ってくれるのは心強いです。
溝口:このお客様に限らず、多くの企業が「ツールは入れたがうまく活用できない」となるのは、最終的に何をやりたいのかが、事前のプランニングで描き切れていないからだと思います。
そのため新たなツールやプラットフォームを構築して、これまでの施策はできるようになったものの、その後に何をどうすればいいのかがわからないであるとか、既存の施策運用に追われて新たな施策を検討する時間が取れない、といったことになりがちですよね。
門脇氏:そうですね。だからこそ導入、構築と並行してさらにデータの粒度をさらに細かくするであるとか、データとデータをかけ合わせてもっと「使える化」していきましょう、といったアドバイスを行う伴走者としてのトッパンの役割は、大きなものがあると思います。
―こういったプロジェクトは、どのくらいの期間がかかるものなのでしょう?
溝口:要件定義とプランニングに約3か月、その後の構築が約6か月でした。期間は要件や規模、そしてお客様側でのカスタマージャーニーやパーセプションフローなどの策定度合いにより、大きく異なります。
このお客様の場合は、それらがしっかり自社で描かれていたので、比較的スムーズに進めることができました。その分、中間処理のきめ細かさなど要求レベルは高かったですが(笑)。
もう一つ、我々をご評価いただいたポイントとしては、アジャイル開発と従来のウォーターフォール型のハイブリッドなプロジェクトマネジメントがありました。
アジャイル型は柔軟でスピーディーな今どきの進め方ではありますが、その一方で納品仕様が不透明で、品質保証の観点で不安が残ります。
特に日本の大手企業では、そうした点も配慮する必要があります。
協働事例② ブランド横断のLTV向上を目指すデータ基盤の新規構築
―2つ目の事例についてもご紹介ください。
溝口:もう1社は、消費材メーカー様の事例です。こちらは従来、流通経由での販売であったため、自社保有の顧客データが少ないことが課題でした。
今後、きめ細かなアプローチでLTVを向上するためには、消費者が自社商品をどのように購入、使用されているかの把握が欠かせません。
そこで自社の会員基盤立ち上げと同時に、データを蓄積するプラットフォームとしてTreasure Data CDPを採用されました。その上でお客様の行動を可視化し、最終的にはブランド全体のLTV向上を目指されています。
―このプロジェクトでの難しさは、どのような点でしたか?
溝口:このお客様は、複数のブランドをお持ちです。そのため一度にではなく段階を踏んで、ロードマップを示したうえで並行してデータ基盤を構築していく難しさがありました。
さらに、ブランドごとに施策を検討されるのですが、現場の各ご担当者は従来型のマス広告や店頭での戦略は経験値が高い一方、デジタルを活用して自社で行うデジタルマーケティングについては初めての試みで、経験則がありません。
ですのでこの活動の必要性を、施策ごとにビフォーアフターを示してご理解いただく必要がありました。もちろん、最終的にはブランドを横断した施策の実行によってLTV向上を目指されていますので、部署をつなぐ役割が必要であり、引き続き支援しているところです。
続く後編では、日本企業におけるデータ利活用の共通課題を紐解き、その解決策としての両社の役割と強み、お客様に提供する価値についてさらに語り合います。
2022.06.02