イベントレポート

<DATA CAMP 2021>
“CHANGE”
~企業活動を個客中心へ~

※所属企業名・部署名は2021年3月時点


登壇スピーカー:
TOPPAN株式会社 情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部
コミュニケーションデザイン本部 兼 エンゲージメント本部 本部長
梅川 健児


「企業活動を、個客中心に」を掲げるTOPPANのマーケティング・DX支援サービス

私たちTOPPANは「企業活動を個客中心に」というスローガンを掲げて、デジタルマーケティングやDXの支援サービスを展開しています。このサービスは、マーケティング部門向けの「パフォーマンスマーケティングサービス」と、ICT部門向けの「データテクノロジー&プラットフォームサービス」、顧客管理部門向けの「カスタマーエンゲージメントサービス」という3つのメニューからなり、お客様のマーケティングやDXを支援するものです。

DX支援サービスはスタート以来、大変順調に伸びており、コロナ以前と比べて相談件数が150%も増えています。ご相談は、営業経由、Webサイト経由、パートナー経由という3つのチャネルで受け付けていますが、特に「TOPPAN DIGITAL」サイト経由のお問い合わせは、毎日1〜2社からいただいている状況です。ご相談いただく業種は、大手不動産からペットショップチェーン、システム開発事業者、コンサルティングファーム、法律事務所、B to Bの事業者、保険・金融サービスまで多岐に渡っています。

ご相談内容は、技術導入に関する課題と、技術導入後の課題、運用面に関する課題など、多岐に渡るご相談をいただいています。以前は「何をどう導入したらいいのか」というご相談が大半でしたが、今は「導入した技術をどう事業に活かしていくのか」という問い合わせが増えており、各企業がDXを推進するフェーズに入ったことがわかります。


「アプローチのCHANGE」で成果を上げたTOPPANと講談社の事例

今回の「DATA CAMP 2021」は”CHANGE”をテーマに掲げていますが、その背景には、期待先行ではじまったDXの火を消さないために、新しい技術を実利へ繋げ、持続的な成果を生み出す”CHANGE“を起こしたいとの思いが込められています。

私たちは、持続可能な成果を生み出すには「技術のCHANGE」「アプローチのCHANGE」「マネジメントのCHANGE」という3つの“CHANGE”が必要だと考えています。「技術のCHANGE」については、皆様ご存知であり導入も進んでいると思いますので、ここでは「アプローチのCHANGE」と「マネジメントのCHANGE」にフォーカスしてご説明いたします。

「アプローチのCHANGE」に成功して、何度も繰り返して成果を出している事例として、2つの企業の取り組みを紹介します。1例目は、私たちTOPPANです。

2017年頃、TOPPANではB to BマーケティングのDXとして「WEB創注」活動を始めました。デジタルマーケティング基盤を導入してWeb広告で新規リストを獲得し、インサイド営業を行なったところ、新規の得意先が増え、既存チャネルの代替が進み、コストの削減効果が現れました。この成果を知った事業戦略本部長が「いいね」と活動を応援してくれました。翌年になるとユーザー数が増えて閲覧データが貯まったので、よりコンバージョン率の高いコンテンツ開発やデータ解析による商品再編に取り組み、営業情報の連携も行いました。すると既存クライアントがサイトを訪問してくださり、受注が右肩上がりに増えました。今まで横目で見ていた営業部隊が、その成果を見て「いいね」と支援してくれるようになりました。2020年になると「WEB創注」の噂は全社に拡がり、他事業部との共有、運用体制の共通化、他事業部の人財教育などの水平展開がスタートします。ここにきて社長も「いいね」をくださり、1部門で始まった活動が全社的な活動となりました。

2例目は、講談社様が展開されたB to CコンテンツビジネスのDXです。2017年に講談社様は、これまで各編集部が個別に管理していた読者IDをDMPで統合し、CRMの運用体制を整備しました。その結果、読者を統合的に管理・分析できるようになり、読者の興味に合わせた多様なサービスを展開できる環境が整いました。その成果を、さらに拡張するべく、蓄積したデータを活用して独自のターゲティング広告やSaaS型CRMサービスの提供機能を切り出し、サイバー・コミュニケーションズ(CCI)様とTOPPANとJVを組み、機能会社として独立することになりました。この機能会社は講談社様だけではなく、業界全体にサービスを提供するべく、今スキームを構築している最中です。詳細につきましては、セッション3でご紹介いたしますので、ご興味のある方はぜひそちらをご覧ください。


事業に応じた「引き算」「足し算」「掛け算」のDX方程式で成功を導く

先ほど、紹介した2事例の図版に「ー」「+」「×」という記号が表示されていたことにお気付きでしょうか。これは私たちがDXの実践および支援を通じて導き出した持続的成果を生み出すための「引き算」「足し算」「掛け算」からなる『DX方程式』です。

「引き算」とは、コミュニケーションコストや集客コスト、顧客対応コストの削減や運用合理化、在庫ロス低減などマーケコストの削減・代替を生み出す取り組みを指します。「足し算」は、アップセル・クロスセルの向上、顧客単価の拡大などLTV(生涯収益)の増大を導く施策です。「掛け算」は、「引き算」と「足し算」で得られた技術・価値を、他事業や他企業に展開して収益を増幅させる効果を生み出す取り組みです。この「引き算」「足し算」「掛け算」からなるDX方程式は、業界によって代入する値が異なるので、シナリオは業界別に策定する必要があります。

我々がDXを支援する際には、まず「引き算」からはじまるシナリオをお勧めしています。とかく経営者は、目に見えて成果がわかる「掛け算」から始めたがりますが、事業担当者がDXを始める場合は、コスト削減といったわかりやすい成果を出せる「引き算」からがベストです。

ここで、契約型サービスを例に「引き算」から始めるシナリオを考えてみましょう。契約型サービスとは、保険業界などディーラーがセールスを展開するビジネスのことです。この業態は、コロナ禍で対面型からオンラインへセールスへの移行が進みました。その変化に合わせ、予約、カタログ、保険金算出シミュレータ、見積などがオンライン化され、ユーザーの利便性が増し、利用機会が増えました。これが「引き算」の効果です。さらに、その商談内容をAIボイスレコーダーで録音・解析し、学習させれば成約率向上につながる「足し算」の効果を生み出せます。そうしてつくりあげたスキームを他事業所や他業態に展開し、営業利益を高めてプログラム化や人財研修まで拡げるのが「掛け算」の成果です。

「引き算」からはじめる理由は、コスト削減などわかりやすい効果を出せるからだけではありません。まずはデータを蓄積しないと「足し算」や「掛け算」で価値を生みだせないからです。先に挙げた例のように、デジタルを活用して非対面型商談に取り組めば、商談や契約の内容をデータとして蓄積することができます。そのデータを分析すれば、顧客別の有効なセールスシナリオを導き出し、商談単価の向上につなげられる条件が揃います。ですから、まず「引き算」から入ってデータを蓄積し、次のステップへ進んでさらにデータを蓄積する、それを繰り返しながらDXの火を大きくしていくことが、持続的な成果を生み出すためのストーリーとなるのです。


高速でPDCAを回せるチームづくりがDX成功のポイント

続いてご紹介するのは「マネジメントのCHANGE」です。このフェーズでは「地道に成果を出し続けるチーム」をつくることが目標になります。

「マネジメントのCHANGE」に取り組む場合、確実に達成可能な成果を設定することが重要です。そのための施策を計画・実行し、収集したデータを分析して軌道修正しながら、次のステップへつなげます。このPDCAを高速で回すチームの組成が、DX成功の肝といえます。チームの構成は、全体管理をするプロジェクトマネジャーの配下にマーケティングやデータ設計・業務設計を担うプランナーを配置し、その下でフロントエンド、バックエンド、インフラのエンジニアがオペレーションを支える施策実行部隊を配置します。さらに、その施策に対しデータ分析を駆使して軌道修正するデータアナリストやデジタルオペレーターによる部隊が支える形をとります。メンバーは社内にとどまらず社外のリソースも活用し、継続的に知見を蓄積していける体制をつくります。

チーム運営のポイントは、3つあります。
第1に「チームをサイロ化させないこと」です。そのためには、マーケ/IT/顧客対応の各部門が連携して必要なスキルセットを統合することが必要です。
第2に「DXを失敗で終わらせないこと」です。テレビドラマに「私失敗しないので」とのセリフで有名な主人公がいますが、DXを失敗させないためには、しっかりデータを収集・分析して軌道修正しながら、全員参加で小さな成功体験を積み上げることが重要です。
第3のポイントは「無理して自力で乗り切ろうとするのは毒」です。自走でがんばり過ぎてPDCAを高速に回せず1、2回転で終わってしまった企業を、私たちは数多く見てきました。無理して自力で乗り切ろうとするのは“毒”というのが、私たちの経験から導き出した答えです。DXは長期に渡る大仕事になりますから、「何があっても逃げ出さない会社」をパートナーに選ぶことが、チーム運用における最大のポイントだと、お考えください。

本日は、技術導入から始まるDXの火を消さないために持続的成果を生み出すシナリオづくりと、それをもとに、地道に成果を出し続けるチームづくりを進めることの重要性について、お話しいたしました。これからは、皆様の“CHANGE”に役立つヒントになりましたら幸いです。

【参考】



2021.12.03