コラム

表面加工を駆使した印刷物って?
実際に見てみたくなる15種の表面加工を紹介!

  • TOPPAN CREATIVE 編集部

紙にインクを乗せて定着させる印刷技術のひとつに、印刷した上からさらに加工して風合いを変えたり、新たな機能を追加したりできる表面加工があります。本記事では、表面加工の役割やデザイン効果、表面加工の種類について解説します。

また、さらに進化した表面加工技術として、見た目だけでなく触感もリアルに楽しめ、サステナブルな商品開発にも貢献する「リアルテクスチャ®」についても、開発者へのインタビューをまじえながらご紹介します。



この記事でわかること

1. 表面加工とは
2. 表面加工の種類
《表面をコーティングする加工》
―OPニス
―UVニス
―箔押し
―ホログラム
―ニス+箔+ホログラム
―PP貼り
―PET貼り
―ビニール引き
―プレスコート
―LCコート
《表面の質感を変化させる加工》
―疑似エンボス
―UV立体インクジェット
―フロッキー
―エンボス・デボス
―ちぢみ印刷
3. 新しい表面加工「リアルテクスチャ®」とは
―リアルテクスチャ®で再現できる素材
―リアルテクスチャ®の価格
―リアルテクスチャ®による業務削減効果
4. 表面加工のまとめ


表面加工とは

表面加工とは、印刷した部分にさらに、ニスやフィルム、特殊なインク、薬剤などを重ね刷りする加工技術を指します。表面加工により、デザイン面において付加価値を高める効果と、印刷面の保護機能を強化する効果が期待できます。

デザイン的な効果としては、つやを出したり、逆につやを消してマットにして、印刷面の美しさを引き出すことができます。また、局所的なホログラムや箔押しで彩りや高級感を加えたり、圧力を加えた印刷で表面にでこぼこをつけ、見栄えや触感を変えたりすることも可能です。

印刷面の保護機能としては、インクがこすれて色移りしたり汚れたりするのを防ぐほか、紙の強度を上げる効果もあります。さらに特殊なインクを使用すれば、抗菌効果や紫外線への耐性を付与することもできます。

表面加工の種類

表面加工には、大きく分けて2つの種類があります。1つはニスやフィルムなどで表面をコーティングする加工。もう1つは、表面の質感を変化させる加工です。それぞれ具体的な例を挙げてみていきましょう。


《表面をコーティングする加工》

OPニス

オーバープリントニス(OPニス)は、印刷後に同じ印刷ラインで、通常のインク同様に油性溶剤(ニス)を刷る加工技術です。ニスには、つやを付けるグロスニスと、つやを消すマットニスがあります。スポット的に使用することも可能で、印刷機をそのまま使えるため納期も短く、コストを抑えることができます。
一方、皮膜層が薄いため、ある程度の色移りや剥がれを防ぐ効果はありますが、保護力はそれほどありません。

UVニス

UVニスは量の調整が可能で、OPニスよりも皮膜を厚くすることができます。また、紫外線をあてて硬化させることができるため、加工の幅が広がります。

箔押し

箔押しはホットスタンプとも呼ばれ、印刷物と金型の間に箔を敷いて熱と圧力を加え、スタンプを押すように紋様を転写させる加工技術です。
箔の種類により、金や銀など金属の光沢感を表現することができます。顔料の箔やホログラム、パールや透明など様々な種類があるのも箔の魅力。
制限としては、小さな面積(スポット)で加工するのがおすすめ、ということ。箔の面積が広くなると転写する際に空気が入ってムラや穴ができたり、箔を定着させる圧力が強くなり、きれいに仕上がらない可能性があるためです。
写真は「ブリリアント箔」という、箔押しの中でもさらに特別な加工をしているもの。箔に微細なエンボスと印刷をプラスすることで、箔の多色化、箔のグラデーションを表現、唯一無二の輝きを生み出しています。見る角度によってオーロラのような色変化を起こす特殊加工・印刷です。

ホログラム

印刷物の表面にニスを塗布し、その上に模様・柄のフィルムを圧着、紫外線照射を行った後フィルムを剥がすと、ニスにフィルムの模様が写し取られます。その模様に光が当たると乱反射してキラキラと多色に輝くのが、ホログラムです。
写真は、ニスを厚く盛った部分だけにホログラムが転写されるという加工技術。ゆらゆらと、ヴェールのようにホログラムを纏うビジュアルから「ヴェールホログラム」と名づけました。幾通りにも輝く偏光感を表現します。

ニス+箔+ホログラム

こちらも「ヴェールホログラム」と同じく、厚盛のニスを乗せた部分にだけホログラムが転写されるという加工技術に、さらに金と銀の箔もプラスしているものです。このギラギラしたビジュアルから「豪華厚盛」と名づけています。
表面の質感もぽこぽこと立体感があり、思わず触りたくなる仕上りです。透明ニス、金銀箔、ホログラムをたっぷり重ねた厚盛加工で、高級感とオリジナリティを表現できます。

PP貼り

PP貼りは、印刷物に接着剤を塗布し、ポリプロピレンのフィルムを圧着して貼り合わせるラミネート加工技術のひとつです。フィルムの種類や厚みを変えることで耐久性、耐熱性、防湿性など保護機能を強化することができます。
フィルムの種類により、グロス(光沢)、マット(つや消し)、ベルベット(シルク調の手触り)、ホログラム(光の当たり方で7色に変化)、和紙(和紙の風合い)と、デザイン的にも特徴を出すことができます。
一方、コストは割高で、印刷物の色味は変わりやすくなります。また、古紙リサイクルの際には紙とポリプロピレンを分別する必要があります。

PET貼り

PET貼りは、PP貼りと同じラミネート加工の一種で、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを圧着する加工技術です。PPフィルムと同じくらいの厚みでさらに強度があるため、より強い光沢が出ます。厚みのあるPETフィルムを使うと下敷きのような加工も可能です。

PETフィルムはPPフィルムより接着性がよく、紙以外のものへの加工にも利用しやすい特徴があります。コストが割高で色調の管理が難しく分別が必要なのはPP貼りと同じです。

ビニール引き

ビニール引きは、塩化ビニール系合成樹脂と速乾性ニスを混合した液を印刷面に塗布し、熱で溶剤を蒸発させることで定着させる加工技術です。ニス引きよりは強度が高く、比較的安価な加工方法です。

つやを出すグロスとつや消しのマットがあります。特にマットビニールによる加工は、ニスよりも質感がよくなります。表面に塗布するタイプの加工のため、用紙がでこぼこしすぎていると加工に向きません。

プレスコート

プレスコートは、熱で硬化するアクリル樹脂を塗布し、高温でプレスして光沢を出す加工技術です。ニス引きよりはコストが上がりますが、強度のある鏡面光沢仕上げとなり、高級感が増します。部分的な加工も可能です。強い光沢が得られる一方、色の濃度が上がりやすく、厳密な色調を求める印刷物への使用には注意が必要です。

LCコート

LCコートは、樹脂を表面に塗布した上からフィルムを使って転写する技術です。プレスコートとよく比較されますが、こちらはグロス、マットのほか、ホログラムなども加工でき、プレスコート単独より強度も上がります。


《表面の質感を変化させる加工》

疑似エンボス

疑似エンボスは、エンボス加工の特徴であるデコボコした立体感を印刷で再現する加工技術です。ザラザラとした質感やエンボスの浮き出た雰囲気をつくります。そのしくみは、2種類のニス(OPニスとUVニス)の特徴を利用したものです。
UVニスは、光沢感のあるつやつやした質感のニス、紫外線(UV)の照射によって瞬時に硬化します。OPニスはUVニスをはじく性質があるため、OPニスによってはじかれたUVニスは粒状に盛り上がり、擦りガラスのようなザラザラした質感となるのです。
この反応を活かして、さまざまな立体感や触感を表現することができます。ニス加工特有の色調の変化もあり、光の当たり具合によってデザインや色の変化を楽しむことができます。

UV立体インクジェット

紫外線でインクを硬化させ、幾重にも重ねることで表面に立体的で豊かな造形を施しました。この写真では、色がある部分に20回以上インキを重ねて表面を盛り上げています。触るとボコボコと立体的になっていて、目を惹く表面加工です。

フロッキー

「ふわふわ、もこもこ、ふさふさ」など、指先で感じる「手触り」を演出できるのがフロッキー加工。フロック[flock]でヒツジ・ヤギなどの群れ、フロッキー[flocky]で「羊毛状の~」という意味があります。

印刷した上からシルクスクリーン印刷によって接着剤を塗布、接着剤がある部分にのみパイルを垂直に植え込む加工技術です。フロッキー=植毛とも呼ばれています。
接着剤部分はシルク印刷なので、デザイン的な自由度が高くさまざまな図案表現が可能です。さらに、パイルの密度や長さをアレンジすることで、フェルトのような質感、芝生のような手触り、ベルベットのような高級感など、さまざまな質感を表現できるのもワクワクするポイントです。

エンボス・デボス

エンボス加工は、表面に彫刻を施した凹版と凸版の金型(樹脂や木型もあります)の間に紙を通し、圧を加えて模様を立体的に浮き上がらせる加工技術です。エンボスは浮き上がって見える加工を指し、へこんで見える加工はデボスといいます(写真はエンボス加工)。全体的にも部分的にもさまざまな紋様をつけることができます。

紋様に物理的な奥行きができ立体的なデザインとなるため、格調高い特別感が出せるほか、紙そのものに凹凸があるため視覚障害をもつ方が触読しやすく、点字や触察の加工としても用いられます。

ちぢみ印刷

ちぢみ印刷は、透明の専用UVインクをシルクスクリーンで印刷し、波長の異なるUV照射機を当てることでインクを収縮させ、細かなでこぼこのしわをランダムにつくりだす加工技術です。
透明のインクを使うため、下地となる印刷面はそのままに、しわの寄り具合で、独特の視覚効果や触感の変化をつけることができます。インクやUV照射機の組み合わせにより、ちりめん布のような紋様、和紙や皮のような風合い、水紋や石、雪とさまざまな質感を出すことができます。


表面加工を駆使した印刷物をつくれる!「リアルテクスチャ®」

印刷面に重ねる表面加工の可能性を最大限に引き出し、リアルな見た目と触り心地を再現するTOPPAN独自の印刷技術「リアルテクスチャ®」の加工技術をご紹介しましょう。

リアルテクスチャ®は、シルクスクリーン加工の一種。印刷でありながら、まるで現物が貼り付けてあるような立体感と触感をつくりだす表面加工です。

立体感をそのまま再現する高精細スキャニングと、プロによる写真の画像補正や色彩加工などの、製版技術により、陰影や奥行きなどのリアルさをより強く打ち出すことができます。

また表面のテクスチャ(質感)に合わせた高度なシルクスクリーン印刷技術でインクを何層にも盛り上げ、現物を触っているような立体的な感覚を生み出しています。

ここからは、新しい質感で感動をもたらす印刷技術リアルテクスチャ®を世に送り出しているTOPPANの担当者であるお二人に、どのような素材が再現できるのかなど、具体的な活用ポイントを伺いました。

リアルテクスチャ®で再現できる素材

リアルテクスチャ®の技術が実用化したきっかけは、建材メーカーの見本帳でした。現物の建材を貼り付けた見本帳は重くて持ち運びが大変ですし、ひとつひとつ貼り付けて作る手間もかかり、品番を間違えて貼ってしまう可能性もあります。軽い印刷物で現物さながらの質感をプレゼンできるリアルテクスチャ®は、営業マンにとって夢のような技術でした。



リアルテクスチャ®を用いて、これまでに建材メーカーとさまざまな質感を再現してきました。石やコンクリート、石膏、タイル、金属のような硬い素材のほか、木やコルク、葉などの植物、爬虫類や動物の皮、肌のしわ、畳や土など、たいていのものは本物さながらの見た目と触感を体験いただけます。布素材の場合、ふわふわした柔らかさは表現しにくいですが、デニムやカーペット、織物などは十分再現できます。

リアルテクスチャ®の価格

リアルテクスチャ®を支えているのは、スキャニング、製版技術、印刷技術の3つの柱です。
まず、立体をそのまま写し取る高精細立体スキャンの技術で、現物の陰影や奥行きをしっかりと取り込みます。
そして、色調管理プロフェッショナルであるプリンティングディレクターが長年培った写真製版技術でリアル感をより際立たせるカラー調整を行い、高精度な画像の印刷を行います。
さらに、印刷面の上に素材のテクスチャに合わせた触感をもたらすシルク版を何層も重ねて、立体的に盛り上げます。こうして、さながら現物が貼り付けられたような立体の触感をつくりだすのです。表面が立体的になると見た目にも変化が出ます。繊細な色合わせと触感合わせを何度も行いながらテクスチャをつくり込んでいきます。

専門のプリンティングディレクターがつき、上記のような精度の高い印刷を行うため、制作期間は通常の印刷よりも長くなり、価格は高額となります。パッケージなどの場合、採用する素材や型抜き加工の状況にもよりますが、5000部の制作で2~3カ月、1点あたり数百円から1,000円といったところでしょうか。再現する素材のサイズ、質感、種類によってかなり幅があります。まずはお話をお聞かせいただければ具体的なご提案ができます。お気軽に何でもご相談ください。


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リアルテクスチャ®による業務削減効果

リアルテクスチャ®の大きな特長は、紙の印刷物ならではの扱いやすさです。

例えばパッケージの場合だと、1点1点に現物を貼り付けるのは相当な手間がかかりますし、皮や木目など素材の中で見栄え良く使える部分が限られてしまうものは、使えない部分が大量に出てしまいます。

その点リアルテクスチャ®は、スキャンした後で必要な範囲をトリミングし、印刷で大量生産できるため、無駄がありません。

それに、紙なので軽くて薄い。一度手に持つと実感していただけるのですが、素材の質感や触感のイメージからするとびっくりするくらいの軽さです。パッケージに採用すれば、見た目で重厚さを出しつつ、現物を使うより輸送コストを大幅に削減できるはずです。

もうひとつ大きなメリットがあります。基本的に、印刷物は古紙として処分が可能ですよね?リアルテクスチャ®も、可燃ごみに分類されることがほとんど。現物を貼り込んだ見本帳だと、不燃ごみや産業廃棄物になってしまいます。リアルテクスチャ®は環境に優しく、近年注目されている表面加工の技術なのです。



表面加工のまとめ

ご担当者のお二人にお話を伺い、改めて印刷物の表面に施される加工技術の進化に驚かされました。

表面加工は、印刷面の保護や強度アップといった機能面だけでなく、光沢や風合いを加味して印刷を引き立てて商品の付加価値を高めるため、様々な加工技術でグラフィックデザインを支えてきました。リアルテクスチャ®の技術はその頂点ともいえるでしょう。

見た目だけでなく手触りまで本物の質感を表現しつつ、サステナブルな資源保護にも貢献する次世代の加工技術、リアルテクスチャ®。TOPPANは究極のリアルを追求し、商品の付加価値を高める技術を開発しています。

リアルテクスチャ®のサンプル帳もご用意がありますので、ぜひ実際に手にとって、その質感を目で、指で、確かめてみてください。


2023.05.11

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