コラム

デジタルアーカイブの活用事例!
図書館・美術館・企業などでどう活用されているのか

  • TOPPAN CREATIVE編集部

デジタルアーカイブは、文書、美術品、文化財といった知的財産を、デジタルデータとして蓄積したうえで、インターネットを用いた検索、出力を可能にし、持続的な活用を目指すものです。
デジタルアーカイブの対象は文字や画像に限らず、建築物や立像、彫刻などの立体物、芸能や技能といったものも含まれます。
本コラムでは、デジタルアーカイブが具体的にどのように活用されているのか、図書館や博物館、美術館などの事例でご紹介します。



デジタルアーカイブの活用事例

デジタルアーカイブには、図書館や博物館などが所有する資料や文化財のほか、公的機関が保有する公文書や記録、企業や地域で受け継がれてきている歴史的資料など、多くの知的財産があります。


国会図書館

国立国会図書館では、所蔵する資料のデジタル化を進め「国立国会図書館デジタルコレクション」で公開しています。サイトには、デジタル化された資料約311万点と、電子書籍・電子雑誌約150万点(2022年12月時点)が収録され、全文検索が可能な資料も約247万点あります。
また、国立国会図書館では、さまざまなジャンルの他のデジタルアーカイブと連携して横断的に検索できる分野横断型統合ポータルサイト「ジャパンサーチ」を運用しています。書籍、公文書、文化財、美術、人文学、自然史/理工学、学術資産、放送番組、映画など、分野が広く網羅されています。


国立公文書館

国立公文書館では、「国立公文書館デジタルアーカイブ」を運用しています。「いつでも・どこでも・だれでも・自由に・無料で」活用できるよう、行政文書や四方文書などの公文書、法人文書、重要文化財の公文書や国絵図、和書、漢書、大判資料、巻物などを、高精細のデジタル画像でアーカイブ化しました。
閲覧できるだけでなく、デジタル画像と解説をセットにして印刷したり、高精細デジタル画像をダウンロードしたりして利用可能です。
資料は、キーワード検索だけでなく、省庁組織変遷図からの検索、大政類典(慶応から明治までの時代の典礼条規)からの検索、他の資料館などとの横断検索も可能です。


鎌倉大仏高徳院

高徳院銅造阿弥陀如来坐像(鎌倉大仏)は、13mを超える高さのある銅像です。鎌倉時代に建立された大仏像は、1959~61年に昭和の大修理が行われ、頸部の修理・補強と免震処置が施されました。
2015~16年に行われた保存修復調査は、55年を経ての一大プロジェクトとなり、損傷の記録、化学的状態調査、耐震などの保存修理が行われ、あわせて、修復調査の技法や修復前後の状態の変化を数cm単位で可視化できるよう撮影を行いました。
デジタルアーカイブ化は、天候や環境光の影響がないようストロボ光を使い夜間に撮影を敢行。1アングルで最大224枚の分割撮影を行って合成するなど、20億画素のデジタルカメラに相当する高精細での撮影データを収集しました。


「高精細デジタルアーカイブサービス」

すみだ北斎美術館

すみだ北斎美術館は、墨田区ゆかりの浮世絵師、葛飾北斎の画業を紹介し、日本の伝統芸能の魅力をさまざまな切り口から発信している美術館です。
同美術館の「すみだ北斎美術館イメージアーカイブ」では、有名な「富嶽三十六景」をはじめ、高精細画像データでアーカイブされた国際的な所蔵品を、自由に検索、利用することができます。
所蔵品のひとつ「道成寺図」の修復事業では、最新のデジタルカメラで撮影された高精細デジタルデータをもとに、プリマグラフィと呼ばれる吹付け技法を用いた繊細なアート印刷技術を使って複製画を制作。オリジナルと同じ軸層を施し、特別展の前半にオリジナルを、後半に複製画を展示するという試みも行われました。


静岡県立美術館

静岡県立美術館では、モネやゴーギャン、狩野探幽や歌川広重、伊藤若冲、横山大観、佐伯祐三など、時代を担った画家たちの作品を数多く所蔵しています。また、ロダン以降の近代彫刻作品も豊富に揃っています。
ロダンの彫刻「地獄の門」と、江戸時代中期に活躍した池大雅の「蘭亭曲水・龍山勝会図屏風」の2作品は、分割による高解像度のデジタルデータでアーカイブされています。大きく拡大してもくっきりと美しく、また彫刻作品は3D加工により、さまざまな角度から鑑賞できるVR(バーチャルリアリティ)資料として公開されています。


公益財団法人塩事業センター

塩事業センターでは、日本の塩づくりの歴史を後世に広く伝えていくため、海水総合研究所の中に「塩業資料室」を設置し、塩の事業に関する資料を公開しています。2017年から本格的なデジタルアーカイブ化への取り組みを始め、歴史的に貴重な過去の資料を順次アーカイブ化し、公開しています。
100年以上も前に刊行された『大日本塩業全書』のアーカイブでは、本編4冊と各編別冊の『附図』全8冊をデジタル化しました。1冊が1,000ページほどもある厚い書籍で、書物をいちど解体して1枚ずつ撮影していき、データ容量にも配慮しながらデータ化しています。再製本は破損していた箇所の補強修復なども取り入れながら行いました。


独立法人日本スポーツ振興センター

独立法人日本スポーツ振興センターでは、高度成長期を象徴する旧国立競技場を、新しく建て替えられる間にアーカイブするプロジェクトを進めました。
競技場をはじめ、貴賓室、トレーニング場などのを立体的に記録するため、360度の方向にレーザーを飛ばす三次元計測や、GPSを使った測量などを行い、正確な位置情報をデータ化しました。また、高精細な写真撮影により色や質感などを記録したほか、長く人々の思い出に残るようイメージカットも残しました。
デジタルアーカイブが、取り壊される運命をもつ文化財である大型建築物を後世に残すための重要な手法として、またVRやインタラクティブコンテンツなど未来のコンテンツにも活用できることが示されました。


「高精細デジタルアーカイブサービス」

国立映画アーカイブ

「国立映画アーカイブ」は、1952年に設置された国立近代美術館の映画事業からスタートし、2018年に現在の形となりました。
所蔵フィルムは、日本の劇映画、文化・記録映画、アニメ、ニュース、テレビ用映画が計約7万5,000本、外国のものが約1万本、関連資料は和洋書・シナリオが約10万点、ポスター約6万1,000点、スチール写真約77万点、プレス資料約7万9,000点など、多くの映画に関するデータがアーカイブされています。
フィルムに劣化や損傷がみられるもの、希少性が高いもの、可燃性のものなどは、複製作業を行い長期保管を図っています。また、芸術的・歴史的・資料的に価値のあるフィルムは、高度な技術によりデジタル復元を行っています。


立命館大学ゲーム研究センター

立命館大学ゲーム研究センターは、ゲーム分野で日本唯一の学術機関として、2011年に設置されました。伝統的な遊具から玩具、最新のテクノロジーをもつビデオゲームまで、ゲームと遊びに関する情報を幅広く収集し、文化資源としてアーカイブ化する取り組みが進められています。
2019年には、収集された1万4,000点以上のゲームと関連資料が誰でも検索・閲覧可能な「RCGSコレクション」を立ち上げました。データは、ビデオゲームの書誌(パッケージ、関連資料)と典拠(作品、バリエーション、団体、個人)の情報の別に検索することができます。


NHK

NHKでは、番組やニュースの音声や映像のほか、台本、制作に関する記録や素材、番組表など、ラジオ・テレビの創成期から現在にいたるまでの、放送に関するさまざまな記録や資料を保管施設で管理しています。
古くて劣化したり破損したりしている音声や映像、消失の危険がある歴史的に貴重な証言などは、高度なデジタル技術を使って修復したうえで、最新のデジタルシステムでアーカイブ化し、一元的にデジタル管理しています。
一般に公開されているサイト「NHKアーカイブス」では、番組、ニュース、人物、地域、時代、戦争、災害などのテーマで整理された約2万9,000本の映像がいつでも視聴できるようになっています。



デジタルアーカイブの活用事例まとめ

デジタルアーカイブは、文化や芸術、史跡、伝統行事、技能などを、高精細な画像や映像、音声など、さまざまなメディアの情報にして多角的に保管し、長く残していくための最先端の仕組みです。
アーカイブ化されたデータは、技術やノウハウ、文化を長く残す手段として、また、多彩な加工や編集を加えて新たな事業展開をもたらす礎として、活用の可能性を秘めています。
また、デジタルアーカイブの作成には、高解像度の撮影など精細なデータ化と、横断検索しやすい情報の整理、安全で安定した管理技術が欠かせません。
TOPPANでは、貴重な資料の保存や修復、高精細な記録を行う専門スタッフによるデジタル化、データベース構築、データの活用、現資料の保管、複製・復元、展示まで、トータルにサポートします。お気軽にお問い合わせください。

2024.05.23

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