コラム

企業にとってのデジタルアーカイブとは?
活用方法・事例を紹介

  • TOPPAN CREATIVE編集部

デジタルアーカイブは、一般企業での利用にも注目が集まっています。
貴重な資料をデジタル化し、新たな活用の基礎として管理するデジタルアーカイブは、社史や理念の浸透、知財やノウハウの共有、業務の効率化、BCP対応など、企業においてもさまざまな目的で活用されています。
本コラムでは、企業がデジタルアーカイブを活用するメリットを解説するとともに、具体的な企業の活用事例を紹介します。
加えて、一般企業がデジタルアーカイブを構築する際にかかる費用についても触れています。今後デジタルアーカイブの構築を検討している方は、ぜひ参考にしてください。



企業のデジタルアーカイブ活用目的

はじめに、企業がデジタルアーカイブを利用する場合のメリットについて、目的別にみていきましょう。

社内ノウハウの蓄積・共有

デジタルアーカイブは、社内に散逸するさまざまな資料をデジタル情報に落とし込み、データベースで整理・保管して活用できるようにする仕組みです。いつでも・誰でも・どこからでもアクセスして情報共有できるため、社内の業務効率化に役立ちます。
また、データとなった情報は長期にわたり保存・活用できるため、ノウハウを次世代へ受け継いでいくことも容易です。さらには、それまで属人的な暗黙知として継承が困難とされた「熟練の技」や「経験」、「勘」なども、音声や映像など多様な形で記録に残し、形式知化されたデータにすることで、蓄積・活用の拡大ができます。
アーカイブされたデジタルデータは、横断的な検索で効率よく情報収集することができます。自力では探しきれないような関連情報も参照できるようになり、新たな企画・開発を促す苗床としても期待されます。

BCP(事業継続計画)の一環として

電子化されたデータは、保存・複製を繰り返しても劣化することはありません。このため、情報の原資料の保全に役立ちます。また、検索性に優れている点や、インターネット上のどこからでも閲覧・保存ができるため、紙文書などの物理的資料よりも効率的に管理可能です。
たとえば、災害に見舞われて原資料が破損・散逸する事態になっても、デジタルアーカイブが構築されていれば、普段と変わらず業務を続けることができます。単純なバックアップはデータの復旧が主目的ですが、アーカイブは普段から網羅的な情報を体系化し活用することを意図して構築されているため、より積極的な事業継続対策といえるでしょう。

企業アーカイブの構築

企業の歴史や経営理念、行動指針などの社内文化をアーカイブに残し、世代を超えて共有することも可能です。
たとえば、創業時から現在までの写真や映像、歴代トップやゆかりの人の書簡、社内報、商品開発記録、販促のポスターやチラシ、テレビ・ラジオのCMなど、創業から培ってきたさまざまな物事をデータ化し、活用することができます。

企業ブランディング

高品質のデジタルデータになった情報は、加工を施した複製を作り、さまざまな形態へアウトプットして二次活用することができます。
ひとつのコンテンツを共通のデザインにして、紙やその他の素材へ印刷して制作物を展開したり、Webサイト、電子書籍、静止画、動画などのデジタルコンテンツにしたりと、複数のメディアでアーカイブを体系的に活用することにより、企業ブランディングの強化につながります。


企業のデジタルアーカイブ活用事例

ここからは、いくつかの企業におけるデジタルアーカイブの活用事例を見ていきましょう。

コカ・コーラ

コカ・コーラ社では、1939年から企業の歴史的資料や物品、看板などを収集するアーカイブ倉庫を設立、翌1940年には、資料の編さんや管理を専門的に行う「アーキビスト」を配置するなど、早くからアーカイブ事業を開始しました。
企業や製品の歴史を、ブランドの強みやマーケティングツールとして捉え、積極的に歴史的資料の収集・管理を行っています。
近年は特にデジタルアーカイブに力を入れ、直近50年のボトルやポスターなど約2万5,000点にも及ぶ膨大な資料をデータとして復元し、カタログ化することで自由に変遷をたどることができるようになっています。

パナソニック

パナソニック(旧松下電器産業)における企業アーカイブの取り組みは、1961年から開始されました。1968年には50周年を記念した「松下幸之助歴史館」を設立。1976年には、社長直轄の恒久的部門として社史室も設置され、創業者事業観の探究、創業者精神の周知、社史に関する史料の保存管理などの取り組みが進められてきました。
2018年に、創業100周年を記念し「パナソニックミュージアム」が開館。史料のデジタルアーカイブ化が進み、企画展やオンライン番組なども展開しています。


NHK

NHK(日本放送協会)では、1925年から始まったラジオ放送、1953年から始まったテレビ放送の番組やニュース、台本、制作に関する記録や素材、番組表などを整理し、保管施設で管理する仕組み「NHKアーカイブス」を構築しました。
NHKアーカイブスのサイトでは、番組、ニュース、人物、地域、時代、戦争、災害などのテーマで整理された約2万9,000本の映像がいつでも視聴できるようになっています。中には貴重な古い映像や証言も多く、経年劣化した音声や映像はデジタル技術を使って修復されています。


TOPPAN

TOPPANでは、1987年に印刷業に関する歴史を集約した「印刷史料館」を開設。1991年に「日本のポスター100」、1995年には「欧米のポスター100」の収集と復刻を行うなど、印刷文化の保全を行ってきました。創業100周年の2000年には、印刷史料館を発展させた「印刷博物館」を開設。また、印刷とコミュニケーションに関する事象をまとめた『印刷博物誌』を刊行しました。
2016年からは特にデジタルアーカイブに力を入れ、資料調査、アーカイブ設計、データベースなど環境構築、資料へのナンバリング、撮影、登録、原資料の収納と、デジタルアーカイブ構築を進めています。


一般企業のデジタルアーカイブの構築にかかる費用

専門業者に依頼した場合の費用については、資料の点数にもよりますが、初期費用でシステム構築時には数百万円、その後の持続的な運営では、月額数万~十数万円が目安になるでしょう。見積細目を確認し、自社に必要なアーカイブの企画を行うようにしてください。
デジタルアーカイブは、単にスキャニングしてデータを蓄積させればよいわけでなく、データを効果的に活用できる仕組みにしていく必要があります。
このため、デジタル化からシステム登録、持続的な運用体系の整備まで、一連の作業を専門に取り扱う事業者へ委託して実施することをおすすめします。
アーカイブに向けたヒアリングをしっかり行って思いを汲み取り、企画から計画作成、実際の作業管理まですべてを任せられるプランで見積を依頼するとよいでしょう。


企業のデジタルアーカイブまとめ

企業におけるデジタルアーカイブは、社内ノウハウや文化の蓄積と共有、事業継続計画、企業ブランディングなど、さまざまな目的に役立てることができます。
また、アーカイブされたデータは、書籍や販促物、Webサイト、デジタルサイネージなどの各種メディアに展開することにより、広範囲への活用が期待できます。
デジタルアーカイブの利点を最大限に引き上げるには、高精細なデータ化と活用しやすい情報整理、安全で安定した保管の技術が欠かせません。
TOPPANでは、デジタルアーカイブに専門的に取り組むスタッフが、企業の活用目的に合わせたシステム構築をトータルサポートします。お気軽にお問い合わせください。

2023.02.17

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