デジタルアーカイブとは?
定義や役割、メリットを紹介
- TOPPAN CREATIVE編集部
高解像度のスキャニングや色調補正などのデジタル技術の発展と、大容量の通信を可能にしたICT技術の進展により、以前ではデジタル化に不向きとされた資料なども高品質のデジタルデータとして活用することが可能になりました。「デジタルアーカイブ」は、現在、高度な知的財産の保管・活用方法として大きな注目を集めています。
本コラムでは、デジタルアーカイブの概要や必要性、メリットについて解説します。
デジタルアーカイブとは何か
はじめに、デジタルアーカイブとはどのようなものなのかをみていきましょう。
デジタルアーカイブの意味・定義
デジタルアーカイブは「デジタル技術を駆使した記録と保管」を指します。
デジタルアーカイブでは、記録や出版物、芸術、文化財といった知的財産を、音声、画像、映像などのデジタルデータにして保存・加工が可能なものにします。さらにはICT技術を用いて知的財産として蓄積・統合・整理し、ネットワーク通信技術を活用した検索・出力で持続的に活用することもできます。
デジタル化させる知的財産は、文字情報やビジュアル情報に限りません。建築物や立像、彫刻などの大型立体物も対象です。図書館や博物館など文化施設の所有する資料や文化財のほか、自治体をはじめとした公的機関が保有する公文書や記録、企業や一般家庭で受け継がれてきている歴史的資料などがあります。
データベースとの違い
デジタルアーカイブは、単純に原資料をデジタル化してデータを溜めていくデータベースとは異なり、溜まったデータを検索可能な状態に整理するため、生きたデータとして活用することが可能です。
そのためデジタルアーカイブでは、「検索できる」「世界中からそのデータへアクセスし閲覧できる」「データをダウンロードして編集・加工できる」といった状態を提供していく必要があります。
データの検索性を高めるためには、ジャンル別の構造化や使いやすいメタデータの整理などと同時に、いつでも・どこからでもアクセスして閲覧でき、閲覧や保存が可能となるデータ管理も重要です。
以前は多くのデータベースシステムが独立型のサーバで構築され、設置・運用のコストが大きかったのですが、現在はクラウド型のものも多くなり、デジタルアーカイブに取り組みやすくなりました。
世界的にデジタルアーカイブ化が進んでいる
デジタルアーカイブの特徴である「誰でも・どこからでも自由に使える」データは、情報公開が重要なポイントとなるため、国レベルでの取り組みが多く見られます。欧米では、欧州連合(EU)の Europeana、米国の DPLA(Digital Public Library of America)といったデジタルプラットフォームが知られています。
日本では、1994年ごろ、東京大学名誉教授月尾嘉男氏が「デジタルアーカイブ」の概念を提唱し、インターネットの進展とともに徐々に浸透してきました。
デジタルアーカイブの必要性・用途
では、デジタルアーカイブはなぜ必要とされているのでしょうか。ここからは、デジタルアーカイブがどのような目的で活用されるかについて解説します。
伝統的な技術の継承
デジタルデータは、テキストや図表、画像や音声といった多様な情報を統合することができ、さらには保存や複製時に劣化しないという特長があります。
地域固有の伝統的な技術や、組織固有のノウハウ、達人の技法のような、これまで「経験や勘」などと言われて記録が残らなかった属人的な技術・ノウハウなどの暗黙知を、動画などのデータで記録・整理することにより、形式知化して次世代へ継承させていける可能性が高まります。
地域文化の記録
多様な形式のデータを保存する特徴は、地域の風土や文化の記録にも活かすことができます。
産業の振興や戦争、自然災害などで変化していく地域の情景を映像で記録し、文化遺産として保存し、散逸・消滅から守っていくのに役立ちます。また、経年劣化する文化財や美術、伝統芸能などの無形文化財も、記録を残して後世へとつないでいくことができます。
年々劣化していく資料の保護
形あるものはどんなに保存に気をつけていても、色あせ、もろくなり、やがては壊れてなくなります。一方、デジタルデータは、複製を繰り返しても状態が劣化することなく、初めの状態をそのまま保ち続けます。
このため、貴重な原資料をいったんデジタル化し、適切に複製管理しておくことにより、原資料を悪環境にさらす回数を減らし、少しでも長く保存できる可能性が高まります。
また、デジタル技術を活用して色彩を完成直後の頃の状態に復元させるなど、資料の劣化部分を補完したデータの保存も可能です。
デジタルアーカイブのメリット
ここからは、デジタルアーカイブを活用する際のメリットについてみていきましょう。
情報の半永久的な保存が可能になる
原資料をデジタル化し、データを整理することにより、知的資産として長く保存させることができるようになります。
近年では「企業アーカイブ」といって、独自の技術やノウハウをデータ化し、新たなビジネスに活用しようとする動きも出ています。
担当者が変わるたびに消えていた暗黙知を形式知化して情報の蓄積を図ったり、新しい企画を創造する際にアイデアの源として活用したりすることにより、創業時から受け継がれる企業文化を効果的に継承させていくことも可能です。
いつでもどこでも検索が可能になる
デジタルデータをインターネット上で誰もがアクセス可能な状態にしておくことにより、いつでも、どこからでも目当ての情報を検索して手に入れることができます。誰がどこに保管しているかと探し回る手間もいりません。
また、検索ワードで横断的に資料を抽出することができるため、直感や記憶、人づてに探したときにはみつけられない多様な情報を入手することができる可能性もあります。
加工や編集が自由に行える
デジタルデータは、簡単に編集や加工を施すことができます。古い原資料のスキャンデータを元に、劣化する前の色調を復元させたり、破損箇所を補った形にしたり、他の情報を重ね合わせて新しい分析資料を作成したりすることができます。
また、データの形式も、紙面への印刷やWebサイトでの公開、映像、3D、VRなど、さまざまなメディアとミックスさせることが可能で、表現の多様性が広がります。
省コスト・省スペース
情報をデジタル化させることにより、原資料の保管を厳選することができます。紙資料で情報共有や検索性を高めようとすると、複数のコピーを部署ごとに保管する必要があり、保管スペースが問題となるだけでなく、「どれが最新情報なのか」のバージョン管理の手間が発生します。
デジタルアーカイブであれば、情報は整理・統合されて時系列順に管理でき、アクセス・活用しやすくなるだけでなく、最小限の紙資料の保管で済みます。そのため、人手も保管場所も削減でき、大幅にコスト削減を図ることができるでしょう。
インターネットを通じて全世界に共有できる
デジタルアーカイブを作成すれば、情報共有のための環境が一気に整います。時間や場所を問わず、複数のユーザーが同時にアクセスしても情報が劣化することがありませんから、リアルタイムで最新情報を共有しあい、生産性を高めることも可能です。学校や公民館、文化施設などの学習資料として活用することもできるでしょう。
デジタルアーカイブの基礎知識まとめ
デジタルアーカイブは、技術やノウハウ、文化を継承させる高度な知的財産の保管・活用方法として、また、多様なデータ加工・編集技術を活用した新たなビジネス展開の基礎情報として、その活用の可能性に注目が集まっています。
デジタルアーカイブの利点を最大限に引き上げるため必要とされるのが、高精細なデータ化と活用しやすい情報整理、安全で安定した保管の技術です。
TOPPANでは、貴重な資料の保存状態や活用方法などのヒアリング調査から専門スタッフによるデジタル化、データベース構築、データの活用、現資料の保管、複製・復元、展示まで、デジタルアーカイブに関連する一連のプロセスをトータルにサポートします。お気軽にお問い合わせください。
2024.05.21