過剰在庫とは?
リスクと原因・改善策を解説!
予防にはAI需要予測が有効
- マーケティングアナリティクス部
- 横井 里菜
過剰在庫を放っておくと、在庫コストの増加やキャッシュフローの悪化、不良在庫の増加など様々なリスクが生じてきます。変化の激しい市場の中で、常日頃から在庫管理に苦労している方も多いのではないでしょうか。
今回は、過剰在庫の意味や滞留在庫との違い、過剰在庫のリスク、過剰在庫の原因と一時的な改善策、未然に防ぐ方法、AIを活用した需要予測ソリューションの具体例をご紹介します。
<目次>
1. 過剰在庫とは?
2. 過剰在庫のリスク
3. 過剰在庫の原因と一時的な改善策
4. 過剰在庫を未然に防ぐためには?
5. まとめ
1. 過剰在庫とは?
過剰在庫とは、自社の商品や原材料などの在庫量が、実際の市場の需要や販売量に対して多すぎる状態を指します。過剰在庫は企業の収益や資金繰りに直結する大きな問題となるため、適切な在庫管理(適正在庫の維持)が重要とされています。
余剰在庫・滞留在庫との違い
過剰在庫の意味をより深く理解するために、余剰在庫や滞留在庫との違いを知っておきましょう。
・余剰在庫
余剰在庫とは、倉庫などに保管されている商品や原材料の「余り」を指し、過剰在庫とほぼ同じ意味で使われます。
・滞留在庫
過剰在庫や余剰在庫と同様に倉庫に長期間保存されている状態ですが、「今後、売れる見込みがない」という意味合いを含みます。長期間保管されることで、商品の品質劣化、破損、陳腐化が進み、値下げや廃棄処分をせざるを得なくなります。
2. 過剰在庫のリスク
過剰在庫を放置すると、次のリスクが生じることがあります。
収益・キャッシュフローの悪化
商品の仕入れや製造に投じた資金が売れない在庫として倉庫に固定化され、キャッシュフローが悪化します。さらに、保管コストや最終的な値下げ・廃棄による損失が継続的に発生するため、売上総利益や営業利益が圧迫され、企業の収益自体を損ないます。結果として、事業に必要な資金や新規投資に回す資金が不足し、経営活動が停滞してしまいます。
在庫の価値低下
長期間、いくら新品の状態を保っていたとしても、倉庫に過剰に溜められた商品は、時間が経てば市場価値が低下する恐れがあります。特に、品質が低下する商品では早期に価値低下のリスクに直面します。
維持コストの無駄
倉庫に保管するのにもコストがかかります。在庫が多いほどスペース確保や維持管理コストが余分にかかってしまいます。さらに、在庫が増えすぎると、倉庫内の配置が非効率的になり、目的の在庫を探す作業時間が長くなります。結果として、ピッキングや入出庫といった作業効率が低下し、間接的なコストも増加してしまうのです。
3. 過剰在庫の原因と一時的な改善策
過剰在庫はなぜ発生するのでしょうか。その主な原因と、すでに過剰在庫になってしまったときの一時的な改善策をご紹介します。
【原因】
●市場動向の読みの甘さ
自社商品の需要減退や不人気化を正しく捉えられていない、あるいは、競合他社の魅力的な新商品発売や価格攻勢といった動きを軽視・見落すことで、結果として自社製品の売れ行きが急激に鈍化し、在庫が積み上がります。さらに、不買運動や自然災害など予測が難しいネガティブな外部要因が発生した際、需要の急減に対応しきれず、結果として大量の過剰在庫を生み出してしまいます。
●在庫管理の不備・発注や仕入れのミス
在庫管理が整備されていないと、倉庫の正確な在庫数がリアルタイムで把握できないといった情報不足が発生します。この情報不足が発注・仕入れのミスを誘発し、結果として、必要以上の商品が仕入れられ、在庫が恒常的に積み上がってしまいます。
●機会損失の恐れや責任の重圧による多めの仕入れ
注文が入ったにもかかわらず欠品していたという機会損失への恐れや、商品・サービスの顧客への安定供給を果たさなければならないという責任の重圧は、人間の心理として、必要以上の多めの仕入れや生産、在庫確保を招いてしまいます。それが常態化してしまうと、結果として過剰在庫につながってしまいます。
●返品の増加
販売後に思わぬ返品が増えてしまうと、過剰在庫を抱えることになります。
【一時的な対応策】
過剰在庫となってしまった場合、適正在庫に戻すための一時的な対応策として次の方法が挙げられます。
●値下げ販売
過剰在庫となっている商品の価格を下げて販売する方法です。利益は減少しますが、在庫を減らす効果が期待できます。
●専門業者への買い取り依頼
専門業者に買い取ってもらうことも可能です。ただし、買い取られた後は独自の価格で再販されるため、自社のブランド価値が下がるリスクも考慮する必要があります。
●過剰在庫を有効活用したCSR活動
過剰在庫を慈善団体に寄付することは、企業の社会的責任(CSR)活動の一環となります。商品を無駄にせず社会貢献ができると同時に、廃棄コストも削減できるというメリットがあります。
●廃棄
値下げしても売れない場合は、最終的に廃棄処分という選択肢も出てきます。
4. 過剰在庫を未然に防ぐためには?
過剰在庫は一時的に解消するだけではなく、根本的に予防する対策を打つことが重要です。そこで、有効な予防策をご紹介します。
予防策
①需要予測の精度向上
AIを活用することで、将来の商品販売数量を高い精度で予測します。過去の販売実績データに加え、様々な外部データもAIモデルに取り込むことで、より高度な予測が可能となります。こうしたAIモデルの構築と運用により、在庫の過不足によるリスクを最小限に抑えます。
②発注管理・在庫管理・サプライチェーン連携強化
適正な発注量と在庫水準の設定を徹底し、リアルタイムで正確な在庫情報を部門間で共有する体制を構築します。これらの連携は自社内だけではなく、サプライチェーン全体で情報連携を強化することが重要です。
③プロモーション戦略などを活用した需要コントロール
単に需要に従うだけではなく、在庫水準をモニタリングしながら、能動的に市場の需要をコントロールします。在庫が増加傾向にある場合は、在庫を一掃するために、広範な顧客を対象としたプロモーションを実施し、在庫がピークを迎える前に需要を喚起・創出します。
AI活用で実現する「需要予測の最適化」
需要予測の精度を向上させるには、人手による作業では限界があります。そこで役立つのが、AIです。AIは従来の課題を克服し、コスト削減・業務効率化、そして在庫最適化に大きく貢献します。
AIは売上データなどの膨大なデータを学習し、複雑なパターンを見つけ出すことで、高精度な分析と予測を高速で行います。また、最適なAIモデルの自動選定や外部データの連携による学習データの拡充により、精度が格段に高まります。さらに、AIを自動で継続運用する仕組みを構築すれば、需要予測業務そのものが高度化・効率化します。これにより、過剰在庫の予防はもちろん、ビジネスチャンスを逃さず市場の変化に対応できる機敏性を確保できます。
TOPPANでは、製品の注文数や売上、出荷・在庫数、来客数、コールセンター入電数など、将来の需要量を予測する「KAIDEL® 需要予測」を提供しています。「高精度な需要予測」+「AI運用サイクルの自動化」によってコスト削減、業務高度化・効率化をご支援します。
5. まとめ
過剰在庫は、収益・キャッシュフローの悪化や在庫の価値低下、無駄な維持コスト発生などのリスクがあります。問題が生じた際には値下げ・買い取り依頼・廃棄などの一時的な対処は可能ですが、需要予測の精度向上や適正在庫水準の設定といった常日頃からの予防策を通じて過剰在庫そのものを未然に防ぐことが重要です。
今回ご紹介した需要予測は、近年、AI活用により精度が向上しています。より正確な需要予測を活用し、過剰在庫を未然に防ぐとともに、欠品による販売機会損失を防ぎ、ビジネスチャンスを最大限に活かすことをおすすめします。
AIを活用した需要予測をご検討されている場合は、ぜひTOPPANにご相談ください。貴社のサプライチェーン最適化に向けて、AI取り組みテーマ策定から現状の保有データ整理、AI構築、運用まで、TOPPANのマーケターおよびアナリスト、エンジニアが専門チームを編成しトータルでサポートします。
2025.12.12



