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需要予測とは?手法から課題、解決策、AI活用の成功ポイントまで解説!

  • マーケティングアナリティクス部
  • 横井 里菜

昨今の変化の激しい市場において、販売機会の損失や過剰在庫を防ぐための需要予測は不可欠な取り組みです。仕入れから生産、販売、人員配置、資金調達までビジネスの計画を立てる材料となるため、その精度が高ければ高いほど利益最大化を目指すことができます。

今回は、需要予測の概要から重要性、取り入れるべき企業、精度を上げるためのポイント、仕組みと成功のポイントまで解説します。


<目次>
1. 需要予測とは?
2. 需要予測を取り入れるべき企業
3. 需要予測の精度を上げるためのポイント5選
4. AIを活用した需要予測の仕組みと成功ポイント
5. まとめ


1. 需要予測とは?

需要予測とは?

需要予測とは、自社の商品・サービスが今後、どのくらい必要とされるのかを数値的に予測することを指します。商品やサービスには、時期や季節によって需要が変化するものもあり、一年を通じて一定ではないこともあります。また急な社会状況の変化の影響を受けることもあり、日々変動する需要に適切に対応することが求められています。

需要予測の目的

需要予測の目的はビジネスチャンスの最大化にありますが、生産においては生産量の最適化、流通においては供給量の最適化などが目的となります。

需要予測の重要性

正確な需要予測を行うことで、必要な商品を必要な分だけ供給できるようになり、欠品による販売機会の損失を防ぎます。また、過剰在庫による保管コスト増や商品廃棄を削減できるため、経営資源の無駄を排除することが可能です。最終的に、精度の高い需要予測は売上向上とコスト削減を両立させ、安定した経営戦略の立案を可能にする重要な基盤となります。需要予測は、原材料や人材不足などのトラブル回避、市場ニーズへの迅速な対応や新たなビジネスチャンスの獲得など、企業が競争力を高めるために重要な取り組みなのです。


2. 需要予測を取り入れるべき企業

次のような課題を抱えている場合には、需要予測の導入を検討すべきといえるでしょう。

導入を検討すべき企業の例

・過剰在庫による利益の減少・キャッシュフロー悪化に悩んでいる企業
・品切れが続き、販売機会の損失が発生している企業
・品切れによる急な小ロットかつ短納期発注が高頻度で発生し、生産現場が疲弊している企業
・経験や勘に頼った発注をしている・生産計画立案が属人化している企業
・需給計画業務のコスト削減や業務効率化が課題となっている企業
・大規模な生産・物流体制を持つ企業
・市場ニーズへの迅速な対応が求められる企業

需要予測により機会損失やコスト削減、属人化、業務効率化などの課題を解決できます。また大規模な生産・物流体制を持つ企業では、需要予測を取り入れることで、よりリスクを抑えた運用が可能になるでしょう。

これらの課題を抱えている企業は、需要予測を行うことで一定の改善効果を期待することができますが、導入しさえすれば必ず効果に繋がるというわけではありません。効果を出すには、精度を向上させること、また活用の仕組みを整えることが求められます。


3. 需要予測の精度を上げるためのポイント5選

需要予測を進めるに当たって、精度が低いと在庫の過不足や生産計画の狂いなど、様々な課題に直面します。そこで需要予測の精度を向上させるためのポイントについて解説します。

ポイント1: 予測に関する「事前設計」を徹底する

需要予測の精度を高めるためには、前提として何を予測すれば良いのかを設計することが重要です。単に「需要を予測する」のではなく、何を、どの単位で、どれくらいの期間予測するのかを明確に定義することで、得られる予測結果の有用性が大きく変わります。

・「何を」
売上金額や売上点数など

・「どの単位で」
商品ごとや商品カテゴリーごと、店舗ごとなど

・「どれくらいの期間」
需要予測における「期間」の設定には、「1日や1カ月など、どの単位で予測するかという時間粒度」や「どのくらい先の未来を予測するか」などがあります。時間粒度は長いほど、予測する未来は近いほど精度は高くなる傾向があります。この予測期間は、原材料の発注や生産計画に必要なリードタイムと密接に関連しているため、発注・生産体制を絡めて「予測値がいつまでに必要なのか」を逆算し、最適な期間を設定することが重要です。

ポイント2:データの質と量を高める

予測のベースとなるデータの質を高め、またデータ量を確保することで分析精度が上がります。データの質を上げるには、使用するデータの適切な判断とデータ整形や加工の専門知識が必要です。
またデータ量を確保するには、社内の過去の販売データなどだけではなく、外部要因データの利用も有効です。

ポイント3:適切な手法を選択・組み合わせる

予測対象の特性に応じた分析手法を選択すること、複数の手法を組み合わせて精度を高めることがポイントとなります。
分析手法としては、過去の売上の移動平均を算出して将来予測を行う「移動平均法」や、売上に影響を与える可能性のある様々な要因との因果関係を解析する「回帰分析法」などがあります。

ポイント4:予測結果を検証し、フィードバックする

予測結果は予測値と実績値の定期的な比較など、継続的に検証を行い、フィードバックを重ねることで精度を向上させていくことがポイントです。もし誤差が確認された場合には、原因分析と予測方法の改善が必要になります。

ポイント5:AI/機械学習を活用する

需要予測の精度向上を効率的に実現するのが、AI/機械学習の活用です。AIが複雑なデータや大量のデータを高速で分析し、高精度な予測をスピーディーに実現します。


4. AIを活用した需要予測の仕組みと成功ポイント

予測の精度を向上させるには、AIの活用が欠かせません。大規模なデータ処理と最先端のAIエンジンを基盤としたAI需要予測ソリューションと、その活用を成功させるためのポイントを解説します。

AI需要予測の仕組み

AI需要予測の仕組みをわかりやすく示すと、次のような流れとなっています。

1. AIに取り込むためのデータ設計・整備
受注実績データや製品マスタデータなど、AIに投入するためのデータ設計・整備、特徴量エンジニアリングを行います。

2. データの取り込みとAIによるモデリング
大規模データを取り込み、高精度なAIエンジンが予測モデルの構築を行います。

3. 予測の実行と評価、改善
予測実行後、その結果を実際の需要実績と比較し、予測の正確性(精度)を評価します。
特に重要なのは、予測が的中するケースと外れるケースを詳しく分析し、構築した予測モデルがもつ「予測の傾向(クセ)」を把握することです。予測が大きく外れた領域やパターンについては、不足情報の補完や、モデルのチューニングを繰り返し行うことで、継続的な予測精度の改善を実施していきます。

AI活用による需要予測の成功ポイント

需要予測にAIを活用する際の成功ポイントをご紹介します。

POINT1:目的の明確化とスモールスタート
AIを活用すべき根拠を明確にしながら、需要予測の目的をビジネス目標や経営戦略に合わせて計画しましょう。またテスト的に一部の需要予測から始め、成果が確認でき次第、横展開していくのもおすすめです。これにより、AIによる成果を着実に自社のものにしていくことが可能になります。

POINT2:継続的な運用を見据えたAIづくり
AIによる予測精度を高めるためには、多くのデータとリソースが必要になりますが、予測精度と運用にかかるリソースはトレードオフの関係となることが多くあります。継続的な運用を見据えて、限られたリソース(コスト、時間、人的工数)の中で最良の結果を得られるようAIを構築することが重要です。導入初期の精度追求だけではなく、実務での運用負荷と費用対効果を考慮した設計を心がけましょう。
これらは社内でまかなうことが難しいこともあるでしょう。その場合は、専門会社による支援を受けることをおすすめします。TOPPANでは、「KAIDEL® 需要予測」を提供しており、AI取り組みテーマ策定や保有データ整理からAI構築、運用まで、TOPPANのマーケターおよびアナリスト、エンジニアが専門チームを編成しトータルでサポートいたします。


POINT3:既存業務フローと結びついたAI運用設計
どれだけ精度の高い予測が出ても、それが具体的な行動(発注、生産計画など)に繋がらなければ意味がありません。AIによる需要予測を、既存の業務フローやシステムの運用体制と併せて考え、本当の意味で"使える"ように、ビジネスに組み込むことが重要です。


5. まとめ

現代のビジネスにおける需要予測の重要性から需要予測を取り入れるべき企業、需要予測の精度を上げるためのポイント、AIを活用した需要予測の仕組みと成功のポイントまでご紹介しました。

AIを活用した需要予測は、大量かつ複雑なデータを高速で分析し、高精度な予測をスピーディーに実現します。「目的の明確化とスモールスタート」「継続的な運用を見据えたAIづくり」「既存業務フローと結びついたAI運用設計」といったポイントを押さえることで、サプライチェーンの最適化や市場ニーズへの迅速な対応を実現します。

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2025.12.12