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AIを活用した事例と応用技術を解説|ビジネスにおける導入事例

現代のビジネス環境は急速に変化し、企業は競争力を維持するために新たな技術の導入が求められています。その中でもAI(人工知能)は、業務の効率化や精度の向上などを可能にする技術として、多くの業界で活用が進められています。しかし、AIをどのように活用すれば効果を得られるのか、またどのようなリスクが存在するのかについては、まだ多くの企業が模索している段階です。
本コラムでは、AIの活用をメインテーマに、AIの基本から活用メリット、導入ステップ、具体的な活用事例、そして今後の課題と対策までを詳しく解説します。


<目次>

1. AI(人工知能)とは
2. AIを活用するメリット
3. AIを活用するための導入ステップ
4. AIの活用事例
5. AI活用における今後の課題と対策
6. まとめ


AI(人工知能)とは

はじめに、AI(人工知能)の概要について解説していきます。

AI(人工知能)とは

AI(Artificial Intelligence:人工知能)は、コンピュータシステムが人間の知能を模倣し、学習、推論、問題解決、言語理解などのタスクを実行する技術です。AIの発展により、大量のデータを高速で処理・分析することや、データを基に識別・判断することができるようになったことで、情報の分析や資料の作成、画像による診断など、特定のタスクを効率化する活用が、様々な業界で進んでいます。

AIの仕組み

AIの仕組みを理解する上で、重要なのが「機械学習」と「ディープラーニング」です。機械学習は、取り込んだデータからパターンを学習し、新しいデータに対して予測を行うことを可能にする技術で、ディープラーニングは、さらに高度なニューラルネットワークを用いて、より複雑なデータの特徴を自動的に学習する技術です。これにより、画像認識や音声認識、自然言語理解といった高度な認識能力を実現しています。AIは、ビッグデータの活用を前提としており、データが豊富であるほどAIの精度は向上します。

AIの市場動向・市場規模

AIの市場規模は年々拡大しています。総務省の「令和5年版情報通信白書」によると、日本のAIシステム市場規模(支出額)は、2022年に3,883億6,700万円(前年比35.5%増)となっており、今後も成長を続け、2027年には1兆1,034億7,700万円まで拡大すると予測されています。

AI市場の成長を支えている要因として、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や、クラウドコンピューティングの普及、ビッグデータの活用などが挙げられ、企業は大量のデータを迅速かつ効率的に処理し、意思決定をサポートするツールとして、ポジティブな評価をしています。近年では、さらにAI技術が進化しており、音声認識、自動運転、画像認識、自然言語処理など、多岐にわたる分野で活用されています。

ビジネスにおけるAI活用の重要性

従来のアプローチでは、膨大なデータを人間が分析し、意思決定を行うことが求められていました。しかし、AIを活用することで、データの分析や予測を自動化し、より迅速かつ正確な意思決定が可能になります。また、AIは単に作業を効率化するだけでなく、新たなビジネスモデルやサービスの創出を可能にします。例えば、AIを用いた顧客分析により、個々の顧客に最適化されたマーケティング戦略を立案することができ、顧客満足度の向上や売上の増加につながります。

さらに、AIは人間が見落としがちなデータのパターンを発見する能力にも優れており、市場機会を見出してビジネスの成長を促進するといった用途で活用可能です。また、人手不足や働き方改革が求められる現代において、24時間体制で稼働できるという特長も労働力の効率化という点で企業に大きなメリットをもたらします。

このように、AIは単なる技術革新に留まらず、ビジネスの在り方そのものを変革する力を持っています。企業がAIをどのように活用するかが、今後の成長を左右する重要な要素となるでしょう。


AIを活用するメリット

AI技術の進化により、さまざまな業界でAIを活用するメリットが注目されています。ここでは、具体的なメリットをいくつかご紹介します。

データ分析・需要予測の質向上

AIは膨大なデータを迅速かつ正確に分析することが可能です。これにより、企業は市場動向や消費者の行動をより正確に分析・予測して、マーケティング施策の立案・実行と、それに伴う顧客エンゲージメントの強化を図るだけでなく、ビッグデータの有効活用によって、需要予測の精度が向上し、在庫管理や生産計画の最適化にも貢献します。

コストの削減

AIの導入は、企業のコスト削減に大きく貢献します。特に、人件費の削減が期待されます。例えば、AIは、学習したデータを基に識別や判断を行うことができるので、広告キャンペーンの単価を最適化する業務をAIの自動設定で進めることで、マーケティング施策の検討など、より付加価値の高い業務に専念できる環境を作り出します。これにより、業務上のコストを大幅に削減することが期待できます。

コア業務への集中

前述のように、AIの活用は企業がコア業務に集中するための環境を整えるためのサポートにもなり得ます。AIが識別やデータ処理を行うことで、従業員はよりクリエイティブな業務や戦略的な業務に集中することができ、結果的に企業全体の生産性向上にもつながります。

業務の効率化

AIは業務の効率化にも大きく貢献します。AIは大量のデータを高速で処理・分析する能力を持ち、これにより資料作成などの業務スピードの向上やAIチャットボットによる顧客対応の迅速化、サービスの質向上などにつながります。また、AIは学習を通じて判断を行うことができるため、より高度な業務の効率化が期待できます。

属人化の解消

AIの活用により、知識やスキルに依存する属人化を解消します。AIによって業務プロセスや意思決定が標準化されることで、誰でも同じレベルの成果を出せる環境を構築可能です。また、経験や専門知識が不足している場面でも、AIが適切なサポートを提供し、生産性を向上させます。

人為的ミスの解消

AIは、学習したデータに基づいて正確に作業を行うため、人為的ミスを減少させることが期待できます。特に、金融業界や医療業界など、正確さが求められる分野では、特定の業務でAIの導入をすることで、人為的ミスを減らす取り組みが進んでいます。

24/7稼働の実現

24時間365日稼働できる点も大きなメリットです。企業は時間に制約されることなく、常にサービスを提供することができ、特にカスタマーサポートや監視業務などにおいて、迅速な対応や顧客満足度の向上に寄与します。


AIを活用するための導入ステップ

AIを効果的に活用するためには、適切な導入ステップを踏むことが重要です。ここでは、AI導入のステップを詳しく解説します。

1.目的・目標設定

AI導入の最初のステップは、明確な目的と目標の設定です。企業はAIを利用して達成したい具体的な成果を定義する必要があります。これは、業務効率の向上、コスト削減、新たなビジネスモデルの創出など、企業の戦略に沿ったものであるべきです。目的が明確であればあるほど、その後のプロセスがスムーズに進行します。

2.データ整理・準備

AIはデータを学習・活用して動作するため、データの整理と準備が重要です。企業はまず、必要なデータがどこにあるのかを把握し、データの収集、クリーニング、フォーマット化を行います。データの質がAIのパフォーマンスに直接影響を与えるため、ここでの作業は慎重に進める必要があります。

3.技術選定・設計

次に、適切な技術の選定と設計を行います。AI技術は多岐にわたり、機械学習、ディープラーニング、自然言語処理など、目的に応じた技術を選ぶことが求められます。選定には、企業の内部リソースや技術的な制約も考慮する必要があります。支援企業を選ぶ際には、これらの技術に対する深い理解と経験があるかを確認することが重要です。

4.プロトタイプ開発

技術選定の次はプロトタイプの開発です。プロトタイプは、AIシステムの初期バージョンであり、実際の業務環境でどのように機能するかをテストするためのものです。この段階では、フィードバックを得て改善を繰り返すことが重要です。

5.モデルのトレーニングと検証

プロトタイプが完成したら、AIモデルのトレーニングと検証を行います。まず、モデルが正確にデータを処理し、期待される結果を出力するかを確認することが重要です。具体的には、モデルの精度を評価し、正解率や誤差率などの指標を用いてそのパフォーマンスを検証します。この精度の検証を通じて、モデルが現実のデータにどの程度適応できているかを把握します。
精度の改善が必要な場合、AI設計の見直しや特徴量エンジニアリング、モデルチューニング、予測結果の調整などを行います。

6.業務環境への導入・実装

AIモデルの検証が完了したら、次は実際の業務環境への導入・実装です。この段階では、AIシステムが既存の業務プロセスとどのように統合されるかを考慮し、必要に応じて業務フローを調整します。

7.モニタリング・評価

AIシステムが導入された後も、継続的なモニタリングと評価が必要です。AIは動的な環境で動作するため、定期的なパフォーマンスチェックと改善が求められます。これにより、AIシステムが常に最適な状態で運用されることを確保します。

以上がAIを活用するための適切な導入ステップになりますが、一定の専門知識が必要になります。AI導入の成功には、信頼できるサポート支援企業の選定が欠かせません。選定の際には、企業の技術力や過去の実績はもちろん、一連のステップを自社の目的が達成するまで支援する、継続的なサポートがある企業を選定することが重要です。

TOPPANでは、これらAI導入における全てのステップを包括的にサポートし、プロジェクトの継続的な運用をご支援しています。ぜひお気軽にご相談ください。


AIの活用事例

続いて、AIが活用されている具体例として、業界ごとに事例をご紹介します。

製造業

製造業における予知保全

AIを活用した製造業の予知保全は、設備や機械のセンサーから得られるデータをリアルタイムで分析し、異常の兆候を早期に検出する手法です。この技術により、故障が発生する前に適切なメンテナンスを実施できるため、ダウンタイムの削減や生産性の向上が期待できます。さらに、AIの学習を通じて保全計画の精度が向上し、結果としてコスト削減や設備の寿命延長にも寄与します。

具体的な事例としては、モーターに振動センサーを取り付け、機械学習を活用して故障のタイミングを予測する方法があります。また、IoTソリューション・ベンダーであるFAプロダクツは、半導体工場においてドライポンプのモーターや軸受、ギヤなどのデータをセンサーで取得し、「正常稼働モデル」を基に異常状態を検出することで、予知保全を実現しています。このアプローチにより、年間6,000万円かかっていた修繕費用を1,200万円に削減することができました。

スポーツ

野球選手トラッキングシステム

スポーツの分野でもAIは革新をもたらしています。野球選手トラッキングシステムは、試合中の選手の動きを詳細にデータ化し、分析することを可能にしました。専用カメラで撮影した映像をもとに、ピッチャーやバッター、キャッチャーの動きをキャプチャーし、守備や走塁などをデータ化。この大量のデータをAIによって分析し、選手のパフォーマンス向上や戦略的なチーム運営に活用し、スポーツの新しい可能性を引き出しています。

農業

農作物の収穫予測

農業分野でもAIは重要な役割を果たしています。エッジAIを活用したカメラやセンサーにより、農作物の収穫日を予測する実証実験が行われています。センサーで収集した日射量や気温、さらにカメラで撮影した生育状況のデータを組み合わせることで、成長予測モデルを作成します。農業従事者の高齢化や人手不足といった課題をデジタル技術で解決することを目指しています。

プロモーション

生成AIで作成したモデルをCM起用

広告業界でもAIは新たな地平を切り開いています。伊藤園は生成AIを用いて作成されたモデルをテレビCMに起用しました。テレビCMAIタレントを起用したのは、本事例が日本で初めてで、クリエイティブな表現の幅が広がっています。

小売業

AI需要予測で客数・販売予測精度の向上と発注時間を削減

小売業でも、AIの活用が進んでいます。発注時間の削減や利益率の向上、運営業務のサポートを目的として、AI需要予測を活用した実証実験を行った結果、1ヶ月の客数予測精度が9割を超え、販売機会向上と廃棄ロス削減の実現、加えて発注時間も5割程度の削減につながっています。

医療

画像診断をAIが補助

医療分野では、AIが画像診断を補助することで医師の診断をサポートし、診断の迅速化と精度向上を実現しています。患者の早期治療や医療コストの削減が期待されています。

マーケティング

AIターゲティングを活用した商品販促で施策反応率向上

インフラ会社の事例では、従来のセグメント抽出による施策反応率が頭打ちになっていた中、AIによるターゲティングを行ったところ、施策反応率が大きく向上。その後AI自動化基盤を構築し、業務効率化も達成しました。


AI活用における今後の課題と対策

最後に、AI活用における今後の課題とその対策について解説します。

雇用への影響

まず、AIの普及が進む中で懸念されるのが雇用への影響です。AIの導入により、特定の業務がAIによって代替されることで人が行っていた業務の中で、不要になる業務が出てくる可能性があります。これに対する対策としては、従業員のスキルアップや再教育が重要です。企業は従業員に対して、新しいスキルを習得するための教育プログラムを提供し、人間ならではの創造的な業務に従業員をシフトさせることで、AIと共存できる環境を整える必要があります。
これにより、AIがもたらす効率化の恩恵を受けつつ、雇用を守ることが可能です。

導入コスト

AIシステムの開発や導入には初期投資が必要であり、企業にとっては大きな負担となることがあります。この対策としては、段階的な導入やクラウドベースのAIソリューションを利用することで、コストを抑えることが可能です。

セキュリティリスク

AI活用におけるセキュリティリスクも無視できません。クラウド型のAIシステムの場合、インターネットを介してデータを扱うため、社内や個人のデータを扱う際は情報漏えいのリスクがあり、サイバー攻撃の標的となる可能性もあります。この対策としては、データの暗号化やアクセス権限の厳格な管理、定期的なセキュリティチェックが必要です。加えて、AIシステム自体のセキュリティを強化する技術開発も進められています。

法的リスク

最後に、法的リスクについても考慮が必要です。AIが自動生成したコンテンツによって権利侵害が発生する可能性があります。対策としては、AIが生成するコンテンツの著作権や商標権の確認を徹底することが必要です。また、AIに関連するトラブルが発生した際の法整備も求められます。企業は法的リスクを最小限に抑えるために、専門家と連携し、最新の法規制に対応する体制を整備することも必要です。


まとめ

AIの活用は、業務効率の向上やコスト削減、新たなビジネスチャンスの創出など、多くのメリットをもたらします。しかし、技術的なハードルやデータの質、セキュリティリスクの問題など、課題も存在します。これらを理解し、適切に対処することで、AIは企業にとって強力な技術となり得ます。実際の事例を参考に、自社に最適なAI活用法を模索し、今後のビジネス環境に備えることが重要です。

TOPPANでは、長年のデータ分析による顧客マーケティングのノウハウを活かし、AIによるマーケティングの自動運用システムを開発しています。AIによる顧客行動予測と自動運用で、マーケティング精度・成果向上、コスト削減、業務効率化を実現するAIソリューション「KAIDEL® 顧客行動予測」や、AIによる高精度な需要予測と自動運用で、サプライチェーンにおけるコスト削減、業務高度化・効率化を実現する「KAIDEL® 需要予測」サービスを提供しています。詳細は下記サービスページをご覧ください。

2025.02.18