株主とのエンゲージメントを
向上させる意義は?
具体的な方法・成功のポイントを解説
広報・IR部門の方々は、株主を一人の「お客さま」として捉えられていますか?昨今、株主との関係性を強化し、エンゲージメントを向上させようと取り組む企業が増えつつあります。
今回は、株主とのエンゲージメントを向上させる方法や施策のポイントを解説します。
■企業が株主を増やすメリット
企業にとっての株主は、言うまでもなく経営を支える重要なパートナーです。株主を増やすメリットには、次のようなものがあります。
●資金調達が容易になる
企業が大規模な事業拡大や投資を検討する際には、外部からの資金調達を必要としますが、新たな株主を数多く迎えることができれば、その資金の確保が容易になります。金融機関からの借入には金利負担が発生しますが、株主からの出資は返済義務のない自己資本となり、強固な財務基盤の構築につながります。
●経営の長期的な安定化につながる
多様な価値観を持つ株主が増え、株主層が厚くなることで、特定の株主の意向に経営が大きく左右されるリスクが低減します。これにより、経営陣は短期的な視点にとらわれず、腰を据えた長期的な戦略を推進しやすくなります。
●多様な株主からの意見やフィードバックを得られる
株主からの視点は健全な企業経営を進める上で欠かせません。株主数が増えれば、多様な角度からの意見を得られ、経営戦略や事業戦略に反映させることができます。結果的に意思決定の質を高め、企業統治(ガバナンス)の強化にもつながります。
■顧客(=株主)エンゲージメントを高める意義
一般的に、株主を増やす取り組みを担うのが、広報・IR部門です。株主を増やす取り組みと、同時に実施したいのが、顧客(=株主)エンゲージメントの向上です。
●顧客エンゲージメントとは?
顧客エンゲージメントとは、「企業と顧客との間に生まれる信頼関係」を指すマーケティング用語です。
エンゲージメントの高い顧客は、自社や自社ブランド、商品に信頼と愛着を寄せており、頻繁に購入したり、その価値を周囲に広めたりしてくれる存在です。
顧客エンゲージメント向上は、市場競争が激化する中、競合他社と差別化を図るために重要な要素といえるのです。
●広報・IR部門にとっての顧客=株主のエンゲージメントを高める意義
では、広報・IR部門にとっての「顧客」とは、誰にあたるでしょうか?
もちろん一般消費者も含まれますが、TOPPANでは「株主」を優良顧客の一人として捉え、エンゲージメント向上を図ることを提唱しています。
株主のエンゲージメントを高めることは、次のようなメリットを生み出します。
・長期的な視点で株式を保有してもらえる
エンゲージメントの高い株主は、企業の将来性やビジョンに共感して投資しており、短期的な市場の動向や業績の変動に一喜一憂しにくい傾向があると考えられます。
すなわち、自社の将来性に期待を持ち、長期的な視点で株式を保有してもらえる可能性が高まります。
・建設的な対話により企業価値を向上させられる
株主、特に個人投資家においては、「消費者」や「生活者」としての視点も持っています。
株主総会や個人投資家向け説明会、アンケートなどを通じて寄せられる素朴な疑問や意見は、経営陣や現場では気づきにくい製品・サービスの課題や、新たなニーズを発見するきっかけとなります。
こうした株主との建設的な対話を通じて得られたフィードバックを真摯に受け止め、サービス改善や経営戦略に活かすことで、企業は持続的な成長と企業価値の向上を実現できます。
・企業の事業成長を後押しする「応援団」となる
特にBtoC企業にとって、エンゲージメントの高い株主は、その企業の製品やサービスの熱心な利用者であり、良き理解者でもあります。
自らが株主である企業の製品やサービスを積極的に購入・利用してくれるだけではなく、SNSや口コミサイトで好意的な情報を自発的に発信してくれることがあります。
これは、広告宣伝費をかけずに企業のブランドイメージや認知度を高める、効果的なマーケティング活動となります。売上の向上に直接的に貢献する「応援団」が形成され得るのです。
■株主のエンゲージメント向上の方法
株主のエンゲージメントを向上させるには、具体的にどのようなことを実施すれば良いのでしょうか。
1.投資判断の質向上に役立つ情報提供を行う
こちらは既に取り組まれている企業も多いかと思いますが、まずは投資判断の質向上に役立つ情報をタイムリーに提供することで、株主に有益であると感じてもらえます。
・ニュースリリースの発信
・事業戦略・成長ストーリーの発信
・財務情報の詳細な開示
・ESG(※)への取り組み状況発信
※ESGとは:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)のこと。持続可能な社会の実現と企業の長期的成長のために重要になる観点とされる。
2.企業への信頼や愛着を深める関係性構築のための施策
情報提供のみならず、「関係性構築」を目標とした施策を実施することがポイントです。特にこれらの施策は、自社の価値向上という点において大きな可能性を秘めています。
・イベント開催(経営陣などとの対話の機会)
・株主優待などのベネフィット提供
・アンケートによるヒアリング
・丁寧な問い合わせ対応
■株主のエンゲージメント向上のポイント
株主のエンゲージメント向上を有意義に行うには、次のポイントを押さえましょう。
●CRM基盤となる株主データベースの構築
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)とは、顧客情報を一元管理し、顧客との良好な関係を築くための戦略やシステムを指しますが、顧客の一種である株主にも応用可能です。
従来、株主データは株主名簿管理人である信託銀行などが管理しており、企業としては必要に応じてそのデータを活用するという立場を取っていました。
しかし、前述のように株主エンゲージメント向上が求められるようになった現代においては、自社で株主専用のデータベースを構築し、直接的にコミュニケーションを取っていく意義が高まっています。
つまりCRM視点によるIR活動が重要なポイントになるのです。
●株主を対象としたCRM施策の拡充
株主の獲得から育成までの一連のプロセスを管理しながら実行するCRM基盤を作った上で、CRM起点でメール配信やイベント開催などの活動を実施していきます。
株主のエンゲージメントを向上させるためには、株主のニーズに沿った質の高いコンテンツの提供が求められます。タイムリーかつ誤解を招かないコンテンツであることはもちろんのこと、株主が思わずファンになってしまうような要素を取り入れることがポイントです。
●外部委託によるコミュニケーションの質向上
一方で、CRM起点の株主コミュニケーションは、従来の手法とは勝手が異なるため、「何から始めれば良いかわからない」「運用リソースが足りない」といった課題もあるのではないでしょうか。その場合は、実績豊富な専門業者へ委託することで成果創出につなげられます。
TOPPANでは、株主のCRM支援サービスをご提供しております。CRM基盤の導入からその後の運用までお任せください。
・伴走型支援
目標設定から施策の実行、効果改善まで含めた運用のPDCAサイクルが回るよう、伴走型でサポートします。
・品質/セキュリティ管理体制
株主の個人情報を取り扱うことから、徹底したセキュリティ管理体制が重要です。TOPPANでは数多くのメール配信業務や個人情報取り扱い業務を支援してきた経験から、適切なセキュリティ管理体制を敷き、ルール整備を行います。
・柔軟性・拡張性
ご支援する領域は、お客さまの状況に応じて柔軟に変更可能です。ニーズに応じて知見のある人員をアサインします。
■まとめ
株主を増やすことは重要ですが、それに加えて、エンゲージメントを向上させることにより、さらに自社にとっての大きなメリットにつながります。株主エンゲージメントを向上させるためにカギとなるのは、CRM起点の質の高いコンテンツ提供や施策の実施にあります。
ぜひ株主を「顧客」として捉え、戦略的にCRM活動を展開していきましょう。
社内に仕組みを構築したいけれど、リソースやコンテンツ・運用ノウハウに欠けるという場合には、TOPPANにお声がけください。
TOPPANでは、先述のCRM支援サービスと共に、株主との関係性を深める施策として有効な株主優待事務局の代行サービスも行っております。
CRM支援サービスにおいては、建設会社様の投資家向けメール施策の立ち上げ支援事例などもございます。株主エンゲージメント向上のためのCRM活用や、効果的な株主優待の運用にご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
2025.07.15