インタビュー・会談

【お客さまインタビュー】
「みんなのカーボンオフセット」の販売店機能を活用し、カーボン・オフセットの裾野を広げ、陸前高田市の復興にも貢献

30年間以上にわたり、環境問題の改善、脱炭素社会の実現への取り組みを続けているワタミグループ。その根幹には「美しい地球を美しいままに、子どもたちに残していく」というグループの環境方針があります。
その方針の下、全国各地で環境問題の改善につながることを考えていく事業やエネルギーの地産地消で地域活性化を目標としている企業の支援を行っているのがワタミエナジー株式会社(以下「ワタミエナジー」)さまです。


ワタミエナジーさまは再生可能エネルギーの普及や、森林の保護・育成活動による地球温暖化の抑制、そして脱炭素社会の実現へ向けた世界的な取り組みである「カーボン・オフセット※1」にも早くから向き合っており、TOPPANエッジがご提供する「みんなのカーボンオフセット」もいち早く導入、お客さまとのコミュニケーションツールであるノベルティグッズのマスキングテープの製造・輸送などの工程で排出されるCO₂を、陸前高田市の森林クレジット約200キログラム分によってオフセットしました。

そしてワタミエナジーさまはこの度、当社との間で「みんなのカーボンオフセット」の販売店契約を締結し、販売店機能の活用がスタートしました。
販売店機能とは、企業・団体・金融機関などが販売店となり、グループ企業や取引先、投融資先をユーザーとしてサービス提供ができるというものです。

今回は岩手県陸前高田市を訪ね、ワタミエナジー森林事業部部長の福井さんに、震災からの復興が進む陸前高田市を見晴らす広大な森林と、陸前高田市が多様な主体と連携して森づくりを行うための制度として設立した「企業等による森づくり制度」の舞台となる市有林、そしてワタミグループによる日本最大級の農業テーマパーク「陸前高田ワタミオーガニックランド」をご案内いただきました。
同社の陸前高田市での取り組みの実際や同市への思い、そして「みんなのカーボンオフセット」販売店機能を活用した今後のビジョンについてお話を伺いました。

※1 自社で目標とするCO₂排出量のうち、自己努力で削減できない分を、別の場所での削減・吸収活動によって埋め合わせる仕組み。

インタビューにお答えいただいた福井さん
ワタミエナジー株式会社
資本金:1億9400万円
事業概要:電力事業・森林事業・地域電力支援・再生可能エネルギー事業 その他、循環経済構築、環境投資、蓄電池活用 など
みんなのカーボンオフセット導入時期:2025年7月

みんなのカーボンオフセットとは

「みんなのカーボンオフセット」は、TOPPANエッジとウェイストボックスが共同開発した、カーボン・オフセット支援サービスです。カーボン・オフセットに必要な手続きをオンライン上でワンストップで提供し、企業の脱炭素化への取り組みをサポートします。従来の枠組みではできなかったキログラム単位でのカーボン・オフセットが可能な点が特徴です。
企業や金融機関から取引先・投融資先へオフセット枠を提供できる機能によりサプライチェーン全体の脱炭素化の支援も可能です。

「みんなのカーボンオフセット」のサービス概要

陸前高田市気仙町に広がる約560ヘクタールの森林

- ここが「陸前高田市の森林クレジット」の舞台となる森林ですね?

広田湾を望む気仙町の森林地帯

福井さん:はい、ここは古くから森林の育成が行われてきた地域で、今、視界に入っているのはその一部ですが、全体の面積は約560ヘクタールに及びます。日照、気候、地形など樹木にとって条件が良い地形になっていてCO₂の吸収効果に優れています。弊社が2025年2月から取り扱いを開始した陸前高田市の森林クレジットもこの森林に由来するものです。一見、手付かずの自然林のように見えるかもしれませんが、計画的な木材の循環利用や樹木の病気を防ぐための間伐、そして林道・作業道の整備など、多くの人々と共に息づいてきた森林です。

森林事業部 部長 福井 聡さん

- たしかに、手前側の斜面は樹木が伐採された跡のようですね

福井さん:主伐※2が行われた跡ですね。実はそこにはスギの苗木が既に植えられています。そうしてまた新しい森が育っていくのです。このように整備を行ってきた森林全体の中で「スギ、ヒノキなどどのような樹種がどのくらい植えられ、育っているか。樹木の高さや幹の太さなどの成長量はどのくらいか」「どのような手入れ・整備が行われたか、また今後行う計画か」といった要素をすべて把握し、プロジェクトとして登録された後に、この先16年間※3でどのくらいのCO₂の吸収が見込まれるかを数値化した上で認証を得たものがカーボン・オフセットで用いられる「クレジット」になります。
※2 成熟した木材を収穫し、森林の更新を目的として行われる伐採作業
※3 J-クレジット登録プロジェクトの認証最大期間

森林育成のサイクルは50〜60年

- 「森林によるCO₂の削減」というのは、非常に長い時間と労力を要するものなのですね

福井さん:樹種や環境変化にもよりますが、植樹から伐採までおおむね50〜60年というサイクルになります。つまり今年主伐したスギが植えられたのは50〜60年前、そして今年植えられたスギが成長しCO₂の削減に貢献した後に木材として利用されるのは50〜60年後、ということになります。カーボン・オフセットではつい目先のCO₂オフセット量に意識が向きがちですが、森林由来のクレジットでカーボン・オフセットを行うということはそれだけ長期にわたる取り組みへの参画だといえると思います。

適度な密度で成長したスギ。枝打ちをはじめとしたさまざまな手入れが施されています。

陸前高田市「企業等による森づくり制度」

-ここが陸前高田市の「企業等による森づくり制度」が実施されているエリアですね

福井さん:はい。ここでは陸前高田市が、脱炭素社会・自然共生社会の実現に向けて、一緒に取り組む企業・団体と共に森づくりを行っています。約20ヘクタールを約1ヘクタールずつに分けて提供していて、2025年11月現在、ワタミを含め七つの企業、一つの学校が参加しています。参加企業・学校はここを社員研修やレクリエーション、修学旅行で定期的に訪れ、年月を経て成長していく森を体感する学びの場として活用されています。

参加企業・団体は、提供された区画に自分たちの活動コンセプトを記載した看板を立てています。

- 市街地からも比較的アクセスしやすい場所ですね

福井さん:そうですね、そしてここからは陸前高田市街地や広田湾も一望できますので、森と人々の暮らしとの関係性についてもイメージがしやすいのではないでしょうか。森林の環境を良好に保つことは、CO₂の削減はもちろん、水源涵養(かんよう)、すなわち市内や広田湾の水質の向上であったり、育った樹木の木材としての価値の向上や木材を流通させるためのサプライチェーンの発展など、人々にさまざまな恩恵を与えます。陸前高田市の森林クレジットを取り扱う企業として、我々も森林の価値を皆さんにご理解いただくための場所として「ワタミの森」を活用していければと思っています。

陸前高田ワタミオーガニックランド

- 陸前高田ワタミオーガニックランドに戻ってきました。改めて貴社と陸前高田市のつながり、そしてこのテーマパークについて、お聞かせいただけますか?

陸前高田ワタミオーガニックランド内の「木づくりハウス」。休憩棟では地域の食材をつかった食事が提供されています。

福井さん:弊社と陸前高田市のつながりは、2011年の東日本大震災がきっかけです。甚大な被害を被ったこの街に何かご支援できることはないかと考え、支援金や生活物資の寄付、炊き出しや瓦礫の撤去作業といったボランティア活動からのスタートでした。翌年には被災地域の雇用創出を目的として宅食事業のコールセンターを開設するなどお付き合いは続き、ここ 「陸前高田ワタミオーガニックランド」は、SDGsを体験しながら楽しく学べる農業テーマパークとして2021年に開園しました。現在は第1段として、ぶどう園や木製ビニールハウスなどからなるモデルエリアと野外音楽堂のある芝生広場とキャンプ場がオープンしています。オーガニックランドは、陸前高田市と共に完成までに20年をかけるプロジェクトで、多くの人にこの街に来ていただき、震災からの復旧・復興の過程から様々な気付きや学びを得る場所になればと思っています。
こうしたつながりの中で、先ほど「企業等による森づくり制度」の現場でも少し触れましたが、三陸沿岸の一角をなす、陸前高田市にとって大切な広田湾の漁場を守るためには実は森林資源が非常に重要なのだということも知りました。震災後しばらくは森林の整備には手が回らない状態でしたが、漁業や関連産業のためにも、陸前高田市の森林の整備を推進させ、価値を向上させなくてはいけないという思いも改めて強く持つようになりました。

キログラム単位での小口オフセットを可能にする「みんなのカーボンオフセット」を、より多くの企業へ

- そうした経緯もあって陸前高田市の森林クレジットを取り扱っているのですね。
ところで今回、ワタミエナジーさまは「みんなのカーボンオフセット」の販売店という立ち位置になりましたが、そこにはどのようなお考えがあったのでしょうか?

福井さん:ワタミエナジーの森林事業部は、森林、そして林業に関わっている人たちを何か新しい制度や仕組みで支えたいという思いがあります。例えば国産の木材がもっと活用されるようになれば林業は活性化しますが、輸入木材との兼ね合いの中でそれは簡単なことではありません。そうした環境下で、多くの企業が事業活動の中でどうしても排出してしまうCO₂を埋め合わせる仕組みとして存在するカーボン・オフセットをもっと普及させることで、森林の価値を高め、それを支えることができるのではないかと考えました。
カーボン・オフセットの仕組みは20年以上前からあるのですが、世の中に広く普及しているとは言い難いのが現状です。その理由はやはり制度のわかりづらさと手続きの煩雑さだと思います。そんな中で誕生した「みんなのカーボンオフセット」ならば、カーボン・オフセットの仕組みをより簡単に活用できるのではないかと感じました。実際に弊社がユーザーとなってノベルティのマスキングテープ制作の際に使用し、キログラム単位でのオフセットが簡単に実行できた体験から、ユーザーとしての自社での使用に加え、より多くの企業に「みんなのカーボンオフセット」の使用を勧めていくことを目的として「みんなのカーボンオフセット」の販売店機能を活用することになりました。

「みんなのカーボンオフセット」であれば、カーボン・オフセットの申請から証明書の発行までWEBで完結し、企業単位はもちろん、例えば総務部で株主総会関係書類の製造・発送にかかわるCO₂をオフセットしたい、といった部署やプロジェクト単位でも利用できますので、カーボン・オフセットの裾野を広めていくことができるのではないかと期待しています。今後は販売店として、ワタミグループ各社はもちろん、陸前高田市の事業者さまにも「みんなのカーボンオフセット」をぜひ活用していただきたいと思っています。

- 最後に、ワタミエナジーさまでのカーボン・オフセットについての今後の構想や思いがありましたらお聞かせください。

福井さん:例えば陸前高田市を訪れる旅行者に、旅行事業者さまが陸前高田市の森林クレジットを活用したカーボン・オフセット付きのサービスプランをご提供することで、旅行者の移動に伴い発生するCO₂をオフセットするなど、旅行者は環境に配慮した旅ができ、事業者さまは地元の環境価値でCO₂をオフセットできます。 多くの企業の皆さまにお声がけをして仲間になっていただき、陸前高田市との連携で育てている森林への理解を促し、陸前高田市の復興を支援していければと思っています。
そしてワタミオーガニックランドでも、積極的にカーボン・オフセットを実施していきます。プログラムのひとつとして「寄付型のカーボン・オフセット付きの植樹体験」を始めました。修学旅行や企業研修などでワタミオーガニックランドへいらしたお客さまに、植物と二酸化炭素、日常の活動がもたらす環境負荷といったことについてレクチャーをしつつ植樹を体験していただき、オーガニックランドの敷地の向こうに広がる森林が果たす役割について実感してもらえればと考えています。
弊社以外でもこうした取り組みが活発に行われることで、やがて企業だけでなく一般の消費者の方々にもカーボン・オフセットの概念や意義が浸透し、日々の生活の中でカーボン・オフセット付きのサービスや商品を選択できるような環境が育っていくことを願っています。

イルミネーションに彩られた陸前高田ワタミオーガニックランド

 ワタミエナジーさま本社のある東京と陸前高田市を行き来しながら森林事業部の業務を行っているという福井さん。森林や樹木についての知見の深さはもちろん、震災をきっかけにつながりを深めることになった陸前高田市への思いの強さを感じました。これからも「みんなのカーボンオフセット」を活用し、多くの企業さまと共に陸前高田市の森林環境の価値を高めてくださることを期待しています。

「みんなのカーボンオフセット」は脱炭素社会の実現という大きな概念に「小さな一歩目」を簡単に刻むことのできるツールです。
「カーボン・オフセットに興味はあるがどう始めればいいかわからない」「ステークホルダーに、自社の脱炭素の取り組みを実例をもってお伝えしたい」のような悩みをお持ちでしたら、お気軽にTOPPANエッジまでお問い合わせください。

※所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。
※記載された製品名などは、各社の登録商標あるいは商標です。

2025.12.25

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