【会談記事】企業価値の向上にもつながる環境保全活動。FSC®認証紙を使用したカーボン・オフセット付き封筒でかなえた取組みの「見える化」
環境問題への取組みは、もはや企業の価値をはかる指標のひとつであり、経営上の重要課題としてとらえる会社も増えています。2050年までに温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする「2050カーボンニュートラル」の達成に向け、今後、機運はいっそう高まるでしょう。
ただ、積極的に取組みを進めるにあたっては、どう事業活動にリンクさせていくかが大きな課題となります。
地域に根ざした金融機関として発展し、2023年7月に創立100周年を迎える川崎信用金庫さまは、約10万通に及ぶ出資配当金通知書に「FSC®認証紙」を使用した「カーボン・オフセット付き封筒」を導入。手にとった人が一目でわかるよう環境ラベル、イラストの配置にもこだわり、環境問題に真摯(しんし)に向き合う事業者の姿勢を効果的に伝えられるツールとなりました。
「FSC認証紙」と「カーボン・オフセット付き封筒」を同時に採用する試みは、トッパンフォームズ(現 TOPPANエッジ)としても例が少なく、限られた制作期間の中で何度も確認と検討を重ねました。導入のきっかけから完成に至るその日々を、川崎信用金庫の早川さまと共に振り返りました。
※FSC認証紙…適切に管理されたFSC®認証林、再生資源およびその他の管理された供給源からの原材料で作られた紙(TOPPANエッジ ライセンス番号:FSC®C020562)
ゲスト
川崎信用金庫
総務部
早川 涼さん
インタビュアー
トッパン・フォームズ株式会社
営業統括本部 東京エリア事業部
第二営業本部 第三部
横浜第二グループ
瀬尾 創太
営業統括本部 東京エリア事業部
第二営業本部 第三部
横浜第二グループ
皆川 晋之介
企画販促統括本部 企画販促本部
メディア販促部
第二グループ 担当課長
西川 吉裕
※ 所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。
※ トッパン・フォームズ株式会社は2023年4月1日付でTOPPANエッジ株式会社に社名変更いたしました。
紙を使うからこそ実現できる環境保全
瀬尾:川崎信用金庫さまは、出資会員さま向けの配当金通知書を毎年制作・発送されています。2022年は発送用の封筒を「FSC認証紙」に変更のうえ、「カーボン・オフセット」した封筒を採用していただきました。
早川さん:当金庫では、配当金計算書と業務報告書等一式を「配当金通知書」として封書でお送りしています。
近年はSDGsの観点から、業務報告書の内容などはWebサイトでの閲覧に切り替える向きもありますが、昔からお付き合いのある地域のお客さまによりわかりやすく伝えるには、印刷物でのお届けが最善だと考えました。ならば環境に配慮した形でできないかと、瀬尾さん、皆川さんに相談したのが始まりでしたね。
瀬尾:今回の案件は早川さまからのお声がけがきっかけでしたが、弊社も業界に先駆けてFSC-CoC認証、カーボン・オフセット認証を取得していました。また、時代の流れとして環境に配慮した商品への注目度も上がってきているので、「取り組みたい」思いと「広めたい」思いがマッチした形ですね。
・FSC®️認証制度とは FSC®️認証は、適切に管理された森林と、責任を持って調達された林産物に対する国際的な認証制度です。 ・カーボン・オフセットとは カーボン(carbon dioxide=二酸化炭素)× オフセット(offset=打ち消し)からなる言葉。努力しても削減しきれないCO2について、その他の場所・手法によってCO2を削減した分(クレジット)で埋め合わせる活動です。 |
早川さん:当金庫は川崎市の脱炭素戦略(かわさきカーボンゼロチャレンジ2050)に賛同し、環境負荷の低減に取り組む事業者の手数料を一部無料にする融資商品や、電気自動車を購入される際の金利を優遇するカーライフローンなどをご提案しています。お客さまにこうした商品をお薦めするだけでなく、われわれ自身も環境保全につながる取組みを積極的に進めたいと考えていました。
皆川:今回封筒に採用された環境対応には、どのような印象を持たれましたか。
早川さん:「FSC認証紙」は、通知物を通して当金庫の環境意識の高まりをお客さまに伝えられるツールになると感じました。先ほど申し上げた融資商品は、これからお取引を始める方により伝わりやすいものですが、通知物は長いお付き合いのお客さまにも目に留めていただけますので。
西川:FSCの環境ラベルはパッケージ類やチラシなど、身近で目にする機会も増えてきています。
瀬尾:カーボン・オフセット付き封筒はいかがでしたか。
早川さん:封筒を使用することで排出するCO2の埋め合わせができると伺いました。
西川:カーボン・オフセットは京都議定書を機に知られるようになって、パリ協定以降は、みな危機感を持って取り組んでいる状況です。
この仕組みは決して難しいものではないのですが、目に見えないものだけに確実な手順を踏む必要があり、弊社では第三者認証機関の認証を受けて正しく運用しています。今後はさらに浸透していくのではないでしょうか。
早川さん:そうなんですね。購入したクレジットが東日本大震災の被災地支援に活用される点も印象的でした。
瀬尾:岩手・福島の二県ですね。
早川さん:当金庫でも宮城県気仙沼市の復興支援イベントを開催することがありますが、こういう形でも被災地に貢献できるんだなと思いました。
西川:これまで「FSC認証紙使用の封筒」、「カーボン・オフセット付き封筒」の受注はあっても、ひとつの封筒にどちらも採用されるケースは実はあまりありませんでした。どのようなお考えがあったのでしょうか。
早川さん:「FSC認証紙」は多くの印刷物に使われているイメージがあり、これはぜひ使いたいなと。「カーボン・オフセット付き封筒」はその仕組みと意義を一目でお客さまにご理解いただけるなら導入する価値があるのではないかと思い、協議のうえ採用となりました。
皆川:コスト面の懸念はありませんでしたか?
早川さん:確かに例年よりも若干コスト増にはなりましたが、総合的に導入は可能だと考えました。また金額以上に得られるものがあるという、当金庫としての判断もありました。
一目でわかるデザインで企業としての姿勢をアピール
瀬尾:環境ラベルなどを入れるプロセスは、われわれ営業にとっても初めての試みでした。
早川さん:瀬尾さんと皆川さんにはいろいろな要望をお伝えしました(笑)。
瀬尾:ご相談を受けてすぐに持ち帰りました(笑)。
西川のチームに話を聞いて、デザインのパターンをいくつかご提案して検討していただき、絞っていったという経緯でしたね。
西川:環境表示の基準は非常に厳しく、少し表現を変えただけで不正確だと指摘されてしまうことがあります。制作時間や工程のロスを防ぐために、弊社では厳密に確認を取った表記をパターンとして用意しています。その中から組み合わせて提案する、という形ですね。
早川さん:瀬尾さんはさらりとおっしゃいましたけど、決定までにはいろいろなやりとりがありました。
皆川:そうですね(笑)。
封筒やチラシ、はがきなど、形態によって入れられる環境ラベルや表記が違うので、レイアウトにはとても悩みました。
幸いにも封筒の裏面にスペースがあり、お客さまが通知物を受け取った際は真っ先に目につく場所でもあったのです。ここへ認証ラベルを大々的に入れることで強いアピールになるのでは?というところから、方向性が定まりました。
早川さん:そもそも配当金通知書の制作スケジュールが非常にタイトですからね。数字が確定してからお客さまの元にお届けするまでが約1カ月。その作業と並行して、訴求力のある封筒のデザインもお願いしますという状況だったので。
瀬尾:山場が多すぎました(笑)。
皆川:環境ラベルに関しても、ラベルのサイズやレギュレーションが細かく規定されていますので、制約の中でいかにアピールできるものにするか、位置やバランスはかなり試行錯誤しました。
早川さん:お客さまがぱっと見て環境保全活動の仕組みを理解できるイラストにしてほしい、当金庫への関連が薄いものは外してほしいといった、やや無茶振りともいえるお願いもしたのですが、希望にかなうものを作ってくださって。
瀬尾:幸い、投げかけていただいたものに対してお応えできるリソースが社内にあったことが、弊社をご利用いただくメリットや付加価値になったのかなという気はしています。
早川さん:配当金通知書は毎年トッパンフォームズさんに制作をお願いしていますが、お二人が担当されるのは今回が初めてで、そのうえ新しい課題を突きつけてしまったわけですから、大変だったと思います。
それでも、「他のお仕事は大丈夫かな」と心配になるほどお二人には時間を割いていただいて、万全の体制で取り組んでくださる姿勢が伝わってきました。
瀬尾:そう言っていただけるとうれしいです。
皆川:ありがとうございます!
取組みの可視化が生み出す価値とは
瀬尾:実際に完成したものをご覧になっていかがでしたか。
早川さん:とてもわかりやすい!と思いました。
これだけ大きく印刷していただけているので。
皆川:空いている封筒の裏面を使わないともったいないですよ、とお伝えした甲斐がありました(笑)。
早川さん:そうなんですよ。封筒のどこの余白を使えるかというルールをわれわれは知りませんから、裏面を使えるなら確かにインパクトがあるなと。これだけ大きく載せられるなら導入する価値があると感じました。
瀬尾:届いた封筒は手に取って見るわけですから、ある意味Web媒体よりもアピール力が強いといえるかもしれません。
早川さん:目に留まりますからね。川崎信用金庫の出資会員のお客さまは、紙媒体に慣れ親しんだ方が多いので、二次元コードでWebサイトへ誘導するより、封筒に載せる方が認知度は高まるかと思います。
西川:反響はありましたか?
早川さん:正直なところ、直接的な反響はありません。
ただ、これまでは「このご時世に、配当金通知書を紙で送る必要は本当にあるのか」といった意見が金庫内でありました。その一方で、Webサイトによる通知へ切り替えることで、インターネットへのアクセスが難しい方にとって情報が伝わらないという別の課題が出てきます。
非常に悩ましいところではありますが、今回はそういった意見がなくなり、「環境配慮」と、「紙媒体の強み」を同時に両立できたように感じました。
皆川:そうだったんですね!
早川さん:紙で送る必要性を説明するには時間もかかりますし、反響や効果とはいえないかもしれませんが、担当者としては非常にありがたかったです。
西川:環境配慮を印刷という目に見える形にしたことが功を奏したのかもしれませんね。
早川さん:はい。環境への取組みは可視化しづらいだけに、効果を測るのは難しいところがあります。ただ、今回の試みは当金庫の環境への取組みへの理解につながっていると思いますし、ひとつのツールとして使える形にしていただいたことに感謝しています。
瀬尾:お役に立てて何よりです。職員の皆さんはどのようにとらえているのでしょうか。
早川さん:「時代にフィットしているね」といった反応でした。
当金庫内に関しては、トッパンフォームズさんからいただいたカーボン・オフセット証明書の方がインパクトはあるのかもしれません。
実際に2トンのCO2を削減したことが視覚的にわかるので、取組みを広く伝えることができ、よかったなと思っています。
皆川:川崎信用金庫さまの中で意識を共有することも大切ですよね。
早川さん:金融業という職業柄、数字に敏感な人が多いので「2トン削減したなら、3トンにするにはどうすればいいか」と考えるきっかけになればと期待しています。
瀬尾:川崎信用金庫さまは地域社会を牽引する存在でもありますが、今後はどのように環境への取組みを進めていかれるのでしょうか。
早川さん:われわれの事業活動は環境があってこそ成り立っているものです。当金庫内においては、消費エネルギー削減のほか、非化石証書を活用した電気に変更する取組みをしています。お客さまにもこうした意識が広がっていくよう、私たちが先頭に立ってチャレンジを進めていきたいですね。トッパンフォームズさんにもお力を借りながら。
西川:早川さまのお話から、お客さまにわかりやすく伝えたいという気持ちと、環境への熱い思いも感じられて素敵だなと思いました。「わかりやすく伝える」のは、弊社にとっても大きなテーマであり、さらにお力添えできるよう頑張ります。
皆川:川崎信用金庫さまが掲げる目標の達成に貢献できる商品やサービスをご提案できるよう、引き続き尽力してまいります。本日はありがとうございました。
※ 所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。
※ 写真撮影時にマスクを外していただきました。
※ トッパン・フォームズ株式会社は2023年4月1日付でTOPPANエッジ株式会社に社名変更いたしました。
2023.02.28