【お客さまインタビュー】
カーボン・オフセット手続きの負荷を
大きく軽減。キログラム単位での
小口のオフセットも可能にした
「みんなのカーボンオフセット」
「美しい地球を美しいままに、子どもたちに残していく」というワタミグループの環境方針のもと、常に環境問題の改善につながる事業を推進しているワタミエナジー株式会社(以下「ワタミエナジー」)さま。
ワタミグループ全体としての環境への取り組みの歴史は長く、1995年ごろ、食材保存用の発泡スチロールの回収という身近なところから活動をスタートしました。以降、森づくり活動やリサイクルループの構築などが評価され、2010年にはワタミ株式会社として環境省のエコ・ファースト企業に認定されています。そして外食産業で初めて環境マネジメントシステムの国際規格であるISO 14001を取得した頃から、ワタミエナジーさまは従来の事業活動と並行して自社でのエネルギー事業も本格化させていきます。

そんなワタミエナジーさまはカーボン・オフセットにも先駆的に向き合ってこられ、TOPPANエッジと共に「みんなのカーボンオフセット」を開発したウェイストボックス社とも以前から協力関係にあったそうです。
今回はワタミエナジーさまでの「みんなのカーボンオフセット」導入の経緯や使用感をはじめ、同社の脱炭素への取り組みの過去と現在、そして将来展望はどのようなものなのか、代表取締役の山﨑さん、森林事業部の福井さん、営業推進部の綱さんにお話を伺いました。

ワタミエナジー株式会社 資本金:1億9千4百万円 事業概要:電力事業・森林事業・地域電力支援・再生可能エネルギー事業 その他、循環経済構築、環境投資、蓄電池活用 など みんなのカーボンオフセット導入時期:2025年7月 |
みんなのカーボンオフセットとは
「みんなのカーボンオフセット」は、TOPPANエッジとウェイストボックスが共同開発した、カーボン・オフセット支援サービスです。カーボン・オフセットに必要な手続きをオンライン上でワンストップで提供し、企業の脱炭素化への取り組みをサポートします。
企業や金融機関から取引先・投融資先へオフセット枠を提供できる機能によりサプライチェーン全体の脱炭素化の支援も可能です。

再生可能エネルギーの創出・提供
- 貴社の電力事業はどのような形でスタートしたのでしょうか

山﨑さん:2011年に秋田県にかほ市で稼働を開始した「ワタミの夢風車風民(ふーみん)」で風力発電に参入したのをはじめ、北海道厚真町・むかわ町でメガソーラーの建設に関わるなど、電力自由化が開始された当初から、再生可能エネルギーの創出とその供給という電力事業を、ワタミエナジーの主力事業のひとつとして育ててきました。

脱炭素社会の実現に向けて
- 電力の創出・提供と共に、森林の保護や育成による温室効果ガスの削減、さらには「カーボン・オフセット※1」という仕組みや、その実現手段である「J-クレジット制度※2」にもいち早く向き合ってこられていますね
山﨑さん:はい。再生可能エネルギーによる電力事業、そして森林事業。目指すところはどちらも「脱炭素社会の実現」に他なりません。弊社では2014年に大分県での森林再生事業に参画するなど、早くから森林事業を推進してきました。そしてその成果をカーボン・オフセットの仕組みの中で活かすべく、2025年には岩手県陸前高田市で適切に管理されている森林が吸収したCO₂を数値化した「J-クレジット」の取り扱いを開始しています。
東日本大震災で甚大な被害を受けた同市今泉北地区に弊社の農場テーマパーク「陸前高田ワタミオーガニックランド」を2021年にオープンしたり、同市による「企業等による森づくり制度」に参加させていただくなど、同市と弊社は震災以降さまざまな形でつながりがあるのですが、このクレジットには陸前高田市の復興と持続可能な社会への願いが込められています。
※1 自社で目標とするCO₂排出量のうち、自己努力で削減できない分を、別の場所での削減・ 吸収活動によって埋め合わせる仕組み。
※2 温室効果ガスの削減量や吸収量をクレジット(証書)として認証する制度。再エネ利用、森林再生などの取り組みで生じたCO₂削減・吸収量が「J-クレジット」として取引可能となる。
導入のハードルが高かったカーボン・オフセット
- J-クレジットの提供を開始したことで、より多くの企業と目的を共有できるようになったのですね?
福井さん:そうですね、それまでは社内NPOによる森林保全のボランティア活動にとどまっていた取り組みが、森林クレジットを取り扱うことによって多くの企業・団体にご参加いただけるようになり、より大きな循環を生み出すことができるようになったと考えています。そもそも弊社の森林への取り組みは、自分たちの事業活動による環境負荷を埋め合わせようという考えが出発点になっています。そのためカーボン・オフセットを活用し取り組みを促進することも自然な流れだったといえると思います。
一方、GHGプロトコル※3に基づく算定が求められるようになり、自社だけでは難しい課題も多く、そうした部分をウェイストボックス社さん※4に協力をお願いしていたという経緯がありましたので「みんなのカーボンオフセット」がローンチされることも事前に知っていて、関心を持っていました。
それまでカーボン・オフセットを実行するにあたっては、その手続きの煩雑さと選択の難しさが大きな課題だったのです。まずJ-クレジットの口座登録から始める必要がありますし、いざクレジットを選ぶにしても、ある程度の事前知識がないと、どういった種類のクレジットがあるのか、なにと相殺(オフセット)するのか、どのくらいのバウンダリー※5で算定するのか、といった目安が把握しづらく、結果、カーボン・オフセット制度については理解してはいるものの結局実施できず頓挫してしまったという企業も多いのではないかと思います。
※3 GHG(温室効果ガス「Greenhouse Gas」)の排出量を計算して報告する際に用いられる国際的な基準
※4 TOPPANエッジと共に「みんなのカーボンオフセット」を開発した、CO₂などの環境負荷把握、環境情報開示のエキスパート企業
※5 企業や組織の温室効果ガス排出量を算定する際に、「どこからどこまでを対象とするか」という範囲を決めること

- 「みんなのカーボンオフセット」ならばそのハードルが下がるのでは、と感じられたのですね?
福井さん:はい。「みんなのカーボンオフセット」はカーボン・オフセットの「入り口」として着手しやすいことに加え、必要とするCO₂削減量や予算規模に応じた取引を可能にしてくれる、利用者目線に立ったシステムだと思います。私たちB to C企業がお客さまと広い裾野で脱炭素社会への思いを共有したり、グループの考えをお客さまにご理解いただいたりするためにも活用用途の広いシステムになるのではと期待していました。
200キログラムのCO₂をオフセット
- そうした経緯があって、リリースされた「みんなのカーボンオフセット」をすぐにご導入いただけたのですね。さっそく、ノベルティグッズの作成の際にご活用いただいたと伺っています
綱さん:はい。今回「みんなのカーボンオフセット」を使って作成したノベルティグッズのマスキングテープは製造・輸送などの工程で排出されるCO₂を、「陸前高田市の森林由来クレジット約200キログラム分」によってオフセットしています。
これによりマスキングテープは実質的にCO₂排出ゼロとなっております。 このマスキングテープは「お客さまとのコミュニケーションツール」として、株主総会をはじめとする各種イベントで、株主さまやお客さまにお配りするためにご用意したものです。数量的には700個、オフセットされたCO₂は200キログラムになりますので、トン単位でしかオフセットのできない従来の枠組みでは実現できなかったことです。株主総会では、このマスキングテープと森林クレジットについてのクイズをお出しするなどして、楽しくコミュニケーションをとることができ、株主さまも興味を持たれたご様子でした。


- 実際に「みんなのカーボンオフセット」のWEB操作をしてみていかがでしたか?
綱さん:初めてだったこともあり証明書の発行で少し手間取ったものの、マニュアルに沿って進めたところ無事に完了することができました。なんといってもカーボン・オフセットに必要な手続きが「みんなのカーボンオフセット」だけで完結できるというのは大きな魅力だと思います。
「脱炭素を手のひらから」
- 「みんなのカーボンオフセット」を実際にお使いになって、あらためて感じたことや今後への展望、ご希望などあればお聞かせください
綱さん:今回のノベルティ作成の過程で、私自身も「このくらいの規模でもカーボン・オフセットができるんだ」と新鮮な気づきを得ることができました。日常の中の「ちょっとしたCO₂」でもオフセットが可能になる。大きな仕組みだけでなく、一つひとつの行動から脱炭素の輪を広げていける。「みんなのカーボンオフセット」は「脱炭素を手のひらから」という弊社の考えの具現化に大いに役立ってくれました。

福井さん:「みんなのカーボンオフセット」によりキログラム単位でのカーボン・オフセットが可能になりました。企業や団体が、全体で脱炭素の目標を掲げることも大切ですが、例えば展示会や株主総会、部活動といった活動単位やその予算の中でも、アイデア次第でカーボン・オフセットを実施できるようになります。私たちとしても今後は、グループ内の各事業部ともコミュニケーションをとって、事業部独自、あるいは店舗独自に新しい脱炭素のアイデアが生まれるような風土をつくり、それがお客さまにも浸透していくようにしたいと考えています。
実は、カーボン・オフセットというワードはもちろんCO₂削減に向けた意識や行動が、今ほど世の中一般に行き渡っていなかった2010年ごろに、ワタミグループの居酒屋店舗で「カーボンオフセット・カクテル」というものをお出ししていたことがありました。お客さまには好評だったのですが、やはり名称が浸透せず「森への寄付付きカクテル」に品名を変えるなど試行錯誤していました。現在はワタミグループ従業員はもちろん、お客さまも「脱炭素」「CO₂削減」といった言葉が以前より浸透していることもあり、またカーボン・オフセットメニューを考案してみてもいいかなと思っています。
「みんなのカーボンオフセット」には、その使い勝手の良さに磨きをかけていただきたいのはもちろん、同じ志(こころざし)を持つ企業同士を取り持つハブのような役割を期待したいですし、利用者としてもそのような意識で「みんなのカーボンオフセット」をこれからも活用していきたいです。
ワタミエナジーさまからお話を伺っている中で幾度も感じたのは、同社が脱炭素社会実現への取り組みを、一方通行の企画・提案として世に送り出すのではなく、グループ、お客さま、サプライチェーン、地域といったあらゆるキャストで共に描く循環型の仕組みとしてイメージしておられることでした。
「みんなのカーボンオフセット」がその思い・仕組みづくりに貢献できるのでしたらこの上ない喜びです。
ご紹介したように「みんなのカーボンオフセット」はノベルティグッズ数百個といった小規模の案件でもご活用いただけます。ご興味をお持ちになりましたら、お気軽にTOPPANエッジまでお問い合わせください。
※所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。
※記載された製品名などは、各社の登録商標あるいは商標です。
2025.09.29