【会談記事】専門知識を持つ管理者が
リソースマネジメントを担う
「オンサイトBPO」活用で導入初年度から
時間外勤務40%超削減を達成
自治体の住民税担当課にとって、当初処理がスタートする1月から確定申告などの処理が終わる6月までの半年間は最も多忙な時期。人材不足や国政に起因する業務の煩雑化、標準化の推進といったさまざまな要因が積み重なり、システムでの効率化や短期雇用などだけでは補いきれないといった声が年々大きくなっています。

そんな状況を打破するため、令和7年度の当初処理にオンサイト(現場)で事務業務を委託するビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)ソリューションの導入を決断したのが、徳島市役所市民税課さま。先行自治体が語った「導入初年度はトラブルが続いて成果がでない」というジンクスを覆し、時間外勤務を40%超削減されました。
本会談では、徳島市役所市民税課においてオンサイトBPOを推進された小柳さんと、実務マネジメントを担当された高田さんにご登場いただき、実務を担当したTOPPANエッジの塚島、担当営業の佐野とともに業務を円滑に進めるために実践された取り組みや意識改革などを振り返り、オンサイトBPOを最大限に活用するためのヒントをひもといていきます。

徳島市 人口:243,452 人(2025年6月1日時点) BPOソリューション導入時期:2025年 1月 担当課:市民税課 |
煩雑化する課税処理と人手不足を解決する一手
佐野:オンサイトBPO導入以前から市民税課さまとはお付き合いがありましたので、当初処理時期のお忙しさは伝わっておりました。特に近年はその傾向が強かったように感じます。
小柳さん:理由は大きく二つありますが、ひとつは税処理が年々複雑になっていることです。少し前ですとマイナンバー制度やふるさと納税の導入、そしてコロナ禍の給付金があり、令和6年度は定額減税がありました。これらの国の政策のほとんどは住民税と密接に関わっています。そのため、新しい政策がスタートするたびに事務作業が増え、処理方法の見直しを余儀なくされてきました。
佐野:確かに、ここ数年は特にそのような動きが多かった実感がありますね。
小柳さん:新たに増えた処理のために、既存業務の前倒しをしたり、処理期間を圧縮するために時間外勤務を増やしたりしないと間に合わないケースも多く、ほとんどの自治体の税部門も膨大な業務量によって大きな負荷がかかっているのではないでしょうか。
高田さん:人を増やす、またはエラーチェックなどの工数を減らせば対応できるのかもしれませんが、簡単にかなうことではないですし、業務の精度は下げたくありません。

小柳さん:そんな状況に追い打ちをかけたのが、令和3年度からスタートした新システムへの移行プロジェクトでした。以前は独自開発の税システムを導入しており、都度改修・最適化をしながら10年以上にわたって運用していたのですが、近年の複雑化する税制に改修が追いつかなくなってしまったため、国が進める標準化のスケジュールを見据えて、令和5年1月から大手ベンダーのパッケージシステムに切り替えることになったのです。
塚島:システムが変わると、業務の手順も変わってしまいますよね。
小柳さん:導入したパッケージシステムは、ノンカスタマイズを前提としていることもあり、徳島市の業務に合わせて最適化された独自開発のシステムと比較すると、入力などの作業量が増えて、より手間がかかるようになりました。令和5年度、6年度は当初処理の人手がどうしても足りず他部局の職員に応援をお願いしたのですが、それでは根本的な解決にはなりません。令和7年度には応援を呼ぶことも難しくなり、オンサイトBPOの導入を考えました。
塚島:人員確保という点で、臨時職員や人材派遣は検討されたのでしょうか。
小柳さん:短期雇用の会計年度任用職員の増員を検討しましたが、年々応募者も減ってきており、人員を集めるのもなかなか大変です。また、どちらも正規職員がゼロから教える必要がありますが、このリソースを割くことも難しいと判断しました。

BPOを先行導入した自治体からの学び
佐野:オンサイトBPOの話が聞きたいと弊社にお声がけくださったのは、導入の1年ほど前だったでしょうか。
小柳さん:そうですね。当時はTOPPANエッジをはじめ、政令市でBPO実績のある複数の事業者からヒアリングを行いました。どこまでの業務をお任せできるか確認するだけでなく、BPO事業者のご意見を伺い、私たちに必要な準備や心構えを教わりました。
佐野:その際弊社からは、まずは徳島市さまが何にお困りなのか、どの業務のアウトソーシングを想定されているかをお尋ねしました。そのうえで、希望を実現するには一般的な人材派遣だと難しいだろうとお伝えした記憶があります。
小柳さん:一般的な人材派遣との違いを明確にするため、入札の参加資格に管理監督者に関する要件を設けました。今にして思えば、そこがオンサイトBPO推進の最初の要点でしたね。

塚島:オンサイトBPOの導入が決まってからは、すでにオンサイトBPOを導入、運用しているいくつかの市に視察訪問を行われましたよね。
高田さん:業務や使っているシステムが同じでも、自治体によって環境がまったく違いましたね。例えば某市は紙ベースなのに対し、徳島市はデータでの運用がメイン。さらに別の市では通年でBPOを活用していましたが、徳島市は半年間だけの予定で進めていました。
塚島:私もオンサイトBPOの業務責任者、進捗管理責任者として6団体の業務に携わらせていただきましたが、各自治体でローカルルールが存在しますよね。
高田さん:「初年度はトラブルが起きて当たり前」「運用の成果がでるのは2年目から」という話はどの自治体でも一致していました。なので、心構えだけはしていましたが、ありがたいことに徳島市は初年度から満足のいく結果となりました。
佐野:そういった運用意識も学びになりますよね。
高田さん:印象に残っているのは、ある市の方がおっしゃっていた「BPO事業者のマネジメントだけでなく、担当課自身のマネジメントも重要」という言葉です。
小柳さん:徳島市側では業務フェーズごとに担当者を分け、各担当者がTOPPANエッジへの指示方法をしっかり考えて準備していました。これがスムーズに導入できた大きな理由でしょうね。

課税処理知識のある管理者が成功へのカギ
高田さん:実業務の準備としては、まず当初処理業務の棚卸しを行い、一つひとつの作業内容を細かく書き出しました。
塚島:その資料をもとに、我々がどこまで携わらせていただくのか整理させていただきましたね。
高田さん:実際に作業されるのは課税処理の知識がない方だとお聞きしていたので、基本的な課税資料を見てAかBか、Bの場合はリストBを見る…といった判断が易しい業務をお願いしました。それを前提にマニュアルも作成しました。
塚島:いただいたマニュアルをさらに私の方でも手を加えさせていただき、未経験者でも理解できるよう再編集しました。課税業務は専門用語も多いので、わかりやすく翻訳することがとても重要です。言葉の意味や作業の意図が変わってしまわないよう、マニュアルへの記載はもちろん、言葉での説明の際にも気をつけていました。
高田さん:マニュアルの理解度が低いままだと、双方にとってデメリットしかないですよね。塚島さんがうまく再編集してくださったのでスムーズに業務が開始できました。
塚島:ありがとうございます!お任せいただいた業務のボリューム感や処理にかかる時間にあわせてリソースの準備ができたことや、事故防止の要点を理解できていることもスタッフのマネジメントに効果的でした。そこは、さまざまな自治体でオンサイトBPO実績のあるTOPPANエッジの強みだと自負しています。
小柳さん:人材派遣や短期雇用の職員との違いともいえますよね。私どもが都度指示をしなくても効率的に管理運用してくださるので、その点においても非常に助かりました。
塚島:業務管理に加えて、重視していたのはスタッフへの意識付けです。課税業務は個人情報のなかでも特に秘匿性の高いデータを扱うため、小さなミスが大きなトラブルへつながる危険性があります。これから携わる業務がどんな意味を持つのかをしっかり理解してもらうことを大切にしていました。

スムーズな運用につなげた“見極める力”
塚島:オンサイトBPO業務がスタートしたのは令和7年1月。当初は一日に何度も質問に行ったり、そのたびにマニュアルを再調整したりとお手数をおかけしました。市民税課さまの目の前に作業部屋をご用意いただけてとてもありがたかったです。
高田さん:判断に迷ったときにすぐ質問していただけたので、私たちも安心できました。
塚島:高田さんは我々がどこまで対応できるのか、どういった部分でつまずいているのかをよく見てくださっていましたよね。
高田さん:そうですね。私たちも初めてオンサイトBPOに挑戦するということもあって、業務の“見極め”を常に意識する必要がありました。マニュアル作成前にスタッフの経験の有無を確認したこともそうですし、業務開始後にもさまざまなタイミングで現状を見極めることで、お願いする業務内容を調整していました。
塚島:スタッフの習熟度に合わせ、処理の難易度を考慮して担当作業を見直していただき助かりました。

高田さん:私は他局の応援や臨時職員で当初処理を乗り切ってきた場面にも立ち会っていますが、正直、今年度はかなりスムーズだと実感できています。
佐野:そう言っていただけて安心しました。
高田さん:例えば、1~3月にお願いしていた業務はとても順調に処理していただいて、積み残しなく4月が迎えられました。4月からは職員が主となって煩雑な入力処理を行っていますが、積み残しがあるとそちらにも影響がでてしまうのですよね。
小柳さん:さらに昨年と比較しても、1~3月の時間外勤務は半減できています。
高田さん:4月以降の時間外業務は業務フェーズが異なりお任せする業務が少なくなるためやや減少といった具合ですが、減らせただけでもありがたいです。同時進行で、数百~数千件レベルで発生するエラーチェックの対応を進めてくださっているので、その後のフェーズも円滑に推移できそうです。

時間外勤務40%超減!想定をはるかに超えた成果を実現
佐野:先ほどもお話にでましたが、1~5月までの時間外勤務は、昨年と比べて40%超も削減できたのですよね。
高田さん:はい。当初処理は正規職員でも約1年の経験を積んでやっと対応できるかどうかといった業務ですし、導入初年度から業務改善に直結させるのは難しいと覚悟をしていたので、本当に驚きました。
小柳さん:オンサイトBPO導入が決まってすぐの頃は、現場から「本当にリソースの負担なしで業務が円滑に進むのか」といった声もありました。そういった不安は、きちんと結果がでるまで払拭できるものではありません。この結果に私も驚きましたし、喜んでいるのですが、なによりホッとしたのが一番ですね。
塚島:少しでも職員の方々の負担を減らすことができて良かったです。職員の方々が当初処理以外の業務に専念できる環境を提供できていたら、非常にうれしいです。
小柳さん:実は先日、次年度の職員定数に関する会議でも話題に上がりました。「時間外勤務の削減はオンサイトBPOを導入した成果です」と胸を張って言うことができましたよ。

経験を重ねてBPO効率の深化を目指す
小柳さん:今回初めてオンサイトBPOを導入したことは、その活用性を大いに実感できる機会になりました。
高田さん:今後も継続できるのであれば、今年度にお任せした業務に加えて、お願いできる範囲が少しでも増えたらうれしいです。毎年業務を積み重ねていただくことで、当初処理業務の熟練度が上がることにも期待しています。
塚島:我々も実務を経験してたくさんの気づきがありました。今回お手伝いできなかった業務に関しても、内容を細分化することでご協力できる部分はまだまだありそうです。プラスアルファのご提案ができるよう尽力いたします!
佐野:さらに通年や複数年での活用をご検討いただけるのであれば、作業が落ち着いている時期に業務改善策を練ったり、業務プロセスの見直しを行ったりといったご相談もしやすくなります。DX技術のご紹介など、さまざまな形でお役に立てればと思います。
小柳さん:ありがとうございます。近年は、毎年のように制度が変わり、そのたびに処理方法も見直さざるを得ない状況が続いているので、オンサイトBPOを組み込んで安定的に課税処理を進められることが理想ですね。

佐野:当初処理にオンサイトBPOを導入している自治体は多々ありますが、より煩雑な確定申告処理での活用に関しては実例がほぼありません。今後は徳島市さまが他自治体から視察訪問を受ける機会があるかもしれませんが、どのようなことを伝えたいですか?
高田さん:自治体によってシステムも処理方法も異なるので難しいのですが、徳島市がお任せした処理フローとその処理をお願いするに至った判断基準をお伝えすれば、納得していただけるのではないでしょうか。まずは先方の処理方法を聞いて、具体的なアドバイスができたらいいですね。
小柳さん:人材派遣とオンサイトBPOとの違いについても、正しく認識すべき点だと思います。税務処理のノウハウを熟知した管理監督者の存在の有無は、運用にも成果にも大きく影響します。さらに職員とは別に作業スペースを確保する必要があるなど、守らなければならないルールをご共有したいですね。
佐野:実感が詰まった深いお話ができそうですね。
小柳さん:予算面の課題さえクリアできれば、どの自治体も、おそらくオンサイトBPOを積極的に活用したいはずです。徳島市は半年間という期間限定型の委託で成果を出すことができましたが、場合によっては通年型の方が高いコストパフォーマンスが実現するという自治体もあると思います。まずはオンサイトBPO導入後の姿をしっかりとシミュレーションすることがアウトソーシング化への近道になるのではないでしょうか。
塚島:我々も多くの自治体さまで業務改善のお手伝いができるよう、今後も精進します。ありがとうございました!

※ 所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。
資料ダウンロード
本記事の内容を、PDFでダウンロードいただけます。
2025.07.25