「ユーザーの本音」を生かすデザインの
評価方法とは?
脳科学を用いたデザイン評価指標の開発
ニューロデザイン®評価サービスとは?
ニューロデザイン評価サービスとは、TOPPANとNeU※の共同研究により開発した、ヒトの生体信号を分析し科学的なクリエイティブ制作を実現する、独自のデザイン開発手法を用いた評価サービスです。
なぜTOPPANが脳科学を用いたデザイン評価の開発に着手することになったのか、ここではその開発経緯をご紹介します。
※ 株式会社NeU(ニュー)は、国立大学法人東北大学と株式会社日立ハイテクによって設立された脳科学ベンチャーです。
デザインの評価方法について
普段意識することはほとんどありませんが、私たちは日々の生活の中で「デザイン」されていないものは無いというほど多くの「デザイン」に接しながら生活しています。では、この「デザイン」が良いデザインであるかどうかはどのように評価するのでしょうか?
デザインは主に制作するデザイナーの経験や感性、そのときどきの流行などによって生み出されます。広告クリエイティブであれば、実際の販売実績や動員実績など、定量的な数字が評価となりえます。また、そのクリエイティブを目にした人びとの感想やレビューなど定性的な評価を得ることも可能です。
制作段階においても、アンケートやインタビュー調査・会場調査(CLT)・アイトラッキングなどで、デザインの精度を向上させていくような手法もたびたび用いられます。ただ、最終的に世に出るクリエイティブの決定には、ステークホルダーの経験や慣習、好みなども大きく影響するため、「本当にユーザーに響くもの」が何であるかを解明することは困難だといえます。
なぜ脳科学? - 金融向けクリエイティブを制作中で見いだされた課題 -
私たちの部署では、メインクライアントである金融機関様のチラシやパンフレットなど、ツールのデザイン制作を始め、さまざまな業務上の課題に対するソリューションの提案をしています。
インターネットやスマートフォンなど新しいメディアの普及に伴い、広告や宣伝のクリエイティブがますます多様化し、情報が氾濫するようになった昨今、私たちは日頃の業務を通じて、より一層「ユーザーに選ばれる」デザイン制作が求められていることを感じていました。
また、金融業界ではフィデューシャリー・デューティーの観点から、他業界よりも特に「顧客にとってわかりやすい」情報提供が重要視されています。ユーザーが手にとるツールの制作を請け負う私たちとしては、「ユーザーの本音」を読み取ることができれば、さらにユーザーに有益なものを届けることができるのではと考えました。
これまでもアンケート調査やインタビューなどで「ユーザーの本音」を探り、デザイン制作に活かしてきましたが、ヒトの行動の9割以上は無意識で決定されているといわれています。「ユーザーの本音」を知るためには、この「無意識で決定される領域」を理解することが鍵となるのです。
そんな折、後に当サービスを共同開発するNeUと出会いました。東北大学発の脳科学ベンチャーであるNeUは、長年培った脳科学の知見と技術を軸に、社会のさまざまな分野でヒトにフォーカスしたソリューションを展開し、脳科学の産業応用を目指している企業です。「脳を鍛える大人のトレーニング」の監修でおなじみの川島隆太博士がCTOを務める企業でもあります。NeUとの共同研究で脳活動の知見を得ることで、ヒトの無意識領域の理解を進める手立てを見いだすことができました。
TOPPANのクリエイティブ制作ノウハウと、NeUの知見や技術を組み合わせ、「よりユーザーの興味を喚起するデザインとは何か?」「より好まれるデザインとは何か?」といった課題に対し、認知脳科学の見地からクリエイティブを科学的に検討、定量化し、クライアントにとって最適なデザイン開発手法を構築していくことになったのです。
ニューロデザインの評価指標開発
デザインを定量評価するうえで、まずはその評価軸となる指標を作成する必要がありました。NeUは当初から脳活動による「興味」「記憶」の指標を用いて評価分析を行っていましたが、生体情報をそのままアウトプットしても、専門性が高くその結果を解釈することは難しいものでした。
そこで、従来よりもデザインを評価することに特化した指標の作成を目指し、マーケティング分野で用いられる意思決定モデルと照らし合わせながら、5つの指標「興味」「記憶」「注目度」「好ましさ」「読みやすさ」を導き出しました。
多くのフォントや画像、異なる媒体、多くのデザインバリエーションなど基礎研究となるデザイン評価実験を複数実施し、それぞれを検証・深掘りを繰り返し、データとノウハウを蓄積。得意先企業様にも複数ご協力いただき、実際のクリエイティブを使用したPoCも実施し、さらにデータを積み重ねました。
今後のビジョンは? - 行動喚起クリエイティブを生み出すサイクルづくり -
ニューロデザインプロジェクトでは、クリエイティブを単に評価して終わりではなく、その先のストーリーを大事に考えています。
ニューロデザインを利用して制作したクリエイティブを発信した後、実際のユーザーの行動データを収集・分析し、クリエイティブとユーザー行動との関係性を確認しながらさらに次の施策を展開していく。そうすることによって、ユーザーの行動を促すクリエイティブを生み出すサイクルをつくり、このサービスを継続してブラッシュアップしていきたいと思っています。
また、「ニューロデザイン評価サービス」をAIによって自動化したWebサービスも近日公開予定です。今後の活動にぜひご期待ください。
2023.10.02