コラム

抗菌・抗ウイルスコーティングとは|効果と注意点、設計デザインにおける内装建材の選び方

コロナ禍以降、抗菌・抗ウイルスをうたう製品が増えましたが、建築材料も例外ではありません。しかし、その仕組みやメリット・デメリットはまだそれほど普及していないのが現状です。

そこで今回は、抗菌・抗ウイルスコーティングの重要性から定義、種類、メリット・デメリットまで徹底解説します。おすすめの内装建材も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。


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<目次>

■ 抗菌・抗ウイルスコーティングの重要性|アフターコロナの考え方
■ 抗菌・抗ウイルスとは
■ 抗菌・抗ウイルスコーティングの種類と効果
■ 抗菌・抗ウイルスコーティングのメリット・デメリット
■ 抗菌・抗ウイルスコーティングの採用事例
■ 抗菌・抗ウイルスコーティング内装建材を選ぶポイント
■ 抗菌・抗ウイルスコーティングに関するよくある質問
■ TOPPANの抗菌・抗ウイルス内装建材
■ まとめ


■ 抗菌・抗ウイルスコーティングの重要性|アフターコロナの考え方

アフターコロナから、人々の除菌に対する考え方や感覚は大きく変化しました。一般社団法人抗菌製品技術協議会(SIAA)のアンケート調査では、回答者の60%以上が日常的に衛生面を意識しているという結果が出ました。

また、以前から衛生面を気にしていた方は、コロナ禍以降より一層抗菌や抗ウイルスへの意識が高まったと回答しています。そのため、建物の設計デザインにおいても、抗菌・抗ウイルス機能付き内装建材を採用することは、建物利用者の安心につながると言っても過言ではありません。

■ 抗菌・抗ウイルスとは

私たちが日頃目にする製品には、数々の「抗菌・抗ウイルス」の表示がついています。実は、抗菌・抗ウイルスの定義には種類があり、厳密にいうとそれぞれに違いがあります。

抗菌・抗ウイルスの定義

抗菌とは、菌の繁殖を防いだり除去したりすることを意味する定義のうちの1つに過ぎません。

・殺菌=細菌を死滅させる
・滅菌=細菌を完全に殺滅する
・静菌=細菌の増殖を阻害する
・除菌=細菌を特定の環境から除去する(減らす)
・抗菌=細菌の増殖を抑制する

つまり、抗菌は細菌を完全に除去したり減らしたりする効果はなく、あくまでも現状よりも増殖を抑える効果を指します。JIS(日本産業規格)では、抗菌加工されている製品とそうでない製品の表面を比較して、前者において細菌増殖割合が1/100以下である状態と厳密に定義しているため、効果をうたえる製品は限定的です。

対して、ウイルスに対しては細菌のように定義が細分化されておらず「ウイルスの増殖を抑える=抗ウイルス」を意味します。加工されていない製品の表面と比較してウイルスの数が1/100以下である場合に限り、抗ウイルス効果があると表示できるのです。

抗菌・抗ウイルスの違い

抗菌と抗ウイルスは、ずばり何に対して抑制効果があるかという点に違いがあります。

細菌

  • ・細胞壁や細胞膜、DNAやタンパク質などで構成された単細胞の生物
  • ・サイズは約1μm(マイクロメートル)~約10μm(マイクロメートル)程度
  • ・細胞分裂によって自己増殖する

ウイルス

  • ・細胞構造を持たず、DNAなどの遺伝情報が内部に保持されている生物
  • ・サイズは細菌の約1/50~1/1000程度
  • ・ヒトや動物の細胞の中に侵入して増殖する(自己増殖できない)

抗菌と抗ウイルスでメカニズムに違いはないので、抗菌・抗ウイルスの両方を備えた製品も少なくありません。

■ 抗菌・抗ウイルスコーティングの種類と効果

抗菌・抗ウイルス製品の多くに使用されているのが、コーティング剤です。コーティング剤には原材料によっていくつかの種類があり、それぞれ特徴は異なります。

光触媒(酸化チタン)

光触媒コーティングされた部分に紫外線(UV)が当たると活性酸素が発生し、細菌やウイルスを不活性化できる点が特徴です。抗菌・抗ウイルス機能に加えて、空気清浄や脱臭などの効果があります。

銀イオン

銀イオンには、細菌やウイルスのタンパク質と反応して、生存・繁殖機能を奪う機能があります。カビにも作用するため、防カビ機能製品に採用されるケースも少なくありません。

プラチナ

プラチナコーティングによって、細菌やウイルスの増殖に必要な酸素を奪い不活性化させます。防カビや防臭効果があり、プラチナと光触媒とのハイブリッドコーティング剤は、暗所でも抗菌・抗ウイルス効果を発揮できるとして、医療機関での採用事例は珍しくありません。

■ 抗菌・抗ウイルスコーティングのメリット・デメリット

抗菌・抗ウイルスコーティングされた製品はコロナ禍以降人気ですが、採用する際はメリットに加えてデメリットも知っておくことが重要です。

メリット

・不特定多数の人が利用する公共的な建物などで、衛生管理をしやすくなる
・中長期の菌・ウイルス不活性化や繁殖防止が可能なため、消毒作業にかかる手間やコストを削減できる
・建物利用者の安心感を高められる
・建物(企業)のイメージ向上につながる

デメリット

・全ての感染をブロックできない(接触感染や空気感染、飛沫感染には手洗い・マスク着用など個々の対策が必要)
・全ての細菌・ウイルスに対して繁殖を抑制できない
・コーティングの品質によって効果の持続性が変わる(現場コーティングよりも工場でコーティングされた製品の方が効果の持続性は高い)
・表面が汚れたり深いキズがついたりすると効果が落ちる(細菌・ウイルスがコーティングに直接接触しないと効果を発揮しない)

■ 抗菌・抗ウイルスコーティングの採用事例

抗菌・抗ウイルス製品は、私たちの生活の身近な場所にたくさんあります。

・床材
・壁材
・手すり
・設備機器
・造作家具の面材
・内装ドアの面材やハンドル

例えば医療施設は、手術室や病室などの閉鎖的な空間から廊下やホールなどの開放的な空間まで二次感染のリスクがありますし、学校や幼稚園・保育園などの教育施設は感染爆発のリスクが高いとされています。

飲食店やオフィスでは、会話をしている時に細菌やウイルスが飛沫しやすく多くの人が長時間留まって換気が不十分になりがちなことから、感染拡大への対策は欠かせません。

ホテルは、不特定多数の人が限られた空間で長時間過ごすため、抗菌・抗ウイルスへの配慮が必要です。
このような理由から、住宅だけではなく多くの公共的な建築物へ抗菌・抗ウイルス製品は多く採用されています。

■ 抗菌・抗ウイルスコーティング内装建材を選ぶポイント

抗菌・抗ウイルスコーティング済みの内装建材を選ぶ際は、以下5つの点をチェックしましょう。

・コーティングの品質や安全性(公的にその性能が評価されているSIAA認証製品がおすすめ)
・内装建材としての耐久性(耐久性の低い建材はこまめなメンテナンスや交換が必要でコストパフォーマンスが低く、管理しにくい)
・デザイン性(建物の用途によっては機能だけでなくデザイン性も重視されるため、レパートリーの豊富さをチェック)
・耐火性能(内装制限の対象となる建物の壁には、不燃・準不燃・難燃認定を受けた材料を採用しなくてはいけない)
・環境配慮性(抗菌・抗ウイルス効果があり、さらに環境や人にやさしい材料がおすすめ)

建物の用途やデザイン、予算に合わせて、これらのチェックポイントを参考に、最適な内装建材を選びましょう。

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■ 抗菌・抗ウイルスコーティングに関するよくある質問

抗菌・抗ウイルスコーティング済み建材に関してよくいただく質問を紹介します。

Q.「抗菌・抗ウイルスコーティングの安全性は?」

抗菌・抗ウイルスコーティング剤には、消毒液や除菌剤とは異なりアルコール成分は含まれません。また、抗菌・抗ウイルスコーティング剤に含まれる光触媒・銀イオン・プラチナは、厚生労働省が公表している食品添加物リストに入っていることから、その安全性が公的に証明されています。

ちなみに、SIAA認証マーク付きのコーティング剤やコーティング済み製品は、以下の点について基準をクリアしているため、安全性が高く、小さなお子様やペットが利用する建物でも安心してご採用いただけます。

・急性経口毒性(飲み込んだ時の有毒性)
・皮膚への刺激性(長時間触れた時の炎症)
・変異原性(遺伝子への影響)
・皮膚感作性(アレルギー反応)

Q.「抗菌・抗ウイルスコーティング済み製品のお手入れ方法は?」

抗菌・抗ウイルスコーティング済み製品は、強酸性・強アルカリ性や溶剤系の洗剤と触れると、変質したり剥離したりする可能性があります。乾拭きか水拭きが原則で、しつこい汚れを落とす際は中性洗剤や無水エタノール等のアルコール類を使用し、その後速やかに水で拭き取りましょう。

また、コーティングに細かいキズがつかないように、清掃の際には研磨材の入った洗剤やスポンジ、メラミンスポンジ等を使わずに、柔らかい布などを使う点も重要なポイントです。

※製品によってお手入れ方法が異なりますので、清掃・メンテナンスをする前に必ず説明書をご確認ください。

■ TOPPANの抗菌・抗ウイルス内装建材

TOPPAN(トッパン)は1900 年の創業以来、SDGs実現に向けた技術開発を進めてきました。2020年にはオレフィン系化粧シートとして、日本で初めてSIAAの認証を取得しております。

TOPPANの抗ウイルス・抗菌製品には3つの“強み”があります。

抗菌・抗ウイルス効果の持続性・安全性

TOPPANの抗菌・抗ウイルス機能を付与した化粧シートには、銀系抗菌・抗ウイルス剤を使用しており、使用環境に左右されず半永久的な効果が得られて人体にも安全安心です。

トレンドを抑えた豊富なデザインレパートリー

トレンドを押さえた色柄からスタンダードな色柄まで網羅した豊富なデザインレパートリーが魅力です。木・石・メタル・コンクリート・モルタル・テキスタイルなどの豊富なラインナップを取り揃えておりますので、さまざまなインテリアデザインを実現できます。数千~数万種の素材から色味や風合いを厳選し、触覚にも訴える質感を表現しました。

環境配慮性

TOPPANの化粧シートに用いるオレフィンは炭素と水素で構成される不飽和炭化水素の総称で、プラスチックの原材料です。製造・廃棄・リサイクルの段階で排出される二酸化炭素排出量は塩ビ製品よりも40%(当社実験データより)ほど少なく、燃焼時に有毒ガスを出しません。

また、有害なVOC(揮発性有機化合物)の発生要因となる可塑剤を使用しないことから、地球環境にも人にもやさしい建築材料として注目されています。

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■ まとめ

抗菌・抗ウイルスコーティングの施された内装建材を用いる設計デザインは、建物の衛生管理容易性や利用者の安心感をプラスできる点において大きなメリットとなります。ただし、内装建材を選ぶ際は、抗菌・抗ウイルス機能に加えて、デザイン性や耐火性などのポイントも抑えることが必要です。

TOPPANでは、施工性・デザイン性の高い環境配慮型内外装用建材を開発・製造しております。「人に長く愛される建物」や「環境にやさしい建築」、「街のシンボルになる建築」の材料選定でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

2025.08.01

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