木目の種類と模様を解説
建築でよく使用される材種選や近年の傾向も
木目は、木の成長過程でできた模様です。まったく同じ模様は存在せず、その美しさから建築のデザインやインテリアで多くの人を魅了しています。
今回は、木材の木目について、その概要や種類、特徴、使用用途に加え、非住宅の木目材種のトレンドについても解説します。木目をうまく活用したデザインやインテリアの参考としてください。
<目次>
■木目とは
■木目の種類
■木目の模様
■建築で使用される木目の特徴
■非住宅の木目材種の傾向
■まとめ
■木目とは
木目とは、木の成長過程において形成される模様のことを指します。
たとえ同じ木でも、年輪や道管の配列によって変化するため、まったく同じ木目に育つことはありません。木目の色素が、日照時間や降水量による影響を受けて変化したり、成長の過程でできた瘤(こぶ)や節(ふし)によっても変化します。
また、木目が木を地面と平行に切った際の断面図で見られる模様を指す一方で、「木理」は地面と垂直に切った際の断面図で見られる模様を指します。
木の種類や切り方によって多種多様なデザインを楽しめ、インテリアとしても活用できます。美しい木目は人気があり、高値で取引されることもあるでしょう。
■木目の種類
木目は、木材の切り方によって異なる表情を見せてくれます。
ここでは、建築や家具作りにおいてよく使用される主な木目の種類とその特徴について紹介します。
・板目
・柾目
・追柾目
・杢目
板目
板目(いため)は、丸太を平行に切断した際に表れる木目です。
細やかで曲線混じりの模様は、穏やかで温もりを感じさせる空間作りに適しています。また、シンプルながらも洗練された雰囲気を演出することが可能です。
落ち着いた風合いのフローリングやウッドデッキなどのエクステリアに好まれるでしょう。
柾目に比べると割れなどの不良品が発生しにくく、丸太のロスを減らして木取りできるので、コストパフォーマンスに優れると言われています。
柾目
柾目(まさめ)は、丸太の芯から外側に向けて、垂直に切断した際に表れる木目です。
柾目は垂直に丸太を切り分けるため、どうしても中途半端な切れ端が出てしまい、割れなどの不良品も発生しやすいので、板目に比べて希少性が高く、価格も高くなりがちです。
その分、見た目の美しい柾目は、障子や健具などに使用されます。また、直線的でスタイリッシュな柾目は家具やドアといったインテリアにも使用されているのです。
板目と柾目、どちらかが優れているのではなく、シーンごとに適した木目は変わることを理解する必要があるでしょう。
追柾目
追柾目(おいまさめ)の模様は、直線と曲線が混ざっています。ちょうど、板目と柾目の中間にあるような木目で、「半板目(はんいため)」とも呼ばれます。
自然な曲線や直線が特徴で、やわらかい印象をもたらすでしょう。
1本の丸太から大量には切り取れないことから、希少性のある木目として人気です。
杢目
杢目(もくめ)は、板目とも柾目とも異なる独特かつ複雑な木目です。不規則な瘤(こぶ)や繊維の縮れなどによって表情を変えるので、まったく同じ木目は存在しません。
他の木目に比べて希少性が一番高く、高値で取引されます。
【杢目の種類】
・笹杢 (ささもく):鋭く尖った葉のような模様が連なっている
・如鱗杢 (じょりんもく):魚の鱗が並んだ模様になっている
・鳥眼杢 (ちょうがんもく):鳥の目のような斑点が点在する
・縮杢 (ちぢみもく):木目が縮み、波状になっている
・泡杢 (あわもく):水辺の泡のように、円形模様がいくつもある
■木目の模様
木目の模様には、さまざまな種類があります。
以下では、主な模様の種類についてまとめています。
模様 |
概要 |
年輪 |
木の年齢を示すリング状の模様。年輪が密なほど硬い木材とされる。 |
節(ノット) |
幹に吸収される前に、枝が生えていた部分。小さな節は「葉節(ピンノット)」と呼ばれる。 |
髄 |
木の中心部分(樹心)のこと。 |
心材 |
年輪の内側の部分で、赤みを帯びており、耐久性が高い。 |
辺材 |
年輪の外側の部分で、色が白っぽい。木が太くなるほど、辺材は心材へと変化する。 |
夏目 |
厚みがあり、色の薄い部分。主に、夏場に形成される。 |
冬目 |
厚みがなく、色の濃い部分。主に、冬場に形成される。 |
バークポケット |
鳥や虫がつけた傷を修復した跡。かすれたような色や節が発生する。 |
ミネラルストリーク |
土壌のミネラルが原因でできるストリーク(しま模様)。 |
ガムポケット |
樹脂が溜まった部分で、黒っぽい節や点のようになる。 |
■建築で使用される木目の特徴
木材が持つ木目の特徴は、それぞれで異なります。その特徴を捉えて、「どこでどのように使うのが効果的か」を考えるといいでしょう。
例えば、木目は天井や壁に使用されることで、建築空間に自然な美しさと温かみをもたらします。木目のデザインは、オフィスや商業施設の高級感を引き立て、快適な環境を提供します。
以下では、代表的な木目の特徴について解説します。
イタリアンウォールナット
高級家具材として使われることの多い散孔材です。
色変化に富み、美麗な杢理を持ちます。
ブラックウォールナット
クルミ科の高級銘木で、家具や銃床などによく使用されます。黄褐色から紫褐色の材色で、重厚な表情が特徴的です。
インブイア
南米ブラジル原産のクスノキ科の樹、別名「ブラジリアンウォールナット」。香りが良く、木肌には細かく光沢がある高級木材です。同じ木でも色、木目の種類の幅がさまざまで、ギターの原材料としても多く使用されています。
ホワイトオーク
北米産の広葉樹です。加工・着色が容易ではっきりした木目や独特の「斑(ふ)」の表情が愛され、昔から多用途に用いられています。
レースウッド(シルキーオーク)
主にオーストラリアに分布する年輪が明瞭な環孔材です。楢材の虎斑のようなシルバーグレイン(銀杢)が多くあらわれます。
チーク
金褐色に濃色の縞を持つ高級材の一つです。 耐久性に富み、船舶にも使用されます。
チェリー
バラ科の落葉高木です。木質は堅く、木肌はなめらかであるのが特徴です。家具・細工物などに使用される、親しみの深い材です。
アッシュ
粘りが強く、狂いも少ないため建築材料・家具・楽器など幅広く使用されます。
淡色の木肌は染色もしやすく、幅広い表現が楽しめます。
エルム / 楡(ニレ)
はっきりした木目と優美な雰囲気をあわせ持つ環孔材です。加工性に優れ、家具や楽器などに使用されます。
シダー / 杉
広い範囲の針葉樹の仲間を指し、中でも材の香の強いものを指すことが多いです。
日本では「杉」と表され、建築でも多用され親しまれています。
チェスナット / 栗
板目は楢(ナラ)に似ており、杢理がはっきりしているのが特徴です。加工性・耐久性に優れていることから、戸外に使用されることが多いです。
ティネオ
南米、チリを産地とし、赤褐色の肌合いに濃色の縞模様が美しい木材です。稀少価値の高い材の一つで、近年では欧州モダン高級家具にも使用されています。
バーチ / 樺
日本産のものは別名マカバ、カバザクラなどとも呼ばれます。
重硬・緻密・堅牢ですが、光沢が美しく、木目の表情は優しくおだやかな印象です。
ペア― / 梨
温帯北部を産地とし、シルキーな淡桃褐色で、繊細できめの細かい木味を持つため、主に工芸品に使用されてきました。現在では欧州の高級モダン家具の定番として出現する、稀少価値の高い樹種です。
ペカン
ピーカンまたはバターナッツなどとも呼ばれるアメリカ原産のクルミ科の材です。心材と辺材の色差が強く、空間に使われるとリズム感のある表情を生み出します。
アカシア
非常に堅く、耐久性に優れ、上質な家具材として使われてきました。心材は深みのある茶色、辺材は白色と、濃淡があるのが特徴です。
マホガニー
欧州では高級家具・内装材に伝統的に用いられてきた良材です。堅牢で耐久性に優れます。柾目部の「リボン杢」は美麗です。
ユーカリ
コアラの好物として知られるオーストラリア周辺に分布する広葉樹です。密度が高く耐久性に優れます。育成が早いため植林が増えています。
ボコテ
中央アメリカ等で産出する散孔材で、黄金檀などとも呼ばれます。美しい縞模様が特徴で、家具や工芸品などに用いられています。
ウィロー
日本ではヤナギとして知られる樹木の仲間で、垂れ下がる枝が特徴です。柳行李として衣類の保管などに活用されていました。柔らかく肌目が精緻でシルキーな風合いの材です。
カスティーヨ
主に南アメリカで産出されるイイギリ科の堅い材です。ほぼ白に近い色から黄色にかけての色合いを持っており、褐色の縞状の杢が入った部分はオリーブカスティーヨ とも称されます。
スクピラ
南米の樹種で、主にベネズエラからブラジル南西部にかけて広く分布しています。
重硬かつ強靭で、複雑な木目と光沢のある美しい見た目から高級家具などに使用されることもあります。
ターミナリア
主に熱帯地域に広く分布する200種以上の広葉樹の総称。アジアンウォールナット(ロックファー)とも呼ばれ、家具・キャビネット・ドアなどの高級内装家具に幅広く使用されています。
■非住宅の木目材種の傾向
TOPPANのデザインファーム「C-lab」は、日本流行色協会(JAFCA)と共同で、首都圏や関西圏の新店舗・施設、ホテル、オフィスなどを対象に調査を行っています。この調査では、店舗や施設のコンセプト、空間デザイン、そしてCMF+P(Color, Material, Finish + Pattern)の動向に注目しているのが特徴です。
最新の調査結果をもとに、非住宅分野での木目材種の傾向について解説します。今後のデザインやコンセプトの参考にしてはいかがでしょうか。
木目材種の傾向
全体を俯瞰して見ると「その他」以外では「オーク」が圧倒的なボリュームであり、次いで「ウォールナット」「パイン」が多く、これらは定番の木目材種であることが分かります。
今回調査では、「オーク」がやや減少し、「ウォールナット」が増加、「パイン」は横ばいという結果でしたが、「パイン」と同程度の比率にまで増加したのが「タモ/アッシュ」です。
しっかりした木理表現が特徴の材種であり、ミラノサローネなどの海外トレンドショーでも多見されていて、今後も注目の材種です。
「その他材種」は比率の減少傾向が継続しており、素材としての目新しさよりも安心できる定番としての需要が強いと推測されます。なお、「その他材種」には、「バーチ」「ビーチ」「バンブー」「チェスナット」等のほか、SDGsの流れを汲んだエコ素材としての「OSB / MDF」「集成材」等も高い比率で含まれています。
木目カラーの傾向
2023年も「ホワイト」から「ナチュラル」「ライト」の明るい色調が主流ではあるもののボリュームを減らし、ここ2年ほど比率が減っていた「ブラウン」「ダークブラウン」「レディッシュブラウン」が再び増加しました。これは前述の「ウォールナット」の増加と関連しています。
木目本来の温かみをグレーで少し抑えた「ライトグレー」〜「ダークグレー」も増加、全体の10%強を占めるに至っています。
「その他」のカラーはブルーやイエローなどに着色したものですが、2023年はほとんど見られませんでした。
■まとめ
今回は、建築において重要な役割を果たす木目の種類と模様について詳しく解説しました。代表的な木材の木目の特徴や、非住宅分野での木目材種の傾向についても触れました。
木目の美しさは、建築のデザインやインテリアにおける重要な要素です。今回お伝えした内容をもとに、デザインやインテリアを検討されてはいかがでしょうか。
2024.07.03