コラム

建築で使用される代表的な石材6種類
部位別の選び方や近年の傾向も紹介

石材とは、自然界の岩石を建材として使うもので、全国で30種類以上のブランド石材が存在します。大きく3種類に分かれ、石材によって耐久性や耐火性、耐水性といった機能面に加え、カラーバリエーションも異なります。

各石材の特徴を理解することで、外装や内装、外構など、場所に適した石材を選び、施工することができるようになります。

今回は、石材の種類や選び方を中心に解説します。建築における石材の重要性と使用法を理解し、より快適で美しい建物を建てる参考にしてはいかがでしょうか。


◎◎

<目次>

■建築で使用される石材とは
■建築で使用される代表的な石材の種類
■【部位別】建築で使用する石材の選び方
■非住宅の石材の傾向
■石材を使用した建築工事のポイント
■まとめ


■建築で使用される石材とは

石材とは、自然界にある岩石を加工し、建材として使用するものです。耐久性や美観性に優れており、建築分野では古くから重宝されています。また、圧縮強度が強く、重厚感のあるデザインにできる一方で、引っ張り強度や曲げ強度が小さく、木材など他の建材に比べると加工や運搬には向いていません。

主な使用例としては、外壁や内装、外構、キッチンなどの水回りが挙げられます。また、公共物や歴史的建築物での使用も多いです。

石材には30種以上のブランド石材がありますが、「火成岩」「変成岩」「堆積岩」の3つに大きく分けられます。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。

種類

概要

火成岩

地球内部のマグマが、冷え固まって形成される岩石。硬度が高く耐久性に優れている

変成岩

岩石が特定の環境下で変質してできる岩石。硬度が軟らかく、模様が特徴的

堆積岩(たいせきがん)

地表で堆積した砂や泥が圧縮されて固まった岩石。色彩や模様のバリエーションが豊富

各石材の特徴については、次項で詳しく解説します。

また、石材の切り方によってもその見え方は変わります。代表的な切り方には、「柾目(まさめ)」と「平目(ひらめ)」があります。柾目は原石を縦方向に切り出し、ランダムな線の模様が特徴です。一方、平目は原石を水平に切り出し、平行線のような模様が特徴となります。

■建築で使用される代表的な石材の種類

ここでは、建築分野でよく使われる代表的な石材の種類を紹介します。

各石材の分類や特徴、使用例について詳しく見てみましょう。

・御影石
・大理石
・粘板岩(スレート)
・石灰岩(ライムストーン)
・砂岩
・凝灰岩

御影石

御影石 天然石調 壁面用シート材「クラスアートストーン」
CS-002 カレドニアグラニット

御影石(みかげいし)は、「花岡岩」とも呼ばれ、マグマが地下深部で冷却され固まった火成岩の一種です。

ゆっくりと冷やされて固まるため、火成岩の中でも特に強度が高く、耐久性に優れています。見た目も美しく、黒・白・ピンク・赤といった色のバリエーションがあります。ただし、硬さゆえに加工費用が高くなりがちです。

主に外壁や玄関、カーポート付近などに用いられ、その耐久性と高級感で多くの建物に採用されています。また、白い御影石はほとんどのお墓で、墓石として使用されています。

大理石

大理石 天然石調 壁面用シート材「クラスアートストーン」
CSN-016シルバーシャドウ

大理石は変成岩の一種で、その美しい模様と色合いが特徴です。硬度が軟らかいので短時間で加工しやすく、内装材や彫刻材として人気を博しています。

また、石灰質の購入鉱物によって白やベージュ、グレー、緑、紅、黒といった色に変化するだけでなく、成り立ちから縞や筋といった模様ができたり、磨けば輝いたりするので、高級感のあるインテリアとして親しまれています。

主に内装の壁面や床、浴室などで使用されます。ただし、軟らかさゆえに風化に弱く、酸性雨で表面の艶がなくなるので、屋外での使用は適しません。

粘板岩(スレート)

粘板岩(スレート) 天然石調 壁面用シート材「クラスアートストーン」
CSN-014トシュタスレート

粘板岩(ねんばんがん)は、スレートとも呼ばれ、粘土が沈殿して固まることでできた変成岩です。非晶質で、板状に薄く剥がしやすい、加工しやすい特徴があります。

また、防水性や耐日性に優れ、屋根材や床材をはじめ、屋根瓦や堀の部材としても使われてきました。

黒や赤褐色、緑色の粘板岩があります。見た目のスタイリッシュさから人気の石材です。

石灰岩(ライムストーン)

石灰岩(ライムストーン) 天然石調 壁面用シート材「クラスアートストーン」
CS003-G ピエトラウォール

石灰岩は、ライムストーンとも呼ばれ、炭酸カルシウムで構成される堆積岩です。貝や軽石、火山灰、火山砕屑物などが地表に積み重なることで生まれます。

建築用石材の中では最も軟らかい石材の一つで、吸水性も高いです。色は白やベージュ、オレンジ、緑、グレーと幅広く、柄のバリエーションも豊富です。

無数の小さな穴から水を吸収し、割れやすく汚れやすくもあるので、屋外での使用に向かず、内装や家具の天板などで主に使用されています。

砂岩

 砂岩 天然石調 壁面用シート材「クラスアートストーン」
CSN-013サンドストーン

砂岩(さがん)は堆積岩で、砂粒が圧縮されてできた岩石です。表面の自然な凹凸が特徴的です。

軟質で加工しやすく、水中で圧縮されたので防火性に優れていますが、吸水性の高さや内部に水分を含んでいることから、寒さで凍って割れたり、汚れや苔がつきやすくなったりします。寒冷地を除けば、その汚れや苔がつくのを楽しむこともできるでしょう。

主に内装の壁や床、アーチなどで使用されます。グレーや淡い褐色、黄色、ベージュ、赤色、白色などさまざまな色合いが存在します。

凝灰岩

凝灰岩 天然石調 壁面用シート材「クラスアートストーン」
CS005-L 新大谷

凝灰岩(ぎょうかいがん)は火成岩で、火山噴出物が地上や水中に積もり、固まってできる岩石です。

火山由来なので耐火性に強く、光沢はありません。強度は低く、軟らかいですが、風化しやすい点も特徴です。

また、白やグレー、緑灰色、ベージュといった色が主となります。

その耐火性から外壁や内装に使われる他、温泉の岩風呂にも使われます。露天風呂を作ることも可能でしょう。

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■【部位別】建築で使用する石材の選び方

建築物のさまざまな部位に使用する石材を選ぶ際、その部位の特性や用途に合わせた最適な材質を選ぶことが重要です。外装や内装、外構、さらには水回りなど、それぞれの部位に最適な石材の種類は異なります。

下記の表では、部位ごとにおすすめ石材をまとめています。

部位

おすすめの石材

外装

  • 御影石
  • 粘板岩(スレート)

内装

  • 大理石
  • 石灰岩(ライムストーン)
  • 砂岩

外構

  • 凝灰岩
  • 粘板岩(スレート)

キッチンや浴室など水回り

  • 石灰岩(ライムストーン)
  • 大理石

以下では、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

外装

外装用石材の選び方は耐候性、耐久性、そして美観を重視するといいでしょう。

御影石はその高い強度と低吸水率で外部環境に強く、バリエーション豊富な色合いで建物の外観をおしゃれに仕上げてくれます。一方、粘板岩(スレート)は防水性や耐日性に優れ、非晶質で美しい外観を提供し、屋根材としても人気です。

石材を選ぶ際は、色やパターン(模様)の選択が建物の印象を大きく左右するため、希望のスタイルに合わせて慎重に選ぶ必要があります。また、気候による影響を考慮し、定期的なメンテナンスを心がけましょう。

内装

内装では、石材の美しさと加工のしやすさが求められます。加工しにくい石材は、加工費用が高くなりがちです。

大理石はその豪華な模様で高級感を与え、加工のしやすさが特徴です。石灰岩(ライムストーン)は、暖色系のカラーも豊富で、温かみのある空間を演出します。また、砂岩は自然な質感で落ち着いた雰囲気を提供します。

これらの石材は内装のアクセントとして使用されることが多く、特に大理石は内装材や彫刻材として人気があります。ただし、石材の吸水性や汚れやすさを考慮して、適切な表面処理が必要です。

外構

外構に使用する石材には、耐久性や耐候性が求められます。

凝灰岩は火山由来で耐候性に優れ、庭園や玄関アプローチなどに適しています。粘板岩(スレート)は層状で美しく、外構のデザインを引き立てます。また、防水性や耐日性に優れ、堀の部材としても採用されてきました。

外構も外壁と同じように建物の印象を大きく左右する部分なので、耐久性・耐候性だけでなく、デザイン性を考慮するといいでしょう。

キッチンや浴室など水回

水回りの石材選びでは、耐水性、耐汚染性、メンテナンスの容易さが重要です。

石灰岩(ライムストーン)は加工しやすく、吸水性の高い石材です。デザイン性を求める場合に適していますが、吸水性も高いので注意が必要です。また、大理石はその高級感からキッチンや浴室に使われることもありますが、水に弱くシミが出ることがありますので、水回りで使う場合は注意が必要です。

定期的なクリーニングやメンテナンスを行うことで、長期間にわたりその美しさを保つことが可能です。

■非住宅の石材・その他素材の傾向

TOPPANのデザインファーム「C-lab」は、日本流行色協会(JAFCA)と共同で、首都圏や関西圏の新店舗・施設、ホテル、オフィスなどを対象に調査を行っています。この調査では、店舗や施設のコンセプト、空間デザイン、そしてCMF+P(Color, Material, Finish + Pattern)の動向に注目しているのが特徴です。

最新の調査結果をもとに、非住宅分野での石材種・その他素材のカラー傾向について解説します。今後のデザインや設計の参考にしてはいかがでしょうか。

石材種・その他素材の傾向

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石材・石目印刷物(グラフ左側グリーン部)の比率は、減少傾向から増加の兆しが見られました。中でも「グラニット」は昨年減少していましたが、今年度は拡大傾向にあります。
石材・石目印刷物以外では、布が大きく増加しており、ホテル等を中心に見られました。
リサイクル素材の種類が増えたため、その他の素材が増加しています。

石材種 カラーの傾向

有彩色は昨年度から減少が見られました。

アイボリー等、温かみのあるニュートラルカラーは大きく増加しています。
今回は温かみのあるグレーを明暗で2色追加、「アイボリー」を含めて、言うなれば「ウォームニュートラル」として集計してます。これまで単なる「グレー系」としてきたものがこの「ウォームニュートラル」にカウントされるようになったため、「グレー系」が減少し、「ウォームニュートラル」比率が大きく増加することとなりました。

レッド系の色も増加傾向が見られ、床や壁の一部、什器や家具などでアクセントカラーとして使用されていました。

■石材を使用した建築工事のポイント

石材を使用した建築工事は、その耐久性と美観から多くの法人に選ばれています。
石材は自然素材であり、建築においては特に高級感と耐久性が求められる場面で活躍します。
選定する際は、使用目的や環境に適した石材を選ぶことが重要であり、信頼性の高い企業が販売しているものを選びましょう。

また、施工技術も品質を左右するため、信頼性のある施工業者を選ぶことが不可欠です。石材建築で企業のブランド価値を高め、長期的な資産価値を確保しましょう。

■まとめ

今回は、御影石、大理石、粘板岩(スレート)、石灰岩(ライムストーン)、砂岩などの代表的な石材について詳しく解説しました。「火成岩」「変成岩」「堆積岩」の3つに分類され、それぞれ特徴が異なります。

これらの石材は、外装から内装、外構、さらに水回りまで、建築のさまざまな部分で使用できます。その特徴を理解すれば、デザイン性や快適性に富んだ建物を建てることが可能です。

また、非住宅分野における石材の最新傾向にも触れました。市場のトレンドを踏まえて、素材やカラー選択をするといいでしょう。

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2024.10.10

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