コラム

リラックスできる宿泊施設の配色
重要性や事例・注意点を解説

宿泊施設における配色は、ゲストに心理的な影響をもたらし、よりリラックスして滞在してもらうために欠かせない要素です。リラックスできる色はいくつも種類があり、また配色を検討する際の注意点もあります。

今回は、宿泊施設における配色の重要性や心理的効果、事例、配色を検討する際の注意点について解説します。宿泊施設をより快適な空間にするための参考にしてはいかがでしょうか。


<目次>

■ 宿泊施設における配色の重要性
■色が心身にもたらす影響は?
■リラックス効果をもたらす配色
■リラックスできる配色に仕上げた宿泊施設の事例
■宿泊施設の配色を検討する際の注意点
■配色以外でリラックスした空間を演出するポイント
■まとめ


■宿泊施設における配色の重要性

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ゲストが宿泊施設評価するポイントは料理やサービスに加えて、デザイン性があります。私たちは空間デザインを形や素材、光、色から認識していますが、中でも大きな影響をもたらすのが色、つまり「配色」です。

実は、私たちは視覚を通して入ってきた色から、さまざまな心理的な影響を受けています。

例えば、ファッションでも黄色を着た人には「元気そう」、青色を着た人には「冷静そう」と印象を受けたことがあるのではないでしょうか。他にも、飲食店が赤色やオレンジ色をブランドカラーに取り入れているのは、それらが食欲を増進させる効果があると言われているためです。

宿泊施設においても、「どの色がどこに、どのくらい彩られているか」でその空間で過ごす時の気分も変わります。空間デザインをする際には、コンセプトを定めて配色まで細かく決めておく必要があるでしょう。

宿泊施設においても、「どの色がどこに、どのくらい彩られているか」はその空間にいる人々に心理的影響を与え、リラックスや活力を促進します。適切な色選定は、施設のブランドイメージを強化し、顧客のリピート率を向上させます。

特にビジネス向け施設では、プロフェッショナルで落ち着いた色調が求められます。建築段階において空間デザインをする際には、コンセプトを定めて配色まで細かく決めておくことで、競争力のある魅力的な宿泊施設を実現することができます。色の力を最大限に活用することが、成功への鍵となります。

■色が心身にもたらす影響は?

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色が心身にもたらす影響とは、心理的、健康的な効果を指します。

以下では、いくつか例を挙げて色の効果について解説します。

・赤(レッド)
赤は活力と情熱を象徴し、宿泊施設の客室ではエネルギーを与えるアクセントカラーとして効果的です。しかし、過度に使用すると刺激が強すぎるため、注意が必要です。

・橙(オレンジ)
オレンジは活発さと暖かさを感じさせ、客室に暖かみと楽しさを加えるのに適しています。明るく親しみやすい雰囲気を作り出します。

・黒(ブラック)
黒は洗練さと厳かさを示し、客室にエレガントでモダンな雰囲気を演出するのに用いられます。一方で、暗く圧迫感を与えることもあるため、バランスが大切です。

・白(ホワイト)
白は清潔感と純粋さを象徴し、客室を明るく広々と見せる効果があります。清潔感を強調し、爽やかな印象を与えます。

このように、建築デザインにおける配色は、単なる美的要素にとどまらず、心理的な影響を考慮した戦略的な選択が必要です。企業が成功を収めるためには、従業員がリラックスできる環境の中でモチベーションを高め、顧客にポジティブな印象を与える空間作りが不可欠です。これを実現するためには、色彩心理学の知識を取り入れた建築設計が求められます。

■リラックス効果をもたらす配色

リラックス効果をもたらす配色について、具体的なカラーを挙げて解説します。大きくベースカラーに適した色と、アソートカラー・アクセントカラーに適した色に分けられるので、それぞれ見ていきましょう。

カテゴリ

効果

ベースカラー

ベージュ

ソフト、安心感、リラックス、身体の弛緩

ブラウン

落ち着き、ぬくもり、優しさ、安心感、安定感、心身のリラックス

グレー

他の色と合わせやすい、対人ストレスを和らげる効果

アソートカラー・

アクセントカラー

グリーン

心の平安、やさしさ、疲れを癒し、落ち着かせるリラックス効果、気持ちを穏やかに、脳の興奮を静める、目にも優しい、疲労やストレスの減少

ブルー

誠実、落ち着き、不安を解消、精神を鎮静化、安定、α波

ピンク

優しさ、穏やか、安らぎ、リラックス、精神的充足感、円満な気持ち、緊張感を和らげ、心身の働きをスローダウン

まず、ベースとなるカラーとして有効な色は、ベージュとブラウン、グレーが挙げられます。

ベージュはソフト・安心感があり、自然な柔らかさがリラックス効果をもたらします。身体になじみやすく、身体の緩和を促してくれるでしょう。
ブラウンは伝統、クラシックなイメージとともに、ぬくもりや優しさを感じさせます。見ている人に安心感と安定感を覚えさせ、気分を落ち着かせてくれます。
グレーは他の色と合わせやすいです。また、対人ストレスを和らげる効果を期待できます。

続いて、アソートカラー・アクセントカラーとして有効な色は、グリーン、ブルー、ピンクが向いているでしょう。

グリーンは疲れを癒し、ストレスの減少に。気持ちをやさしく穏やかにするだけでなく、脳の興奮を沈め、目にも優しい効果もあります。
ブルーは、清潔感をもたらし、不安を解消させます。青を見ている時にα波が出るという効果も。
また、ピンクは優しさや可愛らしさをイメージさせ、精神的な充足感と緊張感の緩和をもたらします。鮮やかなピンクは心身の動きをスローダウンさせる効果も期待できるでしょう。

■リラックスを促すホテル内装のイメージ

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上記を踏まえ、リラックスを促すホテル内装のイメージを、3つ紹介します。

ナチュラルベースの配色

出典:unsplush sandrarei

ナチュラルな仕上げのオークの床を使用し、オフホワイトの塗り壁、ナチュラルなパインのルーバーアクセントが使用されています。

ベッド周りの配色はブラウンの毛布、ヘッドセットはライトブラウンに。ピローやクッションのピンクがアクセントになっています。丸みのあるサイドテーブル、すっきりしたデザインのライトスタンドからの暖かい光が印象的です。

ブラウンベースの配色(ナイトモード)

出典:unsplush jp valery

ブルーと黒、白のストライプの優しい踏み心地のカーペットがゲストをリラックスさせます。ダークブルーの壁とベージュの壁紙にダークブラウンの木目のラインアクセントを添えています。

ベッド周りの配色は、グレーのブラケットとイエローオーカーのヘッドセット。ダークブラウンのサイドテーブルから、モダンなライトスタンドの落ち着いた光が照らします。

グレーベースの配色

出典:unsplush linus mimietz

グレー基調にピンク、ブルー系のアクセントの入ったオーガニックなパターンのカーペットです。

間接光のグラデーションが心地よいダークグレーの壁と、白の天井がコントラストに。オフホワイトのトーンでまとめられたカーテン、窓周りとなっています。

ベッドのベースは半つや仕上げの木目のブラウン、カフェブラウンのヘッドセットに加え、淡いセージグリーンのシーツを選択。サイドの肘掛椅子はブルー、丸テーブルにはホワイトが使用されています。

■宿泊施設の配色を検討する際の注意点

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宿泊施設の配色を検討する際の注意点について、それぞれ解説します。

コンセプトを設計する

まずは、空間デザインのコンセプトを設計しましょう。コンセプトが定まらなければ、配色を決めることはできません。宿泊施設のブランドイメージや事業戦略を踏まえ、言語化することが大切です。

例えば、「シンプルモダン」では直線的かつ無機質なデザインとなるため、白や黒、グレーを基調とします。高級ホテルを中心とした「クラシック」や「エレガント」では、クリームやブラウン、ゴールドを基調とすることも。また、「ナチュラルモダン」では、自然色のライトブラウンやグリーンが採用されます。

このように配色を考える上では、コンセプトを設計することが重要です。

インテリアとマッチする色を選ぶ

空間に置く家具や機器、備品などのインテリアとマッチする色を選ぶことも大切です。

モノトーンを中心とするモダンスタイルで壁紙やドア、床を構成しておきながら、ナチュラルカラーの椅子やテーブルを採用しては、ちぐはぐな印象を与えてしまいます。

インテリアと配色においては、コンセプトを一貫させましょう。

認証を受けた物件ごとに手続きを求められるのは、企業の負担になるかもしれません。

■配色以外でリラックスした空間を演出するポイント

リラックスした空間を演出するためには、色以外にも注意すべきポイントがあります。

照明

リラックスした空間を演出するための照明には、間接照明の利用が重要です。明るすぎず、柔らかい光はリラクゼーション効果を高め、落ち着いた雰囲気を生み出します。

色温度も重要で、リラックスさせるためには温かみのある電球色が適しているでしょう。

一方で、それぞれの間接照明だけでは、部屋全体が薄暗くなってしまいます。部屋全体を明るくするため、要所に複数の照明を置き、暗すぎない明るさに調整することが大切です。

また、照明もインテリアの一つとしてとらえ、部屋のコンセプトに合わせて形やカラーを選ぶといいでしょう。

素材

リラックスした空間を演出するためには、素材の選択も欠かせません。

自然素材や柔らかいファブリックなど、触感や見た目にも温かみや柔らかさを感じさせる素材は、リラックス効果を高めます。例えば、木質の家具や壁材、柔らかい織物のカーテンや寝具などは、居心地の良い雰囲気を作り出すでしょう。

逆にガラスや大理石などの素材は、高級感を醸し出す一方で、やや冷たい印象を与えます。空間のアクセントとして置くことは問題ありませんが、全体のウェイトを多く占めることは避けるべきでしょう。

■まとめ

宿泊施設の建築や空間設計において、配色は重要な要素です。緑は安らぎ、青は穏やかさ、黒は洗練さ、白は清潔感、茶色は快適さなど、適切な配色は、顧客にリラックスした環境を提供します。

また、配色を検討する際には、空間デザインのコンセプトの設計と、インテリアの色のマッチングが重要であり、施設のブランドイメージやターゲット層に合わせて慎重に行う必要があります。

今回の内容を参考に、よりリラックスできる宿泊施設の空間を築いてみてはいかがでしょうか。

デザインファーム「TOPPAN C-lab.(Toppan Creative Laboratory)」

2024.07.29

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