コラム

飲料の物流課題とは?コスト削減や消費期限問題を解決する技術を紹介

目次
1. 飲料業界の物流とは
1-1. 飲料業界の物流の特徴
1-2. 飲料業界の流通構造
2. 飲料業界の物流における課題
2-1. 輸送時のCO₂排出量削減
2-2. 消費期限や味・風味の劣化への対策
2-3. 保管や品質維持のコスト削減
2-4. 2024年問題に向けた対応
3. 常温保存技術が飲料物流のコスト削減に貢献
3-1. 無菌充填包装
3-2. GL FILM
4. TOPPANのカートカンなら消費期限の延長で物流にも貢献


飲料業界では、商品特性に起因する物流コストの高さや消費期限の管理など、さまざまな課題を抱えています。これらの課題解決のカギを握るのが、パッケージ技術の革新です。この記事では、飲料物流の現状と課題を整理したうえで、無菌充填包装やGL FILM、カートカンなど、飲料の長期保存を可能にする技術を紹介します。

1. 飲料業界の物流とは

飲料は広義には食品カテゴリーの一部ですが、商品や物流の取り扱いには他の食品とは異なる特徴があります。飲料の品目数は非常に多く、商品のライフサイクルが早いことから、他の食品に比べて物流の負荷が高くなりがちです。また、重量に対する単価が低いため、輸送や保管のコストが商品価格に占める割合が大きくなるのも特徴です。

このような商品特性から、飲料の物流は他の食品と比べてもコスト面での最適化が求められます。

1-1. 飲料業界の物流の特徴

飲料の商品特性を踏まえると、飲料業界の物流には主に以下の3つの特徴があげられます。

● 重量物のため他の食品と比べてトラックに積載できる容積が小さく、単位あたりの物流コストが高い
● 物流コストが高いため大消費地に近いエリアで生産し、移動距離を最小化するような生産体制が構築される
● ビール等を除くと消費期限が長く、常温で保存ができるため、保管方法に融通性がある

1点目は、飲料が重量物であるため、他の食品と比べてトラックに積載できる容積が小さく、単位あたりの物流コストが高いという点です。飲料は内容量に対して重量があるため、トラックの最大積載量の制限により、積載効率が低下してしまいます。その結果、輸送コストが割高になりがちです。

2点目は、物流コストを抑えるために、大消費地に近いエリアで生産し、移動距離を最小化するような生産体制が構築されるという特徴です。飲料メーカー各社は、関東、近畿、中部といった大消費地の近郊に工場を設けることで、輸送距離を短くし、コスト増加を防いでいます。

3点目は、ビールなどの一部の商品を除けば、多くの飲料は消費期限が長く、常温での保存が可能なため、保管の方法に融通性があるという特徴です。消費期限の長さから在庫の回転率を上げる必要性は低く、常温での保管が可能なので特殊な設備を必要としません。そのため倉庫内のレイアウトの自由度が高く、保管効率を上げやすいというメリットがあります。

参考:国土交通省|荷主業界ごとの商慣行・商慣習や物流効率化の取組状況の調査報告書~飲料・コールドチェーン編~(https://www.mlit.go.jp/common/001198488.pdf)

1-2. 飲料業界の流通構造

下図は飲料・酒類の物流の流通構造と、各プレイヤーの事業所数・総売上高を示したものです。
(※数値は平成28年の経済センサスによる。)

引用元:国土交通省│飲料・酒における持続可能なトラック物流を目指して (http://nsk.c.ooco.jp/pdf/kaiho/218_07.pdf)

生産段階では国内メーカーが約3,000か所の生産拠点で飲料を製造しています。製造された商品は、メーカー自身の倉庫に加え、卸売業者のセンター・倉庫、さらにはその先の小売業者のセンター・倉庫へと多段階で配送されます。

小売り段階では、スーパーやコンビニ、酒類販売店など合計約8.9万か所の小売店舗で販売されるほか、約248万台の自動販売機でも販売されます。さらに料飲店・飲食店など約51万か所、娯楽施設など4.8万か所でも提供されており、非常に多岐にわたる流通経路で消費者に届けられる構造となっています。

卸売段階の売上高は約10.7兆円、小売段階では小売店舗が約4兆円、自動販売機が約0.7兆円、料飲店・飲食店が約4.3兆円、娯楽施設が2.8兆円の市場規模があり、川下に行くほど市場が拡大している状況です。

このように飲料の物流は、少量多頻度の輸配送が必要とされる川下の小売・飲食業態により近い段階で、多くの商品を効率的に仕分け・輸送・保管する必要があります。そのためメーカーから小売までサプライチェーン全体で、いかに商品特性に合わせて輸配送や在庫の最適化を図るかが重要な課題となっているのです。

出典:一般社団法人日本加工食品卸協会|飲料・酒における持続可能なトラック物流を目指して (http://nsk.c.ooco.jp/pdf/kaiho/218_07.pdf)

2. 飲料業界の物流における課題

飲料業界の物流には、以下のような課題が存在します。

● 輸送時のCO₂排出量削減
● 消費期限や味・風味の劣化への対策
● 保管や品質維持のコスト削減
● 2024年問題への対応

これらの課題に対して、業界全体で効果的な解決策を見出し、実行していくことが求められています。

2-1. 輸送時のCO₂排出量削減

飲料は重量物であるため、輸送時のCO₂排出量が他の食品と比較して多くなる傾向にあります。CO₂排出量を削減するためには、輸送効率の向上が不可欠です。
その解決策の一つとして、車両の共同活用があげられます。例えば、アサヒグループでは、ビールの国内需要減少を見込み、2007年から飲料をビールの物流インフラに乗せる形でグループ内の共同化を進めてきました。
この取り組みにより、設備稼働率の改善だけでなく、需要の波動が異なる商品を取り扱うことで平準化にも成果を上げています。今後は飲料の物量増大が予測されることから、更なる物流効率化が求められています。

2-2. 消費期限や味・風味の劣化への対策

飲料は消費期限が比較的長い商品が多いものの、味や風味の劣化は品質面での大きな課題です。この課題に対しては、パッケージの技術革新が有効です。

例えば、高いガスバリア性を持つ透明ハイバリアフィルム「GL FILM」を用いることで、飲料の風味や品質を長期間保持することが可能になります。「GL FILM」は酸素や水蒸気の透過を防ぐことで内容物の劣化を防ぎ、消費期限の延長にも寄与します。このような技術を取り入れることで、飲料のおいしさを保ちつつ、輸配送や在庫管理の効率化も実現できます。

2-3. 保管や品質維持のコスト削減

飲料の物流コストにおいて、保管コストの占める割合は小さくありません。倉庫内の温度・湿度管理など、品質維持のための設備投資と運用コストが発生するためです。
この課題に対しては、AI・IoTを活用したスマートな倉庫管理が有効です。倉庫内の環境データを細かくモニタリングし、必要な場所に必要な量の空調を行うことで、省エネと品質維持の両立が可能となります。また、需要予測に基づいた在庫の適正化により、過剰在庫を減らし、保管スペースの有効活用にもつながります。

2-4. 2024年問題への対応

2024年問題とは、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用され、現状の輸送力を維持できなくなるという課題です。飲料業界においても、ドライバー不足により安定的な商品供給に支障をきたすことが懸念されています。

この課題への対応として、一般社団法人全国清涼飲料連合会が主導となり、業界全体で取り組みを進めています。具体的には、ドライバーの長時間労働につながる配送先での「長時間待機の削減」や「付帯作業の改善」に向けて、関連業種と協力して改善策を講じていく方針です。また、物流におけるDXの推進など、具体的施策の検討も開始しました。

2024年問題は飲料業界だけでなく物流業界全体の課題ですが、業界団体が旗振り役となって行政や他業種と連携しながら対応を進めることで、持続可能な物流の実現を目指しています。

参考:一般社団法人全国清涼飲料連合会|2024年問題を見据えて 清涼飲料業界、物流課題改善への取り組みを開始 (https://cdn.kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M102108/202210077841/_prw_PR1fl_cVK5ymoe.pdf)

3. 常温保存技術が飲料物流のコスト削減に貢献

前述の飲料物流における課題のうち、消費期限や味・風味の劣化への対策として、近年は長期保存に適したパッケージの開発が進んでいます。

特に、ハイバリアフィルム「GL FILM」の採用が広がっており、飲料の長期常温保存を可能にしています。これらの技術は、冷蔵保管の必要性を減らすことで保管コストの削減に寄与するだけでなく、輸配送時の温度管理の負荷軽減にもつながります。

3-1. 無菌充填包装

無菌充填包装とは、商品を高温で殺菌し、無菌状態を保ったまま容器に充填・密封する技術です。容器内を無菌に保つことで、常温での長期保存を可能にします。
この技術は、牛乳などの乳製品で古くから用いられてきましたが、近年は清涼飲料でも採用が進んでいます。例えば、「アイクレオ 赤ちゃんミルク」は、母乳に近い成分設計でありながら、無菌充填包装によって常温で6ヶ月間の保存を実現しています。
また、コーヒー飲料や茶系飲料など、香りや風味が重要な商品でも無菌充填包装が用いられ、長期間おいしさを保つことが可能になっています。
(出典:農林水産省 aff(あふ)19年9月号 (https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1909/spe1_02.html))

3-2. GL FILM

GL FILMは、TOPPANが独自に開発した高バリア性の透明フィルムです。酸素や水蒸気の透過を抑える高いガスバリア性を持ち、内容物の劣化を防ぎます。
GL FILMを飲料パッケージに用いることで、いくつものメリットが得られます。
第一に、内容物の風味や品質を長期間保持できるため、飲料の消費期限を大幅に延長することが可能です。
第二に、常温流通・常温保管を可能にすることで、保管コストと輸配送コストの大幅な低減が見込まれます。冷蔵設備への投資や電力コストを抑えられるだけでなく、定温管理の必要もないため、物流の効率化にもつながります。
第三に、アルミ箔の代替としてGL FILMを使用することで、環境負荷の低減も期待できます。GL FILMはアルミ箔と比べて製造時のCO₂排出量が少なく、軽量化による輸送効率の向上も見込めるためです。
以上のように、GL FILMは飲料メーカーの物流コスト削減と環境対応を同時に実現する、画期的なソリューションと言えるでしょう。

4. TOPPANのカートカンなら消費期限の延長で物流にも貢献

TOPPANでは、先述の高バリア性フィルム「GL FILM」の技術を応用し、飲料用紙容器「カートカン」の提案を行っています。

カートカンは、GL FILMをアルミ箔の代替としてラミネートに用いた紙容器です。アルミ箔と同等以上のバリア性を実現しながら、紙の持つ軽量性や環境適性を兼ね備えています。
その特徴は以下の3点に集約されます。

● 高いバリア性による内容物の品質保持と消費期限の延長
● 軽量化による輸送効率の向上とCO₂排出量の削減
● 紙の採用による環境負荷の低減と資源の有効活用

カートカンは内容物の酸化や劣化を防ぐことで、飲料の風味や品質を長期間保つことが可能です。これにより、消費期限を従来の紙容器よりも大幅に延ばすことができます。その結果、在庫管理の負担が軽減され、配送頻度を下げることで物流の効率化が図れます。
また、カートカンはアルミ箔を使わないため、アルミ箔使用の紙容器と比較して約20%の軽量化が実現できます。容器の軽量化は、輸送時の積載効率を高め、トラック1台あたりの輸送量を増やすことにつながります。これは輸送コストの削減だけでなく、CO₂排出量の抑制にも寄与します。
さらに、カートカンは使用済み容器のリサイクルが容易であるという点も見逃せません。紙は再生可能な資源であり、アルミ箔を使用しないことで、よりクリーンなリサイクルが可能となります。
以上のように、カートカンは飲料の物流課題の解決に向けた有効なソリューションです。消費期限の延長による在庫管理の適正化、輸送の効率化、CO₂排出量の削減、環境負荷の低減など、物流を取り巻く諸問題に対して多面的なアプローチを可能にします。

2024.05.22

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