コラム

パッケージの「ガスバリア性」とは?品質維持で、賞味期限の延長や販路の拡大にも貢献

企業が製造した商品を、消費者のもとへと届ける上で、「パッケージ」は欠かせません。

パッケージにもさまざまな役割がありますが、多くの場合もっとも重視されるのは「いかに商品の品質を維持できるか」ではないでしょうか。

その際に重要なキーワードが「ガスバリア(性)」です。

ガスバリア性に優れたパッケージを採用することで、食品であれば賞味期限をより延ばして売り上げや販路の拡大につなげることもできますし、結果として食品ロスなどの社会課題の解決にも寄与できます。

ビジネスにおいてさまざまなメリットをもたらす「ガスバリア性」。この記事ではその機能やメリット、実際の用途などを詳しく解説します。


ガスバリア性とは?

「ガスバリア性」とは、酸素や水蒸気などの気体の通しにくさ(透過しにくさ)を指します。基本的にはガスバリア性に優れているほど、包装した商品の劣化を防ぎ、品質維持が可能です。

ガスバリア性が求められるケースはさまざまです。鮮度や品質を保たなくてはならない食料品はもちろん、医療医薬品の保護や電器・機械部品などの工業製品を湿気などから守る際にも有効です。

ガスバリア性

ガスバリア性能は素材によって異なります。

馴染みのあるプラスチックフィルムの場合、透明で商品の中身が見えやすいといったメリットがある一方で、一般的にガスバリア性は高くはありません。そこでバリア性を強化するために、別の素材のプラスチックフィルムを重ねるケースもあります。

反対にアルミ箔といった金属箔の場合、ガスバリア性に優れており品質維持には適しているものの、プラスチックフィルムのように透明ではないため、包装した時に中身の商品が見えないといった欠点もあります。

素材によって一長一短なので、商品の特性に合わせてパッケージの素材を検討することになりますが、ガスバリア性を重視する場合、近年では低コストで利用しやすいプラスチックフィルムを基材として、その表面にガスバリア性を高めるためのバリア層を形成している商品(バリアフィルム)が多数開発されています。

バリアフィルムは大きく「透明バリアフィルム」と「不透明バリアフィルム」に分けられますが、特に前者はさらに3種類に分類することが可能です。

1つは、そもそもバリア性をもつ樹脂を使用してバリア層を形成する「樹脂系バリアフィルム」を採用するケース。2つ目は、ポリエステル(PET)やポリプロピレン(OPP)などの基材の表面に、ガスバリア性の高いコーティングを施す「コーティング系バリアフィルム」。そして3つ目は、 蒸着(金属や酸化物などを蒸発、気化させて、基材の表面に薄膜を形成する加工方法)によってバリア層を形成する「透明蒸着フィルム」です。

このようなガスバリア性に優れたパッケージは、国内のみならず世界的にも需要が増しています。2022年5月に発表された調査によると、世界のバリアフィルムの市場規模は、2021年時点で約198億ドル。2028年まで年平均で7%以上と高い成長率が予測されています。


ガスバリア性に優れたパッケージによるメリット

さて、ここまでガスバリア性について説明してきましたが、ここからは改めて、パッケージのガスバリア性を高めることがビジネスにおいてどのようなメリットにつながるのか、いくつかの観点から具体的に見ていきましょう。

1:賞味期限/消費期限の延長で、売り上げ拡大に

ガスバリア性を高めることで、商品の酸化や変色を防止したり、風味を損ねずにより長期間保存したりすることが可能になります。それはつまり、賞味(消費)期限表示を延ばすことにもつながります。

そして賞味期限を延ばせれば、それだけ店頭で販売できる期間も長くなり、売り上げの拡大にもつながっていくでしょう。

実際、過去に京都市が市内の食品スーパーと協力して行った実験によると、店頭での販売期間を、賞味期限や消費期限の当日あるいは1日前までに延長したところ、売上額がおよそ6%増加したとの結果も出ています(*1)。

2:食感や香りなど、商品の品質を保持

賞味期限の延長とも重なりますが、高いバリア性で品質を維持できるということは、すなわちその商品が持つ価値を損なわずに消費者に届けられるということでもあります。

食品の場合、例えば食感はパッケージが大きく貢献できる部分です。ガスバリアによって、水蒸気の透過を防ぐことで、クッキーのサクサク食感やのりのパリパリ感などをより長期間保持することが可能です。

またガスバリアによって保香性を高めることで、香りや風味を維持することもできます。酸素の透過を防ぐことで、例えばめんつゆ中のお酢の成分やせんべいに練りこんだ海老の香りなどが酸化してしまうのを防ぐ効果が期待できるのです。さらに、例えばカレー粉などの香りの強い製品の場合には、他の商品への匂い移り防止にも役立ちます。

ガスバリア

3:販路開拓、海外展開にも有利に

またパッケージのガスバリア性を高めることに伴う賞味期限や消費期限の延長は、メーカーにとって販路の開拓にもつながります。

メーカーが小売業者に対して商品の受注提案を行う場合、バリア性を高めて賞味期限を延ばせれば、店頭での廃棄や値下げのリスクを避けたい小売業者にとってより魅力的な提案ができるようになります。

また海外展開をする場合には、商品の品質維持が特に重要です。

例えば船便で商品を輸出する場合であれば、輸送に数ヶ月かかることも珍しくありませんし、国によっては日本以上に販売する際のリードタイムを長く取るよう求められることもあります。

近年、食料品の輸出は右肩上がりで増えており、2021年の農林水産物・食品の輸出額は、前年比約25%増の1兆2,300億円以上(*2)。ガスバリア性に優れたパッケージを採用することで、こうした新たな販売機会を見出すこともできるかもしれません。

4:SDGsでも注目の「食品ロス」削減など、社会課題の解決にも貢献

また、前述のように商品の販売期間を延ばすことで、社会課題の1つである「食品ロス」の削減にも貢献できます。

SDGs(持続可能な開発目標)などへの関心も高まる中、食品ロスの削減を重要な経営課題の1つに位置付ける企業も少なくないでしょう。ガスバリア性の高いパッケージを採用して商品の品質を長期間保つことで、課題解決はもちろん、消費者への企業姿勢のアピールにもつながっていきます。

また近年、国内では食料品へのアクセスに関する問題も指摘されています。

高齢化や単身世帯の増加によって、過疎地域を中心に、食料品の購入に対して不便を抱えている人が増加。このような人たちの買い物頻度が低下することに伴って、家庭内での食品の保存期間が長期化していくと考えられています。この点でも、ガスバリア性に優れたパッケージが果たす役割は今後ますます大きくなってくると言えるかもしれません(*3)。


TOPPANが開発する「GL FILM」——バリア性に加え、透明性やエコフレンドリーを実現

ガスバリア性に優れたフィルムとして、TOPPANでは「GL FILM」を開発しています。


これは、TOPPANが持つ透明蒸着加工とコーティングの技術を活用した、高いバリア性能を持つ透明のバリアフィルムです。前述のような商品の鮮度保持やそれに伴う賞味期限の延長を実現することができ、透明蒸着バリアフィルムで世界トップシェア(当社調べ)を誇ります。

それだけではなく、エコフレンドリーな点も特徴の1つです。プラスチック成形品やアルミフィルムの代替として利用すれば、プラスチック使用量や、製造時の二酸化炭素(CO₂)排出量の削減にも寄与します。

実際にTOPPANでは、バリアフィルムを使用したレトルト食品パウチとモノマテリアル口栓付き食品パウチにおいて、2021年度の1年間の出荷量からCO₂排出量を算出した結果、アルミ箔を用いたパッケージに比べ、81,000トンのCO₂排出量削減効果を得ることができました。同じ基準で算出した2020年度の実績63,000トンから削減効果が約29%増加しており、環境配慮への取り組みが進んでいます。SDGs(持続可能な開発目標)など、環境配慮や省資源化などの推進に向けて、ガスバリア性の高い容器やパッケージの価値がますます高まっているのです。

食料品はもちろん、医薬品や工業部品など幅広い用途で利用されています。

GL FILMの詳細はこちらの製品ページをご覧ください。


また実際の採用事例はこちらからご覧いただけます。


出典
*1出典:販売期限の延長による食品ロス削減効果 に関する調査・社会実験 報告資料
*2出典:農林水産省「2021年の農林水産物・食品の輸出実績」について
*3参考:一般社団法人 日本化学工業協会 SDGs部会 勉強会資料

2023.11.21

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