ロングライフ紙パックとは?活用が広がる理由を紹介
ロングライフ紙パックは、環境に配慮した包装ソリューションとして注目を集めています。持続可能な社会の実現に寄与するだけでなく、実利的なメリットがある点も大きなポイントです。
そこで今回は、ロングライフ紙パックの概要から、活用シーン・環境への影響・導入で得られるメリットについて解説。循環型社会の形成に関心の高い方や食品業界に携わる方はもちろん、飲食物のEC販売を手掛ける方もぜひご覧ください。
ロングライフ紙パックとは
ロングライフ紙パック(LL紙パック)は、主に紙で作られているにもかかわらず、長期間の保存が可能なパッケージです。
外側は紙、内側はアルミ箔などのバリア材を使用した紙パックのことで、内容物を酸化や湿気から守り、常温で数ヶ月ほど品質を保持することができます。
主原料が紙のため、プラスチックの使用量が削減される「減プラ」にもつながることから、環境に優しいパッケージといえるでしょう。
ロングライフ紙パックの活用シーン
ロングライフ紙パックは、牛乳・ジュース・スープなどの飲み物にとどまらず、 豆腐やトマトの水煮などのパッケージとしても使用されています。
そんなロングライフ紙パックは、常温で長期間の保存が可能なことから、災害への備え・アウトドア・EC通販・フードバンクを通じた寄付など、幅広いシーンで活用されています。
ロングライフ紙パックが注目される背景
ロングライフ紙パックが注目される背景には、近年の「環境問題への関心の高まり」があります。
家庭ごみの内訳を容積比で見てみると、プラスチックごみが約半分を占めています。飲料用をはじめ、ペットボトルは容積が大きいため、どうしてもごみの量を増やす要因になってしまいます。
ロングライフ紙パックであれば、廃棄する際に小さく折り畳めることから、容積を小さくする「減容化」の面でとても優れており、環境に優しい容器であることがわかります。
ロングライフ紙パックは海外ではスタンダード
環境負荷の低さと長期保存が可能な点から、ロングライフ紙パックは環境意識の高い海外では積極的に使われています。
例えば、海外では2015年ごろから、ペットボトルに代わってロングライフ紙パックを容器にしたミネラルウォーターの出荷数が伸びており、ヨーロッパではホテルで提供する飲料水をペットボトルから紙パックに変更するケースもありました。
日本でも、2023年に開催されたG7広島サミットで紙パック入の水が採用されるなど、ロングライフ紙パックへの関心は高まりつつあります。現在、ロングライフ紙パックの販売量は、国内の飲料用紙容器の約25%を占めています。
ロングライフ紙パックの活用で環境負荷軽減を期待
ロングライフ紙パックは再生可能資源を7割以上活用して作られており、主原料は紙です。そのため、使用後はリサイクルすることができます。
さらに、常温保存が可能で冷蔵などにかかるエネルギー消費が抑えられる点、 紙パックが直方体の形状をしているためデッドスペースがなく、輸送効率が向上してトラックの台数が減少することから、温室効果ガスの排出抑制につながる点もポイントです。
つまり、ロングライフ紙パックは、生産過程・輸送・使用後の全てにおいて、環境負荷軽減が期待できます。
一方で、ロングライフ紙パックの課題のひとつが、一部アルミが使用されている点です。リサイクルのため、アルミと紙を分離するには特殊な処理が必要ですが、処理可能な施設の数が少なく、その整備には莫大なコストがかかるためです。
現在、TOPPANをはじめとするいくつかのメーカーが、アルミに代わる「透明バリアフィルム」を開発・供給しています。アルミを使用しないことから、紙パックのリサイクル率の向上や、資材面でのCO₂排出量低減が期待されています。
環境負荷軽減だけじゃないロングライフ紙パック導入のメリット
ロングライフ紙パックには、環境負荷軽減に寄与するだけではなく、以下のような導入メリットがあります。
・常温保存ができるため冷蔵設備が不要
・収納や廃棄のしやすさをアピールできる
常温保存ができるため冷蔵設備が不要
ロングライフ紙パックは、常温保存が可能なため、冷蔵設備が不要となります。
これにより企業は、冷蔵設備の設置コストが削減できます。
また、2021年より上昇傾向にあるエネルギーコスト(冷蔵にかかる運用コスト)の削減も可能です。
収納や廃棄のしやすさをアピールできる
ロングライフ紙パックは、缶やペットボトルなどと比較して軽量・コンパクトで、収納・廃棄がしやすいメリットがあります。
これは物流・保管コストの削減につながるほか、消費者へ利便性をアピールできるポイントにもなります。
TOPPANのカートカンならアルミレスでリサイクルも可能に
TOPPANが開発した「カートカン」は、円柱状のロングライフ紙パックです。従来のロングライフ紙パックで使用されていたアルミなどの金属類を使っておらず、代わりにTOPPANが独自開発した透明バリアフィルム「GL FILM」が使われ、そのフィルムが内容物の劣化を防ぐ役割を果たしています。
先にも触れたとおり、アルミが使われているロングライフ紙パックは、アルミと紙を分離するのに特殊な処理が必要です。そうした処理ができる工場などのインフラ整備には莫大なコストがかかることから、リサイクルの面で大きな課題を抱えていました。
しかし「カートカン」であれば、通常の紙パックと同じリサイクルルートで回収することができ、トイレットペーパーなどにもリサイクルされていることから、より環境に配慮したエコな紙パックといえます。
まとめ
ロングライフ紙パックは、環境負荷軽減と経済的メリットを両立する革新的な包装ソリューションです。
常温による長期保存が可能なため、保管・流通におけるコスト削減に大きく寄与します。
これまで、ロングライフ紙パックに使用されるアルミなどの金属類は、リサイクル上の課題でした。
しかしTOPPANが開発した「GL FILM」を使用した「カートカン」などが登場しているため、 このような課題も解決されつつあります。
ロングライフ紙パックの普及は、持続可能な社会に向けた大きな一歩です。
日本でもすでに流通していますが、今後のさらなる認知・普及が望まれます。
2024.05.15