メタバース関連

不動産でVRを活用するメリットとは?具体例や導入するべきサービスを4つ紹介

不動産業界のVR導入が業務を効率化させ、業績アップにつながることをご存知でしょうか。

アナログなイメージが強い不動産業界ですが、近年はデジタル技術の発展や新型コロナウイルスの影響などによりIT化が進みつつあります。その中でも、VRが今注目を集めています。

この記事では、不動産業界の方で「VRを自社でビジネス活用したい!」とお考えの担当者様に向けて、メタバースを活用した不動産の販促について業界の動向を解説します。


■VRの導入が進む不動産業界

不動産業界では、物件の内覧や現地確認でVRを活用するケースが増えています。VRを活用すれば、現地に足を運ばずともオンラインで物件を見学できます。

近年、物件の内覧をオンライン化する企業が増えました。エンターテイメントやゲーム業界での活用に注目が向きがちなVRですが、実は不動産業界の業務とも相性が良いのです。

VRで物件のバーチャル空間を作成する方法には以下の2つが挙げられます。

・CGで物件を再現する方法
・物件の実写データを用いて再現する方法(Matterport)

「CGで物件を再現する方法」は、ゲームのマインクラフトのようなイメージで、一般的に思い浮かべるメタバース空間がこれにあたるでしょう。一方、「物件の実写データを用いて再現する方法(Matterport)」では、実際に撮影した画像を使って3D空間を作成するので、現地にいるようなライブ感を演出することができます。

物件の実写データを用いる方法は、低コストかつ短納期で導入できる点がメリットといえます。「VRを活用した内覧システムを検討しているが、まずは試験的に導入したい」という不動産業界の企業におすすめのシステムといえるでしょう。

■不動産業界においてVRを活用するとはどのようなイメージか

「不動産業界でVRを活用する」といってもピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。まずはバーチャル技術の「定義」と「種類」を理解する必要があります。バーチャル技術は大きく分けて以下の2つに分けられます。

・VR
・メタバース

VRとは、「バーチャルリアリティ」の略称で、ヘッドセットを利用し独自の仮想空間に入り込むシステムです。ヘッドセットを装着することで360度映像が広がり、その場で実際に体験しているような感覚を味わうことができます。VRはゲームやエンターテイメント業界で広く普及しており、セミナーなどのビジネスシーンでもVRによる疑似体験が活用されています。

不動産業界でよく言われる「VR内覧」とは、VR技術を利用して、実際に現地にいるような感覚で物件を内覧する方法です。ただし、自宅でVR内覧を行うにはヘッドセットなどのデジタル機器が必要なため、少しハードルが高い点が気になるポイントでしょう。

また、店舗にVRゴーグルを用意して来店を促す方法もありますが、それでは「いつでもどこでも」というVR内見のメリットが半減してしまいます。

一方、メタバースとは、インターネット上に作られた仮想空間のことで、自分の分身である「アバター」の姿でメタバースにアクセスし、他のユーザーとコミュニケーションを取ったり、イベントに参加したりしてその空間を楽しみます。こちらはPCやスマートフォンから利用するのが一般的であり、ハードウェア的なハードルは低いといってよいでしょう。

不動産業界でもメタバースが活用されています。たとえば、メタバース上の店舗で相談したり、実際に撮影した物件をメタバース上で内覧したりする方法が挙げられます。

現在、不動産業界ではVRとメタバースの両方が活用されています。バーチャル空間で見学して購入を検討することは、不動産業界と相性が良いため、今後の不動産業界ではこれらの技術の活用が必要不可欠となっていくでしょう。

■不動産業界でVRを導入するメリット

不動産業界でVRを導入するメリット イメージ

不動産業界では、多くの企業がVRやメタバースを活用して成果をあげています。ここでは、不動産業界でVRやメタバースを導入することで得られるメリットを解説します。

地方の方・忙しい人でもリモートで来店できる

VRやメタバースを導入する大きなメリットとして、現地へ実際に足を運ばなくてもリモートで物件を内覧できる点が挙げられます。店舗から離れたところに住んでいる人や、多忙でまとまった時間を確保できない人にとって、リモートはありがたいものでしょう。

たとえば、関西から関東など、遠方への住み替えを検討しているケースでリモート来店が役に立ちます。馴染がないエリアほど、物件周辺の雰囲気を把握することが重要ですが、遠方への見学は頻繁に行けません。交通費や時間に限りがあるため、内覧に行きたくても気軽に行けないケースも多いのです。

その点、VRやメタバースを利用したリモート内覧は、自宅にインターネット環境さえあれば気軽に物件を内覧できます。お客さま側には遠方まで足を運ばなくて良いというメリットがあり、企業側には「とりあえず見るだけ」という内覧に、時間と手間を使わずに済むというメリットが生まれます。

また、事前に用意された空間を見学するVR内覧は、スケジュール調整や予約が不要です。そのため、お客様側にはスキマ時間に見学できるというメリットがあります。複数件の物件見学は丸一日かかることも少なくないため、空いた時間に内覧できれば時間を有効に使えるでしょう。また、企業側のメリットとして、物理的な内見の際に必要な立ち合いが、オンラインであれば不要になるという点が挙げられます。

このように、現地にすぐ行けない距離に住んでいる方にとって、VRやメタバースを活用したリモート来店は便利なシステムとなるでしょう。さらに、二世帯での居住を考えているお客様の場合、双方が離れた場所にいても、同時に同じ物件の内見ができる点もVR内覧のメリットです。

写真だけの物件確認よりもリアルなイメージがつきやすい

VRやメタバースは、画像だけで物件を見るよりリアルな雰囲気を感じられます。PCやスマホの画像は、全体的な雰囲気をつかむだけであれば問題ありませんが、気になる部分をフォーカスして確認できません。

たとえば、キッチンの使い勝手を確認する場合は、PCやスマホの画像だけではスペースの感覚がつかみ辛いでしょう。しかし、VRやメタバースを利用してキッチンに立った位置から見てみることで、リアルな雰囲気を感じ取ることができます。複数のキッチンに立ってみれば物件の比較にも役立ち、より自分好みの物件を選択できるでしょう。

新築戸建て物件の場合、VRやメタバースによる内覧を活用したことにより1週間の内覧数が3件から5件に増えたとします。成約の歩留まりが10%だとした場合、1ヶ月あたり約10件の内覧が増えるため、成約数が1ヶ月で1件追加されます。1件あたりの利益額が500万円だと仮定すると、500万円✕12ヶ月で年間6,000万円の利益が増加する計算となるのです。

上記は一例に過ぎませんが、内覧にVRやメタバースを利用すれば内覧数が増えるだけでなく、無駄な業務が省け営業活動に専念できるため、成約率も向上するでしょう。VRやメタバースの導入は、お客様側のメリットはもちろんのこと、企業の業績アップも期待できます。

VRをすでに導入している他社にマーケティングで後れを取るリスクを回避できる

VRやメタバースによる内覧は、すでに多くの企業が導入しています。中にはVRの内覧のみで成約しているケースもあり、他社とのマーケティングで遅れをとるリスクを回避するためにも、VRやメタバースの導入が必要だといえます。

住友不動産は、メタバースショッピングモール「メタパ」上に、住宅販売拠点である「メタマンションギャラリー」を開設し、新築マンションの販売を行っています。メタバース上で物件を内覧することで、実際に室内にいるかのような体験ができます。さらに、入居中や未完成の物件も内覧できるため、オフラインだけでは実現できない営業活動で成果をあげています。

また、大和ハウスでは、アバターを利用して担当者と見学者がコミュニケーションを図れる「メタバース住宅展示場」を公開しています。見学者はスマホやPCからアクセスでき、最大6名の見学者とともに、担当者に質問や相談をリアルタイムですることができます。それにより、遠隔でも住宅展示場で説明を受けているような臨場感を味わえ、気軽に相談できるようになりました。

上記のとおり、一部企業ではVRやメタバースを活用した内覧システムを導入しています。

さらに、VR内覧は早期成約にも役立つシステムです。物件が販売されるタイミングで室内を撮影しておけば、お客様はリモートによりすぐに内覧できます。入居中の物件を内覧する場合、通常は入居者や担当者とのスケジューリングが必要ですが、リモート内覧ではスケジュール調整が不要なため、早期成約が実現するのです。早期成約により空室期間が短縮できる点も大きなメリットです。

不動産オーナーへの営業時にも役立つ

不動産オーナーへの営業時にも、VRやメタバースのシステムが役立ちます。VR内覧をうまく活用した掲載例を不動産オーナーに提示すれば、より具体性なイメージが湧き、安心して賃貸募集を任せてもらえるでしょう。

不動産オーナーにとって、賃貸経営で一番避けたいリスクは空室リスクです。空室期間が長いとキャッシュフローが悪化し収益率が落ちてしまうため、不動産オーナーが最も重要視しているのは空室対策がしっかり行われているかどうかです。

その点、VRやメタバースによる内覧システムは空室対策に適しています。これまで、大学進学や就職などで遠方から部屋探しをする際は、現地に直接足を運んでもらわなくてはいけませんでした。しかし、リモート内覧を導入すれば、遠方からでも気軽に室内の様子が確認できるため、成約率の向上が期待できます。それにより空室期間が短縮され、不動産オーナーに喜んでもらえるでしょう。

リモート内覧は不動産オーナーにとっても多くのメリットがあるので、積極的にアピールしましょう。

■不動産でVR導入できるサービス4選

不動産でVR導入できるサービス4選 イメージ

不動産業界でVRやメタバースを活用する際に導入するサービスを4つ紹介します。

デジタルツイン・ワールドトリップ®

デジタルツイン・ワールドトリップ®は、Matterportデータを用いて実写ベースのデジタルツインを作成するシステムです。実写データを利用するため、CGを一から作成する仮想空間に比べて低コスト・短納期で導入できます。

デジタルツイン・ワールドトリップ®を利用すれば、仮想空間をアバターのガイドがシナリオに応じてオートで案内するため、WEB上で24時間接客が可能になります。それにより、営業時間内に時間が取れないお客様でも、好きな時間にアクセスできるでしょう。

また、アバター同士のチャット機能で、離れた場所にいる家族や友達とも一緒に内覧できます。実際に一緒に内覧しているような感覚を味わえるため、VR内覧では感じづらい「温かみ」を感じながら内覧できるでしょう。賃貸物件であれば、連帯保証人様と一緒に内覧することで、現地に複数回足を運ぶ必要がなくなる点もメリットのひとつです。

ライブ中継機能を利用すれば、現地に設置された固定カメラやウェアラブルカメラでビデオ通話での中継が可能です。たとえば、日当たりは現地でしか確認できないため、ライブ中継機能が役に立ちます。ライブ映像ならではの現地の魅力を、リアルタイムに伝えられることが大きな特徴です。

本格的なクオリティのメタバースシステムは、デジタルツイン・ワールドトリップ®をおすすめします。実写ベースのバーチャル空間を導入してビジネスを拡大したい方は、検討してみましょう。

Theta Biz

Theta Bizとは、ワンショットで360度の景色を撮影できるThetaのデータを利用し、お客様にコンテンツを提供するサービスです。Theta Bizには、WEBサイトに360度閲覧できる画像を埋め込んだり、URLを共有したりする機能があります。

不動産で使える代表的な機能として「ツアー機能」が挙げられます。これは、室内で複数枚撮影した360度画像を間取り図と連携して表示させることで、あたかも室内を行き来するような感覚が味わえる機能です。

Theta Bizの注意点は、ズームした際に遠くのものを高精細に捉えられない点です。そのため、物件の細かい部分を比較したい場合は現地で確認するようにしましょう。

メタパ®

メタパ®とは、バーチャル空間を簡易的なCGで作成し、リアルとバーチャルが融合したメタバースショッピングモールです。実際の店舗に足を運ばずとも、バーチャル空間の中で店舗を巡ることが可能です。

不動産業界では、メタパ®の中にマンションギャラリーや物件紹介する店舗を構えることで、メタバースを自社のサービスに導入できます。バーチャル空間で物件紹介動画や3次元の物件情報を提供すれば、お客様は店舗にわざわざ足を運ばなくても情報を得ることができます。また、ギャラリーで実際の室内にいるかのようなリアルな体験をすることで、購買意欲をより高める効果があるでしょう。

MiraVerse®

MiraVerse®とは、VR空間で色や素材などの組み合わせを高精細の3DCGでシミュレーションできるクラウドサービスです。実際に組み合わせることが難しい住宅や車を、MiraVerse®を活用して色や素材の相性を効率よく検討できます。
住宅設備や車のショールームをバーチャル化するサービスでは、遠方のためショールームに出向くことが難しいお客様との商談をバーチャル空間で行うことができます。

また、リフォームや内外装を検討する際にもMiraVerse®が活用できます。MiraVerse®なら実際の間取りや、色・素材の組み合わせをバーチャル空間で再現できるため、より効率的に提案営業を行えるでしょう。

■まとめ

この記事では、VRやメタバースを活用した不動産の販促について解説しました。VRを活用した内覧はすでに多くの企業が採用しています。VRやメタバースの内覧を利用することで、遠方のお客様にもリーチできるため、見込み客の取りこぼしが少なくなります。また、VR内覧は担当者の工数を減らし、業務の効率化にもつながります。

今後も不動産業界では、VRやメタバースの導入が進むでしょう。デジタル技術を活用して、ビジネスをさらに成長させたい方は、VRやメタバースをできるだけ早くリサーチし、導入に向けて先行的に手を打ってみてはいかがでしょうか。

なお、TOPPANでは不動産の遠隔体験サービス「デジタルツイン・ワールドトリップ®」をご提供しています。CGベースの可動空間に比べ、短納期・低コストで導入できるのでVR・メタバース導入に興味をお持ちの企業様はぜひご検討ください。

<執筆者>
杉山明熙
元不動産営業のWEBライター。
不動産営業を12年間経験し店長、営業部長として、売買仲介、賃貸仲介、新築戸建販売、賃貸管理、売却査定等、あらゆる業務に精通。
個人ブログにて不動産営業への転職のお手伝い、不動産営業のノウハウ、不動産投資のハウツーなどを発信。
不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。

あきらの不動産営業への道

2024.04.17

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