VR内見の効果とは?導入を検討中のご担当者さま向けにメリットや活用例を紹介
現地に行かなくても気軽に物件を見学できる「VR内見」は、近年不動産業界で普及している内見方法の一つです。VR内見はZoomなどを用いたオンライン内見とは違い、一度導入すれば担当者の工数を減らし営業コストを削減できます。
VR内見を導入することで、業務が改善化され売上アップにもつながるでしょう。今回は、VR内見のメリットや注意点、ユースケースを紹介します。
■VR内見とは
VR内見とは、実際に現地へ足を運ぶのではなく、インターネット上のメタバースやVRゴーグルなどを用いて内見を行うことです。VRは「Virtual Reality(バーチャルリアリティー)」の略で、日本語で「仮想現実」と訳されます。つまり、その場にいなくても実際に体験しているかのように見せる技術です。近年、不動産業界ではVR内見が広まり、家にいながら物件を見学できる人気のサービスとなっています。
また、似たような言葉で「オンライン内見」というものがありますが、オンライン内見は、担当者が現地へ足を運び、Zoomなどのテレビ電話をお客さまと繋げながら内見するスタイルです。VR内見が事前に用意したデータを利用して内見するのに対し、オンライン内見はその都度担当者が現場へ足を運び対応するという違いがあります。
■VR内見の種類

ここでは、VRやメタバースを活用した内見の種類について解説します。
CGで作成した仮想空間
一つ目はデジタル空間にCGで0から物件を作成し、その空間を内見する方法です。人気ゲーム「マインクラフト」のような仮想空間だというと、イメージがつきやすいのではないでしょうか。
この方法は、新築住宅やリフォームを検討する際によく利用されます。まだ建築されていない新築住宅を図面だけからイメージするのは難しいため、CGにより間取りを作成し、お客様に内見してもらうのです。それによって、お客様は家の雰囲気や広さを体感でき、具体的に検討できるでしょう。
ただし、この手法では空間のすべてをCGで作成しなければなりません。そのため作業が膨大になり、コストが高くついてしまうという点がCGで作成した仮想空間のデメリットです。
実写ベースのMatterportデータによる仮想空間
次に、「Matterport」技術を用いた、実写ベースの仮想空間で内見を行う方法です。CGによって作られたものではなく、実写を元にしたもので空間を内見できるため、より具体的に物件の雰囲気を体感できるでしょう。
この方法は、物件を3Dスキャンカメラという機材で実際の空間を撮影・スキャンし、そのデータを3DのMatterportデータに変換することで仮想空間を作ります。細かいパーツまで1つ1つ作成するフルCGと比較すると、時間・費用面でコストカットにつながる点が特徴です。
フルCGによるVR内見に比べて、低コスト・短納期で導入できるため、「まずは試験導入したい」という不動産業界のご担当者様におすすめの内見システムです。
Matterportデータを用いた実写ベースの内見は、「デジタルツイン・ワールドトリップ」でも導入できます。デジタルツイン・ワールドトリップはアバターを使用できる点が特徴で、訪問者同士の円滑なコミュニケーションが可能です。
■VR内見を活用するメリット

VRやメタバースを活用した内見にはさまざまなメリットがあります。ここでは、メリットを4つ紹介します。
遠方のお客さまにも内見してもらえる
VR内見は、家にいながら物件を内見できる点が大きなメリットです。遠方などで現地へ足を運ぶことが困難な場合でも、距離や時間に関係なく内見できます。
たとえば、大学進学や就職で地方から上京するような層へ効果的にアプローチできます。インターネット環境さえ整っていればVR内見が利用でき、部屋探しのために何度も地方から上京する必要はありません。
VR内見は、「遠方からの引っ越しだけどじっくり物件を選びたい」というお客さまの声にも応えることができるでしょう。
忙しいお客さまにも内見してもらえる
VR内見を活用すれば、忙しいお客さまにも手軽に物件を内見してもらえます。
実際の内見は時間がかかるため、複数の物件を内見すると一日の大半がつぶれるケースもよくあります。
特に、仕事が忙しいハイキャリア層や、急遽異動が決まった会社員などにVR内見が向いているでしょう。このようなお客さまは、まとまった時間が確保できなかったり、不動産会社の営業時間内に複数件内覧することが難しかったりしますが、VR内見を利用すれば、ちょっとしたスキマ時間に物件を内見でき、まとまった時間を確保する必要がなくなります。
賃貸業務でもう一段上の成果をあげるためには、じっくり部屋探しをするお客さまだけでなく、時間がなくて困っている層にもリーチしていかなければなりません。通常であれば取りこぼしてしまうお客さまにも効果的にアプローチできる点もVR内見のメリットです。
無駄な営業コストを削減できる
VR内見はお客さまが自由に内見できるシステムのため、担当が現地に同行する必要がなく無駄な営業コストを削減できます。
お客さまの中には「契約する可能性は低いけど、なんとなく見ておくか」という内見をする方がいますが、その内見に担当者が対応した場合、費やす時間や労力が無駄になってしまう可能性があります。
しかし、VR内見を導入すれば、なんとなく見たいお客様はVR内見で済ますことが多くなるため、担当者はその時間をより確度の高いお客様に費やすことができ、企業全体としても業務効率が向上し売上がアップするでしょう。
VR内見は、お客様の時間や労力を削減できるだけでなく、企業側にも業務が効率化されるというメリットがあるのです。
物件に人が住んでいる状態でも内見可能
VR内見を活用すれば、実際に人が住んでいてる物件でも内見をすることできます。VRやCGで物件データを作成することで、入居中でもそのデータを用いた仮想空間を内見できるのです。
募集中の物件の中には、退去が決まっているが入居中で内見ができない部屋があります。「物件の場所や間取りは気に入っているが室内を見ないと決められない」というお客さまにVR内見をしてもらえば、成約の可能性がぐっと近づくでしょう。
VRやCGで物件データを作成することでVR内見ができ、成約につなげられる点もVR内見のメリットです。
■VR内見の導入前に検討したいこと
VRやメタバースを活用した内見システムには、導入する前に理解しておきたい点があります。ここでは導入前に知っておくべきポイントを2点紹介します。
最初の導入コストはかかる
VR内見を利用するためには、あらかじめシステムを導入する必要があります。これにはコストがかかることを理解しておきましょう。VR内見によって得られた利益で導入コストを回収できなければ導入した意味がありませんが、一度作成した物件の仮想空間データは室内がリノベーションなどで変わらない限り使い続けられるため、作成コストは最初の1回だけで済み、トータルでプラスになるケースが多いでしょう。
Matterportデータを用いたツールの場合は、0から作るのではなく実写ベースで作成するため、コストパフォーマンスに優れています。また、実写を利用するため、実際の物件と仮想空間のイメージが近いというメリットもあります。
このように、VR内見を導入する際は、費用対効果を十分にシミュレーションした上で検討しましょう。
実際の内見の雰囲気とは異なる
VR内見は、担当者に説明を聞きながら内見できるシステムではない上、バーチャル空間という人工的な空間で内見するため、実際に内見するより寂しく、無機質に感じてしまう可能性があることを理解しておく必要があります。
実際の内見は、担当とのコニュニケーションや室内の空気感や質感など、視覚以外の情報も重要なポイントです。それらを仮想空間で完全に再現することは難しいですが、TOPPANのデジタルツイン・ワールドトリップでは、アバターを使ってバーチャル空間の中を歩いて物件の様子を見ることが可能です。チャット機能もあるので、内見時にお客さまと担当者のアバター同士でチャットをしたり、離れた場所にいる家族や友達と一緒に内見することも可能です。この機能により一人だけでなく、コミュニケーションを取りながら内見することができるので、VRであっても実際の内見に近い感覚で物件を検討できるでしょう。
■VR内見のユースケース
実際にVRやメタバースを活用した内見システムにはどのよう事例があるのでしょうか。ここでは、VR内見のユースケースを3つ紹介します。
メタマンションギャラリー® メタパ館

住友不動産は、新築分譲マンションのギャラリーをメタバース空間にオープンしました。これにより、実際にギャラリーに足を運ばなくても、WEB上でギャラリー見学や商談をすることができるようになりました。
「メタマンションギャラリー® メタパ館」は、TOPPANが手がけるメタバースプラットフォーム「メタパ」を活用して実装されました。メタパはリアルとバーチャルを融合したメタバースショッピングモールで、アバターを利用してバーチャル空間内をめぐることができる上、必要な場合は営業スタッフを呼び出し、アバター同士で商談することも可能です。
ショッピングモール型のメタバース空間に出店することで、リアルな店舗を構えるよりコストを抑えられ、短期間で出店できる点がメリットです。現在では非対面式の販売が主流になったことや、不動産業界で契約書類の電子化が進んだことで、新築マンションの販売方法も多様化しているのです。
理想の住まいがイメージしやすいメタバース空間での販売は、今後も拡大していくことが期待されています。
バーチャルショールーム

VR内見の技術を活用すれば、仮想空間でバーチャルショールームを展開することも可能です。TOPPANの「ミラバース」を活用することで、実物を実際に組み合わせてシミュレーションすることが難しい商品でもプランニングできます。
たとえば、リフォームを検討する際にバーチャルショールームを利用することで、デザインの提案や設計を効率化できます。TOPPANの「ミラバース」では、TOPPANが20年以上培ってきたVR技術とノウハウで、高精細な3DCG表現が可能です。また、WEBブラウザで動作するため、誰でも気軽に利用できる点も特徴です。
ハウスメーカーや住宅設備業界はもちろん、自動車業界や家具メーカーにもおすすめのバーチャルツールです。
NTT西日本「LINKSPARK」
NTT西日本は「共に考え、共に創る」をテーマに、先進技術に触れることのできるデモンストレーションスペース「LINKSPARK」を大阪・名古屋・広島・福岡で運営、特に大阪のLINKSPARKを、TOPPANのデジタルツイン・ワールドトリップを使ってバーチャル空間化しています。
これによって名古屋・広島・福岡からでも、大阪のLINKSPARKのバーチャル空間をアバターとなって見学することが可能です。
また、バーチャル空間から現実のLINKSPARKにある分身ロボットや、カメラを装着したガイドにライブ接続して、リアルタイムの大阪LINKSPARKの様子を見るといったことも行っています。
現地を再現したフォトリアルなバーチャル空間と、バーチャル空間のみでは再現できない部分をリアルタイムで中継するシステムを組み合わせて、現地と同様の対面案内を遠隔地のユーザーに提供しています。
このシステムを使ってマンションや一戸建て等の不動産商品をデジタルツイン化することで、まるで現地にいるような感覚で内見案内をすることができます。近隣環境等、現地でしか知りえないことを、現地にいる担当者とお客さまとがアバターライブで確認しながら商談を進めることができます。
■まとめ
本記事では、不動産業界で導入が進むVR内見についてメリットや注意点、活用例などを紹介しました。VR内見は、遠方のお客さまでも気軽に内見できる点や、担当者の業務効率化につながることが特徴です。一方、導入にはコストがかかるため、自社の予算や商品に合ったシステムを導入する必要があります。
TOPPANでは、不動産の遠隔体験サービスにご利用いただけるシステム「デジタルツイン・ワールドトリップ」をご提供しています。CGベースの仮想空間に比べ、短納期・低コストで導入できるので、VR・メタバース導入に興味をお持ちの企業様はぜひご検討ください。
<執筆者>
杉山明熙
元不動産営業のWEBライター。
不動産営業を12年間経験し店長、営業部長として、売買仲介、賃貸仲介、新築戸建販売、賃貸管理、売却査定等、あらゆる業務に精通。
個人ブログにて不動産営業への転職のお手伝い、不動産営業のノウハウ、不動産投資のハウツーなどを発信。
不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。
あきらの不動産営業への道
2024.05.15