コラム

【2024年改定】ADL維持等加算とは?
算定要件やLIFEについて分かりやすく解説

2024年度の介護報酬改定により、注目を集めている「ADL維持等加算」。これは、介護サービスを利用する高齢者のADL(日常生活動作)の維持・改善に積極的に取り組む事業所に対して、評価と報酬が与えられる制度です。特に科学的介護の推進が重視されるなかで、LIFE(科学的介護情報システム)との連動によって、より正確かつ継続的な評価が求められるようになっています。

本記事では、ADL維持等加算の基本的な仕組みから、(Ⅰ)(Ⅱ)それぞれの算定要件や単位数、バーセルインデックスによる評価方法を詳しく解説。さらに、LIFEを活用した評価・算定のスケジュールや加算取得の実務ポイント、併算定できる加算との組み合わせ方についても紹介します。2024年改定に対応するための参考にしてください。


■ADL維持等加算とは
1|ADL維持等加算の目的と仕組み
2|2024年度改定による主な変更点
3|対象となる介護サービスの種類
■ADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件と単位数
1|ADL維持等加算(Ⅰ)の要件と30単位
2|ADL維持等加算(Ⅱ)の要件と60単位
3|バーセルインデックスによる評価方法
■LIFEを活用したADL維持等加算の評価・算定プロセス
1|評価対象期間と算定期間のスケジュール
2|ADL利得の計算方法と基準値
3|届出・申請の手続きと必要書類
■ADL維持等加算を効果的に算定するための実務ポイント
1|科学的介護推進体制加算との併算定メリット
2|WAN-かいごを活用した加算取得の効率化
■まとめ


■ADL維持等加算とは

ADL維持等加算は、利用者の日常生活動作の維持や向上を図る介護サービスの質を評価し、事業所の取り組みにインセンティブを与える加算制度です。

この加算制度により、自立支援・重度化防止に向けた取り組みが適切に評価され、介護サービスの質の向上が期待されています。

1|ADL維持等加算の目的と仕組み

ADL維持等加算は、要介護者のADL(日常生活動作)の維持・向上が重症化予防と自立支援につながる重要な取り組みを評価するため、平成30年度に創設されたインセンティブ型加算です。

バーセルインデックス(BI)による評価方法を採用し、食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、着替え、排便コントロール、排尿コントロールの10項目を100点満点で評価します。

この評価結果をLIFEに提出することで、事業所の自立支援への取り組みが客観的に評価され、介護サービスの質を示す指標として機能しています。

2|2024年度改定による主な変更点

2024年度介護報酬改定では、自立支援・重度化防止に向けた取り組みをより一層推進する観点から、ADL維持等加算(Ⅱ)のADL利得要件が「2以上」から「3以上」に引き上げられました。

同時に、初回の要介護認定があった月から起算して12月以内である者の場合や、他の施設や事業所が提供するリハビリテーションを併用している利用者の場合において、ADL利得の計算方法が簡素化されています。なお、ADL維持等加算(Ⅲ)については、令和5年3月31日の経過措置終了により廃止されました。

3|対象となる介護サービスの種類

ADL維持等加算の対象となる主なサービスは、通所介護、介護老人福祉施設、特定施設入居者生活介護の3つです。これらのサービスでは、要介護者を対象として加算の算定が可能となっています。

地域密着型サービスについては、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護が該当しますが、各市町村が管轄しているため、算定を検討する際は各自治体への確認が必要です。

■ADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件と単位数

ADL維持等加算の算定には、厳格な要件が設定されており、事業所は利用者のADL評価を適切に実施し、一定の改善成果を達成する必要があります。

加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)の2段階に分かれており、それぞれ異なる改善水準に応じて単位数が設定されています。

1|ADL維持等加算(Ⅰ)の要件と30単位

ADL維持等加算(Ⅰ)を算定するためには、評価対象利用者が10人以上であることが基本要件となります。利用開始月と6か月目(サービス利用がない場合は最終利用月)において、一定の研修を受けた者がバーセルインデックスによるADL値の測定を実施する必要があります。

測定結果は、測定した日が属する月の翌月10日までにLIFEへ提出しなければなりません。最も重要な要件として、調整済ADL利得の平均値が「1以上」を達成していることが求められており、これにより30単位/月の算定が可能となります。

2|ADL維持等加算(Ⅱ)の要件と60単位

ADL維持等加算(Ⅱ)は、ADL維持等加算(Ⅰ)と同様の基本要件に加えて、調整済ADL利得の平均値が「3以上」という、より高い改善成果が要求されます。令和6年3月以前に届出済みの事業所については、令和5年4月以降が評価対象期間の始期となっている場合から新基準が適用される経過措置が設けられています。

この高い改善水準を達成した事業所には、その成果に応じて60単位/月という(Ⅰ)の倍の単位数が算定できるメリットがあり、質の高い介護サービス提供へのインセンティブとして機能しています。

3|バーセルインデックスによる評価方法

バーセルインデックスは、利用者の日常生活動作を10項目で総合的に評価する指標として採用されています。
各項目は自立度に応じて段階的に点数が設定されており、合計100点満点で評価されます。

評価は一定の研修を受けた者によって実施される必要があり、厚生労働省作成のマニュアルや測定に関する動画を用いた学習が求められています。適切な評価技術の習得により、客観的で信頼性の高いADL評価が実現され、加算算定の基礎となる重要なデータが収集されます。

■LIFEを活用したADL維持等加算の評価・算定プロセス

ADL維持等加算の取得には、LIFEシステムを活用した体系的な評価・算定プロセスが必要です。事業所は評価対象期間中に利用者のADL値を測定し、その結果をLIFEに提出することで自動的にADL利得が計算され、加算要件の充足状況が確認できます。

1|評価対象期間と算定期間のスケジュール

ADL維持等加算の評価対象期間は、申請日から12か月間となり、その翌年12か月間が算定期間として設定されています。評価対象期間中には、利用開始月と6か月後の2回のADL値測定が必要であり、6か月目にサービス利用がない場合は最終利用月での測定となります。

算定を開始するためには、前年同月に事前の届出が必要となっており、たとえば2025年4月から加算算定を開始したい場合は、2024年4月に届出を提出しなければなりません。このスケジュール管理により、計画的な加算取得が可能となります。

2|ADL利得の計算方法と基準値

ADL利得は、6か月目のADL値から初月のADL値を控除し、要介護認定の状況等に応じた調整係数を加えて算出される調整済ADL利得として計算されます。評価においては、全対象者から上位・下位各1割を除外した評価対象利用者の調整済ADL利得の平均値で判定する仕組みが採用されています。

LIFEにADL値データを提出することで、これらの複雑な計算が自動的に実行され、事業所は算定要件の充足状況を容易に確認できます。この自動計算機能により、事業所の事務負担が軽減され、より効率的な加算取得が実現されています。

3|届出・申請の手続きと必要書類

ADL維持等加算の届出には、「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」と「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」の2つの書類が必要です。届出書の記載においては、「ADL維持等加算〔申出〕の有無」欄に「2 あり」と記入し、同時に「LIFEへの登録」欄にも「2 あり」と記入して提出します。

届出後、LIFEで確認した結果、ADL利得に係る基準を満たさなかった場合は、今後本加算を算定する意思がなければ「ADL維持等加算〔申出〕の有無」を「1 なし」に変更する必要があり、適切な手続き管理が求められています。

■ADL維持等加算を効果的に算定するための実務ポイント

ADL維持等加算の効果的な算定には、他の加算との組み合わせや支援ツールの活用が重要です。科学的介護推進体制加算との併算定により収益を最大化し、さらに専門的なサービスを利用することで業務効率化と加算取得の両立が可能となります。

1|科学的介護推進体制加算との併算定メリット

科学的介護推進体制加算(最低40単位)とADL維持等加算(Ⅰ)30単位を併算定することで、月70単位の算定が可能となります。両加算ともLIFEへのデータ提出が要件となっているため、作業の重複を避けて効率的に算定できるメリットがあります。

LIFEフィードバックを活用したPDCAサイクルの実践により、利用者の状態に応じた個別機能訓練計画の作成から実施、評価、改善までの一連の流れが体系化され、介護の質向上につながります。このような統合的なアプローチにより、事業所の収益性と介護サービスの質の両面で向上が期待できます。

『WAN-かいご』を活用した加算取得の効率化

レクリエーション業務の負担軽減と加算取得を同時に実現したい事業所には、専用ツールの活用が効果的です。TOPPANの介護レクリエーション提供サービス『WAN-かいご』は、個別機能訓練加算対象のレクリエーションを自動提案する機能を備えています。

700種以上のエビデンスに基づいたレクリエーションから、利用者の状態に応じた最適なプログラムをAIが選択し、月間スケジュールを自動作成します。東京大学先端研・身体情報学分野と共同開発した学術的根拠のあるレクリエーションにより、機能改善や利用者の意欲促進が期待できます。

月額3万円のベーシックプランで、レクリエーション業務のDX化と加算取得の両立が可能であり、事業所の収益向上を実現する実用的なソリューションとなっています。

■まとめ

ADL維持等加算は、介護事業所の経営安定化と介護の質向上を実現する重要な制度です。2024年改定により要件が厳格化された一方で、LIFEシステムの活用により効率的な算定が可能となりました。バーセルインデックスによる適切な評価と計画的な手続きを行うことで、月30単位から60単位の安定した収益を確保できます。科学的介護推進体制加算との併算定や専用ツールの活用により、事業所は業務効率化を図りながら利用者の自立支援を促進し、持続可能な介護サービスの提供を実現できるでしょう。

2025.07.16

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