コラム

科学的介護とは?エビデンスに基づく
レクリエーションの効果を解説

科学的介護は、データや根拠(エビデンス)に基づいて、介護の質を向上させる新しい取り組みです。厚生労働省が推進する「科学的介護推進体制加算」や「LIFE(科学的介護情報システム)」の導入が進む中、レクリエーション活動にも科学的根拠を取り入れることで、より効果的な介護サービスが実現できると期待されています。

本記事では、科学的介護の基本やその効果、エビデンスに基づいたレクリエーションの重要性について解説します。


■科学的介護とは
1|科学的介護推進体制加算とは
2|科学的介護情報システム(LIFE)とは
■科学的介護の効果|レクリエーションの実施でも重要
■科学的根拠に基づいたレクを提案|「WAN-介護」
■まとめ


■科学的介護とは

介護現場において、科学的根拠(エビデンス)に基づいたケアの提供が重要視されています。これまでの介護では、介護職員の経験や感覚に頼ったサービス提供が一般的でしたが、そのような方法では職員のスキルによってケアの質にばらつきが生じる可能性がありました。

科学的介護とは、利用者の重度化防止と自立支援を目的として、客観的なデータに基づいて提供される介護のことです。医療現場では既に実践されている考え方で、具体的なデータを収集・分析し、その効果を検証したうえでサービスを提供することで、より効果的なケアの実現を目指しています。

この取り組みを推進するため、厚生労働省は2021年度の介護報酬改定において「科学的介護推進体制加算」を新設。同時に、科学的介護の基盤となるデータベースとして「LIFE(科学的介護情報システム)」の運用を開始しました。

1|科学的介護推進体制加算とは

科学的介護推進体制加算は、利用者の基本的な情報をLIFEに提出し、そのフィードバックを活用してケアの質の向上に取り組む事業所を評価する加算制度です。

この加算は、介護老人福祉施設や通所介護、特定施設入居者生活介護など、幅広い介護サービスで算定が可能となっています。具体的な単位数は、科学的介護推進体制加算(Ⅰ)が40単位/月、(Ⅱ)が60単位/月となっています。

【対象サービス】

種類 加算対象
施設系サービス 介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院
通所系・居住系・多機能系サービス

通所介護、通所リハビリテーション(※)、認知症対応型通所介護(※)、地域密着型通所介護、特定施設入居者生活介護(※)、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護(※)、小規模多機能型居宅介護(※)、看護小規模多機能型居宅介護

※予防サービスを含む

【算定要件】

入所者・利用者ごとの、ADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況その他の入所者の心身の状況等に係る基本的な情報(科学的介護推進体制加算()では、加えて疾病の状況や服薬情報等の情報)を、厚生労働省に提出していること。

 

※介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設については服薬情報の提出を求めない。必要に応じてサービス計画を見直すなど、サービスの提供に当たって、上記の情報その他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること。

【加算額】

項目

単位数

科学的介護推進体制加算(Ⅰ)

40単位/月

科学的介護推進体制加算(Ⅱ)

60単位/月

算定要件として、利用者ごとのADL値、口腔機能、栄養状態、認知症の状況などの基本情報を、LIFEを通じて厚生労働省に提出することが求められます。さらに、その情報を活用してサービス計画の見直しを行うなど、継続的な改善活動を実施することが必要です。

加算の取得に向けては、まずLIFEの利用申請を行い、ID・パスワードを取得することから始めます。その後、必要な情報を定期的に提出し、フィードバックを受けながらPDCAサイクルを回していくことで、より質の高い介護サービスの提供が可能となります。

2|科学的介護情報システム(LIFE)とは

LIFEは「Long-term care Information system For Evidence(科学的介護情報システム)」の略称で、2021年4月から運用が開始された新しいデータベースシステムです。このシステムは、それまで別々に運用されていた通所・訪問リハビリテーション情報(VISIT)と高齢者の状態・ケア内容(CHASE)を一体化したものです。

システムの基本的な仕組みとして、介護事業所がLIFEにデータを提出すると、厚生労働省がそれを分析し、フィードバックを行います。このフィードバックを活用することで、各事業所は提供しているサービスの改善や効果の検証が可能となります。

具体的な活用方法としては、まずWebサイトから新規利用申請を行い、IDとパスワードを取得します。その後、利用者のADLや栄養状態、口腔機能、認知症の状況などの基本情報を入力します。データの提出は基本的に6ヶ月に1回で、毎月10日が提出期限となっています。

データの提出方法には2つの選択肢があります。1つ目は、LIFEの画面から直接データを入力する方法です。2つ目は、介護ソフトから出力したCSVファイルをLIFEに取り込む方法です。介護ソフトを使用していない場合でも、厚生労働省が用意した様式を使って自前でCSVファイルを作成することが可能です。

LIFEを活用することで、科学的な根拠に基づいた介護サービスの提供が可能となり、利用者一人一人に適したケアの実現につながります。さらに、蓄積されたデータは今後の介護施策の立案にも活用されることが期待されています。

■科学的介護の効果|レクリエーションの実施でも重要

WAN-かいご

科学的介護を推進することで、介護サービスにおける複数の効果が期待できます。第一に、利用者の状態やケアの実績に関するデータを収集・分析し、その結果をフィードバックすることで、より効果的なサービス提供が可能となります。介護職員の経験や感覚だけでなく、科学的な根拠に基づいたケアを実践することで、サービスの質が向上します。

さらに、科学的介護推進体制加算をはじめとする各種加算の算定が可能となることで、事業者の収益向上にもつながります。この収益を活用することで、より幅広いサービスの提供や、職員の処遇改善なども実現できます。

エビデンスに基づいた質の高いレクリエーションは、単なる時間つぶしではなく、利用者の心身機能の維持・向上に貢献します。利用者の状態に合わせて適切なレクリエーションを選択し、その効果を継続的に評価することで、より効果的なプログラムの実施が可能となります。

このような科学的なアプローチによるレクリエーションの実施は、利用者の満足度向上にもつながり、結果として事業所の稼働率向上にも寄与します。さらに、職員の業務効率化や心理的負担の軽減にも効果があり、より質の高いサービス提供を持続的に行うことができます。

■科学的根拠に基づいたレクを提案|「WAN-介護」

WAN-かいご

科学的根拠に基づくレクリエーションの実践を支援するために、TOPPANは介護レクリエーション提供サービス「WAN-かいご」を開発しました。このシステムは、150種類以上のレクリエーションコンテンツと100種類以上のぬりえコンテンツを搭載し、AIを活用して利用者一人ひとりに最適なレクリエーションプログラムを提案します。

「WAN-かいご」の特徴的な機能として、東京大学先端研・身体情報学分野との共同開発による学術的根拠のあるレクリエーションコンテンツを提供している点が挙げられます。「体を動かす」「頭を使う」「みんなで楽しい」などのカテゴリー別に分類され、目的や条件に応じて適切なプログラムを検索することができます。

利用者の状態に合わせたカスタマイズも容易で、例えば麻痺のある利用者向けのプログラムを検索したり、機能改善やQOL/ADL維持向上といった目的別に適したレクリエーションを選択したりすることが可能です。各コンテンツには詳細な実施手順や準備物、期待される効果なども明記されており、レクリエーション実施の経験が浅いスタッフでも安心して活用できます。

システムの導入は既存のPCやタブレットで可能で、特別な機器の購入は不要です。操作方法も直感的で分かりやすく設計されており、導入時にはサポート担当者による丁寧なフォローアップも提供されます。さらに、レクリエーションの実施記録と個別機能訓練加算の算定に必要な記録を連動させることで、加算取得の業務効率化も実現できます。

■まとめ

科学的介護の推進は、介護現場における重要な取り組みとなっています。LIFEを活用したデータの収集・分析により、エビデンスに基づく質の高いケアの提供が可能となり、加算算定による経営面でのメリットも期待できます。

特にレクリエーションの分野では、「WAN-かいご」のような科学的根拠に基づいたシステムの活用が効果的です。東京大学との共同研究による学術的根拠のあるコンテンツと、AIによる個別最適化された提案により、利用者の機能改善や意欲向上につながるレクリエーションを効率的に実施することができます。今後の介護サービスの質の向上と効率化に向けて、科学的介護の実践がますます重要となるでしょう。

2025.02.07

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