コラム

ダイナミックプライシングでフードロス(食品ロス)削減!
導入効果を解説

フードロス(食品ロス)は世界的にも重要な社会問題で、特に食品・飲食業界では深刻な課題となっています。この問題に対処するためのひとつの方法として、ダイナミックプライシングの導入が注目されています。この手法は、需要と供給に応じて価格を柔軟に変動させることで消費を促進し、食品が廃棄されるのを防ぎます。

本記事では、ダイナミックプライシング導入による食品ロス削減効果の実証実験にも触れながら、ダイナミックプライシングがどのように食品ロスの削減に寄与するかを解説します。さらに、ダイナミックプライシングを可能にするシステムもご紹介します。

食品ロス削減に取り組みたい事業者の方に向けて実用的な情報をまとめていますので、ぜひご覧ください。


目次

1,食品・飲食業界におけるフードロス問題の背景
2,食品ロス削減に有効なダイナミックプライシングとは
3,ダイナミックプライシング導入による食品ロス削減効果の実証実験
4,食品ロス削減以外にもあるダイナミックプライシング導入の効果
5,まとめ


食品・飲食業界におけるフードロス問題の背景

フードロス(食品ロス)問題とは、本来食べられるはずの食品が、さまざまな理由で廃棄されてしまうことを指します。日本では年間約523万トンもの食品ロスが発生しており、これは日本人1人あたり茶碗約1杯分のご飯を毎日捨てている計算になります。

食品ロスは「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」に分けられ、日本の食品ロス量の約53%が事業系食品ロスとなっています。事業系食品ロスは更に4業種に分類でき、令和3年度の推計値によると、最も多いのが「食品製造業」で125万トン、次に多いのが「外食産業」で80万トン、次いで「食品小売業」で62万トン、「食品卸売業」で13万トンとなっています。

食品製造業では、製造工程での歩留まりの悪化や規格外品の発生、外食産業では食べ残しや調理ミス、食品小売業では売れ残りや納品期限切れなどが主な食品ロスの原因です。これらの業種では利益を上げるために余分に生産・仕入れをする傾向にあり、需要予測の難しさから食品ロスが発生しやすいという構造的な問題があります。

食品を扱う事業者が率先して食品ロス削減に取り組むことは、環境負荷の低減だけでなく、食料資源の有効活用や企業の社会的責任の観点からも重要です。食品ロスの約半分は事業系であるため、各事業者による削減努力の積み重ねが食品ロス問題の解決につながります。


食品ロス削減に有効なダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシングとは、需要と供給のバランスに応じて商品やサービスの価格を柔軟に変動させる価格設定の手法です。需要が高まる時期や時間帯には価格を引き上げ、逆に需要が低い場合は価格を引き下げることで、売上の最大化と機会損失の低減を図ります。

近年、事業系食品ロスの削減策としてダイナミックプライシングが注目を集めています。特に外食産業や食品小売業では、需要予測の難しさから食材の仕入れ量や調理量が過剰となり、売れ残りや食べ残しによる食品ロスが発生しやすいという課題があります。

そこで、ダイナミックプライシングの導入が効果的です。例えば混雑時の価格を高めに、閑散時の価格を低めに設定し、需要を分散させることができるため、来客数の平準化により食材の発注量や調理量の最適化が可能となり、売れ残りの削減につなげることができます。

また、食品小売業では、消費期限や賞味期限が近い商品を値下げすることで、食品ロスの低減が期待できます。AIによる需要予測と連動させたダイナミックプライシングを活用すれば、リアルタイムでの価格最適化が可能となり、食品ロス削減効果を一層高められるでしょう。

ダイナミックプライシングは売上の安定化や利益率の向上だけでなく、サステナブルな観点からも注目すべき手法と言えます。事業系食品ロスの削減は、SDGsの目標達成にも寄与します。食品を扱う事業者は、需給バランスの最適化による食品ロス削減のため、ダイナミックプライシングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。


ダイナミックプライシング導入による食品ロス削減効果の実証実験

株式会社日本総合研究所と、食品ロス削減に取り組むショッピングサイト「Kuradashi」を運営する株式会社クラダシが、ダイナミックプライシング導入による食品ロス削減効果の実証実験を行いました。

概要:ショッピングサイトKuradashiで販売している全商品を対象にダイナミックプライシングを導入
値下げ対象:商品の残り賞味期限、売れ行き、ページビュー、購買率をもとに判断
検証方法:在庫回転率(売り切り期間)と粗利率をダイナミックプライシング導入前後で比較
検証期間:2022年11月1日(火)~2023年1月31日(火)
検証結果:在庫回転率は前年比プラス25.9%、粗利率は前年比プラス5.5%

Kuradashiで販売している全商品を対象に、商品の残り賞味期限や売れ行き、ページビュー数、購買率などのデータをもとに値下げ対象を自動判別し、ダイナミックプライシングを導入しました。検証は2022年11月1日から2023年1月31日の3ヶ月間で実施され、在庫回転率(売り切り期間)と粗利率をダイナミックプライシング導入前後で比較しました。

検証の結果、ダイナミックプライシングを導入した期間の在庫回転率は前年同期比で25.9%向上し、粗利率も5.5%増加したことが明らかになりました。在庫回転率の改善は、需要に応じた適切なタイミングでの値下げにより、売れ残り在庫の圧縮と販売機会損失の低減が実現したためと考えられます。また、粗利率の向上は、売れ筋商品の値下げを抑制し、適正価格での販売が促進されたことが要因と分析されています。

本実証実験の結果から、ダイナミックプライシングの導入が食品ロスの削減に効果的であることがわかります。需要予測に基づく動的な価格設定により、売れ残り在庫を減らし、食品ロスの発生を未然に防ぐことができます。更に、適切な価格設定はユーザーの購買意欲を喚起し、在庫の早期解消にもつながります。

このように、ダイナミックプライシングは在庫最適化と売上最大化を同時に実現する手法であり、サステナブルな事業運営と食品ロス削減の両立に寄与すると期待されます。小売業や外食産業など、食品を扱う事業者にとって、ダイナミックプライシングは食品ロス削減のための有力なソリューションのひとつと言えるでしょう。


食品ロス削減以外にもあるダイナミックプライシング導入の効果

ダイナミックプライシングの導入は、食品ロス削減だけでなく、売上向上や顧客満足度の向上など、事業者にとってさまざまなメリットがあります。特に飲食店においては、以下のような効果が期待できます。

【飲食店におけるダイナミックプライシング導入で期待できる効果】
・ 繁忙時の売上増加と閑散時の集客向上による売上の安定化
・ 需要に応じた価格設定による機会損失の低減と収益性の改善
・ 混雑緩和による顧客満足度の向上とリピート率のアップ
・ 食材の発注量適正化による食品ロスの削減と原価率の改善
・ 需要予測に基づくスタッフのシフト管理最適化と人件費の適正化

飲食店では、曜日や時間帯によって来客数が大きく変動します。ダイナミックプライシングを導入することで、需要に応じた価格設定が可能となり、繁忙時の売上増加と閑散時の集客向上を同時に実現できます。

また、混雑を緩和することで顧客満足度が高まり、リピーター獲得にもつながります。加えて、需要予測データを活用した食材発注量の最適化は、フードロス削減による原価率改善と、スタッフのシフト管理適正化による人件費コントロールにも寄与します。

TOPPANでは、飲食店向けにダイナミックプライシングを可能にするシステム「nomachi ® DP」を展開しています。AIカメラやセンサーで店内の混雑状況をリアルタイムに可視化し、来客数予測と連動した動的な価格変更により、売上最大化を支援します。

飲食店の課題解決と収益向上に特化した「nomachi ® DP」は、特に需要変動の大きい外食チェーンや飲食店に適したソリューションです。

ダイナミックプライシングは、デジタル技術を駆使することで、需要と供給のミスマッチを解消し、食品ロス削減と売上向上の両立を可能にします。外食産業のサステナブル経営に欠かせない手法として、今後ますます導入が広がるでしょう。


まとめ

本記事では、食品・飲食業界における深刻な課題であるフードロス(食品ロス)問題の背景と、その削減策としてのダイナミックプライシングについて解説しました。

日本の食品ロスの約半分を占める事業系食品ロスの削減には、外食産業や食品小売業による取り組みが不可欠です。需要と供給のミスマッチを解消し、売れ残り在庫の削減と売上最大化を同時に実現するダイナミックプライシングは、フードロス削減に効果的なソリューションのひとつと言えます。

TOPPANでは、デジタル技術を活用したダイナミックプライシングの仕組みである「nomachi ® DP」を提供しています。「nomachi ® DP」は、フードロス削減と事業者の収益性改善を両立する有望な手法と言えるでしょう。

食品ロス問題は、SDGsの達成に向けて取り組むべき重要な課題であり、食品ロスの削減は、私たち一人ひとりの行動変容とともに、事業者の積極的な取り組みが不可欠なのです。

2024.06.16

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