コラム

ダイナミックプライシングとは?
仕組みを基本から解説

需要に応じた価格変動を自動化する「ダイナミックプライシング」は、AIの高度な技術を活用することで利益の最大化につながることなどから注目が高まっています。
今回は、そのダイナミックプライシングの概要から仕組み、メリットとデメリット、成功事例をご紹介します。


<目次>

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■ダイナミックプライシングとは?
■ダイナミックプライシングにおける価格変動の条件
■ダイナミックプライシングの仕組み
■ダイナミックプライシングのメリット
■ダイナミックプライシングのデメリット
■交通機関によるダイナミックプライシング
■企業によるダイナミックプライシング
■ダイナミックプライシングの成功事例
■まとめ
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ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングとは、商品やサービスの需要に応じて、価格を変動させる仕組みのことを指します。「変動料金制」とも呼ばれています。
「ダイナミック」とは「動的」の意味、「プライシング」とは「値付け」を意味することから、
ダイナミックプライシングは時間や状況に応じて値付けを変動させる取り組みを意味します。
ダイナミックプライシングを通じて、収益の最大化を目指します。

例えば、ホテルの宿泊費や航空券のチケット代によく利用されています。
旅行業界では、シーズンによって航空やホテルの消費者需要が大きく変わります。
ゴールデンウィークやお盆休み、年末年始などは需要が多く見込まれるため、価格を引き上げるのが一般的です。
一方で、需要の低迷する閑散期には、価格を低くすることで売上低下を抑止します。
このように旅行業界は特に需要が読みやすいため、あらかじめ時期ごとにダイナミックプライシングを導入していることが多くあります。

近年は、AIが活用されるようになり、より柔軟に需要予測がされるようになってきました。
普及の背景のひとつとして、従来の人の手による価格調整の手間と負荷を軽減できることが挙げられます。
そのため、人手不足対策のために導入する企業は多くあります。
また、食品を取り扱う企業では、製造した食品の価格についてダイナミックプライシングを行うことで、廃棄量の削減を目指すケースもあります。


ダイナミックプライシングにおける価格変動の条件

ダイナミックプライシングは様々な条件によって商品やサービスの価格を変動させる仕組みのことを指しますが、
ここでは価格を決定させる具体的な条件についてご説明いたします。

●需要と供給
商品やサービスの需要が高まると価格は上がり、逆に需要が低下すると価格が下がります。
また、供給が増えると価格が下がり、供給が減ると価格が上がります。
需要を知る方法としては、混雑状況を調べる、キーワードの検索回数、アンケート調査を行うなどがあります。

●時間
特定の時間帯や曜日、季節などによって価格が変動します。
例えば、飲食店のランチメニューで通常より安いメニューを提供したり、旅行業界ではオフシーズンに価格を下げたりします。

●顧客属性
顧客の年齢、性別、居住地、所得などを分析して価格が変動することもあります。

●競合他社
競合他社の価格に対応して自社の価格を上げたり下げたりすることもあります。

●在庫状況
在庫が多い場合は価格を下げて消費を促し、逆に在庫が少ない場合は価格を上げて利益を最大化します。

●イベントやキャンペーン
特定のイベントやキャンペーンが行われている期間だけ一時的に低めの価格設定を行い、集客を増やすことがあります。

ダイナミックプライシングの仕組み

ダイナミックプライシングの仕組みを確認しておきましょう。主に次の2つに分かれます。

●ルールベース
先にご紹介した旅行業界の例のように、繁忙期と閑散期などの需要予測が容易なケースでは、値付けルールをあらかじめ設定しておくことができます。
このようにルールベースによる自動化は従来から行われてきた手法です。導入・運用が比較的容易なのが特徴です。

●AIによる予測
AIを活用する方法です。過去の価格変動の実績データをAI(人工知能)に機械学習させ、AIに需要予測を立てさせることにより、最適な値付けを行います。
日時、曜日、天候、近隣のスポーツ大会やコンサートなどのイベントといったさまざまなデータをもとにプライシングが行われます。
特に、需要予測が必要な業界で利用されています。
今後は、さらに強化学習をさせることで、より需要予測を確かなものにするための開発が進められています。

ダイナミックプライシングのメリット

ダイナミックプライシングは、企業と顧客それぞれにメリットが期待できます。それぞれのメリットを見ていきましょう。

●企業のメリット
・収益の最大化
企業にとっては、収益の最大化が期待できます。
需要が高い時期には、高収益が見込める価格を設定して利益を高め、需要が低い時期には価格を下げます。
これによって商品の売れ残り回避と、余剰在庫や廃棄の削減につながります。

・リソースの最適化
繁忙期と閑散期の需要を平準化することで、ホテルなどのスタッフ配置などの人的リソースの有効活用や最適化につながります。

・ファンを創出
ダイナミックプライシングは、顧客が時期をはかって購入することによってリーズナブルに手に入れられます。
もしそうした「お得さ」を実感した場合には、その顧客は自社のファンになる可能性もあります。

●顧客のメリット
・時期を選べばリーズナブルに利用できる
顧客にとってのメリットは、購入タイミングを安価な時期に合わせることができれば、リーズナブルに商品が手に入ることです。
同じサービスを通常よりも安価に受けることができます。

ダイナミックプライシングのデメリット

ダイナミックプライシングには、デメリットもあります。企業と顧客それぞれにとってのデメリットを解説します。

●企業のデメリット
・大幅な価格変動は顧客の購買意欲の減少、顧客離れにつながる
ある時期は非常に高い、ある時期は非常に安いといった過剰なダイナミックプライシングを行うとで、顧客の反感を買うこともあります。
たとえ安く買える時期であっても、購買意欲の減少とともに、顧客離れにつながる恐れがあります。

・導入コストがかかる
ダイナミックプライシングの仕組みを導入する際にコストはかかります。またシステム運用の人員確保も必要になるため、運用コストも考慮に入れておく必要があるでしょう。

●顧客のデメリット
・時期によっては高額を支払わなければならなくなる
顧客にとってのデメリットは、高額を支払わなければならなくなるケースもあるということです。
どうしても必要なときには、販売価格が高額でも購入せざるを得ません。

交通機関によるダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングの仕組みは、交通機関にも応用されています。

例えば、電車の場合、混雑する時間帯には通常よりも高い価格を設定し、混雑しない時間帯には通常よりも安い価格を設定することができます。これにより、需要と供給を調整し、効率的な運行が可能になります。

また、新幹線や飛行機でも同様の仕組みが導入されています。特に、飛行機の場合は、予約の早さや座席の空き具合に応じて価格が変動することが多くなっています。これにより、早期予約や空席の活用が促進され、運航効率が向上します。

ダイナミックプライシングは、消費者にとっては、割引価格や予約のしやすさなどのメリットがあります。
一方で、需要が高い時間帯には高い価格が設定されるため、コストがかかる場合もあります。
しかし、交通機関の運営にとっては、需要と供給を調整することで、より効率的な運行が可能になるため、重要な仕組みとなっています。

企業によるダイナミックプライシング

企業によるダイナミックプライシングの活用シーンは、以下のようになります。

まず、旅行業界では、航空券やホテルの価格を需要に合わせて変動させることが一般的です。例えば、旅行シーズンには需要が高まるため、価格を上げることで収益を最大化します。一方で、需要が低い時期には価格を下げることで、需要を喚起し、売り上げを増やすことができます。

また、小売業界でも、ダイナミックプライシングが活用されています。例えば、季節商品や在庫商品について、需要が高まる時期には価格を上げ、需要が低下する時期には価格を下げることで、商品の回転率を上げることができます。

さらに、サービス業界においても、ダイナミックプライシングが活用されています。例えば、コンサートやスポーツイベントなどのチケット価格は、需要に合わせて変動します。需要が高まる時期には価格を上げ、需要が低下する時期には価格を下げることで、収益を最大化します。

以上のように、企業によるダイナミックプライシングの活用シーンは、さまざまな業界に存在します。需要と供給のバランスを取りながら、価格を最適化することで、企業の収益を最大化することができます。

ダイナミックプライシングの成功事例

ダイナミックプライシングを取り入れたことで、成果を出した企業の事例を3つご紹介します。

❶ 飲食店
ある飲食店では、近年の原料高騰や外出機会の減少による逆風がある中で、導入コストを抑えながら売上アップや集客ができる取り組みを探していました。
そこでTOPPANのシティセンシングサービス「nomachi®DP」を利用し、混雑率の人流データと連携させることで、割引率を自動で変化させる仕組みを導入しました。
それは混雑率が低い、店内が空いている時間帯ほど割引クーポンの割引率を引き上げるという混雑データと連動したダイナミックプライシングの仕組みです。これにより、店舗売上を最大化させることを目指しています。

❷ ホテル
あるホテルでは、AIが時期によって価格変動させるダイナミックプライシングシステムを導入しました。
近年、消費者はインターネット上で競合他社のホテル価格を複数比較した上で、安いほうを購入する傾向があります。
しかし、ホテルスタッフが随時、競合他社の価格を確認するのは非常に負担が大きくなります。
そこで、AIが客室の予約が埋まる早さなどから、将来の部屋の予約数を予測する仕組みを導入しました。
連休前などの時期的な予測のほか、競合他社の情報に合わせた予測も可能です。
またアイドルのコンサートを控えているなどの場合には予約が急増するため、AIは価格を上げるようになりました。これにより、機会損失を減らしています。

❸ イベント
ある企業は、音楽ライブの全席チケットの販売にダイナミックプライシングを導入しました。
AI技術を活用し、市況や顧客の需要や、日々の販売実績データをもとに、適正な価格に変動させながらチケットを販売しました。主な目的は収益の最大化です。
需要が多い場合は高価格での販売によって利益を最大化し、需要が少ない場合は値下げして販売を促進することで、客数を最大化にしました。


まとめ

ダイナミックプライシングは、企業の収益最大化を実現する有効な仕組みです。
近年は、成功事例の1番目でご紹介したように、ダイナミックプライシングと他のデータを連携させる取り組みも進んでいます。

TOPPANのシティセンシングサービス「nomachi®DP」では、ダイナミックプライシングの仕組みを活用することで、企業の収益や集客の最大化のお手伝いをさせていただくことが可能です。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

2024.10.02

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