コラム

PHRの活用事例5選
健康管理・疾病予防を推進!

少子高齢化が進む現在、より健康寿命の延伸のため、また医療費削減のために社会全体で取り組みを強化していく必要があります。
そうした中、生涯型電子カルテと呼ばれるPHRの活用が医療機関や自治体を中心に進められています。今回は、PHRの概要とともに、PHRの活用事例や活用のポイントをご紹介します。


<目次>

■PHRとは?
■PHRの活用事例5選
 1|市民が活用できるPHRシステムとつながるスマホアプリ
 2|総務省による妊娠・出産・子育て支援PHRモデルの実証実験
 3|大学による患者自身が診療・健康情報を管理できるPHRシステム連携アプリ
 4|地方都市が糖尿病重症化予防にPHRを活用
 5|地方都市でPHR利活用研究事業の一環として母子手帳アプリを導入
■PHR活用のポイント
■まとめ


■PHRとは?

PHRとは「Personal Health Record(パーソナルヘルスレコード)」の略で、「個人健康記録」や「生涯型電子カルテ」とも呼ばれています。
従来、医療機関に存在していた個人の健康や医療、服薬にかかわるデータと共に、個人で記録する日常的な健康関連データを、本人が管理することを前提として1か所に集約したものを指します。

【管理されるデータ例】
診察・検査の結果、定期健康診断の結果、既往症、現在治療中、妊娠・出産、処方箋などに加えて、自分で測定した血圧や血糖値、体重、食事や運動、睡眠、服薬記録といった健康にまつわるデータなど。

なぜ個人がこうした健康や医療データを管理する必要があるのでしょうか。
それは、自分自身で健康管理や疾病予防、セルフケアに役立てることができるからです。
また、急病などで救急車で運ばれた際には、個人が保持しているPHRのデータを医療機関側が参照し、アレルギーや心臓疾患などの情報を素早く確認することで、より適切な医療を受けることができます。

PHRの普及によって、個人の健康向上につながると考えられています。また医療提供側にとっても利便性が高まります。


■PHRの活用事例5選

PHRは、すでに多様なケースで導入されています。今回は自治体、民間企業含めた5つの活用事例をご紹介します。

1|市民が活用できるPHRシステムとつながるスマホアプリ

●導入背景
医療産業の集積地として知られるある都市は、市民が自らの健康状態を知り、より楽しく健康に取り組めるようなサービスを提供しようと考えました。

●PHRをどのように活用したか
そこでスマートフォンアプリを開発・提供し、利用登録した市民が、自身の歩数や食事などの健康データを入力できるほか、市が保有する健診結果をまとめて管理できるようにしました。また、自身の健康に関する統合データに紐づく、健康に関するアドバイスを受けることができる仕組みも設けました。市民はこのアプリを健康増進のきっかけにすることができるようになりました。

2|総務省による妊娠・出産・子育て支援PHRモデルの実証実験

●導入背景
総務省が妊娠・出産・子育てを支援するPHRモデルを構築するため、地方都市で実証実験を行いました。

●PHRをどのように活用したか
行政が保有するPHRデータ基盤やクラウド型子育て支援システムに登録された情報を、保護者が利用できるスマートフォンアプリに連携させました。
緊急性の高い要支援児童などを抽出・可視化をする仕組みを構築できたため、保護者は自治体などの関係機関と情報共有、連携することが容易になりました。

3|大学による患者自身が診療・健康情報を管理できるPHRシステム連携アプリ

●導入背景
ある大学は、医療機関でこれまで診療を受けてきた患者の診療履歴をスマートフォンアプリで管理できる仕組みを構築しました。

●PHRをどのように活用したか
患者自身がデータを管理できるアプリには、各医療機関が電子カルテシステムで管理している医療情報を、機密性を確保しながら患者に提供しています。
これにより、緊急時に診療を受ける際に、個人がこれまでにどのような治療を受けてきたか分からないというに対応していきます。

医療データはPDFや画像により確認できる仕組みです。さらに、患者自身が持っているデータをスマホカメラで撮影し画像情報として取り込んだものをデータとして保有もできます。
患者が自ら進んで情報を参照し、今後の自身の適切な診療のために、情報提供を行える仕組みとなっています。

4|地方都市が糖尿病重症化予防にPHRを活用

●導入背景
ある県では、生活習慣病の死亡率や受療率が全国ワースト10位以内になるなど、健康指標の改善が課題となっていました。健康を市民に呼びかけるべく、県のある市はさまざまな取り組みを行っています。その一環として取り組んでいるのがPHRを活用した糖尿病重症化予防研究事業です。

●PHRをどのように活用したか
市民の国民健康保険加入者が持つ糖尿病手帳とお薬手帳をデジタル電子手帳化するスマートフォンアプリを提供。医療機関や個人などが保持していたデータを集約し、患者本人が自己管理できるようにしました。
これにより、糖尿病の重症化予防を目指して市民一人ひとりが健康管理をすることができるようになるかを検証しています。

PHRは紙の手帳のように紛失することがないうえに、勝手に中身を他人に見られることもないため、安心して利用できるのもポイントです。

5|地方都市でPHR利活用研究事業の一環として母子手帳アプリを導入

●導入背景
ある地方都市は保育ニーズの高まりを受け、PHR利活用研究事業を推進しているなかで、ある企業の母子手帳アプリを導入しました。医療機関と連携して医療情報などをデータ化して関係者間で共有することにより、安心安全で充実した子育て支援を目指しています。

●PHRどのように活用したか
導入した母子手帳アプリは、スマートフォンやタブレット端末、PCに対応しており、妊産婦と子どもの健康データの記録・管理や、予防接種のスケジュール管理、出産・育児に関するアドバイスなど、忙しい夫婦にとって便利な機能が充実しています。


■PHR活用のポイント

PHRの活用を推進するためには、まだ課題も多くあるといわれています。そこで注意点やポイントをご紹介します。

プライバシーの確保が必要

PHRには、個人の診療履歴などのさまざまな個人情報が集約されていることから、プライバシーの確保と利便性を同時に考える必要があります。
サイバー攻撃へのセキュリティを強化する必要もあるため、とても重要です。

情報セキュリティに関しては、総務省・厚生労働省・経済産業省による「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」をはじめとした各種規定への準拠が求められます。

この指針は、民間PHRサービスの利活用の促進に向け、健診情報などを取り扱う事業者による PHRの適正な利活用が、効率的かつ効果的に実施できるように、PHRサービスを提供する民間企業が遵守すべきことが記されたものです。情報セキュリティ対策や個人情報の適切な取り扱い、健診等情報の保存や管理、相互運用性の確保などが記されています。

ユーザー自身による管理の利便性向上

PHRを活用するためには、国民や患者が自ら、自身の医療情報や健康情報を適切に管理・取得できるようにすることが前提となります。

デジタルデータとして、政府が運営するオンラインサービスであるマイナポータルから取得できるようにするインフラなどの活用環境の整備が求められます。

さらに、ユーザー自身が情報を入力・アップロードする仕組みなど、より現実に基づいた健康管理がしたくなる仕組みづくりは欠かせません。それらの実装をどのように進めていけるかが問われています。

情報の統一化・連携強化

国民や患者が積極的にデータを参照しながら健康増進に取り組める環境を整備するためには、自治体は民間企業の活力を利用することが欠かせないといわれています。

そのような中で、いかに各所に散在するデータを一元化しながら相互運用性を図り、情報漏洩や二次利用対策などに務められるかが問われています。
特に自治体、医療機関、民間企業の連携強化は今後の課題となっていくでしょう。


■まとめ

PHRは、今後、さらに自治体と医療機関、民間企業を通じて活用されていくと考えられます。個人の健康に関するデータを自ら入力するなどしてデータ化できるサービスも出てきています。

TOPPANの「cheercle(チアクル)」は、住まいの生活動線上で得られるPHRを収集・蓄積・管理できるIoTヘルスケアサービスです。
住まいの生活動線上で、さりげなく身体データを計測し、可視化することで健康管理の習慣化をサポートすることが可能です。
収集したデータは、独自開発のハイセキュリティなクラウドに蓄積されます。
ユーザーは日々の変化やアドバイスのコメントを、洗面空間のミラーやスマホアプリ上で確認することができるので、健康増進に向けた活動に役立てられます。

cheercleは今後、幅広いデバイスやサービスとの連携により、住まいだけでなく日々の活動データを含めたヘルスケアデータの一元管理や医療データとの連携を予定しており、一人ひとりにカスタマイズされたヘルスケアサービスの提供も可能になります。

詳細に関しましては、ぜひサービスページをご覧ください。

2023.09.26

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