コラム

空間体験の重要性とは?
具体的な企業事例を交えて解説

リアル体験の代替として、オンライン上での体験が余儀なくされてきた昨今だからこそ、フィジカルに体験できるリアルの体験価値への期待がますます高まっています。

リアルで体験する限られた時間の中で、どれだけ体験者のココロを効果的に動かすことができるのか。

体験を通して一つのストーリーに没入させるイマーシブ体験を企業施設で実現させる挑戦や、社会課題への取り組みを空間体験に落とし込み、利用者の意識変容を誘導するしかけづくり、リアルとバーチャルを融合させてリアルの体験価値を拡張し、体験者の間口や可能性を広げる取り組みなど、これから先のリアル空間を介した体験デザインの可能性をご紹介します。


ideanote vol.150 社会から選ばれ続けるためのBRANDING

あらゆる「空間体験」を設計するSPACE X-ING

TOPPANのSPACE X-INGチームは、デザイン・設計や製作・施工にとどまらない、「空間体験づくり」を作り出すプロフェッショナル集団です。お客様の事業課題を共に考え、社会情勢、最新のトレンドなどの外部環境変化を的確に捉え、事業の“戦略策定”サポートから、効果的でユニークな“体験デザイン”の創造、生み出されたアセットを最大限に活かすための“エンゲージメント”向上施策まで、TOPPANグループの多様な専門領域を組み合わせ、体験価値の最大化を図ります。

さらに、デジタルとの融合によって、その価値を拡張させるサービスも提供しています。その領域は幅広く、工場見学施設、ミュージアム、研修施設、ショールーム、オフィス・スタジオなどの企業施設のほか、展示会やイベント、オンラインイベント、博覧会などの多彩な規模のイベントにおける空間コミュニケーションに対応しています。

また、TOPPANの幅広い事業分野における高い専門性を活かし、あらゆる方面から可能性を検討しながら、基本構想から展示空間計画、製作、運営サポートまでワンストップで対応しており、ハイブリッド型の空間体験でコミュニケーション効果の最大化を図る「空間を介したコミュニケーション活性化のパートナー」として活動しています。

空間コミュニケーション対応領域

ストーリーに没入させるイマーシブデザイン

イマーシブとは「没入する」という意味で、イマーシブデザインとは、空間だけでなく、そこで過ごす時間を含めた「空間と時間をデザインする」ことを意味します。多様な演出を組み合わせた一連の流れ(ストーリー)に合わせて、非日常感を生み出す空間デザインに、触覚や嗅覚など五感で感じるさまざまなコンテンツを組み合わせることで、「感動させる」「ココロを動かす」体験を提供します。ここからは、TOPPANのイマーシブデザインの実践事例を「コンセプトとストーリー」「五感を刺激するコンテンツ」2つのポイントからご紹介します。

ブランドの世界観を五感で楽しめる! アサヒスーパードライミュージアム

2023年1月にリニューアルオープンした「アサヒスーパードライミュージアム」では、その企画立案からコンテンツの開発、体験の場づくり全般をサポートしました。

身体全体でブランド価値を感じるコンセプトとストーリー
もともと工場見学施設のリニューアルとして始まったプロジェクトで、主力ブランドである「スーパードライ」ブランドの特別な発信拠点とするというテーマを絞り込み、「ミュージアム」と位置づけることで、ブランド価値を身体全体で感じる空間体験の場としてコンセプトと体験ストーリーづくりを行いました。

アサヒスーパードライミュージアム

このミュージアムで最も重要な体験は「日本で一番うまいビールを飲む」ことです。最終ターゲットをビールの試飲に定めて、全長約1kmの見学コースの最後にある試飲会場にたどりつくまでに、「ビールを飲みたい気分を高める」さまざまなしかけを用意しました。途中、製造工程やうまさの秘密などの「学び」を盛り込むなど、ビールを飲んだ時の感動を最高に高める体験ストーリーをつくりました。

アサヒスーパードライミュージアム

「五感」を刺激するコンテンツ
スーパードライを最もおいしく味わってもらうためには、その場の香りや温度、BGM、誰と飲むかなど、あらゆる五感をフル動員して体験してもらうことが大切です。「鮮度を生み出すための圧倒的なスピード」を表現する缶の充填工程に、風や水しぶきなどの臨場感を加えたスピード感あふれるCGによる映像体験「SUPER DRY GORIDE」や、タンク内での発酵工程の躍動感を表現した映像とキネティックライト(動く照明器具)による立体表現を使った「SUPER DRY 318 THE DIVE」は、まさに五感を刺激して、ブランドを身体全体で感じる体験を生み出すコンテンツです。

動く照明器具で発酵の躍動感を表現

TOPPANではこのように、デザイン・設計や製作・施工にとどまらず、効果的に「没入」させる“体験デザイン”の創造が可能です。空間づくりでお困りの方はぜひお声がけください。


意識変容に導くエシカルな空間づくり

「エシカルデザイン」は、環境や社会における課題を解決する仕組みとして幅広く捉えられており、プロダクトデザインだけではなく、空間デザインや場のデザイン、事業デザインにも取り入れられています。近年は「空間デザインアワード」にも「サスティナブル空間賞」があり、空間演出の手法の一つとしてエシカルデザインが取り入れられる事例も多く見られるようになりました。ここからは、TOPPANの「エシカルデザイン」を採用した空間設計の事例をご紹介します。

【事例1】TOKYOシェアオフィスSUMIDA(TSO)(東京都墨田区本所)

TSOは「スマートワークスタイル・ネイバーフッドワークスタイル」など新しい働き方をコンセプトにしたシェアオフィスです。コワーキングスペースやスタジオなどを備えており、エシカルな内装やプロダクトを数多く採用しました。ここでは、RETURN(修繕)、REUSE(転用)、RECYCLE(再資源化)、RESELECT(サスティナブル素材の利用)、REDESIGN(再生と解体のデザイン)、RENOVATE(空間・場の再生)の「6つのR」が体験できます。

利用者への満足度アンケートでは、「施設のエシカルな雰囲気」が「満足+やや満足」と挙げた人が99.0%と最も多く、エシカルデザインが働く場としてのロイヤリティ形成に寄与しています。

TOKYOシェアオフィスSUMIDA(TSO)

【事例2】CO2ネットゼロブースを目指す IGAS2022 HPブース

「サステナビリティをリードする企業として、そもそも展示会に出展すべきか」というHP社からの問題意識に応え、「CO2ネットゼロブース」というコンセプトを設定。以下の3つのステップで展示スペースの設計を行いました。

①出展する上で排出してしまうCO2の算定と見える化
②CO2の排出を限りなく減らすためのブースづくり
③削減しきれないCO2について、カーボンオフセットを行い、ネットゼロを実現

CO2排出量を減らすための素材や施工手法によるブースづくりだけでなく、お客様の来場に伴うCO2の排出量も見える化することで、このブースでの体験が来場者のココロに小さな変化や気づきをもたらすことにつながりました。

CO2ネットゼロブースを目指す IGAS2022 HPブース

【事例3】社会課題の糸口を探る対話の場 One Young Worldにおけるアサヒホールディングスのブース

世界のヤングリーダーが集まる国際カンファレンスにおいて、アルコール飲料メーカーがSDGs3.5に該当する「責任ある飲酒」を解決するための対話のプログラムを実施。その課題を掘り下げるプログラムのデザインをサポートしました。世界中の多様な背景を持った参加者との対話の内容を見える化して、新たな発見につなげました。対話する場をデザインすることで、ブランド理解の促進や参加者のロイヤリティの向上が図られました。

社会課題の糸口を探る対話の場 One Young Worldにおけるアサヒホールディングスのブース

上記3つの例のように、エシカルデザインにおいては、まず「印象的なデザインに仕上げること」が大事ですが、「デザインの背景となるストーリーがあること」「ストーリーを知ることができる接点があること」が大切です。

2024年夏には、大阪・梅田駅前にできる「グラングリーン大阪」に、新しくTOPPANのエシカルの拠点をオープンします。「Ethical-tainment(エシカルテインメント)」をテーマに、楽しみながらエシカルを体験できる場として情報発信をしていく予定です。環境に配慮した空間・イベントづくりにお困りの方はぜひご参加ください。


コミュニケーションの可能性を広げるデジタルハイブリッド体験

デジタルハイブリッド体験とは、リアル空間にデジタル技術を組み合わせて体験機会の間口を広げたり、リアルでは得られない付加価値のある体験です。

コロナ禍によってオンラインイベントが一般的になり、時間や場所の制約を気にすることなく参加者との接触機会が増えたことで、デジタルによる体験の満足度が高まりました。リアルでは表現できない演出などが可能であることもデジタル空間の強みですが、コミュニケーション面ではまだ課題が残っています。リアル空間には、五感で深く感じる体験や、密なコミュニケーションをとることで、多くの情報を得られるという強みがあります。デジタルハイブリッド体験は、これらのリアル、デジタルそれぞれの良いところを組み合わせることで、新しい体験価値を生み出します。

空間のデジタルハイブリッド体験には以下のようなものがあります。
・リアル空間の体験価値を擬似的に享受できるもの
・リアル空間の体験価値を拡張するもの
・場所や時間の制約なく体験できるもの
・リアル空間とデジタル空間で双方向の体験できるもの
それぞれリアル空間、デジタル空間双方のさまざまな制約を取り払うことが可能なため、新しい体験として注目されています。TOPPANでは、以下4つのトライアルを行っています。

①ハイブリッドイベント
リアルブースだけでなく、自社メタバースプラットフォーム「メタパ®」や、360度撮影によるVRブースのオンライン配信などで、リアルとVR空間どちらでも展示会を開催できます。

ハイブリッドイベント



②オンラインツアー
多様な演出を組み合わせ、高臨場感のあるオンライン見学ツアー。ライブ映像と360度VRやARを組み合わせて、没入感のあるリアル以上の体験を生み出します。

オンラインツアー

③遠隔地コミュニケーション
どこにでも持ち運ぶことができ、ワープする没入空間体験で遠隔地とつながり、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)なしで、臨場感のある体験を生み出します。

遠隔地コミュニケーション

④新メタバース体験
3D Metaviewerを使い、メタバースの世界をフィジカルに体験できます。

新メタバース体験

こうした手法は今後も進化し、新しく開発されていくと予想されています。TOPPANはこの変化に対応するため、リアル空間を扱うチームとメタバースの専門チームが融合した新しいチームを発足させました。お客様のニーズに合う技術をカスタマイズして提供し、双方向で新しいコミュニケーションを可能にするような、デジタルハイブリッド体験(OMO)の実現を目指します。

SPACE X-ING webサイトのご紹介

TOPPANの「空間体験づくり」のさまざまな事例や独自のソリューションを紹介するウェブサイトを全面リニューアルしました。最新の”体験デザイン”の取り組みを随時発信してまいります。
私たちの「空間体験づくり」はデザイン・設計や製作・施工にとどまりません。
お客様の事業課題を共に考え、社会情勢、最新のトレンド・デジタル技術などの外部環境変化を的確に捉え、事業の“戦略策定”サポートから、効果的でユニークな“体験デザイン”の創造、生み出されたアセットを最大限に活かすための“エンゲージメント”向上施策まで、
TOPPANグループの多様な専門領域を組み合わせ、体験価値の最大化を図っていきます。

2023.10.12