工場での省エネ対策とは?
環境負荷を減らすための方法を解説
企業は今、事業全体を通じて環境負荷軽減の取り組みを実施する必要があります。特に工場を所有する企業は、一般家庭やオフィスよりも使用するエネルギーやCO2排出量が多いため、省エネ対策が重要になっています。今回は、工場での省エネの必要性と共に、環境負荷を減らすための方法やメリットをご紹介します。
工場における省エネの必要性
まずは省エネの意味から事業者にとっての省エネ対策の必要性を見ていきましょう。
省エネとは?
省エネとは、「省エネルギー」の略です。燃料、熱、電気などのエネルギーを効率よく使うことを指しています。省エネを行う意義として、エネルギーの安定供給確保と地球温暖化防止の2つの観点が挙げられます。
日本はエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っていることから、エネルギーの安定供給の確保は最重要課題の一つとなっています。またエネルギー使用時に排出されるCO2は、地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きな温室効果ガスであることから、CO2排出量の削減に向け、省エネへの必要性が高まっています。
事業者にとっての省エネの必要性
事業者においても省エネを行う必要性が高くなっています。その理由として、次のことが考えられます。
・省エネ法への対応
工場や事業場は、省エネ法への対応が求められています。省エネ法とは「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」のことを指し、一定規模以上、具体的には原油換算で1,500kL(キロリットル)/年以上のエネルギーを使用する事業者に、エネルギーの使用状況の報告や省エネなどに関する取り組みの見直しや計画の策定などの対応が規定されています。
2023年4月1日に施行された改正省エネ法では、非化石エネルギーを含めたすべてのエネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換を求めるとともに、電気の需要の最適化を促す法体系に変わりました。
化石エネルギーには、石油、揮発油、可燃性天然ガス、石炭などがあり、非化石エネルギーには、黒液、木材、廃タイヤ、廃プラスチック、水素、アンモニア、非化石熱や非化石電気(太陽熱、太陽光発電電気など)があります。
エネルギーを使用する事業者などは、エネルギー消費効率が優れた設備や太陽光発電設備といった非化石電気の使用に資する設備を設置することや、熱や電気を調達する際には非化石エネルギーの割合が高いものを選択すること、電気の需要の最適化のために自家発電設備や蓄電池を導入することなどが求められています。
同法が適用されるのは、事業者全体のエネルギー使用量(原油換算値)が合計して1,500kL/年以上である場合です。エネルギー使用量を国に届け出て、特定事業者の指定を受ける必要があります。
またフランチャイズチェーン事業などの本部とその加盟店との約款等の内容が、経済産業省令で定める条件に該当する場合も対応が必要になります。さらに個別の工場や事業場等の単位でエネルギー使用量が1,500kL/年以上である場合は、それぞれエネルギー指定管理工場などの指定を受ける必要があります。
・カーボンニュートラルの実現
日本は「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことを意味するカーボンニュートラルの実現を2050年までに達成することを目指しています。省エネはCO2排出を低減するための第一歩となることから、重要な取り組みとされています。
工場が、家庭やオフィスなどと比べ、多くのエネルギーを使用することは容易に想像できるでしょう。また事業者としての法対応やカーボンニュートラルの実現に寄与する環境経営を踏まえても、省エネ施策の必要性は高いといえます。
工場の省エネ対策の方法
工場の省エネ対策を実施する方法には、さまざまなアプローチ方法があります。主な方法をご紹介します。
再生可能エネルギー活用
再生可能エネルギーを活用することが一つの方法です。その代表である太陽光発電は、太陽光をエネルギー源として活用することにより、従来の電気などのエネルギーを削減できます。工場に対しては屋根に太陽光パネルを設置し、施設の使用電力のうちの一部を補うといった方法があります。
その他の再生可能エネルギーの活用例として、地中熱を利用したヒートポンプ空調や、木質バイオマス(動植物などから生まれた生物資源)などを活用した熱源設備が挙げられます。
空気調和(空調)設備の効率化
空調は、設定温度や使用時間の見直し、フィルター清掃など日々の細かな運用管理を実施することで消費電力を抑えることができます。また、空調効率を高めるために外気の侵入を遮断したり、熱源機器の運転台数をコントロールしたり、屋根の遮熱塗装や断熱塗装を行ったりするといった方法もあります。
・遮熱塗装
TOPPANがご提供している「TPK 遮熱塗料®」は屋根の表面温度を15~30℃、室内温度を3~7℃下げることが可能です。遮熱効果・温度調節機能により、冷房、暖房などの空調負荷を軽減して省エネ対策に貢献します。
また「ボンフロンサンバリア®」は、省エネ効果が長期間にわたって持続する低汚染型太陽熱高反射率フッ素樹脂塗料です。屋根や外壁に塗装することで、太陽光を効率よく反射し、表面温度の上昇を抑制するため、夏場の室内空調負荷を低減します。
・ガラス遮熱
窓からの熱を軽減することで空調効率を高めるガラス遮熱の方法もあります。
TOPPANがご提供している「クリアルマイサニーNano®」は特殊金属膜コーティングで、窓ガラスに塗るだけで、夏は涼しく、冬は暖かい環境を実現します。窓から入る太陽熱の近赤外線を60~80%カットすることにより、室内温度を2~3℃下げることで、冷暖房の負荷を軽減します。
・断熱塗料
TOPPANがご提供している「キクスイGAINA®(ガイナ)」は断熱セラミックで、断熱・保温効果を実現。建物の内外壁に塗るだけで、周辺の温度に適応し、熱の移動を最小化することで外部の気温に関わらず快適に過ごせます。
冷凍・冷蔵設備
冷凍・冷蔵設備は、温度設定を緩和することにより、省エネ効果が見込めます。冷凍・冷蔵設備の圧縮機のインバーター化も一つの方法です。
インバーターとは、直流電圧を交流電圧に変える装置を指します。直流電圧は一定の電圧ですが、交流電圧に変えると一定の周期で向きが変わる電圧になります。このインバーターを冷凍・冷蔵設備などに搭載すると、直流電圧を交流電圧に変えることにより、モーターの回転数や速度を変えることができます。モーターはかけられる電圧の周波数が高いほど速く回転し、低いほど遅く回転します。
インバーター装置が内蔵されたものは効率的な制御が可能になるため、設定温度よりも温度が高いときは圧縮機のモーターを高速に回転させ、設定温度に近づいたら回転数を落とす仕組みとなっています。これにより省エネにつながりやすくなります。
工業炉
工業炉の外壁の保温が不十分な箇所を断熱材で補強することで、放散熱量を低減し、省エネにつなげる方法があります。工業炉の外壁の断熱材として、よくロックウールやグラスウールといったものが使われます。
コンプレッサ・ファン・ポンプ
コンプレッサは、吐出圧力を見直すことで省エネを実現できる可能性があります。例えば空気機械の設定圧を下げたり、フィルターの清掃や交換を行ったりすることなどが挙げられます。
ポンプ・ファンについては、インバーターの採用により流量を調整したり、台数や回転数を制限したりすることによって省エネを実現します。
照明
照明については、LED照明の導入が挙げられます。LEDは従来の一般白熱電球や蛍光灯に比べて約50~80%の省エネ効果が期待できます。また人感センサーにより、人の有無や人数によって照明のオンオフや明るさの調整などが自動で行える仕組みを導入することも省エネにつながります。
工場で省エネ対策を行うメリット
工場で省エネ対策を行うことで、さまざまなメリットが生まれます。
SDGsへの対応やESG経営につながる
省エネは環境を配慮した取り組みの一つです。国際社会共通の目標である2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットから構成される「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成を目指す企業にとっては、一つの重要な取り組みとなります。
また、ESG経営、つまり「Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)」に配慮した経営を行う企業にとっても、環境分野の取り組み強化につながります。
コストダウンにつながる
工場の省エネ対策を実施することで、エネルギーコストの削減が期待できます。新しい設備を導入したり施工をしたりする場合、初期導入費用がかかりますが、長期的な観点から見れば、省エネによってエネルギーコスト削減につながるため、コストダウンできる可能性があります。また省エネ対応の設備を導入する場合には、助成金や補助金を活用できることもあります。
設備の長寿命化
設備を新調するだけではなく、定期的な清掃などのメンテナンスや、使っていない機器や照明の電源を落としておくことで、設備に対しての負荷を減らし、設備の長寿化につなげることができます。
企業のイメージアップにつながる
省エネ法では、事業者クラス分け評価制度が設けられており、定期報告書をもとにSクラス・Aクラス・Bクラスにランク付けされます。Sクラス評価を受けた事業者は経済産業省ホームページで優良事業者として公表されるため、企業のイメージアップにもつながります。
まとめ
工場の省エネは、近年、重要性が増している環境配慮への取り組みにつながるほか、コストダウンや企業のイメージアップなど、事業継続・企業成長にも寄与します。
TOPPANでは工場・倉庫環境ソリューションの各種サービスを駆使して省エネに貢献するご提案が可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
関連コラム
省エネ関連サービス
工場関連サービス
2023.11.27