コラム

マーケティングDXとは?
実行課題やデータ分析方法を紹介

マーケティングDXにおいて、顧客の課題を理解し、ニーズに合った最良の体験を提供することは、重要な要素です。そのためには、企業様の「マーケティング部門」「顧客管理部門」「ICT部門」の各部門で保持しているデータを、デジタルマーケティング基盤によって統合し、顧客解像度を上げるデータを生み出す必要があります。
一方で、高額なデジタルマーケティング基盤の導入によって本当に効果が得られるのかなど不透明な点も多く、導入に踏み切れない・社内合意が得られない企業様もいらっしゃいます。
そこで、本記事ではデータ活用に向けた課題の特定と解決方法、社内の合意形成の進め方、デジタルマーケティング基盤導入のためのノウハウ等を事例とともにご紹介します。また、半年以内にマーケティングDXのスタートを切るための具体的な秘訣をお伝えしています。

※掲載の企業名・所属先は2022年12月のセミナー開催時のものです


ideanote vol.144 DXと向き合う~変革への第一歩をともに~


マーケティングDXの効果とよくある課題とは

マーケティングDXの効果

デジマ基盤による顧客データの活用で効果をあげている企業様の一例をご紹介します。

▶インフラ企業様
【課題】部署やシステム間でデータが分断され、顧客情報を横断的に見ることが不可能。各部署の個別最適では限界に達していました。
【導入効果】デジマ基盤を構築後は、顧客情報を基に個別のコンタクト対応が可能に。また機械学習を利用した施策対象者の抽出により、クロスセルの申込率が従来の4~6倍に向上しました。

▶メディア企業様
【課題】デジタル化やメガプラットフォームの出現により、従来のコンテンツ中心のビジネスから、コンテンツと顧客情報を掛け合わせたビジネスへの転換が急務となっていました。
【導入効果】様々なメディアの情報を統合して顧客の関心を解析。多面的評価によるコンテンツ設計や、キャンペーン施策への応用、AIを活用した興味・関心情報のマッチングによる新しいサービスにより新たな受注獲得へとつなげています。

▶通販事業者様
【課題】LTV向上を目的とした商品の定期購買化を実践済みでしたが、この既存施策の精度向上や詳細化を目指し、基盤の刷新が課題となっていました。
【導入効果】新たなデジマ基盤を構築し、顧客のセグメントをより詳細にし、ECサイト/リアルチャネルの情報を集約。スピード感を持って常時100〜200の施策を稼働しています。

マーケティングDXを実行するうえでの課題

マーケティングDX は、経営層から「うちでもマーケティング DX を」「デジタルマーケティングを推進すべき」という大号令が出たものの、なかなか社内合意が進まないというケースがよく聞かれます。
多くの場合は、下記の様にプロジェクトのスタート地点に課題があります。

・何から、どう進めていいかわからない
・持っている情報が活用できるかわからない
・効果が得られるかわからない
・デジマ基盤構築は高額のため、投資対効果に対する不安がある

これらを解決するためには、データ活用の可能性の検証を実際のデータを使って「小さく」かつ「早く行い」、社内合意に向けた材料を集めることが一番の近道となります。そのために必要なのが以下の2つの視点です。
・システム的視点:データが顧客軸に統合できるか
・マーケティング視点:統合したデータがビジネスに寄与するか

プロジェクトの社内合意を得るうえで、この両面での検証をデータの裏付けを元に行うことが必要不可欠といえます。

三田 虎史(みた たけし)

情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部
デジタルマーケティングセンター

マーケティングDXでデータを統合するポイント

マーケティングDXでデータを統合するポイント

データ統合とその目的

一般的なデジマ基盤の構成イメージとして簡単に解説しますと、会員サイトやキャンペーンサイトなどで取得した様々な情報(インプット)を、CDP/DMPや機械学習エンジンにて統合・加工・分析した後、MAツールやCRMシステムなどで施策実行(アウトプット)するというのが全体図です。

この中でインプットとCDP/DMPによる部分、具体的には下記の内容を「データ統合」といいます。

① 様々な部署やシステムに散在しているデータを
② 顧客を軸として統合することにより
③ 顧客の解像度を上げて
④ 顧客ごとの施策を実行できるようにする

多様な情報を「顧客軸」にまとめたうえで、機械学習エンジンやMAツール、CRMシステムなどで使いやすい状態にすることが、データ統合の目的です。

データ統合のポイント

データ統合を進めるにあたってのポイントは3つあります。

ポイント①:各種データソース側に外部システムとの連携機能が実装されているか
データソースに連携機能がない場合、追加で連携機能の開発が必要となってしまいます。また顧客にデータの利用許諾が取れておらず、許諾の取り直しが発生したというケースもよくあります。

ポイント②:顧客を軸にデータを統合できるか
仕様どおりにデータが入力されていない、データの入力率が低い、データソース間で重複した顧客がいないなどの理由から統合ができず、データの見直しが必要となることがあります。具体的には、電話番号をキーとしたマッチングを行う仕様なのに、ハイフンなし・ありが混在している、電話番号自体が入力されていないといった例が挙げられます。

ポイント③:データの中身(値)に不備がないか
備考欄などの自由記入欄に顧客の重要情報が入力されていたことで、分析や施策に利用できないというケースがあります。他にも、データに異常な数値が含まれていたために分析精度が下がるという例もありました。

これらのポイントが抑えられないと、スケジュールの遅延、コストの増加や分析精度の低下などを招くことになり、最悪の場合は本来やりたかった施策が実現できなくなる可能性があります。

CDP/DMP構築よりも前に、今あるデータを理解し、課題を洗い出すことが重要です。

龍 建斗(りゅう けんと)

情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部
デジタルマーケティングセンター

マーケティングDXで価値あるデータの見つけ方

価値あるデータの発見事例

AIを活用することで従来の分析で対象としていなかったデータを指標として活用でき、その影響度の高さを把握することが可能になります。例えば、金融業界では「出金回数・出金額」、通販では「各種商品セグメントの購入金額」といったデータの影響度を評価することもできるようになりました。

このような取り組みをTOPPANの様々なクライアント様と行った結果、従来施策と比べて反応率は2〜6倍に向上し、またAIにより従来アプローチできなかった層から1,000万の売り上げを創出。そしてAIにより効率よく分析を行った結果、顧客抽出の時間は70%削減となりました。

さらに、こうした「価値あるデータ」を探す過程で、全顧客の5%程度しか取得できていなかったアンケートデータや、データ量が少なかったWebアクセスデータなどは影響度が低いことが判明し、現状は分析に使えないデータを精査することにもつながっています。

マーケティングDXでデータを分析する注意点

価値あるデータを事前に探しておくことは非常に重要ですが、それを怠ると以下のようなリスクが考えられます。

▶分析観点
・社内に散らばるデータのうち何を使えばいいかわからず、地道な集計作業の繰り返しとなる
・分析する際に知りたい欲が先行し、方針が発散してしまい目的とずれていく

▶DX推進時
・何から着手していいかわからなくなり、実績作りやロードマップの提示ができず、上長承認が下りずにスタックする
・どんなデータが使えるかわからないため、とりあえずあるデータを全て入れることになり、費用がかさむ

上記のとおり、事前準備としてビジネスで成果を上げるための「価値あるデータ」を発見するためには、AIを活用することが効果的だと考えています。また、DXを始める際には、成果の出やすいテーマを選定することが社内での合意形成への近道となります。

亀子 湧生(かめこ ゆうき)

情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部
デジタルマーケティングセンター
森川 東勲(もりかわ ひさお)

情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部
デジタルマーケティングセンター

2022.12.02

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