TOPPANのBX(ビジネス変革)支援
ユースケース紹介②
出版社[コンテンツBX]
TOPPANでは、企業の経営課題に対応したBX(ビジネス変革)支援事業を強化しています。
今回は、出版社のコンテンツBXにおけるユースケースをご紹介します。
<ユースケース概要>
■クライアント:出版社
■目的・狙い:読者を起点としたデータビジネスの強化によるGAFA 対抗
■プロジェクト概要:取り組みで得た知見やノウハウを基にコンテンツ ファン ビジネス特化サービス「Uniikeyz」を開発、コンテンツビジネスBXに向けたさまざまな支援メニューと共に提供中
激動の出版・コンテンツ業界の課題
出版業界のBX ニーズのひとつは、「読者を起点としたデータビジネスの強化によるGAFA 対抗」です。コンテンツ業界は技術変化が早く、あらゆる業態に先駆けてデジタル・ディスラプションが進みます。またコンテンツやメディアの先進性に比べ組織や業務形態は古いままなことも多く、そのギャップを埋めるところにBX ニーズが生まれます。
消費者の生活がデジタル化、さらにコロナ禍も追い打ちとなり、ここ数年で書籍だけでなく映画や音楽などあらゆるコンテンツのメディア環境は、数十年に一度クラスの変化が立て続けに起きています。雑誌など紙の書籍の販売金額は年々減少の一途をたどっていますが、その一方でコミックの市場は、紙と電子版を合わせると右肩上がりで成長を続けています。
この背後で起きている“変化“は、従来の流通、書店経由で書籍を販売する「チャネル中心」から、読者が紙の書籍、サブスク型の電子書籍、映像、イベント、映画などを自身の興味に合わせて楽しむという「ファン中心」への、ビジネスモデルの変化です。
この際、出版社はGAFAが提供するサービスチャネル(プラットフォーム)や、他社の流通チャネル上では、自社のコンテンツのファンが特定できません。ファンが特定できなければ、ファンが喜ぶコンテンツを直接届けたり、データを基により良い体験を提供して高利益を確保することはできません。
そのため、各出版社では読者ID基盤の自社開発による、新たなデータビジネスの推進が課題となっています。
コンテンツBXプロジェクトの経緯
2017年、大手出版社として強力な人気コンテンツを多数保有する講談社より、「読者のID化による新たなデータビジネスの推進」という課題が投げかけられました。そしてTOPPANのデジタルマーケティングチームがプロジェクトに加わり、データ基盤や運用体制の強化を伴走支援しました 。
さらに、そこで開発した仕組みや知見を出版業界全体へ提供したいとの意向を受け、 2020年に講談社、TOPPAN、サイバー・コミュニケーションズ(CCI)の3社による合弁会社、株式会社コンテンツデータマーケティング(以下、CDM)を設立しました。
CDMは、出版社がコンテンツビジネスで培ったデータやノウハウを、独自のAIやテクノロジーに注入。DMPに蓄積された膨大なデータを解析し、コンテンツと生活者との出会いを個別最適化する様々なソリューションを提供します。
「コンテンツDXプラットフォーム」の全体像
出版社はCDMが提供するサービスを活用することでコミックスや雑誌など、従来出版物として提供されてきた自社のコンテンツを自前のプラットフォームからも提供可能。自社のファンを会員化でき、D2Cなどによる新たな収益基盤を拡大することが可能になります。
コンテンツBXで実現する世界
前述の「ファン中心」のコンテンツBXでは、以下のような世界が実現します。
「読者」はサブスク型のコンテンツから入って「ファン」となり、イベントや映像による「話題化」、グッズや限定体験における「マネタイズ」、その規模と興味軸で新たなファンを獲得、という循環が生まれます。その中心にはファンをIDとして管理するデータ基盤としてのDMP(Data Management Platform:データ マネジメント プラットフォーム)があります。
同時に、出版社のビジネス機能として宣伝・広告・課金・販売の力を、データ活用によって向上させる構想です。
コンテンツBXを実践する上での課題と、TOPPANの取り組み
このコンテンツBXを実践する上では、さまざまな課題があります。
こうした課題を一つずつ解消しなければ、単なる理想形、「絵にかいた餅」で終わってしまいます。
ここからはTOPPANがどのようなステップでコンテンツBXを実現していくのかを、ご紹介します。
<データ活用のための各種基盤の構築>
最初はデータ活用のための各種基盤の構築について。ここでは段階的な機能追加により、社内部門への提供価値を徐々に積上げていくプロセスを採用しています。
①DXの観点でCDP/MA/BI/ID基盤を導入・構築
これらのツール(基盤)は導入しただけではビジネスメリットが分かりづらいため、それらがどんな価値を提供するのか、段階的に積み上げていくプロセスのロードマップを策定し、社内理解を促進します。
②既存CRMとMAを一元化、運用チームと共に提供
顧客情報管理の観点でCRMとMAを一元的に管理できる仕組みを構築。また、運用リソースも提供することでクライアントの業務負荷削減と情報管理リスク回避を実現します。
③CDPによる社内データの活用
次にTOPPANのデータエンジニアリングチームが登場して、各部門が保有する各種データの可視化と共に、新サービス開発をサポートします。
④共通ID基盤の提供・整備
各サービスの会員管理と認証を担う共通ID基盤の導入により、各編集部門はリスクの高い個人情報を扱わずにサービス提供できる土台が築けます。
⑤D2C(Direct to Consumer)マネタイズ機能の提供
EC・課金のためのD2C機能を提供し、環境を構築します。
<ビジネス部門ごとのデータ活用による課題解決>
次に、ビジネス部門ごとのデータ活用による課題解決について。共通のデータ基盤を活用することで、個別対応をしつつも、リソースやコストが抑えられます。例えば、出版社の各部門で生じる以下のような課題に一つずつ対応していきます。
●編集部門(コミック):ヒット作品の育成・継続判断をするための作品評価ダッシュボードを構築
●広告部門:独自サービス開発と付加価値向上のため、独自ターゲティングサービスを開発
●編集部門(コミック):広告、販売収入に次ぐ収益源創出のため、D2C型サービスを実現
●宣伝部門:CRM運用コスト削減のためにMA運用一元チームを構築
<チームビルディングについて>
続いては、チーム編成についてです。
●取組が長期に及ぶBXプロジェクトの実施では、TOPPANでは必ずクライアントと一体型チームを組ませていただきます。また、クライアント側からは責任者だけでなく各ビジネス部門の代表者に参加していただきます。
●TOPPAN側は、プロジェクトマネージャーを中心に、エンジニア・アナリスト・オペレーター・マーケターといったチームがプロジェクトのフェーズごとに求められるタイミングで体制を補強して行きます。また、常に同じテーブルで議論することで、全社的な舵取りを確実に実行します。
●CDPやIDなど、個別の導入・開発プロジェクトは各ベンダーにも参画いただき、連携して実行します。
<段階的な事業インパクトの創出に向けて>
最後は、段階的な事業インパクト創出に向けた取り組みです。こうしたプロジェクトは一朝一夕に結果が出るものではなく、中長期的視野に立って取り組むことが必要です。その上で、以下の取り組みが欠かせません。
●全社としてのビジョンおよびフェーズごとに目指す効果と目標を、ロードマップとして明確に示す
●部門ごとの成果を創出(共通するコストは一元化)
●継続性・連携性の高いチームビルディング(いまある現実に向き合い、変え続ける)
CDMのコンテンツBXソリューション紹介
CDMでは、これらの取り組みで得た知見やノウハウを基に開発した、独自AIを搭載したSaaS型のコンテンツ ファン ビジネス特化サービス「Uniikeyz」を提供。コンテンツビジネスBXに向けた、さまざまな支援メニューも展開しています。
TOPPANは、CDMと共に「Uniikeyz」の導入支援およびコンテンツ ファン ビジネス支援・D2Cビジネス支援メニューを強化・拡充していきます。
まとめ
いかがでしょうか。今回はTOPPANのBX(ビジネス変革)のユースケースとして、コンテンツBXおよびCDMの取り組みをご紹介しました。
あらためて、本プロジェクトをBXの3つの要素である「CX」「DX」「EX」に置き換えると、以下のような成果につながりました。
CX:ファンの熱量を高める体験サービスの実現
DX:ファンのデータを管理するID/DMP基盤
EX:ファンの理解に基づく創造的な業務への集中
BXにおいては、この3つの循環が、成功のカギとなります。
また、この取り組みは出版社にとどまらず、ゲーム、音楽、スポーツ、さらには地方自治体やデベロッパー、メーカーなどコンテンツを基に自社ファンに育成したいさまざまな事業者に活用いただけます。
デジタルを活用したBX(ビジネス変革)を推進したいお客さまは、ぜひTOPPANまでお気軽にご相談ください。
2023.12.01