コラム

ECサイトの構築方法|始め方・作り方を初心者向けに徹底解説

ECサイトの構築手段には多様な選択肢があるため、どれを選べば良いのか迷っている方も多いのではないでしょうか。

方法ごとにメリットとデメリットが異なるため、事前に理解を深めたうえで、自社にとって最適な手段を検討することが大切です。

本記事では、ECサイトを構築する5つの手段について、それぞれの特徴や、メリット・デメリット、向き・不向きを解説します。また、構築時の手順やポイントについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

ECサイトの構築方法

ECサイトを構築する際の、主な方法は以下の5つです。

構築方法 特徴 メリット デメリット サービス例 向いている企業
ASPを利用する方法 プロバイダが構築したシステムをクラウド上で活用できるサービス 導入や運用が容易で、初期費用を抑えられる カスタマイズ性が劣るものもある ・Shopify
・makeshop
規模が小さく、ECサイトの運営に慣れていない企業
SaaSを利用する方法 クラウドプラットフォームを定額課金制で利用するサービス ASP型よりもカスタマイズ性が高く、幅広いシーンで活用できる 運用期間が長くなるほど運用コストが高額になりがち ・ebisumart
・Salesforce Commerce Cloud
中規模から大規模で、機能が充実したECサイトを構築したい企業
パッケージを利用する方法 既存のソフトウェアをベースに、自社独自にカスタマイズして構築する方法 カスタマイズ性に優れるとともに、スクラッチ開発の手間やリソースを抑えられる 仕様が細かいほど開発費が高額になりがち ・ecbeing
・SI Web Shopping
規模が大きく、独自の機能を搭載したECサイトを構築したい企業
オープンソースを利用する方法 Web上の無償のソースコードを用いてECサイトを構築する方法 活用範囲が多岐にわたり、細かい要件定義が必要な企業でも、柔軟に独自のシステム設計が可能 プログラミングに関する高度な知識や技術が必要 EC-CUBE 自社にエンジニアがいて、できるだけECサイト構築にかかる費用を抑えたい企業
フルスクラッチで構築する方法 プラットフォームを利用せず、ゼロからECサイトを構築する方法 自由度が高く、自社のニーズに合わせたECサイトを構築できる 費用が高額になりがち - 規模が大きく、完全オリジナルのECサイトを作成したい企業

それぞれの方法の特徴やメリット・デメリットを解説します。

ASPを利用する方法

ASP(Application Service Provider)とは、クラウド上で利用できる、ECサイト構築に必要な機能を備えたシステムです。「ASPカート」とも呼ばれています。

一般的に複数の料金プランが用意されており、事業規模や目的に合ったものを選ぶことで、ほかの構築手段より費用を抑えることが可能です。また、テンプレートが充実していたり、ドラッグ&ドロップ操作が可能だったりする製品が多いため、特別なノウハウがなくてもECサイトを構築できます。

一方、利用できる機能やセキュリティなどが、製品の仕様に依存する点には注意が必要です。カスタマイズ性にも制限があるため、完全オリジナルのECサイトを構築したい場合は別の手段を検討しましょう。

【費用と年商目安】
・初期費用:0円~
・月額費用:~10万円
・サイトの年商目安:~1億円
・構築にかかる期間:1~3か月程度

SaaSを利用する方法

SaaS(Software as a Service)は、ASPと同様、クラウド上で提供されているサービスです。インターネット環境さえあれば、手軽にECサイトを構築できます。

ASPと異なるのは、後述のパッケージと同レベルの機能を備えている点です。決済やレビュー、カスタマーサポートなど、ECサイト運用に必要な幅広い機能を利用できます。また、ASPよりも拡張性が高く、さまざまな外部システムと連携できるのもポイントです。

ただし、中堅・大企業向けの製品が多く、費用がやや高額になりがちです。加えて、あくまでクラウドサービスなので、セキュリティレベルを自社でコントロールしにくいデメリットもあります。

【費用と年商目安】
・初期費用:300万円~
・月額費用:10万円~
・サイトの年商目安:1~50億円
・構築にかかる期間:3~4か月程度

パッケージを利用する方法

パッケージ型は、ECサイトの運用に必要な機能が集約された、オンプレミス型のシステムです。自社でハードウェアやソフトウェアを保守管理するため、前述のASPやSaaSとは対極的な手法だといえます。

パッケージ型のメリットは、SaaSと同様、充実した機能を利用できる点です。また、自社の技術要件やセキュリティ要件に則って、システムを柔軟にカスタマイズできます。

しかし、オンプレミス型のシステムである以上、外部のクラウドシステムと連携する際は、統合が上手くいかない可能性が考えられます。そのほか、手動でアップデートを行ったり、サポート期間が限定されたりと、運用に手間がかかりやすいのも難点です。

【費用と年商目安】
・初期費用:500万円~
・月額費用:10万円~
・サイトの年商目安:1~50億円
・構築にかかる期間:4~6か月程度

オープンソースを利用する方法

インターネット上に公開されているソースコードをもとに、独自のECサイトを開発する方法です。

一からシステムを構築するフルスクラッチに比べ、開発工数やコストを抑えられます。そのため、社内にエンジニアが少ない場合でも対処しやすいでしょう。また、自社の事業規模や目的に合わせ、柔軟にシステムを構築できるのも利点です。

ただし、いくらオープンソースの情報を参考にできるとはいえ、システム開発にはある程度の知識や技術が必要です。システムの設計やプログラミングのノウハウが不足している場合は、特別な知識が不要なASPやSaaSなどを活用すると良いでしょう。また他の方法に比べセキュリティリスクが高い点もデメリットです。

【費用と年商目安】
・初期費用:0円~(開発費、サーバー費用等は別途必要)
・月額費用:0円~(保守・運用費、サーバー費用等は別途必要)
・サイトの年商目安:1億円~
・構築にかかる期間:3かケ月~6か月程度

フルスクラッチで構築する方法

フルスクラッチとは、一から自社独自のシステムを開発する方法です。自社の技術要件やセキュリティ要件をシステムへと完全に反映できるため、最もカスタマイズ性に優れた手法だといえるでしょう。特に、年商50億円以上の大規模なECサイトを構築する際は、フルスクラッチで開発を進めるのが一般的です。

サイト規模が大きく、複雑な要件を整理する必要がある以上、フルスクラッチには大がかりな手間が発生します。そのため、内製化の場合には、予算や人員などの膨大なリソースが必要です。社内のリソースが不足する場合、開発会社に制作を依頼するのも方法の一つです。

【費用と年商目安】
・初期費用:数千万円
・月額費用:数十万円
・サイトの年商目安:50億円~
・構築にかかる期間:6か月~1年程度

モール内にショップを出す方法

ECサイトの構築とはやや趣向が異なるものの、モール内への出店を検討するのも良いでしょう。Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどが代表的で、モールそのものの知名度を活かして商品を販売できます。

モールには、すでに商品販売のためのプラットフォームが存在するため、ショップ情報の登録や商品の出品といった手続きだけで、簡単にショップ運営を始められます。サイトの構築やシステム開発に手間がかからないのは大きなメリットです。

しかしその分、柔軟なカスタマイズはできません。自社独自のブランドカラーやコンセプトを全面的に訴求したい場合は、先に挙げたECサイト構築方法を活用しましょう。また、出店料や各種手数料が発生する点にも注意が必要です。

ECサイトの作り方・構築手順

ここからは、ECサイトを構築する際の手順について見ていきます。
1. ECサイトのコンセプトを決める
2. 要件定義を行う
3. 構築方法やECシステムの選定
4. サイトのデザイン制作
5. 商品情報の登録
6. 運用テスト
7. リリース(公開)

それぞれの工程について詳しく見ていきましょう。

ECサイトのコンセプトを決める

まずは、ECサイトのコンセプトを決めましょう。コンセプトを決めず、やみくもに構築を進めてしまうと、できあがったECサイトが統一感のないものになってしまいます。コンセプトがしっかりしていれば、サイト全体に統一感が生まれ、UXの向上が見込めるほか、競合サイトとの差別化にも効果を発揮するでしょう。

コンセプトを決める際は、次のような要素を明確にしていく必要があります。

● ショップ名
● コンセプトキーワード
● 商品の強み
● サイトURL
● ターゲットとペルソナ
● 対応デバイス


なかなか内容が固まらない場合は、すでに成功している競合他社の事例を参考にしたり、商品のブランドイメージとの関連性を見つけたりと、工夫してみると良いでしょう。複数の要素から結論を導き出すロジックツリーや、複数人で多数のアイデアを出し合うブレインストーミングなども効果的です。

要件定義を行う

ECサイト構築における要件定義とは、ECサイトに必要な機能や仕様を明確にする作業です。明確な要件が設定されているほど、サイト運営に求められる機能や予算、適切なスケジュールなどが明瞭になり、自社に合ったサイト構築手段を特定しやすくなります。

ECサイトの要件は、主に「サイト要件」と「システム要件」の2種類に分かれます。

● サイト要件:ECサイト全体のレイアウト、各ページの構成、デザインイメージなど
● システム要件:運用時に必要な機能、決済種別、配送方法など

これらの要件を洗い出した後は、スケジュールや予算、チーム体制を検討しましょう。システムの導入時やECサイト運営時には、想定外の作業やコストが発生する可能性があるため、それぞれの要素に余裕を設けることが大切です。

構築方法やECシステムの選定

前述したASPやSaaS、パッケージなどの選択肢から、自社に合った構築方法を決定します。それぞれの手段によって性質が異なるのはもちろん、製品ごとにも機能性や操作性といった違いがあるため、自社の要件をもとに比較・検討を行いましょう。

選定ポイントは次の通りです。

● 事業規模に合っているか
● ECサイトで実現したいことができるか
● 外部システムとの連携のしやすさ

可能であれば、事前にトライアルやデモを活用するのがおすすめです。期間が限定されているケースが多いものの、実際の製品を使って機能性や操作性を確認できるため、導入後の失敗リスクを抑えることができます。

サイトのデザイン制作

最初に設計したコンセプトに従い、ECサイトのデザインを制作します。

ECサイトのデザインを考える際は、UX(ユーザーエクスペリエンス)を意識することが重要です。ECサイトにおけるUXとは、「カテゴリが整理されていて回遊しやすい」「画像や見やすくて商品の仕様がわかりやすい」など、サイト全体を通じてユーザーが体験するすべての事象を指します。

UXが整っているECサイトは、単に見た目が美しいだけでなく、ユーザーの利便性向上にも寄与します。この利便性は顧客満足度にも影響しているため、リピーターやロイヤルカスタマーを増やすためにも、UXは重要な要素だといえるでしょう。

ECサイトのUXを向上させるには、サイト立ち上げ後にユーザーの行動を分析し、繰り返し改善を行って最適解を見つけることが大切です。

商品情報の登録

ECサイトで商品を販売するには、商品画像や商品名、型番、価格、仕様説明など商品データを登録しなければなりません。販売する商品によっては、商品画像の加工やカテゴリの設定が必要です。

商品情報に誤りがあると、トラブルの発生により、ユーザーからの信頼を失う可能性があります。そのため、ECサイト管理システムのミス防止機能や、目視によるダブルチェックなどで、登録データの正確性を確保しましょう。

ASPやSaaSなどの製品のなかには、CSVファイルを用いて一括でデータを登録できるものもあります。また、データ量が肥大化し、管理工数増大の課題が発生した場合は、データの一元管理システムや登録作業のアウトソーシングを検討するのも一案です。

運用テスト

商品情報の登録が済んだら、ECサイトをテスト公開し、ユーザーの立場でサイトを使用してみましょう。商品検索から詳細閲覧、カートへの追加、決済までの流れをテスト運用し、現状のボトルネックを特定します。

その際もデザイン制作のときと同様、UXの観点が不可欠です。単にレイアウトのバランスや誤字・脱字を確認するだけでなく、ページの表示速度やカートの使いやすさ、フォームの入力しやすさなど、ユーザーの体験価値に関する問題点を洗い出すことが重要です。

リリース(公開)

運用テスト中にPDCAを繰り返し行い、すべての問題点をクリアしたら、ECサイトを一般公開しましょう。

一般公開後は、テスト環境では発生しなかった、新たな問題が生じる可能性があります。そのため、一般公開後にも繰り返しPDCAサイクルを回し続けることが大切です。

また、PV(ページビュー)や購入率、顧客単価といったKPIを設定しておくと、目標と実績との差が明らかとなり、よりスムーズな効果検証を行えます。ASPやSaaSなどの製品のなかには、分析・レポート機能を活用できるものもあるため、上手く活用するのがおすすめです。

ECサイト構築時のポイント

ストレスなくECサイトを構築し、スムーズに一般公開へと進めるには、以下のようなポイントを押さえることが重要です。

● UX向上に必要な機能を選別する
● セキュリティ対策を徹底する
● 外部に依頼する際はサポート体制を確認する

それぞれ見ていきましょう。

UX向上に必要な機能を選別する

前述の通り、ECサイトの利便性を高めるにはUXの観点が欠かせません。そのため、ASPやSaaSといった製品を選ぶ際は、サイト運営の利便性を高める機能だけでなく、UX向上につながる機能も入念に選別することが大切です。

具体的には、次のような機能が候補となります。

サイト運営の利便性を高める機能
(企業にとって必要な機能)
UX向上につながる機能
(ユーザーにとって必要な機能)
・CSV商品管理
・HTMLタグ管理
・ラベル設定機能
・アンケート調査
・注文データダウンロード
・分析・レポート機能
など
・予約販売機能
・メール配信機能
・クーポン発行機能
・マルチ決済システム
・多言語対応
・レスポンシブデザイン
など

セキュリティ対策を徹底する

ECサイトを運営する際には、盤石のセキュリティ対策を構築することが不可欠です。

ECサイトではその性質上、ユーザーの個人情報を多く扱います。もしも個人情報を流出させてしまうと、ユーザーや取引先からの信頼を失い、自社の経営に大きな悪影響を及ぼすことになります。

ECサイトのセキュリティ対策は、「機能面での対策」と「内部統制による対策」の2パターンに分かれます。

機能面での対策としては、ECサイト管理システムに搭載された、常時SSLや多要素認証といったセキュリティ機能を活用する方法が考えられます。そのほか、オンプレミスのサーバーやデータセンターなど、社内インフラのセキュリティを強化するのも方法の一つです。

内部統制による対策には、ヒューマンエラーや悪用を回避するための社員教育、情報セキュリティ管理基準の作成、情報監査のプロセス構築などが含まれます。

このように、多角的な視点をもとにセキュリティ対策を徹底しましょう。

外部に依頼する際はサポート体制を確認する

導入支援サービスをはじめ、ECサイトの構築を外部に依頼する際は、ベンダーのサポート体制を確認することが大切です。

一概に導入支援サービスといっても、初期設定などの簡易的なサポートのみを扱うのか、それとも導入前から定着まで一貫したサポートを行うのかと、ベンダーによって内容が大きく異なります。そのため、ベンダーごとの得意領域や対応範囲をよく確認しましょう。

実績や口コミなどを参考に、依頼先の信頼性を確認することも重要です。

ECサイト構築のお悩みはTOPPANまで!

ECサイトを構築する手段には、ASPやSaaSといった幅広い選択肢が存在します。ECサイトの導入目的や機能・セキュリティ要件などを明確にしたうえで、適切な方法を選択しましょう。

もし、ShopifyでのECサイト構築に興味がある方は、TOPPANにご相談ください。当社は、Shopify社で最上位のパートナーランクでの「Shopify Plusパートナー」に認定されているため、テクニカルな要件にも柔軟に対応できます。

また、Shopifyに限らず、ECサイト立ち上げや運営に向けた総合的な支援サービスも提供しています。事業モデルや商品内容に合わせて最適なシステムを提案できるほか、システム開発や商品販売などの一貫したサポートが可能です。ECサイトの基盤を強化したい方や、パフォーマンスを向上したい方は、ぜひ一度お問い合わせください。


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2024.06.17

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