【会談記事】
クレジットカードのお手続きの際に必要な書類をスマホだけで提出可能に。
二人三脚で作り上げた「証明書撮影パッケージ」が顧客の利便性の向上と業務改善を実現
クレディセゾングループは、2024年5月に発表した中期経営計画において、2030年に目指す姿として「GLOBAL NEO FINANCE COMPANY~金融をコアとしたグローバルな総合生活サービスグループ~」を掲げており、その目指す姿の実現に向けて、事業を成長させるキードライバーの一つとしてデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。
今回導入された「証明書撮影パッケージ」もその一つ。カード利用に必要な各種書類のオンライン提出を可能にする当パッケージは、時間帯や場所を問わず、お客さまが簡単に手続きを済ますことができ、紙のやり取りで生じていた多くの課題を解決します。
クレディセゾンさまはこの「証明書撮影パッケージ」のファーストユーザーであり、その開発過程においても多大なるご協力をいただきました。今回はサービス導入の旗振り役となった株式会社クレディセゾンの久米秀隆さま、実務を担当される岩窪知世さま、藤山香さまと、TOPPANエッジの宮田、三藤が、導入に至る経緯やより良い内容にするためにパッケージに懸けた思いについて振り返りました。
株式会社クレディセゾン 事業概要:ペイメント・リース・ファイナンス・不動産関連・グローバル・エンタテインメント 従業員数:3,783名(2024年3月31日時点) 証明書撮影パッケージ導入時期:2024年3月 |
「お客さまにカードをいち早くお届けしたい」思いが導入の契機に
宮田:最初にわれわれが「証明書撮影パッケージ」の構想をお話しさせていただいたのが、確か2022年末ごろでした。2024年3月のローンチまで、さまざまなことがありましたね。
久米さん:そうでしたね。TOPPANエッジさんとは封入物の発送業務などをはじめ、以前からお付き合いはありましたが、今回の新サービス導入に関してはちょうどタイミングが合った形で。
宮田:導入に至る経緯を改めてお話しいただけますか。
久米さん:クレジットカード発行やカード利用で必要となる証明書類をご提出をいただく場面で、いくつかの課題が生じていました。そのひとつ目は、カードの受け取りにあたってお送りいただく本人確認書類の処理です。
オンラインで申し込まれたお客さまには、受け取りの際に本人確認書類を提示していただく方法でカードをお送りすることがありますが、住所違いなどの不備によってカードが弊社に戻ってきてしまうケースが多々あります。
久米さん:その場合は改めてお客さまに返信用封筒を同封したお手紙を郵送し、本人確認書類を返送していただくまでカードを発送できません。そうすると日数がかかってしまうので、なんとかして早くカードをお届けしたいという思いがありました。
藤山さん:月に1,000件程度はありましたね。
久米さん:もうひとつは、法定途上与信(※1)における所得証明書類の処理ですね。返送された源泉徴収票や給与明細書のコピーを部内で確認し、オンライン画面に登録する業務を毎月行っていましたが、これがかなりの作業負荷になっていました。
※1 貸金業法で定められた、カード会社が対象の会員に対して定期的に実施する審査。
岩窪さん:一口に所得証明書類といってもさまざまな種類があって、書類が複数枚届くこともあるんですよね。物量が非常に多い上、最初から最後まで手作業の業務になり、大変でした。
藤山さん:私は本人確認書類の担当なので、1日の作業量は多くても40〜50通ですが、所得証明の確認担当者は…。
岩窪さん:ピーク時は1日の処理数が3桁いきますね。
久米さん:そういった業務課題もあり、オンラインによる提出方法を模索するようになりました。スマートフォンで提出できれば手続きもスピーディーになりますし、郵便料金などのコスト面に関してもメリットが期待できます。
三藤:それがちょうど、われわれがクレジットカード会社さまに向けた「証明書撮影パッケージ」の構想を各社に市場調査していた時期だったんです。
久米さん:構想を聞くと、まさに私たちが欲しいと思っていたサービスでした。その前に他社にヒアリングもしていたのですが、TOPPANエッジさんは課題に対する回答も非常にクリアーかつスピーディーだったので、ぜひ一緒に取り組みたいと思いました。まだ調査段階ということでしたが、私たちクレディセゾンがファーストユーザーになるので、ぜひ製品化して広げてほしいとお伝えしました。
“お客さま目線”に立ち返り、画面構成を一から見直し
宮田:サービスの開発を進める上で懸念されていたのは、どういったところですか?
久米さん:やはりOCR(※2)の精度ですね。あらゆる形状の書類を果たして正しく読み取れるのか?という懸念はありました。あとは、いかにお客さまにとってわかりやすいサービスにできるか。お客さまに「やっぱりオンラインは面倒だから紙でいいや」と思われないような操作画面にする必要がありました。
※2 Optical Character Reader(またはRecognition)の略。画像データのテキスト部分を認識してデジタル化すること。
三藤:OCRは100%の確実性を保証するものではありません。ですが、多岐にわたる給与明細や公共料金の領収書のパターンを惜しみなく教えていただきながらチューニングができたので、さまざまな書類が一定のレベルで読み取り可能になっています。
宮田:到着書類に関する業務負担を減らす、という目的もありましたよね。これまで、届いた書類が不備となる割合はどの程度あったのですか。
藤山さん:本人確認書類においては、全体の3割程度です。不備の内容は、保険証の裏面に住所の記載が無かったり、必要書類が足りていなかったり、コピーが途中で切れてしまっていたりですね。
三藤:今までのフローだと不備の処理は書類受付後になるのですが、今回のパッケージでは入口の時点でできるだけ不備を無くす仕組みにしています。お客さまが撮影した写真を自動判定し、写りのフォーカスが合っていない場合や画像が暗すぎる場合はアラートが出ます。
さらに、「NaU Rulebook」というルールエンジンでそのテキスト化した内容が有効かどうか、例えば有効期限内のものか、ご本人の書類であるかといった複数のポイントを自動判定して、2段階の判定をクリアーしたもののみ、クレディセゾンさまが確認できる形にしました。
岩窪さん:お客さまにも、撮影段階での不備を未然にお知らせできるので、不要な手間をおかけせずに済むというメリットがあります。
三藤:チェック内容は単純にイエスかノーかを判定するだけではなく「これはお客さまにお知らせするべき」「これは受付後に解消すれば良い」といった、不備のレベル感に合わせて対応できるよう調整しました。
また、ルールチェックもExcelで定義できるよう組んでいるので、運用後もプログラムを改修すること無く柔軟に変更できるところがポイントです。
久米さん:重要な機微情報の自動マスキング機能(※3)も実装していただきました。紙の場合、該当項目をマジックでマスキングしてキー情報を補記してから画像を残す必要がありました。画像を保存する作業も、現物を一度コピーして形を整えてから社内のスキャナーにかけるという手間がありました。
それが画像取得から保存まで自動でできるようになって、作業がずいぶんと楽になりました。
※3 本人確認書類に含まれる機微情報を黒く塗りつぶして隠すこと。
藤山さん:以前は、スキャニングする別の部署の方が一つひとつチェックしてくれて、われわれの方でマスキング漏れがあるとフィードバックが飛んでくるのですが、そのやり取りも減りました。
久米さん:ただ、最初からスムーズに開発が進んだわけではなく、われわれクレディセゾン側が主体となってテストする段階になってもうまくOCRで文字が拾えてなかったり、文字認識できても読み込みに時間がかかったりと、さまざまな事象が発生しました。
その都度オンラインでの課題共有を重ねていたんですけれど、細かいニュアンスが伝えづらかったり、残念ながらスピード感には欠けてしまう部分がありました。そこでTOPPANエッジさんにわざわざご足労いただき、何度も一緒にUAT(受け入れテスト)を行って。
三藤:そうでしたね。処理スピードを改善するためにプログラムも直しました。
また、スマホの操作画面をまるごと作り直しというくらいの大きな修正も行いました(笑)。残念ながら当初はシステム側に寄った機械的な操作画面で、お客さま側の使い勝手が良くなかったんですよね。
久米さん:そうなんですよね。例えば、処理中の画面に「OCR処理中」とメッセージを出していたのですが、一般のお客さまにとってはOCRが何を指しているのかわからないかもしれない。お客さま目線になったときに、伝わらないと思われる部分が多かったんです。このままだと使っていただけないと判断して、リリース近くでの大改修へとかじを切ったんですよね。
藤山さん:「この表現は変えた方がいいよね」など、お客さまへ寄り添ったサービスにするために本当に大変でしたが、“てにをは”や文脈も改めて一から考え直しながら修正したのを思い出しました。
久米さん:スマホ画面の処理の進み具合が分かるよう進捗状況を示したプログレスバーを表示させ、ボタンの色や文字の大きさといったデザインも含めお客さまにとって分かりやすく、離脱されないように改善していただきました。妥協せずにみんなでひとつずつ乗り越えたからこそ、いいサービスができたという実感があります。
宮田:今回のパッケージはお客さま側の使いやすさはもちろん、付随する業務の効率化につながる工夫を随所に盛り込んでいます。これは、クレディセゾンさまに非常に多くの情報、ご要望をいただけたことが大きかったと感じています。
久米さん:「通常は断られるだろうな」ということも多々お願いしましたが、TOPPANエッジさんはノーと言わず、難しい要求であっても何らかの形で提案してくださった。そこが非常にありがたかったです。
帳票処理自動化に向けられるニーズの高さを再認識
宮田:運用を開始して半年ほど経過しましたが、状況はいかがですか。
岩窪さん:紙での証明書類提出は、パッケージ導入前の半数程度になりましたね。
藤山さん:お客さまの書類提出はとてもスムーズになりましたが、取り込んだデータの内容確認はどうしても人の目で行う必要があります。その作業の自動化が今後の課題かなと感じています。
岩窪さん:オンラインで提出していただいた書類に関しては、コピー作業がゼロになっただけでも大きく違いますね。また、これまでは封筒を開封するところから内容の確認、登録まですべて手作業で行っていましたが、読み込んだデータを活用して自動登録できる仕組みを構築したので、ここも効率化につながっています。
宮田:運用する側の使い勝手はいかがでしょうか。
藤山さん:お客さま側のユーザビリティを優先したので、どうしても実務担当者が見る管理者画面は慌ただしく開発を終えてしまったところがあったのですが、今のところ、現場からの改善要望は出ていないです。
岩窪さん:私たちから言うのも何ですけれど、実務担当チームは業務への改善意識が高いんですよ。ですので、使い勝手について何かリクエストがあるかなと思っていたのですが…無かったですよね。
宮田:そう聞いて安心しました!
久米さん:お客さまから本人確認書類や所得証明書類をいただいている業務は、社内のあちこちに存在します。今回のパッケージ導入を受け、「私たちも使ってみたい」「詳しく教えてほしい」と他部署からの引き合いもあり、ニーズの高さが感じられます。
三藤:この「証明書撮影パッケージ」もそうですが、弊社はさまざまな帳票を取り扱う業務やBPOも数多く請け負っていますので、現場の困りごとへ寄り添った形でご提案できるところが強みだと自負しています。課題があればいつでもご相談ください。
岩窪さん:今回、システム開発の知識も経験も無いまま当開発プロジェクトへ参加したので、最初は何をどう伝えればいいのかもわかりませんでした。ですがTOPPANエッジの皆さんは常に図や言葉で説明してくださって、わからなかったことがひとつずつクリアーになって、改善されていく実感がありました。今後ともどうぞよろしくお願いします!
藤山さん:サービスをリリースした今も相談したいことが都度発生していますので、今後も変わらず快い反応を返していただけるとうれしいです。
久米さん:私たちクレディセゾンも引き続き全社を挙げて自動化やDXを進めていこうと考えています。ぜひまたご相談させてください。
宮田:こちらこそ今後ともよろしくお願いします!
本日はありがとうございました。
※所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。
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2024.11.08