コラム

高齢者も使いやすい戸別送受信機で
情報格差を改善

※本記事は2022/02/22にジチタイワークスWEBへ掲載された記事です。
 当記事の著作権は株式会社ジチタイワークスに帰属します。
 株式会社ジチタイワークス「ジチタイワークスWEB」


災害から住民を守る上で重要な役割を果たす防災情報。緊急時などの情報格差を改善するため、全国的に戸別受信機の設置が進んでいるという。岩手県紫波(しわ)町では、主に高齢者世帯への伝達手段として利用を開始。

その背景を担当者にお伺いしました。

※下記はジチタイワークスINFO.(2022年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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有線放送の廃止で、防災情報の伝達システム構築が急務に

県中部に位置し、北上川が中央を流れ、東西に北上高地と奥羽山脈がそびえ立つ岩手県紫波町。この地域は大規模な地震や川の氾濫、土砂災害のリスクにさらされており、特に高齢化率40%超の山間地域の災害対策が課題とされている。

同町では長い間、地元の農協が所有する有線放送網を使い、防災をはじめとする情報発信を行ってきたという。ところが平成30年、諸事情により廃止が決定。伝達手段を失う窮地に陥った同町は、約1年かけて携帯電話やスマートフォン(以下、携帯・スマホ)への一斉送信システムを整備。

「火災や気象警報、行政情報などを送信できるようにしました。携帯にはメールで、スマホにはアプリでお知らせが行くようになりましたが、そもそも端末を持たない人には届けられない。これが新たな課題になったのです」と消防防災課の熊谷さんは振り返る。そこで、デジタルデバイドが課題とされる高齢者世帯を視野に入れて、住民へ公平に情報を届けるべく、戸別受信機の導入を検討し始めたという。

使いやすさとコストを重視し導入した500台の配布を開始

事業者選定にあたっては、総務省の資料などを参照し、各社製品を徹底比較。その結果たどりついたのが、TOPPANが提供する戸別送受信機「あんしんライト」だったという。同機器を設置すれば、LTE通信を介し、緊急速報や自治体からのお知らせが受信可能。アンテナ設置は不要で、コンセントに差し込むだけという手軽さだ。

「高齢者でも簡単に設置・操作できる点は、選定時の大きなポイントの1つでした。もう1点はコストですね。複数社に問い合わせたところ、予算が合わない金額のものが多かったです。その点、あんしんライトは、通信料などのランニングコストがかかりますが、初期費用を抑えられる点が魅力でした」と熊谷さん。加えて、山間地域でも送受信できる点、情報の文字表示機能や読み上げ機能で、視力や聴力に不安のある人でも情報を受け取れる点、再生機能で聞き直しができる点などを評価したという。

その後、人口に対する携帯・スマホの普及率と高齢者世帯数から必要台数を割り出し、令和2年9月に500台を導入。400世帯への設置を見込み、広報紙やチラシを活用して、利用を希望する世帯を募り始めた。

あんしんライトサービスの情報伝達フロー

戸別送受信機導入で見えてきた災害対策の新たな課題とは

いざ募集してみると、想定外の壁にぶつかったという。「初回は“携帯を持たない高齢者世帯”に限定し募集したのですが、申し込みが想定より少なかったのです」。そこで次は、“日中に高齢者だけになる世帯”に拡大。その後、“携帯を持っていてもうまく操作できない人”にも必要であることが分かり、対象を拡大したという。

「携帯を持つ人にはメールやアプリを登録してもらう予定でしたが、携帯を使いこなせていない高齢者は多いです。また、“うちは大丈夫”と住民側が必要性を感じていないのも原因といえます」。さらに、民生委員や、地区の集会などで声を拾ったところ、配布を知らない住民が多いことが発覚。

「対面で伝えることも大切ですね。きちんと説明を行えば、戸別送受信機の必要性を知ってもらえます。令和4年1月の4回目の募集(※取材は令和3年12月)では、ある程度、必要な世帯へ行き届くよう、自主防災組織にも協力を呼び掛けて取り組みます」と期待を込める。

戸別送受信機の設置は、災害対策の入口にすぎない。「今回の取り組みで、防災を自分事に捉えてもらう大切さを実感しました。また、情報が届いていても、避難支援が必要な人は多い。今後は避難支援対策にも取り組みたいと考えています」

紫波町 企画総務部 消防防災課
課長 熊谷 欣弥(くまがい きんや)さま


コンセントに差し込むだけで平時も緊急時も情報を住民へ届けられる

あんしんライトが選ばれる理由

1.光と音、文字で知らせるから、見やすく、聞きやすい
光、吹鳴、文字、音声の4つの機能で緊急、平時の情報を送信可能!視力や聴力に不安がある人にも情報が届けられる。

2.コンセントに差し込むだけで設置完了
設置はコンセントに差し込み、電源を入れるだけ。専用設備や工事は不要。停電時には、自動で電池駆動に切り替わり48時間以上使用できる。ETWSを利用しているので緊急速報やJアラートも受信可能。

3.初期費用やランニングコストの面でも安心
設備工事が不要なので初期費用を抑えることができ、LTE回線を使用するためランニングコストも通信費とクラウド使用料のみ。導入にあたっては「緊急防災・減災事業債制度」の活用も可能。

双方向通信機能で使用状況を可視化

自治体側の管理画面では、各メッセージの確認ボタン押下情報が確認できる。そのため災害時には、安否確認が可能。またAC電源の接続状況、電池の残量、電波状況といった受信機の使用状況なども個別に把握できるため、高齢者の見守りサービスとしても活用可能。加えて、遠隔でリセット操作やアップデートも実施できる。


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2022.06.07

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