自治体による防災イベントの
アイデアと開催例
自治体による防災イベントのアイデアと開催例をご紹介!
2000年以降、日本においては東日本大震災などの地震災害、房総半島台風や東日本台風に伴う洪水や土砂災害などの自然災害が相次いでおり、甚大な被害をもたらしています。こうした状況を受け、自治体では、日頃からの住民への防災教育や防災訓練の強化が求められています。その中で、住民向けに開催する防災イベントは防災意識を高めるために有効な取り組みの一つです。
今回は各自治体の防災・災害危機管理担当者の方必見、住民向け防災イベントの概要や目的、住民向け防災イベントのコンテンツ案と開催例、効果を出すためのポイントを解説します。
自治体による住民向け防災イベント 開催の目的
自治体開催の住民向け防災イベントとはどのようなイベントなのでしょうか。実施する目的も確認しておきましょう。
●自治体による住民向け防災イベントとは?
一般的に、住民向けの防災イベントは、自治体が地域住民に対して開催するイベントの一種で、学びや遊びを通じて防災意識を高めたり、防災訓練を行ったりするイベントです。
1923年関東大震災の発生を機に制定された9月1日の防災の日や、その前後1週間の防災週間に関連付けて行われることも多く、特にこの時期は全国的に台風による水害などの自然災害が頻発することから、住民の防災意識が高くなりやすく、効果的な時期とも言えます。地域によっては阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震の発生日前後に実施されることもあり、日本がいかに災害の多い国か、こうした部分からも見えてきます。
具体的には、地域住民が多く集まるイベントや企業主催の地域貢献フェスタでの自治体防災担当者によるブース出展、消防車や地震体験車の展示などが挙げられます。近年では、防災センターに展示が常設され、土日祝日には来館促進も兼ねた体験型イベントを開催しレジャー感覚で学べる場が提供されていたり、オンラインミーティングツールを利用した体験×クイズ系企画も多く見られたりします。
防災イベントとして実際に行われる内容としては、防災訓練や親子防災教室、防災フェア、防災運動会、防災講演会など多岐にわたり、それぞれ災害の内容や対象者に応じて最適な形式が異なります。
・防災フェアや防災運動会、クイズ形式などのイベント
老若男女多くの方に向けた、防災意識の啓蒙や防災知識の普及に最適です。レジャー感覚で気軽に参加してもらい防災について考えるきっかけとなるよう、お祭りの出し物やショッピングセンターの集客施策と連動させるなど、人が集まり、かつ防災について考えるきっかけとなるような学びのあるコンテンツを用意することも重要です。
・防災講演会などセミナー形式のイベント
被災者で講演活動を行っている方、災害支援の実績があるボランティア経験者、防災に関する専門家など講師を招聘し開催します。参加者はそれなりに普段から防災について意識しているような方が集まりやすく、かつ時間をかけて詳細までしっかりと学ぶことができるため、防災学習効果の高いイベントです。一方で、ある程度防災について意識のある方の参加がメインとなるため、そうでない方に向けた参加促進施策の検討や、告知には力を入れる必要があります。
・防災訓練、避難訓練などの訓練イベント
旧来では町内会主催で、炊き出し訓練も兼ねて餅つきをしたり豚汁がふるまわれたりするようなイベントも多く見られましたが、近年では企業や学校主催の地域貢献イベントとして、あるいは消防法で義務付けられた大規模建築物(オフィスビルや商業施設)で、あるいは市区町村レベルの自治体など、多くの施設・団体主催で多く実施されています。
訓練時のシチュエーションは震災発生・火災発生時を想定したものから、台風などの暴風雨による風害・水害を想定したもの、地域によっては噴火発生時の状況を想定したものもあります。
訓練内容も定番の避難訓練から通報訓練・消火訓練・帰宅訓練・安否確認訓練など多岐にわたります。
さらに訓練方法も実際の避難練習や体感学習のみではなく、近年ではシチュエーションを設定し、いくつかある選択肢から最適なものを選ぶシミュレーションゲーム形式も登場しており、オンライン開催も容易となりました。
防災訓練企画時には、参加ターゲットや予算、地域特性に合わせた「シチュエーション」「訓練内容」「開催形式」をしっかりと検討する必要があります。
●住民向け防災イベントの目的
自治体による住民向けの防災イベントの目的としては、主に次のものが考えられます。
・災害が起きた際の準備
実際に災害が起きた際の準備としての意味合いです。これはどのような形式であっても、防災イベントである以上は、多かれ少なかれ目的に含まれているでしょう。防災訓練のように、リアルに災害が起きたことを想定して行動するイベントは、災害が起きた際の準備という目的が大きいでしょう。
防災イベントを通じて、災害が起きたときのことを多少なりともシミュレーションする機会を設けることで、実際に被災した際に自分や周りの命を守り、助け合い、早期に復旧できる知恵を身に付けられます。
・日頃の防災意識の向上
防災意識は、常日頃から持っている人は少ないものです。目の前の多忙な生活や学業などに追われていると、どうしても防災意識は薄れてしまいます。そのため、少しでも防災意識を思い起こしてもらうために、防災と名の付いた何らかのイベントを開催することは日頃の備えを見直すきっかけとなるでしょう。
・地域コミュニティのつながり強化
実際に災害が起きた際は、地域の住民同士が協力し合うことが重要といわれています。しかし日頃から挨拶も交わしたことのないような間柄では、いざというときにスムーズな連携がとりにくいものです。自治体が主体となって行う防災イベントを通じて地域住民のコミュニティ生成・強化を図ることで、実際に災害が起きたときに地域内でのスムーズな情報共有体制や協力体制を築くことができます。
自治体による住民向け防災イベント コンテンツ案と開催例
実際に自治体が住民向け防災イベントを企画し、開催する際には、どのようなコンテンツを展開するべきか迷うこともあるのではないでしょうか。特に「イベントがマンネリ化している」「あまり大掛かりなイベントは人員や予算が…」「他の自治体はどうしてる?」といった課題は、多くのの自治体で頻繁に上がる相談内容です。そこで、住民の興味をひきやすく、開催しやすい防災イベントのコンテンツ案と開催例をご紹介します。
1.VR災害体験
VR災害体験とは、VR(バーチャルリアリティ)で災害の様子を再現し、災害発生時の様子や受ける被害の規模感を安全に体験できるツールです。
例えば、大地震が起きたときのリアルな風景を描き、実際に地震に遭遇したときのイメージをリアルに想起させます。ただ映像を見るよりも、自分が本当にその場にいるかのような感覚が得られます。これにより、住民の危機意識を高めることができるでしょう。
VR体験はまだ目新しいイメージが強く、住民にも「面白そう」「いつものと違う」といった印象を持たれやすく、より防災イベントへの参加意欲や主体性を引き出すことができます。また、必要な設備はVRゴーグルだけなので、地域のお祭りにブース出展する・公民館の会議室を借りて開催するといった規模感で企画・運営することができます。
VRは3D映像の迫力が強みであり、その強みを生かした体験内容の例として、次のものがあります。
・地震体験
地震体験車は本当に揺れるため、当然家具や照明はしっかり固定されています。実際に体験するのは危険すぎます。しかしVRであれば怪我の心配がないため、固定していない家具が倒れてくる、崩壊する住宅のに閉じ込められるような体験が可能です。
・津波体験
地震が起きた直後に発生することがある津波ですが、被災の様子はイメージがしにくく、災害そのものの体験学習も危険すぎるため、体験学習も避難体験が一般的です。
VRであれば、例えば市街地に津波が到達した際、車や民家、看板などが倒壊し迫りくるリアルな光景を目の当たりにできます。
・風水害体験
大雨、台風などによる冠水や河川氾濫、暴風も近年頻発しています。特に身近な例として豪雨による道路冠水・自宅の浸水の様子をVR化し、災害がいかに身近なものであるかを体感してもらうことで、住民の防災意識啓発を図ることができます。
●実際の活用例
ここからは実際に、VR災害体験を防災教育やイベントに活用している自治体の例をご紹介します。
①宮城県仙台市
仙台市では、市民の防災・減災意識を育成するため、地震体験車を約20年間運用してきましたが、地震体験車の老朽化にともない、代替案が検討されていました。
仙台市は地震災害だけでなく、ほかの災害の被害も懸念されることから、住民一人ひとりの防災意識を醸成し高めるためには「リアルな被災疑似体験」をしてもらう必要があると考え「リアリティが感じられるコンテンツ」を導入することが急務とされていました。
自然災害の予兆(前触れ)や発災の様子などを、最新のバーチャルリアリティ(仮想現実)技術を活用した臨場感あふれる360度の立体映像と音響で疑似体験できる、仙台市ならではのオリジナル災害体験VRコンテンツ「せんだい災害VR」を、学校や地域の研修会や防災訓練に使用し命を守るチカラを身につける防災学習に活用しています。
また、VR体験の前にムービーでの事前学習をおこない、体験者に心の準備と、VR体験をする目的と意図の理解を促し体験効果を高める工夫を行っています。また、VR体験後に啓発教育をおこないマイタイムラインの作成やハザードマップの見方など防災知識を高める取り組みも行っています。
②徳島県牟岐町
牟岐町は太平洋沿岸に位置し、巨大地震発生時に生じる津波災害の被害が懸念される地域であり、特に将来的に起こりえる南海トラフ巨大地震では甚大な被害が予想されていました。
津波被害を最小限に留めるべく、町民ひとりひとりの防災意識を醸成し、住民の防災意識を高めるためには、「リアルな被災疑似体験」をしてもらう必要があると考えていました。
巨大地震発生時、津波被害が懸念される牟岐町住民の防災意識を高めるために、牟岐町ならではのオリジナル災害体験VRコンテンツの制作と、デジタルを活用した防災学習システムの導入をおこないました。
牟岐町への知⾒を有する最先端の防災研究者による監修のもと、災害を自分ごととして体験してもらい、住民の防災意識を高められるような災害体験VRコンテンツを制作し、住民の方への防災教育に活用しています。 災害体験パートの後は、地震のメカニズムや対策などを知ることのできるコンテンツにし、防災知識の普及と啓発に活用しています。
2.防災ワークショップ
防災ワークショップと呼ばれる、イベントを通じてゲーム感覚で体験しながら学ぶ機会を提供するイベントも各所で開催されています。座学の勉強会とは異なり、ワークショップの名の通り、個々人の体験をメインに構成されるものです。
具体的には、レクリエーションや防災施設を活用し、様々な体験方法で防災に触れる機会を提供します。
●開催例
防災に関するカードゲームを通じて学ぶワークショップを開催することも一案です。例えば国土交通省が防災教育の一つとして提供している防災カードゲーム「このつぎなにがおきるかな?」を用いれば、自然災害発生後に起きることを予測し、その対策方法を遊びながら学ぶことができます。このような体験学習をメインとしたゲームをワークショップとするのも良いでしょう。
3.防災教室・勉強会
防災に関する基礎知識を学ぶ機会を提供するイベントです。主に講義形式やワークショップの形をとります。防災イベントというよりは、やや小規模で行われることが多くあります。
●開催例
ある自治体は自らの防災行動計画を立てるコンテンツを用いて防災教室を開催しています。少人数であるため、地域交流による地域コミュニティ形成にもつながりやすくなるでしょう。
4.防災に関する体験型イベント
防災に関する体験型のアクティビティゲームをメインとしたイベントです。例えば謎解きや脱出ゲームなど、ゲーム性のある体験を通じて防災に関する知識や心構えを伝えます。子どもから大人まで、大好きなゲームの要素を取り入れることで積極的かつ主体的な参加を促すことができます。
●開催例
ある自治体が行った防災謎解きイベントでは、参加者が災害都市に見立てられた会場内を周遊しながらパンフレットやパネルに用意された謎を解き明かしていきます。最終問題のキーワードを答えられれば、脱出できます。謎解きを通して防災を学ぶことができるので、参加者は楽しく謎解きをしながら気が付いたら知識が身に付いていたという嬉しい効果が得られるでしょう。
自治体による防災イベント 効果を出すためのポイント
自治体開催の住民向け防災イベントをより効果的なものにするために、次のポイントを意識してみてください。
●リアリティ・体験型で自主的な参加を促す
住民の中には、自分が被災する可能性があるという認識がない人や、防災イベントに参加してもあまり現実味がないという人もいます。しかし、そのような意識で防災イベントに参加してもらったとしても、防災意識を高めるといった目的が達成しにくくなってしまいます。
自身が被災する可能性があると認識させ、被災時の行動をよりリアルに想起させるには、先述のVRのようにリアリティがある体験をしてもらう、ゲームで手や頭を動かして印象に残りやすいようにするなどの工夫が必要です。
●防災訓練における飽きさせない工夫
防災訓練は、どうしてもマンネリ化してしまい、ただ形式的に実施してしまいがちです。毎年開催するケースも多いため、参加者を飽きさせない工夫をすると良いでしょう。
例えば、防災マジックショーやセラピー犬との触れあいの機会を設ける方法や、運動会の形で防災訓練を開催する防災運動会などがあります。
●アンケートの実施を通じた参加者の防災力や習熟度などの収集
防災イベント実施後に、参加者へアンケートへの回答をお願いしましょう。アンケート結果から、参加者の防災力や習熟度などを収集・分析し、次の防災イベントに向けて改善・ブラッシュアップを進めることで、より良い防災イベントを開催できるでしょう。
まとめ
自治体が主体となって行う防災イベントは、普段あまり防災学習を受ける機会がない住民の防災意識を喚起し、地域が一体となって対策を考える良い機会を提供するものです。一人ひとりの防災意識が向上することにより、地域の防災力が向上するでしょう。
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住民向けの防災イベントにご活用いただければ、災害発生時の状況や恐ろしさをリアリティと没入感を持ってご体感いただけます。
住民向け防災イベントの一つのコンテンツとして、活用されてみてはいかがでしょうか。
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2025.08.06