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自治体による防災イベントの
アイデアと開催例

自治体による防災イベントのアイデアと開催例をご紹介!

2000年以降、日本においては東日本大震災などの地震災害、房総半島台風や東日本台風に伴う洪水や土砂災害などの自然災害が相次いでおり、甚大な被害をもたらしています。こうした状況を受け、自治体は、日頃からの住民への防災教育や防災訓練の強化が求められています。その中で、住民向けに開催する防災イベントは防災意識を高めるために有効な取り組みの一つです。
今回は、住民向け防災イベントの概要や目的、住民向け防災イベントのコンテンツ案と開催例、効果を出すためのポイントを解説します。

住民向け防災イベントの目的とは?

住民向け防災イベントとはどのようなイベントなのでしょうか。実施する目的も確認しておきましょう。

●住民向け防災イベントとは?
一般的に、住民向けの防災イベントは、自治体が地域住民に対して開催するイベントの一種で、学びや遊びを通じて防災意識を高めたり、防災訓練を行ったりするイベントです。

具体的には、防災訓練や親子防災教室、防災フェア、防災運動会、防災講演会など多様な形で防災イベントが開催されています。

●住民向け防災イベントの目的
住民向けの防災イベントの目的としては、主に次のものが考えられます。

・災害が起きた際の準備
実際に災害が起きた際の準備としての意味合いです。これはどのような形式であっても、防災イベントである以上は、多かれ少なかれ目的に含まれているでしょう。防災訓練のように、リアルに災害が起きたことを想定して行動するイベントは災害が起きた際の準備という目的が大きいでしょう。

防災イベントを通じて、災害が起きたときのことを多少なりともシミュレーションする機会を設けることで、実際に被災した際に自分や周りの命を守り、助け合い、早期に復旧できる知恵を身に付けられます。

・日頃の防災意識の向上
防災意識は、常日頃から持っている人は少ないものです。目の前の多忙な生活や学業などに追われていると、どうしても防災意識は薄れてしまいます。そのため、少しでも防災意識を思い起こしてもらうために、防災と名のついた何らかのイベントを開催することは日頃の備えを見直すきっかけとなるでしょう。

・地域コミュニティのつながり強化
実際に災害が起きた後は、地域の住民同士が協力し合うことが重要といわれています。しかし日頃から挨拶も交わしたことのないような間柄では、いざというときにスムーズな連携がとりにくいものです。防災イベントを通じて平時に地域コミュニティのつながりをつくり、強化しておくことで、実際に災害が起きたときにスムーズな情報共有体制や協力体制を築くことができます。

住民向け防災イベントのコンテンツ案と開催例

住民向け防災イベントを企画し、開催する際には、どのようなコンテンツを展開するべきか迷うこともあるのではないでしょうか。イベントがマンネリ化しており、新しいアイデアが欲しいときもあるでしょう。そこで住民向けの防災イベントのコンテンツ案と開催例をご紹介します。

1.VR災害体験

VR災害体験の防災イベントとは、VR(バーチャルリアリティ)を通じた災害体験をイベントで提供するものです。VR災害体験では、事前につくられた災害発生時被災状況をできるだけリアルに近い形でCGなどで表現したVRコンテンツを、ヘッドマウントディスプレイ(VRゴーグル)等を通して視聴することで、より没入感のある体験ができます。

例えば、大地震が起きたときのリアルな風景を描き、実際に地震に遭遇したときのイメージをリアルに想起させます。ただ映像を見るよりも、自分が本当にその場にいるかのような感覚が得られます。これにより、住民の危機意識を引き出すことができるでしょう。

VR体験と聞くと、ユーザーの好奇心が刺激されると考えられるため、より防災イベントへの参加意欲や主体性を引き出すことができます。

●開催例
このVR災害体験を地域の防災イベントにおいてブース出展し、災害体験コンテンツを提供するといった活用法が考えられます。具体的な体験内容の例として、次のものがあります。

・地震体験
大地震が発生した際の、自宅の様子を体験できるVRコンテンツです。壁際の食器棚が傾いたり、大きな揺れの中で身動きがとれなくなったりするような体験が可能です。

・津波体験
地震が起きた直後に発生することがある津波ですが、市街地に津波が到達した際のVRコンテンツもあります。車や民家、看板などが浸水するとどうなるのか、リアルな光景を目の当たりにできます。

・風水害体験
大雨、台風などによる冠水や河川氾濫、暴風は実際に起こり得ることです。VRコンテンツとして、自宅にいたときに豪雨に伴って発生した自然災害をリアルに体験できるコンテンツもあります。

2.防災ワークショップ

防災ワークショップと呼ばれる、イベントを通じてゲーム感覚で体験しながら学ぶ機会を提供するイベントも各所で開催されています。座学の勉強会とは異なり、ワークショップの名の通り、個々人の体験をメインに構成されるものです。
具体的には、レクリエーションや防災施設を活用し、様々な体験方法で防災に触れる機会を提供します。

●開催例
防災に関するカードゲームを通じて学ぶワークショップを開催することも一案です。例えば国土交通省が防災教育の一つとして提供している防災カードゲーム「このつぎなにがおきるかな?」を用いれば、自然災害発生後に起きることを予測し、その対策方法を遊びながら学ぶことができます。このような体験学習をメインとしたゲームをワークショップとするのも良いでしょう。

3.防災教室・勉強会

防災に関する基礎知識を学ぶ機会を提供するイベントです。主に講義形式やワークショップの形をとります。防災イベントというよりは、やや小規模で行われることが多くあります。

●開催例
ある自治体は自らの防災行動計画を立てるコンテンツを用いて防災教室を開催しています。少人数であることから、地域交流による地域コミュニティ形成にもつながりやすくなるでしょう。

4.防災に関する体験型イベント

防災に関する体験型のアクティビティゲームをメインとしたイベントです。例えば謎解きや脱出ゲームなど、ゲーム性のある体験を通じて防災に関する知識や心構えを伝えます。子どもから大人まで、大好きなゲームの要素を取り入れることで積極的かつ主体的な参加を促すことができます。

●開催例
ある自治体が行った防災謎解きイベントでは、参加者が災害都市に見立てられた会場内を周遊しながらパンフレットやパネルに用意された謎を解き明かしていきます。最終問題のキーワードを答えられれば、脱出できます。謎解きを通して防災を学ぶことができるので、参加者は楽しく謎解きをしながら気が付いたら知識が身についていたという嬉しい効果が得られるでしょう。

住民向け防災イベントの効果を出すためのポイント

住民向け防災イベントの効果を出すために、次のことを押さえておくと良さそうです。

●没入感、リアリティを追求する
住民の中には、災害が身近に起きていないことから、防災イベントに参加してもあまり現実味がないという人もいます。しかし、そのような意識で防災イベントに参加してもらったとしても、防災意識を高めるといった目的が達成しにくくなってしまいます。
そこで、VR災害体験のような没入感やリアリティを追求してイベントを展開するのはいかがでしょうか。

●防災訓練における飽きさせない工夫
防災訓練は、どうしてもマンネリ化してしまい、ただ形式的に実施してしまいがちです。毎年開催するケースも多いため、参加者を飽きさせない工夫をすると良いでしょう。

例えば、防災マジックショーやセラピー犬とのふれあいの機会を設ける方法や、運動会の形で防災訓練を開催する防災運動会などがあります。

●アンケートの実施を通じた参加者の防災力や習熟度などの収集
防災イベント実施後に、参加者へアンケートへの回答をお願いしましょう。アンケート結果から、参加者の防災力や習熟度などを収集・分析し、次の防災イベントに向けて改善・ブラッシュアップを進めることで、より良い防災イベントを開催できるでしょう。

まとめ

住民向け防災イベントは、住民および地域の防災意識を喚起し、高める良い機会を提供するものです。一人ひとりの防災意識が向上することにより、地域の防災力が向上するでしょう。

TOPPANでは災害体験VRコンテンツをご提供しております。地震・津波・風水害の3つのコンテンツを体験できるもので、それぞれの自然災害発生の様子を高精細のVRで再現しています。

そのため、住民向けの防災イベントにご活用いただければ、災害発生時の状況や恐ろしさをリアリティと没入感を持ってご体感いただけます。

住民向け防災イベントの一つのコンテンツとして、活用されてみてはいかがでしょうか。

2024.12.26