コラム

「デジタル資産」の車両データを
NFTコンテンツとしてファンへ展開

東京地下鉄株式会社(以下、東京メトロ)様は、保有する貴重なデータをNFTのコンテンツとして販売する「CRYPTO METRO」(クリプトメトロ)を展開しています。2023年1月に第1弾のコンテンツをNFTマーケットプレイス「Adam byGMO」にて配信。実際の鉄道車両を忠実に再現した3Dモデリングデータを鉄道業界で初めて販売し、話題を集めました。
東京メトロ企業価値創造部の渡辺様に、NFT販売の内容と、NFTをはじめとしたデジタル施策への今後の展開についてうかがいました。


NFTの企業活用事例を詳しく解説

東京地下鉄株式会社
企業価値創造部 新規事業企画担当
渡辺太朗さん

東京地下鉄株式会社 企業価値創造部 新規事業企画担当 渡辺太朗さん


引退車両の3DデータをNFTコンテンツとして展開

 「CRYPTO METRO」(クリプトメトロ)は、昨今のNFTの話題性の高まりを受け、東京メトロとしてNFTを活用し何か面白いことができないかと考えたのが立ち上げのきっかけです。コレクション性のある鉄道関連のコンテンツは、NFTととても親和性が高いという判断もありました。社内で検討の結果、ちょうど2022年4月に引退した有楽町線・副都心線7000系車両の3Dモデリングデータのアーカイブをテストケースとして作成していましたので、こちらを第一弾の商品として販売することに決定しました。
 出品したものは、「東京メトロバージョン」と営業運転開始時の「営団地下鉄バージョン」の2種類です。東京メトロバージョンは皆様に気軽にご購入いただくために1個2,700円で1,000個用意しました。一方、営団地下鉄バージョンは希少性を重視し、オークション形式で限定1個のみの販売としました。

引退車両の3DデータをNFTコンテンツとして展開
出典:https://www.tokyometro.jp/news/2023/214376.html


 3Dモデリングデータは高精細でかなり容量が大きいため、大容量の商品が出品可能で、魅力的な商品取引の実績をお持ちのAdam byGMOのマーケットプレイスへの出品を決めました。
 販売開始に先んじて、まずは皆さまにNFTに馴染んでいただくために、NFTトレーディングカードの無料プレゼント企画を実施しました。こちらは、東京メトロ全9路線の車両をデザインしたものを100個ずつ用意し、東京メトロ公式X(旧Twitter)で企画内容を告知し、Adam byGMOへのご登録とお申込みをいただいた方にプレゼントをしました。

NFTトレーディングカードイメージ

出典:https://www.tokyometro.jp/news/images_h/metroNews230126_02.pdf


細部までこだわったNFTでファンに今までになかった楽しみ方を

 3Dモデリングデータの制作は、(株)ホロラボが保有するレーザースキャンとフォトグラメトリの技術を使って行いました。運転室の機器類から荷棚の網の部分に至るまで、細部を忠実に再現するために、2000枚以上写真を撮影しています。メトロの車両は乗用車などに比べて大きなものであり、屋根の上や車体の裏側なども撮影する必要があったので、さまざまなアングルから撮影するための場所の確保や天候などには苦労しました。
 また、モデリングデータの内部にもこだわりがあり、3Dデータ内の車内に「さようなら、7000系」という中吊り広告を作成して掲げるなど、購入者の方により楽しんでいただける工夫も施しました。営団地下鉄バージョンについては「営団地下鉄」のロゴを制作してはめ込んだり、行先表示を「営団成増」にするなど、当時の状態をできるだけ細かく再現しました。「営団成増」駅は現在「地下鉄成増」駅に改名しているので、現在では見ることのできない貴重な行先表示となっています。
ご購入いただいたデータは、ご自身のパソコンなどにダウンロードいただき、3Dデータを開けるソフトを利用いただくことで、通常では見ることのできない角度や場所もじっくりご覧いただけます。VRゴーグル・アプリを用いてご覧いただくことで、本当に車両内部にいるような感覚を体験できます。特に、運転席はリアルでは決して入ることができない空間ですので、鉄道ファンの皆さまには、今までになかった楽しみ方をご提供できる商品になったかと思います。

制作過程については、YouTubeの東京メトロ公式チャンネルでも公開
制作過程については、YouTubeの東京メトロ公式チャンネルでも公開
出展:https://www.youtube.com/watch?v=9tQFTnlXpGk

デジタルアーカイブのデータをNFTとして販売

 お陰様で、トレーディングカードの段階から多くの方にX(旧Twitter)上で話題にしていただきました。東京メトロ全9路線の車両のカードをコレクションしてくださっている方もいらっしゃいます。すでにマーケットプレイスに出品され、数千円で取引されているものもございます。
 3Dモデリングデータについては「2,700円で手に入るなんて安すぎる!」といったコメントもいただきました。1点限定の営団地下鉄バージョンについては、7,000円でオークションをスタートし、最終的に15万円で落札となりました。また、大手の新聞にも取り上げていただき、東京メトロが新たな取り組みをしているというPRにもなり、手応えを感じております。
 当社としても、引退車両をすべて保管しておくことはできません。そうした車両を3Dモデリングデータ化して、歴史的価値のあるアーカイブとして保存し、将来につなげていくことが、CRYPTO METROの大きな目的の一つです。かつ、NFTで販売することで、鉄道ファンの皆さまに新しい楽しみをご提供し、データのさらなる有効活用につなげることができました。近年、さまざまな物を3Dデータ化し、アーカイブするということは各業界でも行われていましたが、これをマネタイズにつなげた初の試みとして、各方面で評価をいただいております。
 今後についてはAdam byGMOのNFTマーケットプレイスにおいて、第2弾の販売も企画中です。さらに、車両の引退式や車両撮影会の参加権や車両部品の購入権をNFTで抽選販売するといった展開も検討していければと思います。

Adam byGMOのNFTマーケットプレイス上にある東京メトロ <CRYPTO METRO>のページ

Adam byGMOのNFTマーケットプレイス上にある東京メトロ <CRYPTO METRO>のページ
https://adam.jp/ja/stores/CRYPTO_METRO


これからもNFTに限らず、さまざまなデジタル施策を展開

 東京メトロでは、現在、NFTに限らず、さまざまなデジタル施策も展開しています。たとえば、2023年2月から3月にかけて、「クロケスタ駅ナカLIVE!!~新宿・銀座・王子をめぐるバーチャルライブ・ラリー~」という駅ナカイベントを開催しました。3駅に設置されたライブスポットをめぐっていただく企画で、人気ボカロP※の楽曲を声優陣が歌うライブ音源をバーチャル空間に設置したものです。立つ位置によって音声の聞こえ方が変化する新しい音響体験を楽しんでいただきました。
 そのほか、外国人のお客さまを対象とした、多言語によるご案内やエンターテインメントの提供など、生成AIを含めたデジタルツールの様々な活用法を検討中です。今後も東京メトロでは、画像、映像、音源など、当社が保有するデジタルデータを活用して、より便利に楽しく地下鉄をご利用いただくための施策をいろいろと考えていきたいと思っています。

※ボカロP:ボーカロイドソフトを用いて楽曲を制作・発表するプロデューサーのこと。


TOPPANがNFT事業を支援

 東京メトロ様の「CRYPTO METRO」でTOPPANは、Adam byGMOの認定代理店として、NFT発行・NFT販売支援やプロモーション企画などを支援しています。TOPPANでは、これまでに50社以上の企業・法人のNFT事業のサポートさせていただいており、芸能事務所やゲーム開発会社、伝統祭事、SDGs協会、プロテニス大会など多くの事例があります。


TOPPANのWeb3事業

TOPPANでは、NFT/メタバース事業のみならず、Web3の各手法を用いたマーケティング支援事業も行っています。
Web3という新たな概念はこれから、ブロックチェーン技術を活用・応用することで、新たなコミュニケーションの姿をつくれると考えます。
しかし現在、多くの日本企業には、Web3を自社導入する上でハードルがあります。
そこで、TOPPANは日本企業向けにWeb3関連プロダクトの開発や再定義を行い、Web3技術の導入支援やWeb3を用いたマーケティング支援を進めています。
Web2とWeb3をつなぐプロバイダー的役割を担うことで、誰もが安心・安全にWeb3を活用できる世界を目指すことが我々の使命です。

Web3・NFTに関するご相談は、Web3技術を活用した新たなマーケティング支援を目的とするWeb3専門組織「web3 Marketing Unit®」までご連絡ください。

▼web3 Marketing Unit®メーリングリスト
w3m@toppan.co.jp

Web3専門組織「web3 Marketing Unit」

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2024.03.22

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