コラム

CXとは?向上させる方法や事例をご紹介!

顧客サービスの分野で、よく耳にするようになった「CX(カスタマーエクスペリエンス)」という言葉。なんとなくは分かるけれど、深い意味は理解していないということもあるのではないでしょうか。
近年、消費者を取り巻く状況の変化や企業競争の激化などを背景に、より消費者に寄り添うマーケティングやカスタマーサービスが求められている中、CXは重要になってきています。
今回は、CXとは何かということの解説とともに、CXを向上させたいとお考えの方が知っておきたいCXのメリットや、CXを向上させる方法をご紹介します。


ideanote vol.148 CX よくわかる!顧客体験のはなし

CXとは

CXとは、「Customer eXperience/カスタマーエクスペリエンス」の略称で、直訳すると「顧客体験」という意味になります。

顧客体験とは、顧客が自社の商品・製品やサービスを購入するまでにたどる過程や、購入後に使用する過程、さらに自社によるフォローアップの過程など、すべての過程における体験を指します。
さらに細かく言えば、商品やサービスの機能や性能、価格、それによって得られる感覚のほか、使い心地や顧客への接客対応などによってもたらされる感情面の体験も含めて価値とするのがCXです。

似た言葉に「UX(User eXperience/ユーザーエクスペリエンス)」がありますが、UXがサービスやシステムの利用を通して得られる「ユーザー=利用者」による「体験」のことを指すのに対し、CXは、商品やサービスの購入前から購入後まで一連の流れにおける体験だけでなく、サポート対応や商品パッケージなどあらゆるチャネルにおける「カスタマー=顧客」による「体験」を含みます。つまり、ユーザー(利用者)とカスタマー(顧客)とでは体験価値が異なることがあるというわけです。


CXを向上させる必要性

では、なぜ近年、CXが注目されるようになったのでしょうか? また、CXはなぜ向上させる必要性があるのでしょうか。その背景や、CXを高めることが重要視されている理由をご紹介します。

生活スタイルや価値観の多様化

顧客の生活スタイルや価値観が多様化してきたことを背景に、顧客は様々なシーンで多数の商品・サービスの中から、自ら適したものを選んで購入するようになってきました。従来のように商品・サービスの提供側である企業から、一方的に「この商品はとても便利なのでぜひ使ってください」と、画一化された価値を提供するのでは、顧客ニーズの多様性にマッチしなくなったのです。
また、サブスクリプションの台頭などから、顧客はただ単に商品を「購入」して「所有」するだけでなく、それを「利用」することの体験も含めた価値を求めるようになっています。このことから、顧客にとって体験はより重要になってきたといえるのです。

スマートフォンの普及

スマートフォンの普及により、顧客個々人が自ら情報収集をし、ECサイトで購入する流れが当たり前になりました。先述のような顧客が自ら行動する顧客主体の消費活動が、スマートフォンによってさらに定着したともいえます。顧客の消費活動全体を通した体験価値がより重要視されているといえるでしょう。

企業のブランディングの必要性

今やどのような市場でも競争が激化しており、競争に勝ち抜くために企業ブランディングの必要性が増しています。もはや、商品・サービスの機能や技術的な側面では、差別化がむずかしくなってきています。このことから、顧客体験をいかに充実させるかが競争に勝ち抜くために、より重要になっています。


CXを向上させるメリット

企業がCXを向上させることで、さまざまなメリットが期待できます。例えば、こんなメリットがあると考えられます。

CXを向上させるメリット

顧客ロイヤリティの向上

顧客にとって有益な価値を提供することにより、商品やサービス、ブランドに愛着を抱いてもらうことができます。いわゆるファンの醸成、ロイヤリティの向上につながると考えられます。顧客ロイヤリティとは、顧客が自社や自社ブランド、自社の商品・サービスに対して、信頼や愛着を持ってくれている度合いのことを意味します。

サービスやプロダクト自体のブランディングになる

CXを向上させることにより、顧客は自社のサービスやプロダクト自体の価値を特別なものと捉えてくれることでしょう。これにより、「このブランドなら信頼できる」「この商品はこの会社のこのブランドが一番いい」などのブランディングにつながります。

リピーター増加

ロイヤリティ向上やブランディング効果によって「また利用したい」と感じる顧客が増えることも期待できます。

データによる顧客満足度の把握や改善

アクセス解析や購買データ分析など、様々なデータ分析が一般的となっている昨今では、データを分析・活用する場面でCXの視点を取り入れる例が多く見られます。例えば、顧客満足度を向上させるために、ECサイトと実店舗の購買データを集計することで、実店舗でしか買い物をしないユーザーにECサイトの案内を送るなど、実店舗とECサイトの購買状況に応じたコミュニケーションを取ることで、他社との差別化や顧客満足度向上を図る施策が挙げられます。その他、顧客のECサイトアクセスや回遊状況を分析することで、顧客がよく離脱しているページを把握し、改善を加えるなど、顧客データ分析による満足度の把握や改善などにもCXの視点は役に立ちます。


CXを向上させるステップ

これらのメリットが期待できると知れば、ぜひCXを向上させたいものですよね。そこでCXを向上させる一般的な手順とポイントをご紹介します。

1.カスタマージャーニーの把握

まず、カスタマージャーニーを把握します。カスタマージャーニーとは、まずは顧客がどのような過程を踏んで購入し、購買後にどのようなサポートが必要になるのかなど、一連の顧客体験の道筋のことです。顧客が商品をSNSや広告で認知し、他の商品との比較や情報収集を行い、購買検討に至り、商品を購入し、使用しながら問題や疑問が生じた際の問い合わせ、使用後の廃棄に至るまでの行動を洗い出して整理します。

2.CXをデザイン・設計する

次に、洗い出したカスタマージャーニーの過程で、顧客にどのような体験を提供するかを検討します。感覚や知覚に訴える手法や、興味・関心や趣味嗜好に適した価値を提供するというアプローチ方法があります。
例えば、欲しいと思った瞬間にすぐに購入できるよう、ワンクリックで購入できる仕組みを整えたり、顧客の属性ごとにメールやWebサイト上のページでコンテンツを出し分けたりといった工夫を行う事例もあります。

3.CX測定指標を定めて計画を実施する

CXの成果をはかる指標も定めておきます。指標にはCSAT(顧客満足度)やCES(顧客努力度)などが使われます。これらの指標を数値設定してデザインした計画を実施します。

4.CX改善策を策定し、改善する

CXに関する施策を実施した後、設定した目標は達成したのかどうかを確認します。また、その達成度合いに応じて改善施策を講じます。このようにして、PDCAサイクルを回しながら効果的にCXを向上させていきます。


CXを向上させた事例・サービス

ここで、CXを向上させ、成果を挙げた事例やサービス を3つご紹介します。

CXを向上させた事例・サービス

顧客ID統合で複数サービスのシングルサインオンを実現

ある製菓メーカーでは、自社のオンラインショップやファンコミュニティを個別に管理・運用する中で、各種サービスを共通の顧客IDで利用できるTOPPANの「ID統合プラットフォーム」を導入。顧客登録、ログイン、退会などの基本的な顧客管理の機能に加え、外部連携するAPI群を実装することで、一度のユーザー認証で複数のサービスへログインできるシングルサインオンを可能にし、利便性を向上しました。

来客者の属性や生の声に合わせた接客を実現するサイネージ

TOPPANの高度化した店頭向けソリューション「AIリモート接客サービス」は、遠隔の接客スタッフがデジタルサイネージ(※1)越しに来店者に声をかけ、身振り・手振りを交えながら商品をアピールすることができ、CX向上に寄与します。

店頭のデジタルサイネージに搭載されたAIカメラとセンシング技術を活用し、来店者の年齢・性別・家族構成といった属性や商品に対する反応を収集したデータをもとに、AIが接客時のトークスクリプトを自動生成・随時更新するため、来店者は自分にマッチした声かけを受けられます。商品・ブランドのマスコットやイメージキャラクターや接客スタッフをアバター化することで、接客体験を楽しく演出します。

また、来店者 の会話やそのリアクションを収集したデータをもとに購買特性を分析し、プロモーションに反映することもできるため、さらにCX向上につながります。

※1 デジタルサイネージ:電子看板。ディスプレイなどの映像を表示する機器を使って情報を発信するメディアのこと。

商品の「選び方」から購買を後押しできるAIカメラ

AIカメラを活用すれば店頭で顧客が商品を選ぶときの様子をとらえ、購買を後押しする情報をリアルタイムで提供することができます。
AIカメラで店内外の顧客の行動をトラッキングして行動を予測し、それをもとにサイネージなどから適切な情報を発信し、顧客が心地良く買い物できるサポートを実現します。

TOPPANのオフィス内の売店で実施している実証実験では、AIカメラによってユーザーを識別し、店内の「A地点」「B地点」「C地点」の3カ所で行動特性に合わせた情報を取得。さらに複数のカメラで捉えた来店者を、顔認証等の「個人情報」を取得せずに、同一人物と認識して店内行動を追跡。これによって、個人に最適なレコメンドを実現します。

また、屋外広告に設置したAIカメラの情報から、店舗外の行動も連携して把握し、POSデータ(※2)ではわからなかった一連の購買体験のデータを取得して来店者の買い方や店内行動だけでなく、「選び方」の行動モデルの把握を目指しています。

※2 POSデータ:POSレジで取得できるデータのこと。売れた商品や時刻、値段などを含む。


まとめ

CXという言葉の意味からメリット、向上させる方法、事例などを解説してきました。市場競争が激化する中で、重要性が高まっています。顧客に最高の体験をしてもらうことは、顧客ロイヤリティの向上やブランディング、リピート率向上などの目先のメリットに加えて、売上アップや企業の成長など大きな躍進につながるともいわれています。

デジタル化が進む中、今回ご紹介したようなサービスを駆使することで、さらにCXの可能性が広がります。TOPPANでは、今回ご紹介したサービス以外にも多数のCX向上に役立つサービスをご提供しております。ご興味、ご関心のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

2023.10.06

新着記事 LATEST ARTICLE
    人気記事 POPULAR ARTICLE