データテクノロジー&プラットフォームサービス コラム

CXマネジメントの重要性とは?
事例を交えて解説

商品・サービス提供者の画一的な価値を押し付けるだけでは継続購買に結びつかない昨今、CX(顧客体験)の重要性はますます高まっており、商品・サービスと顧客との様々な接点におけるCXは、ロイヤルティを高める手段としても注目されています。Withコロナ時代に、オフラインとオンラインの境目がなく多様化しているといえるCXをいかにマネジメントしていくかが、今、重要なテーマになっています。

本コラムでは、TOPPANが2021年5月に「GXスコアリング™」の共同リリースを行った株式会社Emotion Tech様をお招きし、「CXマネジメント」について紹介します。

※掲載の企業名・所属先は2021年5月時点のものです


CXM(Customer Experience Management)とは?

CXM(Customer Experience Management)とは、商品単体だけでなく、企業との接点の中での「顧客の一連の体験」を管理し、その「一連の体験価値」を高めようとする考え方や取り組みです。

CXMが必要となる背景には、モノと情報があふれる社会において、競争激化により“良いモノが売れる”時代が終わろうとしていることが挙げられます。さらに、人口減少などによる市場の縮小、SNS等による口コミ依存の高まり、また、オムニチャネル化をはじめとする顧客接点の増加(複雑化)などがあります。こうした中では、売り上げの大半を支え、また信頼される情報源として新たなファンを作ってくれるロイヤルカスタマー(ファン)を増やすことが、最も効果的かつ効率的な事業成長を促します。

CXM(Customer Experience Management)とは

CXMに必要なNPS(Net Promoter Score)

CXMで重要なことは、顧客の「行動」だけでなく「感情」を重視することです。これまで「顧客満足」と捉えられていたものには2つあります。「頭の満足」(定量的な基準)と「心の満足」(定性的な基準)です。そのうちの「心の満足=顧客ロイヤルティ」が満たされることが収益につながることがわかってきています。「顧客ロイヤルティ」とは、ブランドや商品・サービスに対して感じる「信頼」や「愛着」を意味します。

この顧客ロイヤルティを測定する指標が、2003年にアメリカで発表された「NPS®」です。「NPS®」は、顧客が企業に対してどのくらいのロイヤルティ(信頼・愛着)があるかを定量的に測定できる指標です。現在では、国内外の多くの企業が重要な経営指標として使用しています。「NPS®が向上すると業績も連動して上昇する」「売り上げ成長の先行指標として、信頼性が高い」「競合との相対評価ができる」「全社共通指標としての運用に適する」などが、NPS®が支持される理由です。

NPS®を算出するための質問に「他者への推奨度」があります。その商品・サービスを「親しい友人・知人にどの程度すすめますか?」という質問に対し、「推奨する」と答えた人(推奨者)の割合から「推奨しない」と答えた人(批判者)の割合を引いたものがNPS®となります。

「他者への推奨度」を問う質問で顧客ロイヤルティを測定

推奨者は、「再購入比率が群を抜いて高い」、「様々な商品を購入する」、「良い口コミを広める」、「リピーターになる」という特徴があります。一方、批判者は、「購入金額・数量が少ない」、「否定的な口コミを広める」など競合に流れてしまうリスクが大きく、これらと他の質問(来店数、購入額等)との相関を分析します。

NPS®には、さまざまな業務の評価であるトランザクショナルNPS®(T-NPS)の上に、お客様評価の総体としてのリレーションシップNPS®(R-NPS)があり、サービスの下支えをする従業員の会社に対する評価、エンプロイーNPS®(eNPS℠)があります。この構造を自社に置き換えてツリー化し、T-NPS®を見ながら大小様々なPDCAを回すことで、批判者を減らして推奨者を増やしながら、ロイヤルティを上げ、さらに業績向上につなげていきます。

NPSの構造 ロイヤルティメカニズムのツリー構造

ロイヤルティマネジメントを行うために重要な点は、ロイヤルティのメカニズムをツリー構造で捉え、改善活動の検討材料を得ることです。
「ロイヤルティ」がお客様からの評価であり、重視すべきポイントです。


CXM導入事例

リアル店舗150店以上+オンラインストア運営企業のケース

■導入目的:来店回数、購入金額の向上

NPSを全社の共通指標として採用し、CX構造を策定。ブランドNPS®、店舗NPS®、オンラインストアNPS®のKPIを決定。それぞれの顧客体験について、常時アンケートを収集の上、モニタリングを実施しました。

その結果、ブランドの推奨度と来店回数には強い相関があり、リアル店舗推奨度、オンラインストアの推奨度とブランド推奨度にも相関がありました。また、リアル店舗では推奨度を上げる最も重要なCXは「レジ、お会計時の体験」であり、「対応の素早さ」がCXを深掘りするための改善因子であることがわかりました。一方、オンラインストアでの重要なCXは「商品の情報」であり、改善因子は「動画の掲載」であることがわかり、これらを改善しながらさらにPDCAを回して、導入目的の達成を目指しています。


CX効果測定「GXスコアリング」について

TOPPANでは、CXによってもたらされる“情緒的価値”を測定する「消費者が受け取った情緒」をスコアリングし、「CXの結果、向上したロイヤルティ」を可視化するオリジナルの「GX(Good Experience)スコアリング®」を提供しています。

「GXスコアリング」について

GXスコアリング®は、ある程度の時間的拘束を伴ったCXを対象としています。体験で感じた感情を「Sense(知覚)」「Feel(感情)」「Think(知性)」「Empathy(共感)」「Social(社会的意義)」の5つに分類し、5段階評価の平均値でスコア化したもので、企画意図が反映された「Good Experience」だったかを確認します。どのCXも統一の指標で評価するため、様々なCXとの比較が可能であり、全体のCXMを実現します。

TOPPANでは、「GX‐ボタンデバイス」、感情認識AI「Affectiva」など様々なデバイスを使いながら、情緒的価値の測定を行っています。



佐野 真啓(さの まさひろ)氏
株式会社Emotion Tech
Account Engagement部
鎌田 浩史(かまた ひろし)
情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部 部長
林部 浩之(はやしべ ひろゆき)
情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部 課長

2024.07.04

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