イベントレポート

データマーケティングの
意思決定を高速化
~DMP×AIの活用~

登壇スピーカーTIS株式会社 伊藤 直広 氏
ファシリテーター凸版印刷株式会社 森川 東勲

ECも店舗も、顧客接点の一つでしかない

森川:凸版印刷の森川です。今回はTIS株式会社 伊藤様をメインスピーカーとして進めさせていただければと思います。

伊藤氏:TIS株式会社の伊藤です。TISはSIer事業をしている会社です。私は大学を卒業してからずっとSI業界で、TISに来たのは10年前です。2012年からわれわれもデジタルマーケティングの領域にいかなければいけないということで、小さく組織をスタートさせて、現在に至っています。現在は約150名体制で、デジタルマーケティングだけではなく、データ分析やマネジメント系の仕事にも取り組んでいます。

森川:私の自己紹介をさせていただきます。2000年くらいからずっとCRMやデータ分析に携わり、現在はデータマーケティングの業務に取り組んでいます。最近はAIやシステム連携の話が増えてきていまして、TISの伊藤さんとお仕事をする機会があり、今に至っています。

伊藤氏:本日お話する内容は、なぜデジタルデータの活用やCX向上が必要なのか、というものです。

われわれが消費行動を起こすとき、オンライン・店舗を分けて考えることは、あまりなくなってきました。デジタル化が進展している今、ECも店舗も顧客接点の一つでしかありません。ここで得られる行動データを活用して、製品やサービスの顧客体験を継続的に改善することが必要です。

こうした中、最適なタイミングで顧客にオファーを出すこと、いわゆる「カスタマーエクスペリエンスの設計」が一つの差別化要素になってきます。私も一消費者として考えてみると、色々と似たようなサービスがあったとしても、結局選ぶのは「便利で、お得で、楽しい」というものです。そういったものを企業として提供していなかければいけない、と考えています。


大切なのはデータを一元的に管理し、顧客像を捉えること

伊藤氏:行動データを取得するといっても、例えば、年に1回しか使わないものではあまり意味がありません。頻度を高く使っていただいて、データを取得できるような仕掛けや仕組みを提供する必要があります。そう考えると、チャネルごとのデータを一元管理して、顧客IDも全部紐付いている状態が理想です。

色々なサービス設計やエクスペリエンス設計をしてお客様に提供することは一過性のものではなくて、当然そのデータを活用しながら、お客様の状況を常に把握するというということが大切です。結局、どのタイミングで、どのお客様に、何を提案したら喜んでいただけるのか。この辺の設計を常に考える必要があります。これらの取り組みを続けることによって行動データがまた蓄積されていき、更にお客様の状況を詳しく把握することができます。このPDCAを回していくことが仕組みとしても必要です。

ただ膨大なデータを人海戦術で分析するということは難しいですし、BIを使って可視化するだけでは分析が追いつきません。そこで、AIを使ってうまく顧客をプロファイリングしていくという手法が必要になります。


3つの壁を乗り越え、小さな成功体験を積み重ねる

伊藤氏:顧客データの統合には色々な課題があります。

1つ目は、「組織の壁」です。新規事業を立ち上げて、事業ごとにシステムが異なるケースや、M&Aによって経営は統合されたけど、システムはバラバラになっているケース。元々、店舗事業しかやっていなかったけど、ECチャネルを増やした、というケースもあります。

2つ目は「IDの壁」です。店舗とECで顧客の情報を二重持ちして、IDがバラバラになっていることが多々あります。

3つ目は「既存システムの壁」。過去に何億、何十億かけて顧客データベースをつくった結果、様々な業務が紐付いていて、拡張性がないけれども使わざるを得ない、といった状況のことです。

意外とこのような話は多くて、なかなか次の新しいことに取り組めない、という会社さんが多くいらっしゃいます。もちろん全てをすぐに解決することはできないので、まずは小さく初めて、成功体験を積み重ねてから拡張していく、という考え方が必要だと思います。


大切なのはデータを一元的に管理し、顧客像を捉えること

伊藤氏:行動データを取得するといっても、例えば、年に1回しか使わないものではあまり意味がありません。頻度を高く使っていただいて、データを取得できるような仕掛けや仕組みを提供する必要があります。そう考えると、チャネルごとのデータを一元管理して、顧客IDも全部紐付いている状態が理想です。

色々なサービス設計やエクスペリエンス設計をしてお客様に提供することは一過性のものではなくて、当然そのデータを活用しながら、お客様の状況を常に把握するというということが大切です。結局、どのタイミングで、どのお客様に、何を提案したら喜んでいただけるのか。この辺の設計を常に考える必要があります。これらの取り組みを続けることによって行動データがまた蓄積されていき、更にお客様の状況を詳しく把握することができます。このPDCAを回していくことが仕組みとしても必要です。

ただ膨大なデータを人海戦術で分析するということは難しいですし、BIを使って可視化するだけでは分析が追いつきません。そこで、AIを使ってうまく顧客をプロファイリングしていくという手法が必要になります。


AI活用を成功させるためには“適切なテーマ設定"が重要

伊藤氏:次は、貯めたデータをうまく分析をして、どうやってCXを向上させていくのか、この辺の具体的なお話を森川さんからお願いしたいと思います。

森川:「お客様をきちんと理解する」ということを弊社では「お客様の解像度を上げる」いう言い方をしています。とにかくデータを集めて、統合して、お客様の解像度を上げることが重要です。

今まで、人に紐付ける情報は「性別・年代、エリア」といったデモグラフィック的な情報や、「会員ランク」といったセグメントが一般的でした。しかし最近はAIを使えるようになり、「お客様のニーズや好みを予測したい」ということが簡単にできるようになっています。特定サービスを利用する可能性や、離反する可能性、「便利・楽しい・お得」どの話法がその人に聞くのか、という好みに関する情報をAIで可視化して付与する、ということもできます。

実際にAIの色々な案件に取り組ませていただいた中で、感じたことをまとめたので、そちらを順番にご紹介させていただければと思います。

1つ目は、「何のテーマを設定すればいいのか」という話題です。AI活用やPoCがうまいくいくかどうかは、「そこでどんなテーマを設定するか」にかかってきます。

例えば、「新規顧客を引き上げたい」とか「定着させたい」というご要望をよくいただきますが、初めにこのテーマを選ぶと、なかなか成果を出しづらいのではないかと思います。新規顧客はデータが少ないですし、その中で何かを予測しようと思ってもなかなか精度が上がりません。

一方で、「既存顧客の離反予測」は、AIのモデルとしての結果が出しやすい分野です。ただし、離反しそうな人がわかったからといって何か手を打てるのかというと、意外と悩んでしまうところですし、仮に手を打っても、結果が出てくるまでに時間がかかります。

そこで、「データが十分に蓄積できていて、結果が早く出しやすい分野」から取り組むことが重要です。例えば、今まで注力していた既存のサービスや商品。しっかり予測して、成果を短期的に上げていきましょう、ということが一番取り組みやすいと考えています。デジタルマーケティングのプロジェクトで組織的に結果を出したいと思ったときに、成果の出しやすさを意識することは非常に重要です。


重要なのは、どのAIツールを選ぶかではない

森川:2つ目に、「データを設計する力」です。AIのツールは何を選んだらいいですか、という質問をよくいただきますが、弊社からすると、どのツールを選ぶかはそれほど重要ではありません。

弊社の検証結果では、エンタープライズ向けの大規模なツールと、弊社が提供しているようなAIのツールでは、マーケティング的に見るとほとんど結果が変わりませんでした。「どんなツールを選ぶのか」よりも「どんなデータを入れるのか」、「どんな設計をするのか」ということが重要です。

機械学習やAI活用の流れを見てみると、ツールの役割は「反応確率や予測結果を出す」という部分だけだとわかります。重要なことは、「データをきちんとつくれるか」、「設計や検証ができるか」というところなので、ツールだけではなく、設計できる人材をセットで考えていかなければなりません。

加えて、データをつくる段階も重要です。

例えば、コールのお問い合わせ履歴とDMの反応履歴を統合させて「総接点回数」をつくり、関係性の深さを見ることや、ATMの利用履歴と給与振り込み日を統合させて「この人は給料日前に引き出し回数が多くて、お金に困っているのかな」という推測を立てる、という具合です。


AIモデルの精度を見極め、劣化を防ぐ

3つ目は「モデルの精度を見極めること」です。AIはブラックボックスのようなところがあるので、やってみないと結果がわからないことが多々あります。そこで、事前にモデルの精度を検証するということが有効です。データを2つに分けて、半分をデータ予測に使って、半分を過去のデータを使って答え合わせに使う、といった手法が有効です。

4つ目は「AIモデルの品質を維持するための高速運用」です。成果の上がりそうなAIのモデルを作ることはある程度可能ですが、重要なのはその後です。「AIの精度はどんどん上がるよね」とよく言われますが、必ずしもそうとは限りません。実際には、最初の施策を行った時に精度が上がることが多いものの、少しずつ精度の低減が起きていきます。弊社はこれを「リストの摩耗」と呼んだり、外的要因が変わったからAIのモデルが悪くなってきたということを指して「コンセプトドリフト」と呼んだりしています。

これらが何故起こるかというと、「サービスの利用促進」を目的とした予測モデルだった場合、結果として成約した方が母数から抜けていってしまうことが関係しています。

重要なことは、AI単独では成果を出し続けることが難しいと理解することです。DMPにしっかりデータをためて、そのデータと連携しながら運用していくことが重要だと感じています。


AI×DMPでデータマーケティングの意思決定を加速させる

TISが提供する「マーケティングキャンバス」と、弊社の運用しているAIエンジン「KAIDEL」、これらを融合したサービスを2019年11月6日からリリースしています。ご興味がある方はお声がけいただければと思います。

デジタルマーケティングの領域で求められる機能はとても広いので、1社だけで完結することは極めて難しいです。そこで、弊社とTISのように、お互い別の強みを持っている企業が手を組むことで、データマーケティング分野の推進力をアップデートしやすくなっていくはずです。

2020.03.10