事例紹介

自治体の職員不足を
対策した官民連携による
行政改革事例

  • TOPPAN株式会社
    情報コミュニケーション事業本部
  • ソーシャルイノベーションセンター
    公共BPO本部
    BPR・デジタルPF推進部 全国BPR推進チーム
  • 土方 創

TOPPANは、自治体を取り巻く職員不足などの課題解決のために、官民連携による行政改革に取り組んでいます。

今回は、2025年1月14日開催ウェビナー「自治体職員不足を乗り越えるための官民連携~TOPPANが取組むフロントヤード改革/バックヤード改革~」のうち、バックヤード改革についての内容を要約してご紹介します。


■「領域横断型委託モデル」を活用した職員工数削減

今回の話者は、世田谷区補助金等業務の集約実施委託プロジェクトマネージャーや、世田谷区総務事務センタープロジェクトマネージャーを務めてきたTOPPAN株式会社ソーシャルイノベーションセンター 土方創です。

近年、地方自治体では人手不足が深刻化しています。職員確保が困難になる以上、現状のままでは安定的な行政運営は維持できない可能性が高くなってきました。そのため、DX導入や業務のあり方を見直すなど、抜本的な業務改善を行う必要性が高まっています。

しかしながら、多くの自治体では、以下のような課題が存在していると認識しています。

●課題設定
・職員が、日々の業務に忙殺され改善に取り組めない
従来は、業務に精通した職員自らが業務改善に取り組んできていたが、昨今は日々の定常業務に忙殺され、改善に携わる時間の捻出が困難になっている。

・全庁的かつ共通の課題
業務改善は、単一の所管課だけではなく、全庁的または各課で共通した課題として存在することが増えてきた。

そこでTOPPANは、上記の課題を解決するための仕組みを構築しました。

●TOPPANの解決策
・マニュアル化とプロジェクト管理手法の確立
徹底的なマニュアル化やプロジェクト管理手法を確立することで、職員でなければ実施が困難とされてきた非定型かつ複雑な業務(専門定型業務等)の委託にまで踏み込み、職員の余力を生み出す。

・業務改善を目的とした業務委託
業務を領域横断的にお預かりし、単なるアウトソーシングの切り出しではなく、業務改善を目的とした業務委託をすることで、業務そのものを圧縮する。

これらの解決策を具体的に仕組み化した「領域横断型委託モデル」をご紹介します。

■「領域横断型委託モデル」とは?

本モデルは補助金や通知発送など、自治体の定常業務を総合的に支援する仕組みです。
業務を領域横断的にお預かりし、単独では委託効果の薄い業務や、業務間での繁閑調整にも対応できます。そのため、単一の業務や単独課で実施する委託を超える効果が期待できます。また、業務量の増加に伴い、庁舎執務スペースの確保がむずかしい自治体では、弊社拠点でのオフサイト運用もご提案できます。

●行政事務センター

TOPPANの「行政事務センター」では、まずはBPOにて業務理解を重ね、BPRにて対象の見える化・施策検討を実施します。導入ありきのDXを否定し、BPRによる分析の結果としてのDXと、BPO運用への再度の落とし込みをサイクルで繰り返します。

■「領域横断型委託モデル」の活用事例〜札幌市

「領域横断型委託モデル」を活用した業務委託は、札幌市、世田谷区、福岡市、北九州市、熊本市で実施しています。

TOPPAN行政事務センターの支援の先駆けである札幌市事例では、業務プロセスの見直しと帳票・システム改善実績を図り、年間5.9 万時間(職員30名分)の工数削減に貢献しました。

しかし、より効果を上げていくためには、業務プロセス全体で改善を図ることが必要と考え、部分最適から全体最適のBPR手法に踏み込めないか真の“改革”につながる可能性を検討することになりました。

■業務改善から業務改革へ〜局所的なデジタル化から全体最適の視点へ

下記は、世田谷区と保育入園に関するあるべき姿を検討した際のフローです。たとえば電子申請だけ導入しても、その後工程が紙のアナログフローでは、却って業務負荷が上がることになります。本来目指すべきは、申請から、電子通知や保管までデジタル完結できることだと考えています。TOPPANでは、こうした全体最適の視点でBPRを進めています。

また、ただ電子化すればよいというものではなく、電子化した後の申請率を上げることも行政サービスとしては重要だと考えています。同じく世田谷区での実証実験においては、電子通知の導入により、電子申請までの導線を構築し、一部の申請手続きにおいて、電子申請率を30%から45%にアップさせることができました。

併せて、電子化に向けた事前準備も重要です。事例の保育園入園申込において、紙申請と電子申請が混在しており、紙申請だけよりも工数を要している現状がありました。紙媒体と同様の判定を電子申請項目から自動判定することで効率化を図ろうとしましたが、現状のままでは自動化が困難であったことから、申請項目の見直しから推進しました。これらの取り組みは、職員との連携がキーとなることから、再現性を高めるためには職員主体が重要であると見えてきました。

■業務改革を進めていくために必要な「職員の主体性」

業務改革を推進していく流れを、下段のイメージ図に記載しています。
BPOにより生まれた余力で弊社とともに改善施策を検討していきますが、特に改善フェーズの中心にある庁内調整は職員のみができるコア業務です。抜本的な改革には、条例・要綱改正やDXツールの導入などが不可欠です。そのため、職員の主体性が重要であり、それなくして真の改革にはつながらないと考えています。

●プロジェクトマネジメントやBPRナレッジの自治体向けに研修を実施
主体性と言われても「どう主体的に動けばよいのか?」「BPR とは?」と悩む職員の方も多いと思われます。そこでTOPPANではプロジェクトマネジメントやBPRナレッジを職員向け研修として構築しています。

本カリキュラムを学ぶことで、業務改善に当たって受託企業のディレクションが可能になり、ベストパートナーとして意見交換できる関係性構築が見込めます。

■「職員の主体性」により業務改善を推進できた事例〜世田谷区

実際にベストパートナーとして職員と弊社のPTを作り、改善につながった事例をご紹介します。

【世田谷区の補助金等業務の集約実施委託】

世田谷区の環境・エネルギー施策推進課が所掌するエコ住宅補助金において、申請ごとに支払処理を行うことに伴う業務の非効率性が課題となっていました。
(エコ住宅補助金は、補助金等業務の集約実施委託を構成する1業務です。)

職員と検討を行い、擬制払いによる一括での支払処理が可能なスキームを再構築することで、全体のプロセスとして14.4%の職員工数削減につなげました。

TOPPANによる施策内容ではあるものの、庁内調整など所管課の主体的な改善活動が、早期の効果現出につながったと考えています。

■まとめ

今回ご紹介したTOPPANの「領域横断型委託モデル」は、行政改革の一つの解として、全国の自治体で実現が可能であると考えています。この仕組みによって生み出した工数を活用して、住民サービスの維持・向上の一助になれましたら幸いです。

TOPPAN WEBサイト「TOPPAN SOCIAL INNOVATION」には、TOPPAN がご支援させていただいた自治体の事例を60件以上掲載しています。ぜひ合わせてご覧ください。

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2025.03.10

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