コラム

介護ロボットの6種類13項目を
それぞれわかりやすく解説!

「介護ロボット」は、介護が必要な方の自立支援と共に、介護する人やスタッフの負担軽減に役立つことから、近年、介護業界における人手不足や、近親者の介護と仕事との両立などの介護分野の課題解決策として期待がかかっています。

今回は、厚生労働省、経済産業省が整理する介護ロボットの6分野13項目についてそれぞれ解説するとともに、介護ロボットの導入メリットやデメリット、活用事例をご紹介します。


<目次>

■介護ロボットとは
■介護ロボットが注目される理由
■介護ロボットの種類
 移乗支援(装着型介助機器・非装着型介助機器)
 移動支援(屋外型・屋内型・装着型)
 排泄支援(排泄物処理・排泄予測・動作支援)
 見守り・コミュニケーション(施設・在宅・生活支援)
 入浴支援
 介護業支援
■介護ロボットの種類別価格一覧
■介護ロボット導入補助金について
■介護ロボットを導入するメリットとデメリット
■分類別の介護ロボットの活用事例
■介護ロボットの今後の課題と解決策
■まとめ


ー介護ロボットとはー

介護ロボットとは、厚生労働省が示す「ロボット」の定義を満たし、ロボット技術が応用され、利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器のことです。

ロボットの定義とは、「情報を感知(センサー系)」「判断し(知能・制御系)」「動作する(駆動系)」の3つの要素技術を有する、知能化した機械システムです。

近年、生産年齢人口の減少による介護職の人手不足が深刻な問題となっており、
問題解決の手段の一つとして介護ロボットに注目が集まっています。

ー介護ロボットが注目される理由ー

介護ロボットが注目される理由は、まずその機能性にあります。
例えば、自立支援型のロボットは、高齢者が自宅で生活する上での支援を行い、認知症の方が迷子になった際には位置情報を特定して追跡することができます。
また、ホームヘルパーが繰り返し行う身体介助や掃除などの作業も、ロボットが代わりに行うことで人手不足を解消し、介護者の負担を軽減することができます。

さらに、介護ロボットは24 時間 365 日、一定の品質でサービスを提供することができるため、利用者にとって安心感があります。
高齢者は体調が優れない時でも、いつでもロボットのサポートを受けることができるため、安心して生活することができます。

また、介護ロボットが注目される理由の一つに、介護現場における職員の負担軽減が挙げられます。
介護職員は、身体介助やトイレの介助、食事の支援など、日々多くの作業を行っています。
しかし、これらの作業は人手不足が深刻な問題となっており、職員の負担が大きくなっています。
そこで、介護の現場に介護ロボットが導入されることで、職員の負担を軽減することができ、
より効率的な介護を行うことが実現します。

ー介護ロボットの種類ー

介護ロボットには、さまざまな種類があります。
その種類は、厚生労働省および経済産業省によって6分野13項目に分類され、重点的に開発支援することを推進しています。
それぞれの分野の介護ロボットは、どのような機能を持つのかみていきましょう。

移乗支援(装着型介助機器・非装着型介助機器)

移乗支援の画像

移乗支援型の介護ロボットは、介護される人がベッドから車椅子などに移る際、介護する人の負担を軽減する介護ロボットです。
移乗支援型の介護ロボットは装着型介助機器と非装着型介助機器の2種類があります。

《装着型介助機器》
装着型の介護ロボットは、利用者が直接身につけることで、体の一部の動きをサポートするロボットです。
これらはウェアラブル技術を応用しており、利用者の体の一部に装着することで筋力の弱った部分を補助します。
例えば、腕や脚、背中に装着し、立ち上がりや歩行、座る動作などに必要な力を補助することができます。

《非装着型介助機器》
非装着型の介護ロボットは、利用者が直接身につけることなく、外部から移乗や体位変換などの支援を行うロボットです。
これらはベッドから車椅子への移乗、トイレへの移動、立ち上がりの支援など、日常生活のさまざまな場面で利用されます。

移動支援(屋外型・屋内型・装着型)

移動支援の画像

移動支援型の介護ロボットは、自力で移動できない高齢者や身体に障害を持つ人などを移動できるようにしたり、移動が可能な人の負担を減らし、移動しやすくしたりする介護ロボットです。
屋外用・屋内用・装着型の3つがあります。

《屋外型移動支援ロボット》
屋外型の移動支援ロボットは、主に屋外での使用に特化しており、道路や歩道などのさまざまな環境で利用者をサポートします。
これらのロボットは、車椅子に組み込まれた電動アシスト機能を搭載し、四輪の電動スクーターの形をしていることが多いです。
屋外型ロボットは、長距離の移動や坂道の登り降り、段差の乗り越えなど、屋外での移動に伴うさまざまな障害を克服するのに役立ちます。
GPSナビゲーションや障害物検知センサー、自動ブレーキシステムなどの先進的な機能を備えていることもあります。

《屋内型移動支援ロボット》
屋内型の移動支援ロボットは、家庭や施設内で使用されることを目的としており、狭い空間や家具の間を移動する際の支援を提供します。
これらのロボットには、歩行をサポートする歩行補助ロボットや、車椅子型の電動アシストロボットなどがあります。
屋内型ロボットは、利用者の安全を確保しながら、立ち上がり、座る、歩行などの動作を支援します。
また、障害物回避機能、安定性の高い設計、狭い場所での操作性などが重視されます。

《装着型移動支援ロボット》
装着型の移動支援ロボットは、利用者の体に直接装着することで、特定の筋肉群や関節の動きをサポートするウェアラブルデバイスです。
装着型ロボットは、利用者の筋力を補助または強化することで、立ち上がり、歩行、階段の昇降などの動作をサポートします。

排泄支援(排泄物処理・排泄予測・動作支援)

排泄支援の画像

排泄支援型の介護ロボットは、高齢者や障害を持つ人々が排泄活動を行う際の自立支援や介護者の負担軽減を目的として開発されたもので、排泄物処理を自動で行ったり、トイレへと誘導したりする介護ロボットです。
排泄物処理・排泄予測・動作支援の3つがあります。

《排泄物処理》
排泄物処理型の介護ロボットは、使用者がトイレで排泄した後、その排泄物を自動的に処理する機能を持っています。
介護者が直接排泄物に触れることなく、衛生的かつ効率的に処理できるため、介護の負担を大幅に軽減することができます。

《排泄予測》
排泄予測型の介護ロボットは、使用者の排泄パターンや生体信号を分析して、排泄のタイミングを予測する技術を持っています。
センサーを用いて体内の腸の動きや膀胱の充満状態を検知し、排泄が近いことを使用者や介護者に知らせることで、事前にトイレへの誘導や準備をすることができます。
これにより、失禁のリスクを減らし、使用者の尊厳を保ちながら、介護者の急な対応を軽減することが可能です。

《動作支援》
動作支援型の介護ロボットは、トイレ内でのズボンや下着などを着脱するなど排泄の一連の動作を支援する機器が該当します。
ロボットのサポートにより、自立した排泄活動を可能にし、介護者の身体的な負担を軽減します。

見守り・コミュニケーション

見守りセンサーSensing Waveの画像

見守り・コミュニケーション型の介護ロボットは、利用者の安全を見守ったり、会話や声掛けなどのコミュニケーションを提供したりする介護ロボットです。施設型・在宅型・生活支援型の3つがあります。

《施設型介護ロボット》
施設型介護ロボットは、高齢者施設や病院などの集団生活環境で使用されるロボットです。
これらのロボットは、複数の利用者を同時に見守る能力を持ち、異常があった場合にはスタッフに通知する機能を備えています。

《在宅型介護ロボット》
在宅型介護ロボットは、個々の家庭で利用されるロボットで、一人暮らしの高齢者や障がい者の見守りを主な目的としています。
これらのロボットは、利用者の日常生活の安全を監視し、異常があった場合には家族や介護サービス提供者に通知します。

《生活支援型介護ロボット》
生活支援型介護ロボットは、高齢者等と会話などを行うコミュニケーション機能が付い
たロボットなどが該当します。高齢者等の言語や顔、存在等を認識し、異常がないか確
認したり、対話を通じて利用者の気分を明るくしたりします。

入浴支援

入浴支援の画像

入浴支援とは、自宅や介護施設などでロボット技術を用いて、自力で入浴するのが困難な人が浴槽に出入りする際の一連の動作を、安全かつスムーズにできるよう支援する機器です。

介護業務支援

介護業務支援とは、見守りや移動支援、排泄支援などの介護業務に伴う情報を、データで収集・蓄積し、支援業務に活用できるようにするための機器です。

ー介護ロボットの種類別価格一覧ー

介護ロボットの種類別に価格の相場をご紹介したいと思います。

■移乗支援
移乗支援の介護ロボットの価格相場は装着型で50 万円~ 200 万円、非装着型で 90 万円~ 120 万円
となります。

■移動支援
移動支援の介護ロボットの価格相場は装着型で
5 万円~ 50 万円、非装着型で 20 万円~ 30 万円となります。

■排泄介助
排泄介助の介護ロボットの価格相場は機能によって変動します。
トイレ誘導で5 万円~ 35 万円、排泄物の処理で 50 万円~ 70 万円
となります。

■見守り・コミュニケーション
見守り介護ロボットの価格相場は
20 万円~ 80 万円と機能によって変動します。

■入浴支援
入浴支援の介護ロボットの価格相場は
30 万円~ 140 万円と機能によって大きく変動します。

ー介護ロボット導入補助金についてー

介護ロボット導入補助金は、介護現場におけるロボット技術の導入を促進するために、
国が設けた補助金制度です。補助金の対象となるのは、介護ロボットの購入やリース費
用、導入に必要な設備やソフトウェアの費用などです。
補助金については国と自治体に分けられ、事業者がそれぞれ申請することができます。

ー介護ロボットを導入するメリットとデメリットー

介護ロボットを導入することで、現場や家庭ではどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。それぞれご紹介します。

メリットデメリットについて、もっと詳しく知りたいという方はこちらのリンクでもご紹介しているので、参考にしてください。

メリット

●身体的負担の軽減
介護する人は介助業務による腰痛などの悩みが生じることがありますが、パワーアシスト機器などを用いることで身体への負担軽減につながります。

●精神的負担の軽減
介護する人や近親者は、介護される人や高齢者に対する夜間の見回りや、健康状態の把握など、常に気遣いや配慮が求められます。介護ロボットを導入することで、それらを強化することができるようになるため、精神的に負担となる部分の軽減につながることもあります。

●人手不足の解消
介護施設をはじめとした介護業界では、慢性的な人手不足の状況にあるといわれています。介護ロボットは、介護スタッフの業務負荷を軽減するようなものが多くあるので、人手不足解消の一助となることが見込めます。

デメリット

●保管場所や設置場所の確保が必要
介護ロボットは、さまざまな種類がある中で、人体の動作等を支援するものも多いため、機器自体が大きいものとなりやすい傾向があります。そのため、ある程度、広い保管場所や設置場所の確保が必要になります。

●導入コストの負担が大きいことも
介護ロボットは、現在、高度なロボット技術により開発され続けていますが、その技術が上がるにつれて、コストも高くなりがちです。導入コストの負担が大きくなる場合があるため、介護ロボットの補助金を活用する等で導入を検討するのをおすすめします。

●操作を覚えるのに時間がかかる場合が多い
介護ロボットを扱うには一から操作を覚えなければなりません。機械を操作することに慣れていない人にとって複雑に感じるものもあります。そのため、できるだけ操作性が容易なものを選ぶのをおすすめします。

ー分類別の介護ロボット活用事例ー

介護ロボットは具体的にどのように活用されているのでしょうか。分野別にみていきましょう。

移乗支援

介護現場においてスタッフが装着型パワーアシストといった力を出すのをサポートする装着型ロボットを使用することで、腰痛の負荷軽減に役立っています。

移動支援

高齢で足腰が弱くなったり、膝に違和感を感じたりする人が、体に装着するだけで、歩行のアシストを行ってくれる装着型の介護ロボットを使用することで、階段や段差、坂道でも容易に移動できるようになりました。

排泄支援

排泄予測デバイスを活用し、介護される人の排尿のタイミングを介護する人に知らせることで、トイレ介助の負担軽減につながっています。

見守り・コミュニケーション

ある介護施設では「施設に睡眠状況を計測・可視化できるデバイスを導入したところ、施設全体で利用者の睡眠状態を把握することができるようになり、介護スタッフの負荷軽減につながりました。」という声があります。
また、コミュニケーションがとれる介護ロボットが会話や声掛けなどを行うことで、介護スタッフが不在の場合においてもサービス品質を向上させることができます。

入浴支援

浴槽をまたげない高齢者などの入浴が困難な人向けの、浴槽に設置する手すり付きの椅子の機器は、転倒を予防しながら入浴を可能にします。
介護施設の入浴場に設置することより、介護スタッフなどの負担を軽減しています。

介護業務支援

介護施設のシステムに、各種介護ロボットから取得したデータを送ることで、介護者の健康状態の変化を細かく把握できるようになりました。
これにより、介護スタッフの精神的な負担を軽減することができています。

ー介護ロボットの今後の課題と解決策ー

介護ロボットの今後の課題と解決策について解説します。
1.
安全性の確保
介護ロボットは高齢者や障がい者の身体介助を行うため、安全性が非常に重要です。ロ
ボットが人間と接触する際に、人間にケガを負わせないようにするために、センサーや
カメラなどの技術が必要です。また、万が一の際には、緊急停止機能などの安全装置が
必要です。
2.
操作性の改善
介護ロボットは、高齢者や障がい者などの操作が難しい人たちが利用するために設計さ
れています。しかし、操作方法が複雑であったり、使い方がわかりにくい場合は、本来
の目的を果たせなくなってしまいます。このため、操作性の改善が求められています。
3.
コストの低減
介護ロボットは、高度な技術を必要とするため、製造コストが高くなっています。また、
導入にあたっての費用も高額になるため、普及が進んでいません。今後は、コストの低
減が必要です。
4.
人間とのコミュニケーション
介護ロボットが人間とのコミュニケーションを行うことは、高齢者や障がい者にとって
非常に重要です。しかし、現状では、ロボットの発話が単調であったり、人間の言葉を
理解できない場合があります。このため、自然なコミュニケーションができるように、
音声認識や自然言語処理技術の改善が必要です。
5.
データの活用
介護ロボットは、高齢者や障がい者の健康状態や生活習慣などのデータを収集すること
ができます。しかし、このデータを活用する 方法についてはまだ 確立されていません。
今後は、データを解析し、より効果的な介護を提供するための方法を模索する必要があ
ります。

介護ロボットが普及しない理由は、下記のリンクでも詳しく解説しています。

ーまとめー

介護ロボットは、介護業界の課題解決の一助となる期待の分野です。今回ご紹介した種類やメリット・デメリット、活用事例は、導入を検討する際のヒントとしてお役立てください。

TOPPANでは、印刷で培ったデジタル活用のノウハウを活かし、介護従事者の負荷軽減システム「Sensing Wave®(センシングウェーブ)」をご提供しています。
ベッドマットレスの下に設置する非接触型センサーで、利用者の睡眠の深さ、心拍相当数、呼吸相当数、離床・入床などを取得できます。
介護施設スタッフの負担を軽減し、さらなるケアサービスの質向上を実現します。

詳細については、ぜひサービスページをご覧ください。

2024.06.12

新着記事 LATEST ARTICLE
    人気記事 POPULAR ARTICLE
      関連サービス SERVICE