コラム

メカニカルリサイクルPET-PETボトルから生まれた環境に優しいフィルムパッケージ

世界的に環境への配慮が求められるなか、「企業として環境への取り組みを行いたい」「自社の軟包装パッケージを、環境に配慮したものに変更したい」と考える企業は多いでしょう。しかし、自社製品にどのような環境配慮パッケージが使えるのかがわからない方も多いのではないでしょうか。

そこで本コラムでは、リサイクルでできた「メカニカルリサイクルPET」を使ったパッケージについて詳しく解説します。


環境に配慮した包装素材が求められる背景

環境問題は、世界的に取り組むべき重要な課題です。生活者においても、環境に良いものを選んだり、環境問題に取り組む企業を評価したりする傾向が見られます。企業が環境へ配慮した取り組みを行うことは、近年ブランディングに欠かせない重要な要素といっても良いでしょう。

環境問題のなかでも、廃プラスチックの有効利用率の低さや海洋プラスチックなどによる環境汚染が、世界的に注目されています。

このような背景から、政府は2019年に「プラスチック資源循環戦略」 を策定しました。この戦略の基本原則を「3R+Renewable」とし、以下の4つを重点戦略に掲げています。

プラスチック資源循環戦略の基本原則「3R+Renewable」
Reduce(リデュース) ごみの発生を減らす(発生抑制)
Reuse(リユース) 繰り返し使う(再利用)
Recycle(リサイクル) リサイクル(再生利用)
Renewable(リニューアブル) 再生可能な資源に切り替える


さらに、2000年に制定された「循環型社会形成推進基本法」では、次のような優先順位で3Rに取り組むべきとされています。

1. リデュース(発生抑制)
2. リユース(再使用)
3. リサイクル(再生利用)

軟包装パッケージにおいて3Rを実践する場合、フィルムの厚みを薄くすることができればリデュースを実現することができます。しかし、バリア性や遮光性などの機能を考慮すると、フィルムを薄くするのにも限界があります。また、リユースとして、軟包装パッケージを再利用することは現状では現実的ではありません。

軟包装パッケージで3Rを実践する場合は、リサイクルが最も現実的な取り組みといえるでしょう。その中で、特に注目されているのが「メカニカルリサイクルPET」です。


環境負荷を軽減できる「メカニカルリサイクルPET」

環境負荷を軽減できる軟包装の素材として注目されているメカニカルリサイクルPETについて、詳しく解説します。

メカニカルリサイクルPETとは

メカニカルリサイクルPETとは、使用済みPETボトルを「メカニカルリサイクル」という方法でPET樹脂に再生したものです。

PETボトルのリサイクルとしては、「ボトルtoボトル」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。ボトルtoボトルとは、飲料用使用済みPETボトルをリサイクルし、新たな飲料用PETボトルに再利用することを指します。

PETボトルのリサイクルは、ボトルへのリサイクルだけではありません。他のフィルムに比べて強度や耐熱性が優れた高分子フィルムである「PETフィルム」へのリサイクルもできます。

リサイクル方法の種類・特徴

リサイクルには、「マテリアルリサイクル」、「メカニカルリサイクル」、「ケミカルリサイクル」などの方法があります。それぞれの方法について、詳しく解説します。

●マテリアルリサイクルとは
マテリアルリサイクルとは、使用後の製品を細かく砕いて、同じ製品の材料や原料として再利用する方法です。フィルムや樹脂の生産・加工時の端材をマテリアルリサイクルする場合は、品質が変わらないというメリットがあります。また、リサイクルに必要な設備が他の方法に比べて少ないため、製造コストや環境負荷を低く抑えることができます。

マテリアルリサイクル

●メカニカルリサイクルとは
メカニカルリサイクルとは、マテリアルリサイクルの一種です。マテリアルリサイクル樹脂をさらに高温・減圧下で一定期間処理し、溶融ろ過で再生材中の汚染物質を除去します。高品質の再生樹脂となるため、食品一次包装にも使える点がメリットです。後にご紹介するケミカルリサイクルに比べて、大がかりな設備を必要としないため、製造コストや環境負荷が低い点もメリットといえるでしょう。

メカニカルリサイクル

●ケミカルリサイクルとは
ケミカルリサイクルとは、プラ容器包装やPETボトルなどの回収した廃棄物を化学的な手法によって分子に戻し、樹脂原料に作り直して、再び樹脂を製造する方法です。一度原料に戻すため、汚染物質の問題がない点がメリットです。ケミカルリサイクルは、食品包装用途にも使用できます。ただし、大型設備が必要なため、コストがかかるデメリットがあります。

ケミカルリサイクル

手軽に環境負荷を軽減できるメカニカルリサイクルPETフィルム

以上、リサイクル方法の3つの種類を紹介しましたが、軟包装パッケージに使用する素材としては、製造コストや環境負荷が低いメカニカルリサイクルPETフィルムがおすすめです。

PETボトルをリサイクルした材料であるため、環境に良いことが生活者にも伝わりやすいでしょう。一般的なPETフィルムと同等の性能を有しているため、既存の包装材料からこのリサイクルPETフィルムへの切り替えも容易です。


メカニカルリサイクルPETフィルムの特徴・CO₂排出量削減例

メカニカルリサイクルPETフィルムの特徴について、ここからもう少し詳しく説明しましょう。メカニカルリサイクルPETフィルムを使うことによって、どのようにCO₂排出量を削減できるのかについても、あわせて解説します。

メカニカルリサイクルPETフィルムの特徴

メカニカルリサイクルPETフィルムには、以下のような特徴があります。

1. 再生PET樹脂を80%使用
2. 一般PETフィルムと同等の物性・透明性
3. 一般PETフィルムに比べてフィルム製造時のCO₂排出量約24%を削減
4. 厚生労働省のガイドラインに適合したフィルムであり、食品一次容器にも使用可能(*1)
5. 商品にエコマークとPETボトルリサイクル推奨マークがつけられる

メカニカルリサイクルPETのCO₂排出量削減例

パッケージの素材を一般のPETからメカニカルリサイクルPET (MRPET)に置き換えた場合、CO₂排出量が2%削減されます。

材質構成 CO₂排出量削減率
置き換え前 PET/AL/LLDPE -
置き換え後 MRPET/AL/LLDPE 2%

※当社算定。CO₂排出量の算定範囲はパッケージに関わる①原料の調達・製造、②製造、③輸送、④リサイクル・廃棄。算定結果はロットや包材サイズなど条件によって変わります。


既存のパッケージにPETを使っていない場合でも、既存のOPPをメカニカルリサイクルPETに置き換えることは可能です。また、求める品質に合わせてパッケージのフィルム構成をご提案することもできます。メカニカルリサイクルPETを使用する場合、商品にエコマークやPETボトルリサイクル推奨マークをつけられるようになるので、環境に配慮した商品であることを生活者にアピールできるでしょう。


高いバリア性と環境への配慮を両立「メカニカルリサイクルPET・GL」

商品によっては、パッケージに高いバリア性が必要なケースもあります。例えば、食品や医療品など高いバリア性・遮光性が必要な商品には、しばしばアルミ素材が使われます。しかし、アルミは製造時に大量の電力が消費されるため、環境負荷が高いという問題があります。そこで、環境への配慮から、アルミを使わない方向へ進む必要性が高まっているのです。


TOPPANでは、リサイクル素材であるメカニカルリサイクルPETを使いながら、独自の蒸着・コーティングを施し、高いバリア性を実現したフィルム「メカニカルリサイクルPET・GL」をラインアップしています。

既存のアルミを使った包材から「メカニカルリサイクルPET・GL」に置き換えた場合、アルミを使わない2層構成になることで、高いバリア性をキープしたままCO₂排出量を44%削減することが可能になります。アルミを使わないことによって、パッケージ製造時のCO₂排出量を大幅に削減できます。

材質構成 CO₂排出量削減率
置き換え前 PET/AL/LLDPE -
置き換え後 GL FILM/LLDPE 44%

※当社算定。CO₂排出量の算定範囲はパッケージに関わる①原料の調達・製造、②製造、③輸送、④リサイクル・廃棄。算定結果はロットや包材サイズなど条件によって変わります。


エコ・フレンドリーな軟包装は実績豊富なTOPPANへ

TOPPANでは、食品・飲料・ビューティー・日用品など、さまざまな分野において、メカニカルリサイクルPETを活用したパッケージの実績があります。下記のようなさまざまな商品に採用されています。

● 菓子の包装
● 飲料の口栓付きパウチ
● シャンプーの詰め替えパウチ
● ウェットシートのパッケージ など

流通業界のお客さまには、店頭で回収したペットボトルをリサイクルし、食品PB商品のパッケージに活用した例もあります。

メカニカルリサイクルPET・GLを使用した軟包装パッケージには「PETボトルリサイクル推奨マーク」の表示が可能なため、環境へ配慮した取り組みを生活者に知ってもらえる良いきっかけになるでしょう。

お客さまの要求品質に合わせた提案をいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。

2023.09.28

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