分注とは? ヘルスケア・医療医薬の関係者に役立つ基本解説
分注とは、液体試料を正確に一定量ずつ分ける工程のことで、医薬品やヘルスケア製品の開発・研究において大切な役割を担っています。自動分注機は高い精度と再現性を実現しながら、作業効率を大幅に向上できるため、現代の研究や製造の現場で欠かせないものとなっています。
今回は、自動分注機がどのような分野で役立っているのか、その特徴や活用シーンを紹介します。
分注とは

分注とは、医薬品製造やヘルスケア分野の研究・検査において、液体試料を正確に一定量ずつ分配する重要な工程です。主にピペットや自動分注装置を使用し、試験管やマイクロプレートなどの容器に液体を移す際に行われます。
分注の目的は、正確に一定量を分けることであり、結果として品質の一貫性を確保することができます。近年の自動分注装置の発展により、人為的ミスを減らし、作業効率を大幅に向上させることが可能になりました。これらの装置は、シリンジ方式やプランジャーポンプなどさまざまな方式を採用し、微量から大量まで幅広い容量に対応しています。
特に医薬品製造やヘルスケア製品の開発では、クリーンな環境での正確な分注が不可欠です。そのため、高度な技術と設備を持つ専門の委託先を選ぶことが、製品の品質と安全性を確保する上で重要となっています。

手動分注と自動分注の違い

分注には手動分注と自動分注の2種類があります。それぞれに特徴があり、用途に応じて使い分けられています。
手動分注
手動分注は、試薬が非常に少量である場合や、容器が特殊な形状をしている場合の分注に適した方法です。研究者が直接ピペットやディスペンサーを用いて操作するため、初期投資費用をおさえることができ、小規模な研究室や不定期の実験条件下では経済的な選択肢となります。
手動分注は少量のサンプルを扱うときなど、細かい調整が可能です。しかし、手動分注の精度は作業者の技術や経験に依存するため、人為的ミスが発生しやすく、結果の再現性にばらつきが生じるリスクもあります。
そのため、手動分注は小規模な実験や研究室での使用に適していますが、大量生産や高精度が要求される場面では、自動分注機の使用が推奨されます。
自動分注
自動分注は、高い精度と再現性が求められる実験に適した方法です。自動化されたシステムにより、連続した作業を正確に行えるため、人為的ミスを大幅に減少させることが可能です。
ゲノム解析や新薬のスクリーニングといった、大量のサンプルを同時に扱う必要がある作業では、自動分注機の導入が不可欠です。また、自動分注機は、操作がシステム化されているため、研究者の負担を軽減し、時間の節約にもつながります。
ただし、自動分注機の導入には高額な初期投資が必要となります。機器の操作や保守にも専門知識が求められるため、小規模な研究室や不定期の実験には不向きです。
このように、手動分注と自動分注は、実験の規模や目的、予算に応じて使い分けることができます。
自動分注機の特徴

自動分注機は研究や製造の現場で広く使われています。特徴を詳しくみていきましょう。
実験の精度向上
自動分注機は、試料を正確に分注できる機能を備えているため、実験の精度が大きく向上します。手動での分注では、0.5mL〜5mL程度の量を扱うことが一般的ですが、自動分注機ではマイクロリットル(μL)単位での分注が可能です。
最新の自動分注機では、液体の接触による交差汚染(クロスコンタミネーション)のリスクも大幅に低減されています。そのため、再現性・信頼性の高い結果を求められる研究現場では、自動分注機が広く採用されています。
作業効率の向上
自動分注機は、大量のサンプルを短時間で処理する能力を持っており、実験の作業効率向上に大きく貢献します。手動分注では多くの時間と労力を必要とする作業でも、自動分注機ならスピードと同時に高い精度を確保できます。これにより、研究者は他の重要な作業に集中できるため、全体の生産性が向上します。
多様な用途
自動分注機はその高い汎用性により、さまざまな分野で活用されています。基本的な用途としては以下の通りです。
● 培地分注(細胞や微生物の培養に必要な培地を均一に分注)
● 試薬分注(化学反応や分析に使用される試薬を一定量に分注)
● サンプル分注(実験や分析において、複数の容器に均一な量のサンプルを分注)
分注は専門性の高い分野で、多岐にわたる実験や製造プロセスで効果を発揮します。
● 医療・薬学分野(薬品や試薬の正確な分注)
● 化学・生化学分野(微量試薬の正確な分注)
● 食品・飲料製造(特定成分の正確な分注や配合)
● 環境分析(水質や大気中の汚染物質検査)
● その他の分野(分子生物学、臨床検査、食品検査など)
このように汎用性の高い自動分注機は、研究施設や製薬企業などの広い分野で不可欠なツールとして位置付けられています。
自動分注機の活用シーン

ここでは、自動分注機の活用シーンについて詳しくみていきましょう。
創薬
自動分注機は、創薬におけるさまざまなプロセスで活用され、実験の効率化と高精度化に貢献しています。
新しい薬剤候補を発見するためには、多数の化合物を高精度で取り扱い、迅速にスクリーニングする必要があります。自動分注機はこのプロセスを大幅に効率化し、化合物の分配を正確に行うことで、再現性の高いデータを提供します。これにより創薬のスピードが向上し、コストの削減にも寄与します。また、自動化されたシステムは操作ミスを減少させるため、試験の信頼性が向上します。
臨床検査(検体検査)
臨床検査は、病気の診断や治療効果の判定などの目的で、被験者から採取した血液や尿などの検体を用いて行われる検査のことです。自動分注機は最小限の検体から分注が可能なため、大量の検体を扱う検体検査では導入不可欠となっています。どの検体に、どの試薬をどの量分注したかといった情報を自動的に記録できるため、検査結果の追跡も可能です。
遺伝子研究
遺伝子研究の分野では、大量のゲノムDNAの抽出が必要です。ゲノムDNAは血液などの生体試料から得られ、さまざまな医学研究や臨床応用に利用されます。遺伝子変異の解析や疾患の原因解明、新しい治療法の開発において、ゲノムDNAの品質や量が実験の成功に大きく関わります。
自動分注機を使用することで効率的にゲノムDNAを抽出でき、大量のサンプルを短時間で処理できます。これにより、研究者は実験の再現性を高め、信頼性の高いデータを得ることが可能です。
細胞培養
細胞培養では、細胞が最適な条件で成長できるよう、培地や試薬を正確に分配することが求められます。自動分注機は、細胞の成長に必要な環境を整えるだけでなく、シングルセル(1細胞)解析といった高度な分注も可能です。異なる条件下での実験を同時に実施したり、細胞培養を自動化したりと、研究の幅を広げることができます。
食品・化粧品などの製造・検査
食品や化粧品の製造・検査においては、製品の品質と安全性が最も重要です。自動分注機は、原材料や試料を正確に分配し、製品の品質管理を徹底するための重要なツールとして活用されています。特に、化粧品の成分分析や食品の安全性検査においては、自動分注機がその精度と効率性を最大限に発揮します。
まとめ
自動分注機は、研究や製造の現場で重要な役割を担っています。特に創薬、臨床試験、遺伝子研究、細胞培養、食品や化粧品の製造・検査など、専門性の高い分野で活用され、製品の品質や研究結果の信頼性を高めています。
今後も自動分注機の技術進歩により、さらに多くの分野でその可能性が広がっていくことでしょう。
2024.12.24