コラム

リチウムイオン電池の発火原因とは?
事故事例や消火方法・対策を解説

リチウムイオン電池は、スマートフォンやモバイルバッテリー、電動工具など、私たちの生活に欠かせない機器に広く使用されています。しかし、その普及に伴い、発火事故も増加傾向にあり、企業の安全管理担当者や施設管理者にとって見過ごせない課題となっています。
この記事では、リチウムイオン電池の発火メカニズムと具体的な事故事例を解説するとともに、企業が実施すべき運用管理や廃棄時の注意点、万が一発火した際の適切な消火手順について紹介します。


<目次>
■リチウムイオン電池の発火事故が増加している背景と現状
 ・製品普及に伴う火災事故件数の推移と傾向
 ・モバイルバッテリーなど身近な製品での火災事例
■リチウムイオン電池が発熱・発火するメカニズムと主な要因
 ・内部短絡(ショート)やデンドライトの発生
 ・外部からの衝撃や圧力による物理的破損
 ・高温環境下での使用や放置による熱暴走
■リチウムイオン電池の発火を防ぐための適切な運用・廃棄管理
 ・事故を未然に防ぐための社内ルールと調達基準
 ・廃棄時の法令遵守とリサイクルスキームの活用
■万が一発火した場合の危機管理と消火手順
 ・初期段階における冷却消火と従業員の安全確保
 ・専用の消火器具配備とBCP視点での防災対策
■【TOPPANの消火フィルム】貼るだけでリチウムイオン電池の発火対策
 ・.熱に反応して自動で消火剤を放出する仕組み
 ・航空機やモバイルバッテリーへの導入実績と信頼性
■まとめ


リチウムイオン電池の発火事故が増加している背景と現状

リチウムイオン電池を搭載した製品による火災事故が、年々深刻化しています。東京消防庁の発表によると、東京消防庁管内において、令和6年中の火災件数は過去最多の106件を記録しました。この増加の背景には、スマートフォンやモバイルバッテリーといった製品の普及拡大があり、オフィスや外出先など、あらゆる場所で火災リスクが高まっている状況です。

最近では、2025年7月にJR山手線の車内でモバイルバッテリーが発火し、5人が軽傷を負う事故も発生しました。このような事故は、企業の危機管理担当者が見過ごせない課題となっています。

以降では、火災事故件数の推移や、身近な製品での具体的な事例を詳しく解説します。

製品普及に伴う火災事故件数の推移と傾向

出典:東京消防庁|リチウムイオン電池搭載製品の出火危険

リチウムイオン電池関連の火災は、製品の普及とともに急増しています。東京消防庁の調査では、平成26年から令和5年までの10年間で火災件数が約9倍に増加したことが明らかになりました。

特に注目すべきは、事故の発生時期に明確な傾向がある点です。気温が上昇する6月から8月にかけて火災件数がピークを迎えることが確認されており、夏季における適切な保管環境の管理や注意喚起が重要となります。

また、NITE(製品評価技術基盤機構)の報告によれば、2020年から2024年の5年間に発生した1,860件の事故のうち、約85%にあたる1,587件が火災に発展しました。この数字は、リチウムイオン電池が持つ発火リスクの高さを示しています。

モバイルバッテリーなど身近な製品での火災事例

ホテルやレジャー施設では、利用客が持ち込むモバイルバッテリーや加熱式たばこが主要な火災リスク要因となっています。施設側で品質管理ができないこれらの製品は、予期せぬ発火トラブルの原因になりやすい状況です。

実際、2025年10月には京都市内のホテルで充電中のモバイルバッテリーが発火し、宿泊客が一時避難する事態が発生しました。

さらに問題となっているのが、就寝中の充電やベッド上での放置、非純正ケーブルの使用といった不安全な行動です。また、客室に忘れられた破損バッテリーの発火や、一般ごみとして誤廃棄されたリチウムイオン電池がごみ収集車内で圧迫され発火する事例も増加しており、バックヤード管理を含めた総合的な対策が求められています。


リチウムイオン電池が発熱・発火するメカニズムと主な要因

リチウムイオン電池の発火事故を防ぐには、主要な要因を正確に把握することが不可欠です。

発火の主な要因 企業が想定すべきリスク事例
内部要因 過充電・過放電によるデンドライト発生、非純正品の調達による品質リスク
物理的要因 業務中の落下・衝撃、廃棄・回収フローにおける圧縮・破損
環境要因 車内や倉庫等の高温環境下での保管、熱源付近での運用

これらの要因は、いずれも電池内部で熱暴走(サーマル・ランウェイ)と呼ばれる連鎖反応を引き起こします。
以降では、それぞれの要因がどのように熱暴走を引き起こすのか、技術的なメカニズムを含めて解説します。

内部短絡(ショート)やデンドライトの発生

リチウムイオン電池の内部には、正極と負極を隔てるセパレーター(絶縁膜)が存在します。このセパレーターが破損すると、正極と負極が直接接触し、内部短絡(ショート)が発生して急激な発熱から熱暴走に至ります。特に注意が必要なのは、過充電や過放電によって内部に「デンドライト(樹枝状結晶)」と呼ばれる金属結晶が成長する現象です。

デンドライトがセパレーターを突き破ることでショートを引き起こし、経年劣化に伴う発火リスクが高まります。さらに、リチウムイオン電池は可燃性の電解液を含有しているため、一度発火すると激しく燃焼し、消火が困難になる性質があります。管理者はこの特性を理解し、機器の定期点検や交換時期の管理を徹底する必要があります。

外部からの衝撃や圧力による物理的破損

業務現場での落下や、機器への過度な圧力は、電池内部を損傷させてショートや発火の原因となるため、従業員への取り扱い指導が重要となります。特に深刻なのは、廃棄物処理過程における事故です。

パッカー車内での圧縮や、処理施設の破砕機での衝撃によって、誤って混入したリチウムイオン電池が発火する事例が頻発しています。排出事業者として適切な分別を行わないことが、施設の火災や作業員の負傷といった重大事故につながるリスクを認識しなければなりません。

また、外部衝撃による発火は充電の有無にかかわらず発生するため、使用中だけでなく保管時や移動時においても、落下防止や適切な梱包といった注意が求められます。

高温環境下での使用や放置による熱暴走

リチウムイオン電池は熱に弱い特性を持ち、営業車両の車内、倉庫、空調設備の不十分な保管場所、熱源付近などの高温環境下に放置することで異常反応が起きるリスクがあります。特に温度が80℃以上になると熱暴走のリスクが著しく高まるため、保管場所の温度管理や、夏場における運用ルールの策定が不可欠です。

直射日光の当たる場所や暑い日の車内は、想定以上の高温に達する可能性があるため注意が必要となります。また、機器の使用中や充電中に異常な発熱を確認した場合は、直ちに業務利用を中止し、安全な場所に隔離するといった対応フローを確立しておくことが重要です。温度管理を含めた包括的な安全対策が、事故防止の鍵となります。


リチウムイオン電池の発火を防ぐための適切な運用・廃棄管理

リチウムイオン電池による発火事故を防ぐには、日常の運用段階から廃棄に至るまで、一貫した管理体制の構築が求められます。機器の調達時における品質基準の設定、従業員が遵守すべき運用ルールの策定、そして廃棄時の法令に基づいた適正処理の徹底が、企業の安全管理において重要な柱となります。

特に廃棄段階では、誤った処理が処理施設での火災を引き起こし、企業のコンプライアンス上の問題にも発展するリスクがあります。

ここでは、事故を未然に防ぐための具体的な社内ルールと、廃棄時に活用すべきリサイクルスキームについて解説します。

事故を未然に防ぐための社内ルールと調達基準

機器調達時は、メーカー純正品や認証マーク付きの製品を選定することが基本となります。コスト削減を優先して非純正品や粗悪品を使用すると、設計不良や品質管理の不備により発火リスクが高まり、結果として事故対応コストが上回る可能性があります。

運用面では、落下や衝撃を与えない物理的保護の徹底、就寝時や不在時の充電禁止、充電完了後の速やかな取り外しといった、従業員が遵守すべきルールを明文化する必要があります。

また、膨張、異臭、充電不良、動作不良などの異常が確認された機器については、即座に使用を禁止し、安全管理部門へ報告する社内フローを整備しておくことが重要です。早期発見と適切な対応が、重大事故の予防につながります。

廃棄時の法令遵守とリサイクルスキームの活用

事業所から排出されるリチウムイオン電池を一般廃棄物に混入させる行為は、処理施設における火災の原因となるだけでなく、廃棄物処理法違反として企業のコンプライアンス上の問題に発展するリスクがあります。

さらに、2026年4月より「資源有効利用促進法」の対象品目に、モバイルバッテリー、携帯電話、加熱式たばこ機器などが追加され、製造・販売事業者による回収・リサイクルが義務化されます。この法改正により、企業には単なる廃棄ルールの遵守だけでなく、回収・保管・再資源化の各工程における発火リスク管理まで含めた安全管理体制の構築が求められるようになるのです。

廃棄時は、自治体が定める事業系廃棄物の区分を確認したうえで、産業廃棄物処理業者への委託や、JBRCなどの広域認定制度を活用し、法令に基づいた適正処理を行うことが不可欠です。家電量販店や指定回収拠点を通じてリサイクルルートに乗せることで、資源の有効利用と発火事故の未然防止という両面のメリットを確保できます。

排出事業者としての責任を果たすと同時に、回収・保管段階も含めた包括的な安全対策を講じることが、今後の企業経営における重要なリスクマネジメント項目となります。


万が一発火した場合の危機管理と消火手順

リチウムイオン電池の発火は、激しい燃焼や火花・煙の噴出を伴うため、通常の火災対応とは異なる迅速な初期対応が必要となります。発火時には、従業員の安全確保を最優先としつつ、適切な冷却消火を行うことが重要です。また、事業所や保管施設においては、専用の消火器具の配備や防災体制の整備が求められます。

以下では、初期段階における具体的な消火手順と、BCP視点での防災対策について解説します。

初期段階における冷却消火と従業員の安全確保

発火を確認した際は、まず従業員の避難と安全確保を最優先とし、火花や煙が激しく噴出している段階では絶対に近寄らず、火勢が落ち着くのを待ってから対処するという基本方針を徹底する必要があります。

リチウムイオン電池の熱暴走には「大量の水」による冷却が有効であり、粉末消火器などでは一時的に鎮火しても内部の化学反応が続き、再発火のリスクが残るため注意が必要です。

火勢が収まった後も、継続的な冷却を行うことが不可欠となります。可能であれば、バケツなどへの「水没」によって完全に冷却し、化学反応を停止させることが被害拡大を防ぐ有効な手段です。消火後も電池は熱を持ち続けるため、119番通報と並行して冷却を継続することが重要となります。

専用の消火器具配備とBCP視点での防災対策

バッテリー保管庫や充電エリアには、リチウムイオン電池火災に対応した専用の消火装置や延焼防止シートなどを配備し、万が一の備えを強化する必要があります。

通常の消火器では消火が困難なケースがあることを踏まえ、早期発見と初期対応を可能にする検知システムや自動消火設備の導入が、事業継続計画(BCP)の観点からも重要な位置づけとなります。

また、定期的な防災訓練にバッテリー火災のシナリオを組み込み、発火時の具体的な対応手順や避難経路、消火器具の使用方法について従業員への周知徹底を図ることで、実際の緊急時に適切な行動がとれる体制を構築できます。事前準備と訓練の積み重ねが、被害を最小限に抑える鍵となります。


【TOPPANの消火フィルム】貼るだけでリチウムイオン電池の発火対策

リチウムイオン電池の発火リスクに対し、TOPPANが開発した「消火フィルム」は、貼るだけで初期消火機能を発揮する画期的な製品です。火災発生時の熱に自動反応して消火剤を放出する仕組みにより、電源不要で設置場所を選びません。航空機への採用実績や第三者機関による性能認証など、高い信頼性が証明されています。

熱に反応して自動で消火剤を放出する仕組み

TOPPANの「消火フィルム」は、火災発生時の熱(約250℃)に反応して、フィルムからエアロゾル状の消火剤を自動的に放出する製品です。

放出された消火成分が燃焼の連鎖反応を断ち切る負触媒効果を発揮することで、初期消火を行い、火災の拡大を未然に防ぐメカニズムを持っています。この技術により、密閉空間においてより高い消火性能を発揮できる特性があります。

電源やセンサーが不要なため、バッテリーケース内や配電盤などの狭いスペースにも「貼るだけ」で設置できる利便性が大きな特徴です。軽量でコンパクトなフィルム状の製品であるため、場所を選ばずに導入できる点が、企業の安全管理担当者にとって大きなメリットとなります。

航空機やモバイルバッテリーへの導入実績と信頼性

▲ANAグループで採用されている「Fire Resistant Bag」

ANAホールディングス株式会社の航空機に搭載される製品(Fire Resistant Bag)に採用されるなど、高い安全性が求められる現場での導入実績があります。この「Fire Resistant Bag」は、ANAグループ、菊地シート工業株式会社、TOPPANの3社共同開発によるもので、2024年12月よりANAの機材に搭載されています。

▲釘刺し実験の様子

また、モバイルバッテリーや電動アシスト自転車のバッテリーを想定した「釘刺し実験」においても、消火フィルムを設置したケースでは鎮火および延焼防止効果が実証されました。

さらに、国際的な第三者認証機関UL社による科学的検証の結果、類焼抑止効果が客観的に認められ、消火フィルムの分野で世界初となる「UL検証マーク」を取得しています。この認証により、性能と信頼性が担保されている点が特徴です。


まとめ

リチウムイオン電池の発火事故を防ぐためには、発火メカニズムの理解と適切な管理体制の構築が不可欠です。普及拡大に伴い火災件数が増加する現代において、企業は運用ルールの策定から廃棄管理、万が一の際の初期対応まで、包括的な安全対策を講じることが求められています。
TOPPANの「消火フィルム」のような防災製品を活用することで、従業員の安全確保と事業継続性を両立し、企業の社会的責任を果たすことができるでしょう。

2026.01.08

新着記事 LATEST ARTICLE
    人気記事 POPULAR ARTICLE
      関連サービス SERVICE