「説明の質」と「時間の確保」を両立
─DICTOR導入が変えた外来業務
藤沢湘南台病院での導入事例
「DICTOR(ディクター)」は、医師や看護師ご本人の声をもとにした説明動画を作成し、術前説明や入退院時の案内など、患者さんへの説明業務をサポートするサービスです。
動画を用いることで、医療現場の業務効率化に貢献するとともに、患者さんやご家族が安心して医療を受けられる環境づくりを支援します。
本記事では、藤沢湘南台病院での導入事例をご紹介します。
導入施設紹介
藤沢湘南台病院は、神奈川県藤沢市にある、まもなく創立100年を迎える地域の中核病院です。
急性期医療からリハビリ、緩和ケアまで提供しています。特にロボット手術を導入したり、診療案内にYouTubeを活用するなど、常に先端を目指しています。

ご協力いただいた先生
●藤沢湘南台病院 消化器外科(大腸肛門外科) 鈴木紳祐院長●
鈴木先生は、消化器外科を専門とし、外科手術全般を担いながら、病院経営や看護部のマネジメントにも携わっています。
日々の診療において重視しているのは、「患者さんが医療内容を正しく理解し、納得のうえで治療に臨めること」、そして「その結果として満足度が高まること」。
患者への説明が十分に伝わっているか、理解と納得のうえで治療が進められているかを、常に意識しながら現場に立たれています。
説明業務における課題、時間と理解の両立の難しさ
—DICTOR導入前には、どのような課題がありましたか?
鈴木先生:私の場合、大腸がんの患者さんに対しては、手術の説明にだいたい30分ほどかけて、納得いただいたうえで段取りを組んでいました。痔核などの訪問手術でも、10分程度はお話しする必要がありました。
1日に6人から8人ほどの患者さんに手術の説明を行うことも多く、それだけで何百分とかかってしまうこともあります。さらにその間も、外来診療を続けていて、いわゆる再来の患者さん、つまり普段から通院されている方の診察も並行して行っていました。
説明に時間をかければ理解度は上がるものの、そのぶん他の患者さんの待ち時間が延びてしまう。そうした両立の難しさを、当時は一番の課題として感じていました。

従来の工夫と限界
—DICTOR導入前に、説明業務で工夫されていたことはありますか?
鈴木先生:負担を軽減するために、いくつかの工夫は試していました。
たとえば、私が担当している大腸がんのロボット手術については、専用のパンフレットを作成して事前にお渡ししたり、病院のホームページに手術内容を紹介する動画を掲載したりしていました。
ただ、パンフレットは「どこが大事なのか分からない」「どこを読めばいいか分からない」という声が多く、理解度の向上にはつながりませんでした。
また、動画にはAI音声を使用していたのですが、患者さんからは違和感があるという反応が多く、結局その動画を見た後でも、私がゼロから説明し直すことがほとんどでした。
DICTOR導入への期待と実現

—導入前に期待していたことはありますか?
鈴木先生:当時はまだできていなかったのですが、患者さんに動画をお渡しして、ご自宅で見てもらえるようになることを期待していました。
というのも、外来診療を行いながら手術の説明もしているため、その場で十分に理解できない方や、ご家族が同席されていないケースもありました。そうなると、患者さんがご自宅で手術の内容をうまく説明できず、あとからご家族から病院に問い合わせの電話がかかってくることもあったんです。
ですので、説明を「持ち帰っていただける」ようにすることは、ぜひ実現したいと考えていました。今はそれが実際にできるようになっており、非常に活用しています。
診察室2部屋を活用した、外来説明の効率的な運用
—実際のDICTORの運用方法と変化を教えてください。
鈴木先生:人員は増やさず、診察室を2部屋使って運用しています。
手術が決まった患者さんには、まずDICTORの動画を見ていただき、その間に私は別の部屋で他の患者さんを診察します。終わったら元の部屋に戻り、動画を見終えた患者さんに手術の説明をする、という流れです。
これまで10分かかっていた説明が、動画を見た後なら1〜2分で済むようになりました。2人診るのに20分かかっていたのが、今ではその半分ほどで対応できています。
結果として、待ち時間の短縮や患者さんの負担軽減にもつながっており、副次的な効果も多く感じています。

病院全体への波及効果
—DICTORは院内でも広がってきているのでしょうか?
鈴木先生:最初は私だけが使っていて、自分の外来業務だけがすごく楽になっていました。
その様子を見て、事務の方や看護師さん、他の科の先生方も「使ってみたい」と言ってくださるようになりました。
医師は手術のICで活用できますが、たとえば病棟の看護師の場合、当院では1日に10数件の肛門手術がある日もあり、それぞれに10分ほどかけて同じ説明をしていたんです。
それがDICTORの導入で一気に短縮できるようになりました。また、入院前に動画を見ていただけることで、内容を理解したうえで入院していただけますし、事務職も入退院のご案内を動画で行えるようになり、全体的に業務がスムーズになってきています。
実証を通じて見えた変化
—実際にDICTORを導入してみて、患者さんの反応はいかがでしたか?
鈴木先生:導入当初は、「手術の動画がありますのでご覧ください」とお渡ししていましたが、最初の反応は「突然クローンが喋り出して驚いた」というものでした。
声も顔も自分にそっくりなので、「本当に似てますね」という声が一番多かったです。
現在は「これから私のクローンが話します」とお伝えしてから見ていただいていますが、あまりの再現度に喜ばれる方が多く、「家族に見せたい」と持ち帰る方も増えました。
若い方もそうですし、ご家族が外来に同席できなかった方の場合でも、後日お会いしたときに「初めてとは思えない」「安心感があった」と言っていただくこともあります。

—質問の内容も変化したのでしょうか。
鈴木先生:以前は「説明の意味が分からない」「聞き取れなかった」「絵で説明してほしい」といった質問が多かったのですが、今は「手術後はどうなるのか」など、内容を理解したうえでの深い質問に変わってきました。理解度は明らかに向上していると感じています。
また、以前は私がすべての手術説明をしていましたが、待ち時間が長くなると他の先生にお願いすることもありました。ただ、その場合どうしても説明の質がばらついてしまい、後から私がもう一度説明することもありました。
今はまずDICTORで均質な説明を見ていただいたうえで、手術の段取りに進めるので、説明の質を安定して保てるようになったのは大きな変化だと思います。
医療現場における「標準化」の意義

—DICTORの導入によって、どのような効果を感じていますか?
鈴木先生:手術の説明に限らず、入退院の案内や入院中の生活など、必ずお伝えしなければならない内容を、誰が担当しても同じように伝えられることは、私たちにとって大きな安心感につながっています。
その分、患者さんからのクレームも減っていくのではないかと感じています。
実際に、私自身の業務負担は軽減されましたし、患者さんの満足度も明らかに上がっています。アンケートを取ってもその傾向ははっきりと出ていて、業務の効率化と患者満足の両立ができていると実感しています。
現場で自然に広がる活用の輪
鈴木先生:病院では、最初は私一人だけがDICTORを使っていました。ですが、使っている様子を見た周囲のスタッフから「自分も使いたい」という声が次々に上がるようになりました。
当初は「半年ぐらい使えば良さが伝わるだろう」と思っていましたが、実際には1ヶ月ほどで他の職種の方も次々と活用を始めました。
おそらく、DICTORは一度使ってみないとその有用性が実感しづらい面もあると思うので、まずは短期間でも試していただけると、効果を感じていただけるのではないかと思います。
● 患者説明業務支援サービス「DICTOR」●
DICTORは、患者さんへの説明業務を支援し、医療現場の業務効率化とコミュニケーションの質の向上を実現するサービスです。導入をご検討の際は、医療機関の規模やニーズに合わせたご提案・デモのご案内も可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
本記事はインタビュー動画の内容を書き起こしたものです。動画は以下のリンクからご覧いただけます。
2025.06.27