【2024年改定】通所介護(デイサービス)の口腔機能向上加算とは|算定要件を解説
高齢者の健康寿命延伸において、口腔機能の維持・向上は重要な課題となっています。2024年度の介護報酬改定において、通所リハビリテーションでは一体的サービス提供加算との同時算定が不可となるなど、一部変更点がありましたが、デイサービスにおける口腔機能向上加算は引き続き算定可能な加算として注目されています。
本記事では、デイサービスでの口腔機能向上加算について、2024年度の改定内容を踏まえながら、算定要件から具体的な算定手順まで、実務に即した形で解説します。さらに、AIを活用した新しい取り組み事例もご紹介しながら、効果的なサービス提供のポイントをお伝えします。
■口腔機能向上加算とは
1|口腔機能向上加算の目的
2|口腔機能向上加算で得られるメリット
■【2024年改定】口腔機能向上加算Ⅰ・Ⅱの算定要件と単位数
1|口腔機能向上加算Ⅰ
2|口腔機能向上加算Ⅱ
3|口腔機能向上加算ⅠとⅡの違い
■口腔機能向上加算の対象者とは
1|どのような利用者が対象となるのか
2|対象とならないケース
■口腔機能向上加算を算定するための手順
1|スクリーニング・アセスメントを実施する
2|口腔機能改善管理指導計画を作成する
3|利用者や家族に説明する
4|口腔機能向上サービスを実施する
5|モニタリング・再評価を実施する
■口腔機能改善など目的別のレクをAIが提案!「WAN介護」とは
■まとめ
■口腔機能向上加算とは
通所介護(デイサービス)における口腔機能向上加算は、口腔機能が低下している、またはそのおそれのある利用者に対して実施する口腔機能向上の取り組みを評価する加算制度です。通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、通所リハビリテーションなどで算定が可能です。
2024年度の介護報酬改定では、通所リハビリテーションについて「一体的サービス提供加算との同時算定が不可」という新たな条件が追加されました。
1|口腔機能向上加算の目的
口腔機能は、食事をする、話す、笑う、呼吸するなど、私たちが生きていく上で重要な役割を果たしています。加齢とともに歯を噛む機能や飲み込む機能は低下していき、これらの機能低下は日常生活動作(ADL)の維持・改善や健康寿命の延伸に大きく影響します。
近年、口腔機能が低下している状態は「オーラルフレイル」と呼ばれ、要介護状態の進行を示す重要な指標として注目されています。口腔機能が低下すると、食事の形態や量が制限され、栄養バランスが崩れやすくなります。その結果、免疫力や代謝機能の低下を招き、疾病リスクが高まるとともに治癒も遅くなってしまいます。
2|口腔機能向上加算で得られるメリット
利用者にとっては、口腔機能の維持・改善により、食事や会話を楽しむことができ、生活の質(QOL)の向上につながります。また、適切な栄養摂取が可能となることで、全身状態の改善や疾病予防にも効果が期待できます。
事業所側においては、利用者の重度化予防や要支援状態からの改善に向けた取り組みが評価され、加算収入を得ることができます。さらに、専門的な口腔機能向上サービスを提供することで、事業所の特色となり、選ばれる理由の一つとなります。
■【2024年改定】口腔機能向上加算Ⅰ・Ⅱの算定要件と単位数
通所介護における口腔機能向上加算は、(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類に分かれています。
両加算とも要支援者は月1回まで、要介護者は月2回までの算定が可能です。
種類 | 単位 | 回数限度 |
口腔機能向上加算Ⅰ | 150単位/回 | 月2回 |
口腔機能向上加算Ⅱ | 160単位/回 |
1|口腔機能向上加算Ⅰ
口腔機能向上加算(Ⅰ)は、基本的な口腔機能向上サービスの提供体制を評価する加算です。
以下の要件をすべて満たす必要があります。
項目 | 具体的な内容 |
人員配置 | 言語聴覚士、歯科衛生士または看護職員を1名以上配置(非常勤・兼務可) |
計画作成 | 利用者の口腔機能を把握し、言語聴覚士、歯科衛生士等が共同して口腔機能改善管理指導計画を作成 |
サービス提供 | 口腔機能改善管理指導計画に従い、言語聴覚士、歯科衛生士または看護職員が口腔機能向上サービスを実施 |
記録 | 利用者の口腔機能を定期的に記録 |
評価 | 口腔機能改善管理指導計画の進捗状況を定期的に評価し、担当の介護支援専門員、主治医、主治歯科医に情報提供 |
これらの要件は、利用者の状態に応じた適切なサービス提供と、その効果の確認を目的としています。
2|口腔機能向上加算Ⅱ
加算(Ⅱ)は、加算(Ⅰ)の要件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。
◉LIFEへの情報提出
利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画等の内容等の情報を、LIFEを用いて厚生労働省に提出することが求められます。提出された情報は、サービスの質の向上に活用されます。
◉PDCAサイクルの実施方法
提出された情報およびフィードバック情報を活用し、利用者の状態に応じた計画作成(Plan)、計画に基づくサービス提供(Do)、支援内容の評価(Check)、評価結果を踏まえた計画の見直し・改善(Action)という一連のサイクルを実施します。
3|口腔機能向上加算ⅠとⅡの違い
両加算の主な違いは以下の通りです。
項目 | 加算Ⅰ | 加算Ⅱ |
単位数 | 150単位/回 | 160単位/回 |
LIFE対応 | 不要 | 必要 |
基本要件 | 人員・計画・評価 | 加算Ⅰの要件を満たす |
PDCAサイクル | 不要 | 必要 |
この2つの加算の主な違いは、LIFEへの対応とPDCAサイクルの実施の有無です。加算(Ⅱ)は、より科学的な介護の実践を目指す事業所向けの加算といえます。
■口腔機能向上加算の対象者とは
口腔機能向上加算は、要介護1~5の方、要支援1・2の方、総合事業対象者が算定対象となります。ただし、要支援者と総合事業対象者の場合は月1回まで、要介護者は月2回までの算定となります。
なお、介護予防サービスについては、各自治体によって単位数等が異なる場合があります。
1|どのような利用者が対象となるのか
口腔機能向上加算の算定対象者は、以下のいずれかに該当する方です。
1. 認定調査票における以下の3項目のいずれかが「1」以外に該当する方
- 嚥下:見守り等が必要、または嚥下ができない
- 食事摂取:見守り等が必要、一部介助、全介助
- 口腔清潔:一部介助、全介助
2. 基本チェックリストの口腔機能に関する3項目のうち、2項目以上が「はい」に該当する方
- 半年前に比べて固いものが食べにくくなった
- お茶や汁物等でむせることがある
- 口の渇きが気になる
3. その他口腔機能が低下している、またはそのおそれがある方
例えば、主治医意見書の摂食・嚥下機能に関する記載内容から判断される方や、視認により口腔内の衛生状態に問題があると判断される方、医師・歯科医師・介護支援専門員等からの情報提供により口腔機能の低下が認められる方などが該当します。
2|対象とならないケース
以下の場合は、口腔機能が低下している方でも加算を算定することができません。
医療保険との関係では、歯科診療を受診し「摂食機能療法」を算定している場合は加算を算定できません。また、「摂食機能療法」を算定していない場合でも、介護保険の口腔機能向上サービスにおいて「摂食・嚥下機能に関する訓練の指導若しくは実施」を行っていない場合は算定できません。
複数の事業所の利用に関しては、他のデイサービスやデイケアですでに口腔機能向上加算を算定している場合、重複して算定することはできません。この点については、利用者本人・家族等・ケアマネジャーとの情報交換を密に行う必要があります。
また、利用者本人または家族から口腔機能向上加算の算定に対して同意が得られない場合も算定することができません。その場合は、口腔機能向上の重要性について丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。
■口腔機能向上加算を算定するための手順
口腔機能向上加算の算定を開始するにあたり、適切な手順で進めることが重要です。利用者の状態把握から計画作成、サービス提供、評価まで、一連の流れに沿って実施していく必要があります。
具体的には以下の5つのステップで進めていきます。
① スクリーニング・アセスメントの実施
② 口腔機能改善管理指導計画の作成
③ 利用者や家族への説明
④ 口腔機能向上サービスの実施
⑤ モニタリング・再評価の実施
以降では、各ステップの内容について説明していきます。
1|スクリーニング・アセスメントを実施する
口腔機能の低下またはそのおそれがある利用者を把握するため、利用開始時に口腔機能の評価を実施します。認定調査票や基本チェックリストの該当項目を確認するとともに、口腔内の状態や嚥下機能、食事の様子などを専門職が評価します。評価結果は記録に残し、サービス提供の基礎資料とします。
2|口腔機能改善管理指導計画を作成する
言語聴覚士、歯科衛生士、看護職員、介護職員、生活相談員などの関連職種が共同して、利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画を作成します。計画には、現在の状態や課題、具体的な目標、実施するプログラムの内容、実施頻度などを記載します。利用者の状態に応じて個別または集団での実施を検討します。
3|利用者や家族に説明する
作成した計画書の内容について、利用者や家族に説明を行います。口腔機能向上の必要性や期待される効果、具体的な訓練内容について丁寧に説明し、サービス提供に対する同意を得ます。同意は口頭でも構いませんが、計画書等に同意を得た旨を記録する必要があります。
4|口腔機能向上サービスを実施する
計画に基づいて口腔機能向上サービスを提供します。サービスには口腔清掃の指導や実施に加え、必ず摂食・嚥下機能に関する訓練の指導または実施を含める必要があります。提供したサービスの内容は毎回記録し、利用者の状態変化も併せて記録します。
5|モニタリング・再評価を実施する
定期的なモニタリングを行い、約3ヶ月ごとに口腔機能の状態を再評価します。評価結果に基づき、目標の達成状況や計画の妥当性を確認し、必要に応じて計画の見直しを行います。この結果は、担当の介護支援専門員や主治医、主治の歯科医師にも情報提供を行います。サービスの継続が必要と判断された場合は計画を更新し、改善が認められた場合は終了とします。
■口腔機能改善など目的別のレクをAIが提案!「WAN介護」とは
口腔機能向上サービスを効果的に提供するには、利用者が楽しみながら継続できる工夫が重要です。その一つの方法として、レクリエーションを活用した取り組みがあります。しかし、個々の利用者に適したレクリエーションの選定や、準備、効果の検証には多くの時間と労力がかかります。
そこで注目したいのが、AIを活用したレクリエーション提供サービス「WAN-かいご」です。このシステムでは、150種以上のレクリエーションコンテンツの中から、口腔機能改善などの目的に応じて最適なプログラムをAIが自動で提案します。すべてのコンテンツは、東京大学先端研・身体情報学分野との共同開発により、学術的根拠に基づいて作成されています。
利用にあたっては、PCやタブレットからすぐにアクセスが可能で、専用機器の購入は不要です。各レクリエーションには詳細な実施手順や必要な準備物、期待される効果が記載されており、スタッフの経験によらず質の高いサービスを提供できます。また、麻痺の有無など利用者の状態に応じた検索も可能で、個別性の高いプログラム作成をサポートします。
システムの活用により、レクリエーションの準備時間が短縮され、スタッフの負担軽減にもつながります。さらに、エビデンスのある質の高いレクリエーションを継続的に提供することで、利用者の機能改善や意欲向上が期待でき、事業所の稼働率向上にも寄与します。
■まとめ
口腔機能向上加算は、デイサービスにおいて利用者の口腔機能の維持・改善を目指した重要な加算です。2024年度の介護報酬改定で一部要件が変更される中、本加算は引き続き算定が可能な加算として注目されています。
算定にあたっては、専門職の配置や計画作成、サービス提供、評価など、体系的な取り組みが必要です。しかし、利用者の口腔機能の改善は、誤嚥性肺炎の予防や栄養状態の改善、QOLの向上など、多くのメリットをもたらします。
効果的なサービス提供のためには、個々の利用者に適したプログラムの選定と継続的な実施が重要です。その点で、AIを活用したレクリエーション提供サービス「WAN-かいご」は、エビデンスに基づいた150種以上のレクリエーションから、目的に応じた最適なプログラムを自動で提案します。ぜひ、無料デモ体験を通じて、質の高い口腔機能向上サービスの提供をご検討ください。
2024.12.19