イベントレポート

Drive Digital Transformation
~データ活用を推進するために必要なこと~

登壇スピーカーグーグル合同会社 橋本 潤 氏

「Google I/O」で4つのテーマを発表

皆さんがお持ちのスマートフォンは、移動中でも、料理を作っているときでも、ベッドに入っているときでもつながっています。

さらに5Gがスタートすると、これまで以上に高速大容量、低遅延、多接続になります。そうなると、消費者にとってオフラインとオンラインの垣根が非常に低くなります。これまでは「必要なときだけデジタルにつながる」という形でしたが、これからは常につながった状態で消費行動などが行なわれることになります。

これまでのIoT(Internet of Things)から、さらにIoE(Internet of Everything)へ、モノだけではなく、人やコトがすべてインターネットに接続されるような時代が始まってきています。ここでは、データ、すなわち、お客様との接点をどれだけ持っているかが企業の競争原理になります。

グーグルは、2019年5月に開催した開発者向けイベント「Google I/O」で、大きく4つのテーマを発表しました。

1つ目は「Assisted evolution(アシスタントの進化)」です。「OK Google」と話し掛けると「Google アシスタント」が音声認識を行い、適切な行動をします。テレビコマーシャルでご覧になったことがあるかもしれません。「OK Google、スシローで今から〇名」と話し掛けると、位置情報を使って近くのスシローの店舗を探し出し、予約ができます。予約した後は、店舗までのナビも行います。

2つ目は「Visual-in Visual-out」です。これはVR、ARの技術を活用しているのですが、オフラインの店舗にかざすことによって、そのお店のレビューや取扱商品などの情報をVisual-in Visual-outしていくようなところに力を入れています。

3つ目は「Machine Learning for Every Business」です。静岡県のキュウリ農家の小池誠さんは、グーグルの機械学習ライブラリ「TensorFlow」を用いたキュウリ仕分け機の開発を進めています。キュウリ農家では、キュウリの等級の仕分けに大きな手間がかかるそうですが、その作業を軽減する自動仕分け機を自作されているのです。マシンラーニングは一部の先進的な企業だけに導入されるものではなく、もはや、どんなビジネスでも、どの領域でも使われるという事例です。

4つ目は、本日の他の講演でも話がありました、「消費者の権利とプライバシー問題」です。GDPRやITPなど、データを取り巻く環境がとても複雑化しています。こういった世の中において、個人情報をきちんと保護し、プライバシーを守りながら、どのように皆さんの生活を豊かにしていくかを真剣に考えています。


「データが価値を創造する時代」にすべきこと

企業においてデータをどうやって使っていくか。まずは、データを集めるインフラをきちんと整備しなければなりません。これは水と一緒で、ちゃんと集めて貯めてちゃんと飲めるようにする、ということをデータの世界でやっていくのです。

ただし、データを集めても、分断されていたり分散されていたりすると、なかなか使えるようになりません。例えば、このデータはオフラインの店舗のデータ、このデータはECサイトのデータと分かれていると使えないのです。また、このデータがマーケティング部、営業部、店舗、情報システム部などに分散していると使えません。

やはり、「ユーザーを起点とした情報」であるべきです。オフラインで買おうがオンラインで買おうが、あるいはその情報がマーケティング部で使われていようが、商品開発部で使われていようが、同じ一連の情報として管理をすることが重要です。

ユーザー起点を実現するための窓口が「モバイル」です。いま色々な企業がモバイルファーストな体験を提供されています。コカ・コーラさんは、これまで取れなかった自動販売機の販売データを活用されたり、健康をサポートするための行動データを活用されたりしています。ネスレさんは、その人の健康状態や決済に関するデータを活用されています。あるいは、温泉街でも観光客に対しておサイフケータイのようなアプリを提供し、その人がどのような経路で、どのような観光スポットを周ったのか、を把握し、その人に対して適切なレコメンデーションを実現しています。

そして、データを貯めるだけでなく、分析をしなければなりません。しかし、「何となく集めたけれど、結局何に使ったらいいんだろう」という企業の声もよく聞きます。データを分析して使っていくのであれば、それを何に使うのか、例えば、新規のお客様の獲得に使うのか、リピートの購買確率を上げるのか、解約を予測し離脱を防止するのか。その目的に応じて、そもそもどういうデータが必要なのか、予め考え、収集していくべきです。目的の明確化が大切なのです。


「過去の分析」から「未来の予測」へ

これまでは「過去の結果がどうだったか」という分析にとどまっていましたが、次第に「Predictive(予測)」という領域に入ってきています。Life Time Value(生涯価値)という言葉があります。一般的なLife Time Valueは、過去1年間で購買した実績に基づき、「この人は将来、これぐらい買ってくれるだろう」と推測していました。そうではなく、「恐らくこの人は、これぐらいのタイミングで来なくなる」といったことも見なければなりません。

例えば、あるベビー用品店で、Aさんは1年間で大体2カ月おきぐらいに100ドルずつ使っています。Bさんはお友だちの赤ちゃんが生まれたので、そのお祝いに500ドルを1回使いました。この2人は1年間で同じ500ドル使っています。これまでの分析では、2人は同じ価値の人と判断されていたと思います。しかし、今後も買い続ける人はどちらかといえば、明らかにAさんです。こういった点を踏まえて、マーケティング予算をどちらのお客様に投じた方がいいのかを、きちんと考えた上で取り組んでいく必要があります。

データ戦略においては、注目すべき「2つの要素」があります。将来的な「予測価値」と、お客様一人ひとりに応じて予算、あるいはサービスを提供していく「個客最適化」です。これは、目的をもって集めたデータがあって初めてできる要素になります。

最後に、2つほど事例をご紹介します。

1つ目は、中古車販売の「ガリバー」を手掛けるIDOM様です。来店、商談、成約、フォローなどのCRMデータと、Webサイト上での検索、閲覧の内容、申し込みフォームへの入力事項といったデータを組み合わせて、お客様の将来的な成約確度を推測し、成約度の高い人に、よりコスト、あるいは労力をかけて電話営業しています。これによって店舗への来店率が前年比で25%増加、利益に関してはマーケティング予算の最適化によって前年比で87%の増加となりました。

2つ目は、ニトリ様の事例です。ニトリ様は、当社のTensorFlowのマシンラーニングを活用し、1128パターンの広告を作成しました。ここではお客様の状況や位置情報も組み合わせ、「このソファをこのタイミングで、この店舗情報と一緒に流すことが最適」といった分析を生かして広告を配信したところ、クリック率が約2倍に上がっています。

こういったデータの収集や活用は、一朝一夕でできるようなものではありません。Baby Steps to Giant Stridesで、まずは第一歩を踏み出すことが大切です。それによって自分たちの取り組みが正しいのか、間違っているのか、改善の余地があるのかを見極め、第二、第三のステップを重ねていくことで、お客様にとってより最適で豊かなサービスを提供することができます。

5GやAI、IoTの流れがある中で、デジタルトランスフォーメーションは待ったなしの状況です。より早く一歩目を踏み出して、改善を重ねていただければと思います。

2020.03.10