コラム

ESGスコアとは?
計算方法と企業・投資家が活用する方法を解説

  • TOPPAN CREATIVE編集部

ESGのことは理解していても、「ESGスコアについてはよくわからない」という人もいるでしょう。

本記事では、ESGスコアの意味や計算方法、企業と投資家が活用する方法を解説します。ESGスコアを理解するのにお役立てください。


【この記事で分かること】
● ESGスコアの基本的な概要と必要性が分かる
● ESGスコアの計算方法が分かる
● ESGスコアの活用方法が分かる


ESGスコアとは?

ESGスコアとは、第三者評価機関が企業の環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への取り組みを評価し、数値化した指標のことです。企業がどれだけESG活動に力を入れているかを客観的に示すもので、各企業のESGへの貢献度やリスク管理状況を表しています。

スコアが高いほど、その企業が環境保護や社会的責任、健全な経営管理に積極的であることを意味しています。ESGスコアがなければ、投資家は企業のESGへの取り組み状況を客観的に比較することができません。

ESGスコアの必要性

ESGスコアが注目される背景には、ESG投資、いわゆる環境・社会・ガバナンス要素を考慮した投資の広がりがあります。従来の投資判断は売上や利益率などの財務情報が重視されてきましたが、近年では気候変動対応や社会的責任といった非財務情報も重視されるようになりました。

2006年に国連が機関投資家にESG要素を投資プロセスに組み込むよう提唱したことをきっかけに、欧米を中心にESG投資が急速に拡大しました。日本でも年金基金であるGPIFがESG投資を推進するなど、その潮流が強まっています。

こうした流れが進み、投資家は企業のESGへの取り組み度合いを判断する指標としてESGスコアを活用するようになりました。ESGスコアがあれば、投資家は企業のESGパフォーマンスを相対的に比較できることから、投資すべき企業を判断する重要な材料になります。

また、ESGスコアは投資家だけでなく企業にとっても重要な一面があります。企業側もESGへの取り組みが評価されることで、自社の課題や強みを把握できる指標となるためです。

ESGスコアの計算方法と評価基準

ESGスコアは各種のESG評価機関によって算出されています。専門の評価会社やシンクタンクによって、企業の公開情報やアンケート回答などからESGに関するデータが収集され、自社で構築した評価モデルに基づいて算出されます。

評価項目は「環境」「社会」「ガバナンス」それぞれに設定されており、企業のESGパフォーマンスやリスク対応状況が総合的に点数化される形です。

具体的には、各評価機関が「環境」「社会」「ガバナンス」の大項目ごとに細かな評価基準を設け、企業の取り組みをスコアリングします。

例えば、ある評価機関では、環境・社会・ガバナンスの各分野ごとに14のテーマを設定しています。小項目はそれぞれに10〜30です。なお、合計300以上の評価項目で構成されるケースもあります。

主な評価項目の例は以下の表のとおりです。

環境(E)
  • 温室効果ガス排出量
  • エネルギー使用量
  • 水資源の使用や節約
  • 廃棄物の管理
  • 環境リスクへの対応策 など
社会(S)
  • 労働環境(従業員の安全・健康管理)
  • ダイバーシティ(多様性)推進状況
  • 従業員教育や人権尊重
  • 地域社会への貢献
  • 顧客や取引先との関係性 など
ガバナンス(G)
  • 経営陣の構成(取締役会の独立性や多様性)
  • コンプライアンス(法令遵守)体制
  • 情報開示の透明性
  • 内部統制やリスク管理体制
  • 株主への対応 など

評価機関はこれら多数の項目について各企業を評価し、総合的なスコアを算出します。
なお、公正を期すため業種ごとの特性も考慮されるようになっています。

ESGスコアは評価基準が統一されていない点に注意

ESGスコアの注意点は、ESG評価機関ごとに重視する項目や配点が違うため、同じ企業でも機関によってスコアが異なることです。

ESG情報の開示基準や評価手法が統一されておらず、評価機関の乱立によって企業側と投資家側双方に混乱を招く恐れがあると指摘されており、課題になっています。このため、欧米の金融当局は評価基準の明確化に向けて動き始めており、日本の各機関も統一的な枠組み作りを模索中です。

一方で、企業のESG評価が多角的に行われることは、さまざまな視点から企業の持続可能性をとらえられるという利点もあります。

ESGスコアの活用方法

ここからはESGスコアの活用方法として、以下の2つを紹介します。

● 投資家|投資判断の有力な材料
● 企業|自社の課題発見と改善

投資家|投資判断の有力な材料

投資家の中には、「社会的に良い企業に投資したい」と考える人も少なくありません。そういった人にとってESGスコアは客観的な判断基準の一つです。

例えば、ESGスコアを基準にし、投資先を選定する投資信託などは、ESGスコアを大切にしている印象を与えるでしょう。スコアが高いということは環境リスクや社会的リスクへの対応が進んでいる証拠であり、中長期的に安定した成長が期待できると判断されやすくなります。

一方で、スコアの低い企業は将来的に環境規制への対応遅れや不祥事、労務問題などのリスクが懸念されやすく、投資先から敬遠される可能性が拭えません。また、個人投資家にも、企業の財務データだけでなく、サステナビリティ面の評価としてESGスコアを参考にする動きが広がっています。

企業|自社の課題発見と改善

企業はESGスコアを自社の課題発見と改善指標として活用できます。

具体的には、評価機関からフィードバックされるスコアや評価レポートを分析し、自社の弱点となっている項目を洗い出すことで、課題を発見できるでしょう。また、競合他社と比較して、自社がどの分野で見劣りしているかを知る手がかりにもなります。

また、ESGスコアを高めること自体が、企業戦略の一環です。なぜならば、ESGスコアが高い企業は「サステナブルな優良企業」として市場から評価されやすくなるからです。

高いESG評価を得ている企業はESG投資を行う投資家から選好されやすくなり、株式・債券の発行による資金調達が円滑になる可能性が高まります。

また、ESGスコアの向上に熱心に取り組む企業は社会的信用が増し、ブランド価値の向上も期待できます。スコアを上げるための取り組みは、企業の持続可能性を高める経営改善であるといえるでしょう。

企業がESGスコアを高める方法

企業がESGスコアを向上させるには、各規準や指標に共通する項目を優先的に取り組むことが有効です。ESG情報の開示度が高いことは、どの評価基準においても重視されています。

ただし前述したとおり、現状では指標が統一されていないため、まずはサスティナビリティ開示基準に沿った対応をするのがおすすめです。取り組みや成果を取りまとめ、統合報告書やIRレポート、サスティナビリティレポート、Webサイトなどの形で公開してみましょう。

ESG情報を開示してESGスコアを向上させよう

ESGスコアとは、第三者評価機関が企業の環境、社会、ガバナンスへの取り組みを評価し、数値化したもので、ESG投資には欠かせないものになりつつあります。ESGスコアは各種のESG評価機関によって算出されていますが、現在はまだ統一されていないことが課題です。

ただし、現在は統一を模索している最中であり、ESGスコアは今後ますます重要視される可能性があります。ESGスコアを活用することは投資家と企業の両方にメリットがあると考えられるでしょう。

TOPPANでは、ESG情報開示コンサルティングサービスを提供しており、サスティナビリティレポートやサイトの制作にも対応しています。ESGスコアの向上に向けて取り組みを始めたいと考えている場合は、ぜひご相談ください。

2025.06.02

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